第七十一話 聖国
始まるよ~
「少しヒヤッとしたわよ」
スクルトシが汗をにじませながらつぶやく。俺が大剣を捨てることは考えていたが、こんなに早いとは思っていなかっただろう。そう思ったからやったわけだが。
「でも耐えることはできましたからね。あなたの得物はなくなりましたね。と言いたいところですけど」
「シオン、頼んだ」
俺はシオンのほうを向いてサムズアップを決める。はじけるような笑顔も追加だ。シオンは疲れたような表情をしている。まるでブラックな上司に仕事を押し付けられてようやくその仕事が終わったのに、また仕事を押し付けられた時のような顔だ。クレアーレとスクルトシは苦笑いを浮かべていた。同情の表情だ。
「まあいいですけどね。これが今回の役目ですから。いいんですけどね」
シオンはぶつぶつと言いながら魔法を起動する。
「やらせません!昇華無属性魔法真理!」
一定範囲内の阻害スキル、魔法についての詳細を知ることができる魔法か。案の定シオンが行使している魔法を分析される。
「あそこを狙ってください!」
クレアーレは展開していた魔法陣の一部を指さす。確かにシオンの癖的にあそこを突かれると魔法が崩壊するが。よく気が付けたな。
「わかったわ!破壊の魔眼エンチャント火属性魔法火球!」
ピンポイントで狙ってきたな。エンチャントのせいで掠っただけでもアウトだな。仕方ない。俺はシオンの前に立つと火球に向けて拳を振り下ろす。火球は掻き消えるように消滅した。というか風圧でかき消した。直で触れるとまずいタイプのエンチャントがされていたからな。さすがに素手で触れる勇気はない。当のクレアーレはぽかんとした表情を浮かべていた。
「魔法を風圧で打ち消すなんて。本当に人間?ですか」
「失礼な!これでもニンゲンだぞ!」
急になんていうことを言い出すんだ。本当に昔からこれだから。
「できました。土属性魔法土槍!」
周囲の地面に金属製の槍が突き刺さる。今回はシオンの処理能力も考えて、スタンダードな槍の形だ。俺は両手に槍を掴み、投げた。すがすがしいほどにスムーズに。
「いきなり投げるのは反則ですよ⁉」
シオンが叫ぶ。いきなり必殺技を使ってはいけないというルールはない。なので投げます。やり投げじゃねぇんだぞ!というクレームは受け付けておりません。
クレアーレとスクルトシはそれぞれ障壁を張りながらその槍をよけた。槍は障壁を突き破り、クレアーレをかすめた。
「どんどん行くぞ!」
「私の手間を考えてください!」
俺はどんどんやりを投げる。シオンは文句を言いながら槍を生成し続ける。
「もういいです!『土の精霊に願う その力 我に授けたまえ 母なる大地の力を得て 我はさらなる高見へのぼらん』土属性魔法創土!」
槍の生成速度が爆発的に上がる。同時にシオンの汗の量も多くなる。不遇ポジションってやつか。クレアーレたちは魔法を駆使して槍を避け、砕き、そらす。
少しずつ傷はできているがこのままだと多分押し切れる。クレアーレとスクルトシは一種だけ顔を見合わせる。同時に俺とシオンもアイコンタクトをする。シオンが一瞬だけ槍の生成スピードを上げる。俺はそれに合わせて槍を投げる速度を上げる。クレアーレとスクルトシは一瞬だけ魔法の発動が遅れた。
立った一瞬。されど一瞬。二人は槍をもろにくらい、場外に飛んで行った。
二人はうずくまっていて起き上がる気配がない。そのうち救護班が来て二人を連れて行った。
「ここで試合終了!準決勝第一試合の優勝はツカサ、シオンペアです!血も涙もない見事な戦略でした!」
本当に容赦ないね。ちょっと傷ついた。
そんなことはさておき、問題はその次か。俺たちが会場から立ち去ろうとした瞬間。閃光が走った。
予想通りか。
ご視聴ありがとうございました。よろしければ、感想や改善点などありましたら、ぜひ、ぜひぜひ!お願いします。
次回:『War』お楽しみに!(題名は変更する可能性が90%です)
追記:忘れてました




