表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神(バカ)に召喚された七組の勇者パーティー~  作者: 石藤 真悟
無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)
74/129

老害君主

 アルレイユ公国に着いて、二日。

 魔王軍七幹部のフィスフェレムを討伐した甲斐もあってか、この国のトップであるアルレイユ家に仕える人間に名を知られていたため、あっさり君主のジェイルド・アルレイユに会うことが出来たのだが……。


 今の俺はアルレイユ公国を救おうと、急いでセトロベイーナを出た三日前の自分を殴ってやりたいと思うぐらいには後悔していた。

 ……アルレイユ公国の悪い噂は本当だったか。

 さっさとネグレリア倒して、この国にいる勇者パーティーを引き抜いて、とっととこんな国からおさらばしたい。


 だが、全て上手くいく訳も無く……。


 「あの……君主様? ネグレリアを倒さなくて良いから、アルレイユ公国の騎士の一人として君主様を守る人間となれというのは、一体どういう意味なのでしょうか?」


 薄々勘付いてはいた。

 アルレイユ公国の西側は俺の予想通り壊滅状態だった。

 魔王軍幹部であるネグレリアの操る、ネグレリア・ワームの餌食となった人達が、動く死体と化していて、生き残った人達を喰らうために彷徨っているわ、西側の人達の死体を燃やしたのか白骨がそこら中に転がっているわ、建物は当たり前のように壊されていて瓦礫だらけ。

 雨風を凌ぐ場所すら無い。

 その上、強烈な悪臭。


 だが、もっと酷いのは民を守るはずのアルレイユの騎士達が、領主である貴族の家だけを守っていて、誰一人として動く死体達を何とかしようともしていない上に、領主様しか守りませんといったスタンスだった事だ。


 アルレイユ公国の西側は奴隷と下級国民が住んでいて、とても貧しい。

 逆に東側は中級国民以上と君主を始めとした貴族達が住んでいるので、とても豊か。


 だから、西側に住む人間など守る意味が無い。

 騎士は、助けないのかと疑問を投げかけた俺にそう吐き捨てた。


 更に、西側に派遣されているのは騎士の中でも、実力の無い落ちこぼればかりだという。

 助けようとしても俺達じゃ助けられないぜ? と開き直られた時にはマジで呆れたね。


 「勇者の癖に賢くないのう? キサマも見たじゃろ? 西側には、落ちこぼれ……そして、人ですらない、ワシらの道具しか無かったじゃろ? 道具は壊れたらまた調達すればよい」

 「……ですが、君主様。西側にも貴族の方はいらっしゃいますし、国民もまだ、必死に生きています。別にアルレイユ騎士隊の力など借りなくとも、俺ならネグレリアを討伐出来ます。だから……俺に西側を救わせて下さい!」


 奴隷の人達を道具と言い切り、壊れたらまた調達すれば良いとかほざいた、このジジイには正直今すぐブチ切れたい。

 だが、何とか抑えて西側を救わせてくれと頼む。

 ……そもそも、この国の西側を救うのに何故、この老害……じゃなかった……老いぼれ……でもなくて、君主様の許可が必要なのか俺には分からないが。


 しかし、ジジイは首を縦には振らない。


 「西側に住む貴族は、全員成り上がりで、ワシらの血を引いてはおらん。それに、さっきも言ったが、西側の人間は落ちこぼれじゃ。騎士も国民も全てじゃ。じゃから、救う必要は無い」

 「……この国の西側が、あんな惨状になっているせいで、西の隣国、セトロベイーナ王国に被害が出ているとしてもですか? ネグレリアの操るネグレリア・ワームが、国境付近の街であるジェノニアにまで現れて、甚大な被害をもたらしたのですが?」


 マジでこのジジイボケてるんじゃねえか?

 自分の国民や奴隷を見捨てるのはこのジジイの勝手かもしれねえが、他国に迷惑が掛かっているって気づいてねえのかよ?

 セトロベイーナの女王様からの親書にも書いてあったはずだ。

 つーかその親書を読んでたろ! ほんの数分前まで!


 「セトロベイーナぁ? あんな小娘が女王の国など、どうなろうとワシらには関係の無い話じゃな。それに今のセトロベイーナは、フィスフェレムにやられてボロボロじゃ。奴らに手を貸しても何の得もワシらにはない。じゃから、悪い事は言わん、ワシの騎士となれ。ボロボロとなった王国よりも、豊かな公国の方がマシとは思わんか?」

 「…………」


 呆れて何も言えなくなった。

 ……多分、今のセトロベイーナ王国に仕える方が、ボケ老人に仕えるよりはマシだと思うんだけど。


 「おお、そうじゃ! 良い事を思い付いたわい! キサマとあの無能を入れ替えれば良いのじゃ! お主でよい、すぐに無能を呼ぶのじゃ!」

 「はっ」


 ジジイは何か思い付いたのか、騎士に命令して誰かを呼びに行かせた。


 無能……?

 無能なら俺の目の前にいるジジイの事では……? と言いたい気分なんだが?

 ……まあ、一応聞いとくか。


 「無知ですいません。君主様が呼ぶ無能とは一体誰の事ですか?」

 「構わん構わん。何の功績も残しておらん無能じゃ。キサマが知らんのも無理はない。女神の剣(イーリス・ブレイド)を持っているのが、不思議なぐらいの無能じゃからな」

 「!?」


 ジジイの言葉に俺は驚くしかなかった。

 は……? アルレイユ公国の勇者が無能?

 しかも、側近や騎士達まで頷いている。

 

 確かにケントとかいう役立たずはいた。

 だが、それはアイツが一番最弱の女神の紫(イーリス・パープル)を持つ人間で、努力もしない奴だったから。


 赤が天ケ浦(あまがうら)、橙が岸田(きしだ)、黄が神堂(しんどう)、藍が大関(おおぜき)だった訳だし、残るは四番目の緑か五番目の青の女神の剣を持つ人間しかいないはず……。


 神堂以下、大関以上の人間。

 そいつが無能とか予想外だぞ。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは114話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