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女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神(バカ)に召喚された七組の勇者パーティー~  作者: 石藤 真悟
無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)
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仁が一人じゃ勝てない相手

 ネグレリアの城のある街にいた大量の動く死体とネグレリア・ワームをほとんど討伐した俺達二人は麗翠(れみ)の家へと戻っていた。


 今は麗翠の作ってくれた夕食を食べながら、俺の女神の剣(イーリス・ブレイド)の性能を麗翠に教えている。

 俺だけ麗翠の女神の剣の性能を知っているのはフェアじゃないし、麗翠だって俺の女神の剣の性能は知りたいだろうからな。


 「……凄いね。(じん)の持っている女神の黒(イーリス・ブラック)の能力。自分より弱くて勇者パーティーとして相応しくない人間から女神の加護や女神の剣を奪って、自分が使えるようにするって……」

 「いやいや、麗翠の女神の緑(イーリス・グリーン)も凄かったぞ? 強化魔法をかけて貰うだけで、一日であの量の動く死体とネグレリア・ワームを討伐出来るとは思わなかったよ。少なくとも俺一人じゃ出来なかった」


 麗翠のメンタルが壊れている状態だから役立たずとは言えないし……とりあえず褒めとくか……というお世辞ではない。

 女神の緑が凄いというのは、俺の本心だ。


 「またまた……今日の私なんて仁に任せきりだったじゃん。強化魔法をかけただけで何もしてないよ」


 俺の言葉に笑いながら首を振る麗翠。

 笑ってはいるが、自嘲気味の笑みだった。


 役立たず。

 無能。

 後ろにいるだけ。

 何故自分達だけ危険な目に遭わなきゃいけないんだ。

 勇者とは引っ張る存在じゃないのか。


 ……この二年間の間に様々な悪口や苦言を言われ続け自信を無くしている麗翠にはこのくらいの褒め言葉じゃ足りないのかもな。

 自分が凄いということを全くと言っていいほど認めようとしない。

 

 「自信持てよ。今日、一緒に戦って俺は確信したんだぞ? 麗翠と一緒なら、どんな奴が敵になっても勝てるって」

 「……そんな凄い女神の剣を仁が持っているのに、勝てない敵なんているの? 私を励まそうとして、適当なこと言ってない? 別に私は仁がそばにいてくれれば、大丈夫だよ?」

 「…………」


 ……重症だなあ。


 自分は何もしていない。

 俺の役に立ってもいない。

 凄いのは自分じゃない。


 ここまで自分を否定するなんて。


 ……あんまり言いたくなかったけど、事実を教えてやるか。

 麗翠の周りに無能しかいなかっただけで、麗翠はなんにも悪くないって。

 人のことを悪く言うのを嫌う麗翠に、事実とはいえ、かつて仲間だった連中の悪口を聞かせるのは心苦しいが。


 まあ……その前に麗翠の考えが間違っていることを教えないとだな。

 女神の黒を持っている俺に勝てない奴がいないって考えを。


 「……敵と言っていいかは分からないけど、今の俺一人じゃ勝てなそうなのは、最低でも二人は思いつくから、麗翠の考えは間違っているし、俺は適当なことも言ってないぞ」

 「私のためにそんな謙遜しなくても……」

 「神堂(しんどう)天ケ浦(あまがうら)だ。お前も覚えているだろ? こっちの世界でも天才みたいだ、あの二人は」


 麗翠の言葉を遮り、今の俺が一人では勝てない可能性がある二人の人間の名前を出した。

 まあ、逆に言えばこの二人以外には負ける気がしないという、ある意味自信の表れともとれる発言でもあるが。


 「俺の女神の黒は、確かに便利な能力だし、使い手がよっぽどの無能じゃ無ければ、まあ負けない。……だが、神堂に関しては別だ。アイツは勇者として魔王軍幹部討伐をした。ということは勇者パーティーとして相応しい人間。しかも一人で魔王軍幹部を討伐したということは実力も俺と同じぐらいかそれ以上。……ここまで言えば、分かるだろ?」

 「……神堂くんの女神の剣や女神の加護は、女神の黒で奪えないからって勝てないってこと?」

 「まあ……そうだな。それに、自分が最強に決まっているという過信から来る油断を差し引いたとしても、俺と神堂との身体能力の差はそうそう埋まるもんじゃねえ。良い勝負にはなりそうだけど、確実に勝てるとは言えないし、なんなら負ける可能性のほうが高いまでもある」

 「……へー、仁がそこまで言うんだ。成績がそこそこ良くてテニスで日本代表レベルっていうのは知っていたけど、あんまり仲良くなりたいとも思わなかったから、全然知らなかった。そんなに凄かったんだね。神堂くんって」


 ……うっすい反応だな、麗翠。

 まあ、確かに神堂みたいな奴とは仲良くなりたいと思うわけがないし、体育の授業は男子と女子別だからな。

 神堂の身体能力を知らないのも無理はない。

 それに基本アイツは、体育の授業や球技大会とかの運動系の行事は仮に参加したとしても露骨に手抜いてるし、そもそも参加しないことが多いからな。


 でも……露骨に手を抜いてやっている姿を見ても分かっちゃうんだよな。

 スポーツをやっている人間なら、神堂の身体能力のバケモン具合が。


 マジでこいつが、野球やってなくて良かったって思っちゃったもんな。

 もし、神堂が野球をやっていて、同じポジション……ピッチャーだったら、恐らくエースは神堂で、俺は控えピッチャー……というもしもの世界が簡単に想像出来たし。


 「……? ねえ? 神堂くんが凄いのは分かったけど、天ケ浦さんに仁が勝てない理由って何?」


 麗翠が不思議そうに聞いてくる。

 あれ? 天ケ浦が神堂以上の評価をされていることを知らないのか?

 ……あくまでイーリスからの評価だけど。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは117話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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