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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
第四章 裏切りの暗黒騎士編

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第92話 このクソアマ

 










「ぎゃははははははははっ!!」


 剣を振り回しながら狂ったように笑う男。

 すっごい分かりやすい笑い方。


 明らかにやばいもんな。

 ぎゃはははって……どんな笑い方したらそんな声が出るのだろうか?


「うわぁ。あからさまにやばい奴だな。よし、暗黒騎士。お前の出番だぞ」


 フラウがバカなことをのたまう。

 こいつは本当に自分の立場というものを理解していないらしい。


 俺はやれやれと首を横に振って、厳かな声で命令する。


【大将軍として命じる。四天王フラウ、殺されてこい】

「命令がおかしい! しかも、こんな時だけ大将軍の地位を嬉々として使いやがって……!」


 血走った目で睨みつけられる。

 お前もあそこで暴れている奴と同じくらい怖い。


「あぁ、とんでもねえ力だ。これが……これが魔剣の力か!」


 男は歓喜の声を上げながら、自分の持っている剣を見る。

 その剣は、通常の鉄色ではなく、どす黒く悍ましい。


 明らかにやばい剣である。

 あいつ、笑い方もそうだけど色々と分かりやすいな。


 あー、ルーナの言っていた奴か。

 ちくしょう、鉢合わせしてしまうとは……!


 今回のことは一切かかわらない感じでいこうと思っていたのに……!


「力がみなぎってくるぜぇ!!」


 男はウキウキだ。

 まあ、自分を鍛えずとも強大な力を手に入れられるのが魔剣だ。


 そりゃあ、いきなりそんなものをもらえたら、調子に乗るのも当然だろう。

 だが、一つ気がかりが……。


【そういや、魔剣って特殊な力を使える代わりに……】

「ああ。だいたい、代償が必要となる。基本的に寿命とか生命力とか、そういうのだな」


 俺の問いかけにフラウが答える。

 じゃあ、あいつピエロじゃん……。


 今はこうしてウキウキだけど、すぐに生命力を絞られて殺されるじゃん……。

 剣に殺される人生って、何だったんだろうな。


「おらぁぁぁっ! 今の俺には、これだけの力が……堪らねえ!!」


 魔剣を振ると、斬撃が出て市場の出店を破壊する。

 そう、破壊したのだ。


【あー……あれって……】

「ああ。ルーナが必死に立て直した市場だな。また、経済力が落ちるな」


 ピエロ、死亡確定。

 俺は心の中で彼に合掌する。


 あれは、ルーナが魔族を繁栄させるために、一度人間たちにボロボロにされてしまったものを時間と手間をかけて立て直したものである。

 そもそも、魔剣を持って治安悪化させていた連中に対して非常にシビアな目を向けていたルーナ。


 それに加えて、必死に復興した魔都を再び貶めようというのである。

 こいつ、絶対にロクな殺され方しねえな。


 まあ、俺関係ないからどうでもいいけど。


「で、どうする?」


 俺の顔を窺うように見上げてくるフラウ。

 殊勝な聞き方をしているが、おそらく自分の考えていることと違う返答が来たら、さっさと自分だけで行動するだろう。


 フラウはそういう奴だ。

 そんな彼女に目を向けて……。


【一刻も早くここから誰にもばれないようにフェードアウトしよう】

「異論なし」


 どうやら、俺とフラウの考えは一致したらしい。

 奇遇だな。


 こいつらも魔族だしな。

 それなりに戦えるし、無理なら逃げるだろう。


 俺たちは無理だから、逃げるのである。

 じゃ、そういうことで……。


「おいおい、お前は逃げなくてもいいのかぁ!?」


 背を向けていた俺。

 魔剣を持つ男が声をかけたのは、いまだにこの場に残って突っ立っているユリアだった。


 な、なにしてんねん!


「……思っていたよりも。もう少し吸い取らせていた方がよかったか? だが、あまりやると低俗な魔族だとすぐに死ぬし……」


 あの子、何ブツブツ言ってんの!?

 さっさと逃げろや!


 自分の世界に入り込んでしまっている。

 これだから研究者は……!


 こいつ以外の研究者は知らないけれども!


「何をごちゃごちゃ言ってんだあ!!」


 自分が無視されていらだったのだろう。

 男は魔剣を振りかざし、ユリアに攻撃を仕掛ける。


 くそっ……!

