猫嵐
全て書き直しますのでよろしくお願い致します
それは今よりもずっとずっと昔のお話。
とある日曜日の正午前の事、父の運転するワンボックス車の助手席に私は居た。
生憎の悪天候はまさに嵐の如く。
フロントガラスを容赦無く打ち続ける雨粒に、それをガシャガシャ切り裂くワイパーが忙しなく動いている。
当時、高校受験を控えていた私は従姉妹の「知人に志望校のOBが居るから話を聞きにおいで」というお誘いで、叔父宅へ行った帰りだった。
橋を渡ると急に道が広がり交通量のある通りに繋がるので、私は周囲の安全確認をしつつぼけっと街並みを眺めていた。
ふと道端に何かが見えた…いや居た?
道端に小さな丸いもの?白と茶色の毛玉…いや猫?子猫だ!
間違い無い、この土砂降りの中を独り歩いている子猫が居る。
猫の事を父に話しても「ふーん」という感じでまるで埒が明かない。
まず母にお伺いを立てて頷かなければ連れては行けないのだという。
いやそもそも父が何も聞く耳を持っていない感じがするのは気のせいだろうか?
玄関先で車を降ろして貰うと私は家に飛び込み一言「子猫!道端に!独りで居た!」
「何してんの早く連れて来な」
具合を悪くして寝ていた母だったけれど、この即答に私はー内心ニヤリとしつつー必要な物を探した。そう急がないと子猫が危ない。
あった!バスタオルを鷲掴みにすると傘もささずに土砂降りの中へと飛び出して行った。
この時の事は何故か断片的にしか覚えておらず、それだけ焦っていたという事なのかも知れません。
家を出たところ、坂道を駆け上がり、そしてあの道路へ。
とうとうと路肩を流れていく雨水…。行き来する車…。
居た!白と茶色の毛玉!生きてる!
雨に打たれてぐしゃぐしゃの子猫をバスタオルでぐるぐる巻にして、帰りは少しだけ慎重に歩いて行く。
バスタオルの中から子猫の動く感触が伝わってくるので、そこまで心配する程弱ってはなさそうだ。
家では具合の良くない母が出来る範囲で新聞紙を敷き段ボール箱で猫の居場所を作ってくれていた。
わぁーっとタオルでゴシゴシ拭かれた子猫は不思議と戸惑う素振りもなくリラックスしている。
こいつはなかなかの大物か?それとも状況を理解しているお利口さんなのだろうか。
「三毛だね」と母。子猫は白に茶色が散っていて、そこに少しだけ黒が混じる三毛の女の子。
そして鼻の穴の所にポツッとある黒い点は後に“はなくちょ”と呼ばれた(女の子になんてあだ名を)。
一番特徴的だったのは綺麗にくるりと巻かれた丸い尻尾で、これだけまん丸になっているのは今まで見た事がありませんでした。
※この尻尾も後に“フタ”と呼ばれる事に…。
子猫が寛いで居るのを見て一安心。
ここでやっと、とっくにお昼を過ぎている事に気が付きました。
そして何故か家に戻って来ない父。
冷蔵庫の中を見るとカレーうどんがあったのでお昼はこれに決定です。
先に母の分をよそって食べさせていると、その横で突然子猫がびゃあびゃあと少し苦しそうな声を上げ始めました。
どうしたものかと見ていると、背中を丸めてお尻からゲル状のものがポタポタ…。
ああ、寒かったからお腹を下しちゃったのかな(とその時は思ったのです)。
何故か酸っぱい様な不思議な臭いがするのでじっと様子を見ていると「もういらない」と母。
そうだ、カレーうどんを食べていたのだ。
この出来事こそが、この日の天気よりずっとずっと大きい嵐が我が家の中で発生し勢力を急速に拡大し始めた瞬間だったのです。
※カレーうどんは後でスタッフ(私)が美味しくいただきました。
ここと次の話に少し汚い部分があります
すいません