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女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神(バカ)に召喚された七組の勇者パーティー~  作者: 石藤 真悟
無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)
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自信喪失、メンタル崩壊

 長くなるから、飲み物でも飲みながら色々話そう。

 麗翠(れみ)にそう提案されたので、俺はリビング内のソファーに座っていた。

 

 しっかし、リビングにある家具……みんな高級家具じゃねえのか?

 流石、勇者パーティーが住んでいた家だ。


 「お待たせ」

 「おお、ありがとう」


 十分ほど待っていると、ソファーの前のテーブルに麗翠が飲み物を出してくれた。

 お、これは……紅茶か。

 良い香りだな。


 俺は紅茶に目がない。

 元の世界でも、こっちの世界でも、紅茶はよく飲んでいた。

 だが、一番美味かったのは麗翠が入れてくれた紅茶だ。


 久し振り過ぎて我慢出来ん。

 遠慮なく頂こう。


 「(じん)、紅茶好きだったよね」

 「……うん、美味しいよ。こっちの世界で、他の人が入れた紅茶も飲んだけど、やっぱ麗翠が入れた紅茶が一番だな」

 「……! 良かった……」


 ようやく、麗翠に笑顔が戻った。

 やっぱり、麗翠は笑っている時が一番可愛い。


 「……どうした? 立ってないで、隣座れよ」

 「え!? ……う、うん」


 何故かは分からないが、驚きながら麗翠は俺の隣へと座る。

 ……ん? 麗翠の顔が赤くなっている気がする。

 まさか、一緒のソファーに座るのが恥ずかしいのか?


 ……そんなわけ無いか。

 麗翠も二十歳を超えた立派な女性。

 思春期の中学生じゃあるまいし、こんな事で恥ずかしがるはずはない。

 本題に入ろう。


 「……で、何で麗翠はアルレイユ公国(ここ)から逃げ出さないんだ?」


 単刀直入に聞いた。

 メンタルがやられ……いや崩壊しつつあるのに、麗翠が逃げ出さない理由が分からない。


 「……一番の理由は、私の女神の剣(イーリス・ブレイド)女神の緑(イーリス・グリーン)かな」 


 麗翠はそう言うと、俺に自分の女神の剣である、女神の緑を見せる。

 他の女神の剣と同じような片手剣タイプの剣だ。


 女神の緑ってことは、麗翠は四番目の勇者。

 そうなると、女神の青(イーリス・ブルー)を持つ五番目の勇者は麗蒼(れあ)ってことになるな。

 

 でも、おかしい……それだと。

 何で、麗翠に愛想を尽かした佐々木と竹内は麗蒼の元へと行ったんだ?

 イーリスの評価だと麗蒼より麗翠の方が上って評価なんだけど?

 ……まあ、あくまでイーリスの評価だから全く参考にならないが。


 「女神の緑が何で逃げられない理由になる?」

 「……女神の緑の能力が、回復、能力強化、防御、転移なの」

 「……え? 普通に良い能力じゃん」


 訳が分かんねえ。

 それが本当だったら普通の状態に戻す能力の女神の藍(イーリス・インディゴ)や毒を操る能力の女神の紫(イーリス・パープル)よりも全然使い勝手が良いのに。

 少なくとも俺には麗翠が無能扱いされる意味も分からない。


 「そっか……仁はそう言ってくれるんだね。……ありがとう。でもね……攻撃面はからっきし。だから、リスクの伴う攻撃はいっつもパーティーメンバー頼み。私は後方でサポートしているだけ。それが不満だった五十嵐(いがらし)さんがまず最初にパーティーを抜けたの」

 「竹内(たけうち)佐々木(ささき)が愛想を尽かしたのも同じ理由か?」

 「うん……何で自分達だけ危険な目に遭わなきゃいけないんだって……言われるようになってさ。最後は、勇者ってパーティーメンバーを引っ張る存在じゃないのか? って、言って二人は……いなくなっちゃった。それからかな……私がアルレイユ公国(ここ)で無能って呼ばれ始めたのは」


 麗翠は自嘲気味に笑う。


 なるほどな……自称サバサバ系のワガママ女である五十嵐はともかく、竹内と佐々木、ニ人の言い分は分からなくはない。

 

 「転移で他の国に逃げたとしても、私の代わりに攻撃してくれる人がいなければ私はどうにもならない。だから、逃げられなかったの。……ううん。どうせ逃げたって、逃げた先の国でまた無能の烙印を押されるだけ」


 麗翠はそう話すと項垂れた。

 ……完全に自信を無くしてんな。


 よし、決めた。


 「……じゃあ、俺と二人なら心置きなく逃げられるな麗翠。俺と一緒にさっさとこんな国出ようぜ?」

 「えっ……え? ええっ!?」


 何故か麗翠は顔を真っ赤にしながら驚いている。

 代わりに攻撃してくれる人がいれば良いんだろ?

 なら、俺が最適だ。

 大抵の奴らよりは強いんだから。

 

 「麗翠の元パーティーメンバー三人よりも俺一人の方が強いし、問題無いだろ」

 「で……でも……」

 「安心しろ。俺は麗翠の事を無能なんて言わないし、後方でサポートしているだけとも言わない」

 「それは……分かってる……仁が……そんな事を言うわけが無いって分かってるけど……」


 問題は解決しているはずなのに、麗翠は俺の提案を了承せず、戸惑っている。


 「ね、ねえ……仁」

 「何だ? ……って、また泣いてる!?」

 「怖いの……折角……また……この世界で……会えたのに……仁もあの三人のように私に愛想を尽かして……また私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって……不安で……不安でしょうがないの」

 「……俺はそんな事しないって」

 「……本当? 私……仁にまで見捨てられたら……流石に自殺するかも……」

 「おいおい……怖い事言うなよ……」


 麗翠のメンタルがとんでもない事になってるな……。

 ……俺がいない間は麗翠にセトロベイーナ王国を守って貰うって無理だろこれ。

 見捨てられたと勘違いされて自殺されても困る。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは116話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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