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アテナたんとパラスたん

 とりあえずコレを放置しておくわけにいかんので、一応娘として育てることにして神殿に連れて帰った。

案の定ヘラが「誰に産ませたの!?」とキレ※今回「巨人パラス」と「トリトンの娘パラス」の逸話を混ぜて話を作ったので、元ネタ(ギリシア神話)とは著しく違っています。また、アテナの胸当ての逸話をそのままネタに使ったらかなりグロイ事になってしまいましたが、片頭痛と眠けで頭が動かないのでこのままでもういっか……と放置することにしました(酷


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 元気いっぱいなアテナを育てることになったのはいいが、他の兄姉たちはちょっと年齢が離れているので、トリトンの娘パラスと一緒に育てる事になった。二人は実に仲良く何でも一緒に学んですくすく育ったのはいいが、戦いの技を競ってはしょっちゅう喧嘩になっているのが乳母の悩みの種らしい。


 ある時ワシが雲の上から地上を見ていると、砂浜で戯れる?アテナとパラスがいた。二人ともすごい勢いで獲物をぶん回している。



 うわ、パラスの三叉矛トライデントがアテナの首を斬り落としそうだ!!驚いたワシはパラスの頭上にでっかい山羊革盾アイギスを落っことしてしまった。

 パラスはとっさに飛びのいて山羊革盾を避けたのはいいが、そこにアテナの双槍サリッサが飛んできた。そしてパラスの身体を刺し貫いて砂浜に縫い留めてしまう。

 パラスは数回痙攣(けいれん)したかと思うと動かなくなってしまった。


「ぱ……ぱらす~~~っっ」


 すっ飛んできたアテナは親友の遺骸いがいに取りすがって大号泣。


「ぱらす、おきろ~~!!おきてくれ~~!!!」


 パラスの両肩をつかんでがっくんがっくん力任せに揺さぶりまくる。


「お、おい待て。そんなに激しく揺さぶったら頭が取れてしまう……」


「ぢぢうえ!!もどはどいえばぢぢうえがいぎなりあいぎずなんかおっごどずがらわるいのではないですがっ!いつものぱらすならなんなぐよげでだまあいでずっ!!」


 ……鼻声の上に相変わらずひらがなで長文話すから何言ってるかわからん。とりあえず激怒しているのは伝わってきたが。

 あ~あ、せっかくの可愛い顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。


「アテナではないか。どうしたんだ?」


 なんでこんな時に限って通りがかるんだ、息子ヘパイストスよ。


「あにうえ~~~っ!!がぐがぐじがじが~~!!」


 アテナが鼻声で伝説の呪文(かくかくしかじか)を使って一生懸命息子(あに)に訴えかける。さすがは伝説の情報伝達呪文(かくかくしかじか)、鼻声になっていても効果は覿面てきめんのようで、一瞬で状況を把握した息子ヘパイストスはパラスの遺体をアテナから受け取った。


「パラス、まだこの辺りにいるかい?」


「ヘパイストスにいさま、あたしはここです」


 何も見えないがどうやらパラスの霊魂れいこんはまだその辺に留まっていたようだ。


色ボケ冥神(ハデス)の領地に行くのが嫌……じゃなくて、アテナが心配ですぐに冥府ハイドゥーに旅立てなくて……」


「アテナが君と離れたくないそうだ。君さえよければ依り代を作ってずっと一緒にいられるようにするけど、どうする?」


「もちろんアテナたんとずっと一緒がいいです!!アテナたん、あたしとずっと一緒にいてくれるよね??」


「もちろん!!ぱらすとおわかれなんてぜったいいやだ!!」


「ならばこの私にまかせなさい」


 息子ヘパイストスはおもむろにパラスの遺体から皮を少々剥ぎ取ると、アテナの胸当てに貼り付けた。


「「「え……えぇぇぇぇええっっっっ!???」」」


 思わずワシとアテナとパラスの声が一つになったが、時すでに遅し。

パラスから剥ぎ取られた皮はアテナの胸当て鎧にがっちりフィットして完全に一体化していた。


「ね、これでいつまでも一緒にいられるだろ?」


 やり遂げた漢の顔でのたまう息子ヘパイストス……色んな意味で間違っている気がひしひしとするぞ……


「ほんとだ。これならバッチリ依り代になるから冥府ハイドゥーに行かないで済むよ!!ヘパイストス兄さまありがとうっ!!」


「ぱらす!!これからもいつまでもいっしょだぞ!!あにうえありがとう!!」


「さすが発明の神ヘパイストス兄さま!!なんという手際の良さ、やはり天才です!!」


 ……本人たちが超絶喜んでるからこれでいいのか?いい……という事にしておこう。


 かくしてアテナの胸当には親友パラスの魂が宿って、常に二人仲良くかしましく世界最強を目指すのであった(とほほ) まくってたが、「ワシが産んだ」と言ったら黙った。

なんだかジト目で睨んでくるが、嘘は言ってない。


「あなた、ほんとにこの人から産まれたの……??」


 心底疑わし気に目の前に浮かんでいるアレをつついている。


「つっつくなー!」


「父上があまりに頭が痛い痛いとぎゃーつく騒いでうるさくてかなわないので斧でカチ割ってみたんですよ、頭。

そしたら中から出てきました。」


 息子の奴が一応補足してくれる。

……が、ぎゃーつくうるさいって何だ。

父親にむかって。

これでも神々の王なんだぞ、一応。


「頭カチ割ったら中から出てきたって……

そういうのも産んだって言うのかしら……??」


「どうだ。

そうそう真似はできんだろう」


「そういう問題ではありませんわ!!」


 ヘラのやつ、頭を抱えてしまった。


「なんだ、あたまいたいのか?

あてながわってやろうか?

おとうとかいもうとがうまれるかも!!」


「やめなさい。

母上はまともだから割ったら普通に死にます、たぶん」


 慌てて止める息子。

何だかそれじゃワシがまともじゃないみたいじゃないか。

というか、多分って何だ多分って。


「……何はともあれ、この子はうちの子ということで、ここで一緒に暮らしましょう。

アテナと言いましたね?

元気なのはとてもけっこうですが、壊したものは自分で直しなさいね。

わたくしのことは母上と呼んでくれると嬉しいわ」


「わかった!

ははうえよろしく!!」


 したっ!!と手を挙げて挨拶するアテナ。

元気っ娘かわいい。

ヘラも気に入ったようで頭を撫でてやっている。


 とりあえずいったんは丸くおさまったようでワシはほっと胸をなでおろした。

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