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女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神(バカ)に召喚された七組の勇者パーティー~  作者: 石藤 真悟
ぽっちゃり女勇者と後の三人誰だよ……の勇者パーティー(壊滅状態)
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動く死体

 ジェノニアへ向かう為に森へ入って十分ほど経ったが、全く人の気配は無い。

 フィスフェレムに操られているであろうセトロベイーナ軍の人間やジェノニアの住民達を森の中に潜ませて、俺達みたいな侵入者を襲わせたりするのだろうと警戒していたので、案外スムーズに進めて拍子抜けしている。


 だが、気になる事があった。

 物凄く森の中が臭いし、それに加えてやけにハエなどが飛んでいる。

 森の中だから虫がいるのは分かるが、それにしてもさっきからブンブンブンブンうるせえ。


 「何かは分からないですけど……何かが腐った臭いがしませんか?」

 「あー……多分ですけど、人の死体の臭いですね。人の死臭って結構キツいんですよ。アタシは兵士なので慣れていますけど、勇者様はもしかして初めて嗅ぎました?」

 「ああ……いや、言われてみればそんな感じの臭いですね。これ程強烈なのは初めてですが」


 リベッネの話を聞いて俺は腑に落ちた。

 ファウンテンの街がサタンに襲われて、百人以上の人間が死んだ時もこんな感じの臭いがしていた気がしたから。

 だが、あの時の比じゃ無いぐらいの強烈な臭いに加え吐き気のする腐敗臭が凄い。


 時間が経っているせいで、恐らく死体が腐っているんだろう。

 それに加えて街が壊滅状態だから、死体を燃やす人間もいないから、そこら辺に転がっていたりして……って転がっていたよ。

 腐った人の死体が。

 グロ過ぎる……骨が見えちゃってるし。


 「うっ……勇者様大丈夫ですか? 街に近付けば近付くほど臭いが強くなってきていましたが、こんな腐敗臭はアタシも始めてです。それに、臭いだけじゃなくて死体も増えてきましたね。しかも、損傷が激し過ぎますし何より死体の腐敗も酷いですね」

 「ジェノニアの住民ですかね? ここら辺で死んでいるのは。死体が装備を身に着けていない辺り、ジェノニアから逃げようとした所をフィスフェレムに操られた人間に森の中で殺されてしまい、そのまま放置されたから動物とかに食べられたりとかして、損傷が激しかったり腐っているのかも」

 「だとすると、セトロベイーナ軍の人間の死体がまだ一人も見つかっていないのが不気味ですね。あ、もう少しでジェノニアへ着きます」


 リベッネはそんな事を言いながら、振り向く事なく、東へと進む歩みを止めない。

 セトロベイーナ軍最強はアタシですからと自称するだけはある。

 メンタルがそこら辺の人間より良い意味でぶっ壊れてやがる。


 正直、俺はまだ魔王軍の幹部とやり合うという事を少し甘く考えていたのかもしれん。

 想像以上の惨状を目にして、軽く衝撃を受けている。

 壊滅状態とは聞いていたとはいえ、流石にここまで死体がゴロゴロ転がっているなんて想像していなかった。

 今一度気を引き締めて、周囲に警戒を強めながら、リベッネについて行く。


 それからまた歩いて十分ほど経つと、ジェノニアの街が見え始めてきた。

 街が見え始めているという事は、当然もう少しで森を抜けられるので、木が少なくなっていくのだが、木が少なくなっていくのと引き換えにどんどん転がっている死体が増えている。


 「えっ!? す、すいません! 勇者様!」

 「ど、どうしました!?」


 突然リベッネが困惑しだし、立ち止まる。

 死体にも強烈な腐敗臭にも動じなかったリベッネが困惑するって何があったんだ?

 もう森を抜ける寸前なのに。

 立ち止まったリベッネの前に行き、その先に何があるか確かめる。


 「な、何だありゃ……」


 俺もリベッネと同じ様に困惑した。

 普通じゃ有り得ない事が起きているから。


 「死、死体が動いている? え、フィスフェレムは死んだ人間も操れるんですか? 生きている人間を誘惑の力で操るのがフィスフェレムの力のはずじゃ?」 

 「アタシもそう聞いていました! どういう事!? とりあえず近付いて来るので始末しないと! どうせ死んでますし!」


 そう言うとリベッネは、剣を抜く。

 だが、あの動く死体達とやり合うのは得策じゃないとすぐに俺は気付く。

 また知らない間に何かの女神の加護を手に入れたのか、最近の俺は視力が格段に良くなったので、近付いて来る少数の動く死体の後ろを見てみた訳だが、大量にいるんだけど。

 動く死体が。


 明らかに操られた生きている人間じゃない。

 身体は腐敗していて、とてもじゃないが同じ人間とは思えない。

 生きた人間を操っていると言うより、死体を無理矢理動かしていると言った方が正しい気がする。


 「エクスチェンジ! 女神の藍(イーリス・インディゴ)! ディサイド!」


 ディサイドは、生きた人間の異常状態などを無かった事にする魔法だ。

 ならば、死体にとって今は異常状態。

 本来なら動いてはいけないのだから。

 死体に効くかどうかは分からないが、ディサイドが効けば、動かなくなるはず。

 もし効かなかったら、一旦退く。


 リベッネは戦うとか言いそうだけど、大量の動く死体という分からない相手に二人だけで突っ込むのは危険だ。

 リベッネを引き摺ってでも、俺は退くぞ。


 それに、森の中にあった死体は動いていなかった。

 今動いている死体達は、ジェノニアの街から来ている。

 俺はさっき森の中までしかディサイドを掛けていない。

 もしかしたらだが、ディサイドが効いていたから森の中の死体は、動かないという死体の通常状態に戻ったのかもしれない。

 そしてどうやら俺の予想は当たったみたいだ。


 「凄い勇者様! 死体がバンバン倒れていく!」

 「ふー……良かった。女神の藍を貰っといて正解でしたよ。大関(おおぜき)に感謝しないと」


 ディサイドのお陰で、異常状態が無くなった為、動く死体達はバタバタ倒れていく。

 だが、これで終わりじゃない。

 あくまで、ディサイドは異常状態を無くすだけの魔法なので攻撃魔法じゃない。

 その証拠に。


 倒れて動かなくなった死体から、謎の虫がウジャウジャ出て来た。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは113話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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