第七十三話 それに素顔を隠して
始まるよ~
「見つかりませんか。しぶといですね。もしや、闘技場外に逃げましたか?それならそれで追うだけです。闘技場内の者に通達、闘技場外にて邪教信者ツカサを探しなさい」
聖職者の声が響く。近くには数人の騎士がいるだけだ。そのステージは聖職者を中心に魔法陣が展開されていることを除き、司が去っていった時のままだ。
「手っ取り早く使徒を召喚して邪教信者に罰を与えたいところですが、生贄の準備ができていないのが苦しいところですね。この際、この国の人間でも使いますか」
独り言をつぶやく聖職者に近づく影があった。騎士の一人がその様子を見ていたが、聖職者自体は一切の反応を示さない。
「いるのはわかっております。どうぞ姿をお見せください。テンドウ様」
聖職者がつぶやくと、柱の陰から聖剣を持った天道が現れた。
「この度は、どのようなご用件で?」
「…司が邪教信者だというのは、真実なのですか?」
天道は警戒した表情で聖職者に問いただす。
聖職者は微笑みを浮かべそのというに答える。
「ええ、もちろんです」
「根拠をお聞きしてもいいですか?」
すかさず天道は質問を続ける。
聖職者は表情を一つも変えることなく、優雅に、その教えを説くように、その質問に答える。
「ええ、いいですよ。ツカサが邪教を信じている証拠。それは、神の予言があったからです。ツカサは邪教に身を落とし、世界の崩壊をもくろんでいるとの神託が下ったのです。神は一にして全。神の言うこと、それすなわち真実なのです」
天道は聖剣を軽く握ると、少しだけうつむく。少し時間がたった後、再び顔を上げる。その表情に警戒の色も、恐怖の色も、迷いもなかった。
「そうですか。同郷の人に天罰が下るのは悲しいですが、仕方のないことですね。正義がすべてですから」
屈託のない笑みで天道は言い放つと、続けて口を開く。
「俺もその討伐に協力します。俺の手で天道に引導を渡したい」
「ほお。それは良い心がけですな。同郷のものに天罰を下されるとなればツカサも幾分か考えを改めるでしょう」
「…そうなることを願います。それでは、俺は司を探してきます」
天道はそう言うとその場から立ち去る。一瞬だけどこかを見ていたが、二度と気にする様子もなく、その場を立ち去った。
「さて、もう一人いるようですね。こちらは、帝国のもののようですね。排除しておきなさい」
何処からともなく騎士が現れ、隠れていた人物に襲い掛かる。
その剣はフードをかぶっていた人物を貫いた。
だが、騎士はその手ごたえの無さに違和感を覚えていた。
「はずれ~。残念だったね~」
一人の騎士の背後から声が聞こえる。振り返ろうとしたその騎士はなぜか自分の司会が地面と近づいて行っていることに気が付いた。なぜ。そんなことを考える間もなく、騎士の意識は永遠になくなった。
首から上が無くなり血を噴き出している騎士を押し倒してその人物が姿を見せる。執事のような格好にピエロのお面をつけ、その手には赤黒い死神が持っているような大鎌が握られている。
「さて、次はどの方がこのワタクシのエキストラになってくださいますか~?」
おちゃらけたような口調でしゃべりながらゆらゆらと騎士に近寄る。騎士たちは一か所に集まり、盾を構える。
「守りに徹しますか~。でも、無駄ですよ~」
ピエロの男が鎌を振ると盾をやすやすと切り裂き、手前にいた騎士の首を切断し、その後ろにいた騎士の首を半分切った。完全に切られた騎士はゆっくりとその首を落とし、やがて胴体も崩れ落ちるかのように地面に付した。半ばまで切られた騎士は口と首から血を噴き出しながら、何かを叫んだあと、同じく崩れ落ち、少し痙攣したのち、その動きを止めた。両者から血がどくどくと流出し、大きな血だまりを作る。
「あなたは、何者ですか」
聖職者が遠くにいるはずなのにまるでその惨状を把握しているかのような様子で口を開く。
「ただの、通りすがりの曲芸師ですよ~?」
返事はすぐ隣から聞こえた。
聖職者はとっさにその杖を声がした方向に突き出す。
ガンッ!という音と金属同士がこすれるような音が響き、軽く火花が散る。
「その杖、只の金属ではありませんね~?ワタクシの鎌ならそんな杖、余裕で刈れるはずなのですが~」
「あなたに教える必要はありません。私から離れなさい!」
聖職者は詠唱を行わず、風の魔法を発動した。ピエロの男は風に吹き飛ばされ聖職者から距離を取らされた。
「ワタクシの目的はただ一つ~。貴方の首を狩ることです~」
鎌を構えながらピエロの男が言い放つ。
聖職者は少しだけ好戦的な笑みを浮かべると、杖を構える。
「いいでしょう。貴方にも神の裁きを与えて差し上げましょう」
少しの間にらみ合った後、ピエロの男が動いた。
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次回:『マジックサークル』お楽しみに!(題名は変更する可能性が90%です)
追記:月2に変更します。詳しくは活動報告をご覧ください。




