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女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神(バカ)に召喚された七組の勇者パーティー~  作者: 石藤 真悟
ぽっちゃり女勇者と後の三人誰だよ……の勇者パーティー(壊滅状態)
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最東端の街へ

 「ありがとうございます。まさか、セトロベイーナ王家が使用している馬車でフィスフェレムのいる街に向かわせて貰えるなんて」

 「勇者様がお礼を言う必要なんて無いんですよ? アタシ達は助けて貰う側なんですから」


 女王様の計らいで、フィスフェレムのいるセトロベイーナ最東端の街、ジェノニアへすぐに到着出来る様に、セトロベイーナ王家御用達の馬車に俺とリベッネは乗せて貰えていた。


 ちなみにサンドラさんとメリサさんを連れて行くのは、やっぱりボルチオール王国へ借りを作る事になるので、フィスフェレム討伐には同行させず、宮殿内で寺原(てらはら)の監視をするように頼んだ。

 信用出来ねえからな、寺原。


 しかし、この馬車……二人だけが乗るには、広過ぎる客車だ。

 馬車の馬もサラブレッド、更には手練の御者が馬の手綱を引いている為、メチャクチャ速い速度で走っているのに、少しも揺れない。

 しかも、移動中に食べて下さいと客車の中に用意されていた食べ物も飲み物も高級品と至れり尽くせりのサービスだ。


 「美味しいですか? 勇者様?」

 「……美味しいです。食べ過ぎないようにしないと……」


 これからフィスフェレムに挑むんだ。

 満腹で動けなくて、フィスフェレムに負けて死ぬという事だけは絶対に避けたい。

 なので菓子とフルーツジュースだけ口にする。


 「フィスフェレムのいる街、ジェノニアでしたっけ? そこまでは何時間掛かるんですか?」

 「……あー、ジェノニアまでは馬車で向かえません。あそこまで行ったら御者が多分死にます。馬車で向かえるのはジェノニアの手前にある森までなので、そこまでなら二時間ですかね」

 「その森からジェノニアまでは?」

 「……本来なら二十分。……ですが、フィスフェレムに操られている人間が森に潜んでいますからねえ……」


 リベッネは苦々しい顔をしながら答える。

 森に、フィスフェレムに操られているセトロベイーナ軍の人間やジェノニアの住民が潜んでいるのだから、リベッネにとってはキツいだろうな。

 だが、俺は女神の加護を持つ人間以外から攻撃されても死ぬ事は無いから問題は無い。

 それにだ。


 「大丈夫ですよ。森に入る前に女神の藍(イーリス・インディゴ)を使ってフィスフェレムに操られている人達を正気に戻せば良いんですから」

 「いやいやアタシは期待してませんよ。勇者オーゼキが持っていた女神の剣(イーリス・ブレイド)になんか」

 「……これが使えなかったら、俺達セトロベイーナ軍の人間とジェノニアの住民から攻撃受けるんですけど?」

 「アルラギア帝国の勇者パーティーよりはマシですよ。それにセトロベイーナ軍で最強なのはアタシですから」


 リベッネはそう話しつつ、自分の剣の手入れをし始めた。

 ……そういや、リベッネは大関を始めとしたセトロベイーナの勇者パーティーの事をずっと評価していなかったな。

 だったらせめて、サンドラさんぐらいは実力あると良いんだけどな。


 そんな事を考えている俺達を乗せながら馬車は猛スピードで東へと進む。




 ◇




 「すみません……これ以上は進めません」


 セトロベイーナ最東端の街、ジェノニア手前の森に着いた所で俺とリベッネは馬車から降ろされた。

 御者は申し訳無さそうにしてはいるが、この森からすぐに離れたかったのか、俺達を降ろすとさっさと来た道を猛スピードで引き返して行った。


 「怖いのは分かるけど……あからさま過ぎでしょ」

 「死にたくないんですよ。……エクスチェンジ。女神の藍。ディサイド」


 御者に不快感を表すリベッネを諌めながら、女神の藍に切り替えた状態の女神の黒(イーリス・ブラック)を森の方へ向ける。

 森の中に、フィスフェレムに操られた人間が潜んでいて、攻撃されたらリベッネを守りつつ行かないといけないので、試しに女神の藍の力の一つ、誘惑などの異常状態などを全て無かった事にする(大関の説明だと)魔法ディサイドを使ってみる。


 「これで、フィスフェレムの誘惑を無効化出来ていれば、操られている人達を正気に戻せるんですけどね」

 「あんまり期待せずに行きましょう。アタシも準備は大丈夫ですよ」

 「それじゃ行きましょうか」


 リベッネが道を分かるみたいなので、案内は任せて俺は周囲の警戒に集中し森へと入る。


 「あーあー、人の出入りが無いから草が伸び放題だよ。この木も邪魔」


 俺達の行き先を阻む雑草や木などを、持っている剣で斬りまくりながら、文句を言いつつリベッネは進んで行く。

 俺はそのリベッネの後ろを付いて行く。


 「そういえば、勇者様はフィスフェレムをどうやって倒すつもりなんですか?」


 リベッネは振り返る事なく、東へと進みながら俺に質問をする。

 また難しい質問だな。

 即答した方が自信あるんだろうなと、思わせられるけど、適当に答えるのもな。

 少し考えよう。


 リベッネや女王様、そしてセトロベイーナ軍の人間の話を聞いている限りだと、大関が負けたのは、攻撃力不足、そして決定力不足に欠けていたからだろうな。

 戦いが長期戦になった事で、仲間である騎士サトーと剣士イトーが持っている女神の加護じゃフィスフェレムの誘惑を防ぎきれなくなった結果、二人はフィスフェレムに操られて敵になってしまい、そして大関はその二人から軍の人間を庇ってボコボコにされたんだ。


 ……回復術士のスズキは全く話が出て来ない辺り、もしかしてとっくに死んでいるんだろうか?

 ……いや、それならスズキが持っている女神の加護が俺の物になるはずだから、俺も回復魔法が使える様になっているはず。


 試しに、魔法が沢山書かれている魔導書を借りて読んでみて、回復魔法を詠唱してみたけど、全く使える気配が無い。

 更に言えば、攻撃魔法も威力がショボ過ぎて全く使えない。

 だから、回復術士のスズキは死んでいないし、もっと言えば、他の勇者パーティーも攻撃魔法を使える人間は死んでいないって事だ。


 となると、こう答えるしか無いよな。


 「まあ、女神の剣三本あるんで何とかなるんじゃないですか? フィスフェレムは魔王軍七幹部の中で最弱らしいですし、女神曰く」

 「実質二本ですけどね」

 「大関の女神の剣も役に立ちますって……多分」


 大関のフォローをしたかったが、現にフィスフェレムに負けている為、リベッネの実質二本という言葉に強く反論出来なかった。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは113話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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