 心情的には、まったくもって助けたくない。


 さっさと背を向けて逃げ出したい!

 だが、この鎧の解析は微塵も進んでいないとはいえ、取り掛かっているのはユリアである。


 そして、彼女以外にはいない。

 またそれが一から研究し直すことになると……今でも分かっていないのに、どれほど時間がかかるか分からない。


 そのことを考えると、あいつを失うのはあまりにも痛い!


【(鎧さん!)】


 俺の呼びかけに答え、鎧さんが身体を動かす。

 ユリアに向かって振りかざしていた魔剣を受け止め、彼女の前に立ちはだかる。


 攻撃おもぉい!

 腕がビリビリしびれる!


 魔剣は身体能力も強化するのだろうか?

 こいつの身体、生き残ったとしてもボロボロになりそうだな。


「あぁ? なんだ、テメェ?」

【貴様を殺す男だ】


 訝し気に睨みつけてくる男に、俺はそう答えるのであった。

 しまった。調子に乗ってしまった。











 ◆



 ジロジロと俺を睨みつけてくる男。

 チンピラですね。


 俺はチンピラにもビビって目を合わせないほどの男だ。


「テメェ……ああ、そうだ。最近魔王に取り立てられた暗黒騎士だな?」


 どうやら、彼は俺のことを知っているらしい。

 まあ、悪い意味で有名だからな。


 とはいえ、そんな最近ってわけじゃないと思うんだけど。

 嫌々とはいえ、魔族に貢献してやった俺に何という言葉。


 万死に値する。


「くははっ! じゃあ、テメエを殺せば、俺が四天王……いや、大将軍ってわけだ! いいなあ、分かりやすい!」


 歓喜の笑い声をあげる男。

 あー……確かに、魔族は力を重んじる。


 上の者を倒せば、注目されるのは事実だろう。

 だが、市場を破壊している時点で、お前がルーナに許されるとは思えないんだけど。


 ブチ切れたルーナに謀殺されそう。

 とはいえ、これほど熱意ある若者だ。


 老兵はさっさと去るべきだろう。

 よし、君を大将軍に任ずる!


 ちなみに、もう止めたいとかやっぱり止めたとかはなしだからな。

 うんうん。


 ……別に、俺が大将軍を辞めたいとかじゃないから。

 なりたいって言う人がいるんだったら、仕方なく譲ってあげる感じだから。


 ここで、フラウがなぜかいい笑顔を浮かべながら一歩前に出る。

 下がっとけ、メス豚。


「ふっ……。私を御しきれるのは暗黒騎士のみ。お前など、私は認めんよ」


 邪魔しやがったああ!!

 俺の思惑を察知して、譲ることをそもそも叩き潰してきやがった!


 なんて女だ……!


「あぁ!?」

「まあ、暗黒騎士を倒せるのであれば、検討の余地があるがな」


 しかも、俺と戦わせるように誘導してやがる!

 なんて女だ……。


 こいつ、女騎士だったんだぜ?

 今では人類の仇である魔王軍四天王だけど。


 どんな経歴だよ、こいつ。

 ほとんど俺のせいだけど。


【ふっ。私の前にまずはフラウを倒すべきだな。私の忠犬だ】

「誰が忠犬だ!? 私は必要に迫られれば雌犬になるだけだ!」


 大声で何言ってんの、こいつ?

 しかし、これで俺ではなくフラウにターゲッティングすることができたはず!


 俺が戦うんじゃない。

 フラウが戦ってボコボコにされるのだ。


「あー? てか、お前を殺してそいつを俺の好き勝手にすればいいだけの話じゃねえか」


 クソ!

 誘導には引っかからないか!


 魔剣の力に目をくらませるようなバカのくせに、どうしてこういうときはうまく騙されてくれないんだ!

 この無能!


「暗黒騎士に勝てたら、何でもするぞ」

【お前、普通それは俺に言うべきことじゃないか?】


 敵に何言ってんだこのクソアマ。

 士気を上げるようなこと言ってんじゃねえぞ!


「おお、いいねぇ! じゃあ、俺と遊ぼうぜ、暗黒騎士ぃ!」


 バカである男は、魔剣を振りかざして俺に襲い掛かるのであった。

 ひぇっ!




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