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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
第三章 血みどろ勇者編

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第86話 うひょー

 










【貴様も外道だな】


 ルーナと対面し、思わず口走ってしまう。

 散歩していたら遭遇した人間たちとの戦いも終わり、今は魔王城のルーナの私室だ。


 ……なんで散歩していただけで殺し合いをしていたんだろう。

 まったく分からん。


 そんな俺の言葉を、ルーナは無表情で受け止める。


「あら。まさか、暗黒騎士様からそんな直接的な誉め言葉をいただけるなんて、思ってもいませんでしたわ」


 誉め言葉……?

 おかしいな。


 思いきり皮肉を言ったような気がするんだけど……。


「ところで、どうでした? 彼女、役に立ちましたか?」


 そう言ってルーナが目線を向ける先には、死んでいたのにアンデッドとしてよみがえった勇者の姿があった。

 どうしてここについてきているんですかねぇ……。


 役だったも何も、人間を殺したのもほぼこいつだし。

 マジで寝返ったの?


【……私たちがここにいることが、すべてを物語っているだろう】

「そうですわね。そもそも、暗黒騎士様に援軍は必要ないのは分かっていましたけれど」


 ……そういえば、散歩を勧めてきたのはルーナだったな。

 まさか、ここまで完全に予想していたわけではないだろうな?


 アンデッドとなった勇者の試運転を兼ねて、みたいな。

 ……ははっ、ないない。


 あったとしたら、もうルーナが化物にしか見えない。


【まさか、勇者をアンデッドにして支配下に置くとは……】


 大人しく黙っている勇者を、もう一度見てしまう。

 人類からすれば、悪夢以外のなにものでもないだろう。


 天敵である魔族に対抗する最大の戦力が、魔族の手に堕ちたのだから。

 魔族からすれば、ルーナが人類に寝返って人類絶対繁栄させるマシーンになったようなものだ。


 ……滅ぼされますね。


「私は無理やり引き戻され、アンデッドにさせられていますが、あなたに従うつもりは毛頭ありませんよ、魔王」

「その意思決定権は、あなたにはありませんわ。わたくしが決めることです」

「いいえ。私のことは、私が決めます。本来であれば、私が殺さなければいけない相手があなたです。そんなあなたの言うことなど、聞きません」


 なんか勇者と魔王のバトルが始まっているぅ!

 物語としては王道だけど、ここでやり合わないで!


 せめて、俺がいなくなってからして!

 絶対零度の視線が交わされる。


 そもそも、二人ともお互いのことはよく思っていないのだろう。

 間に挟まれている俺の命がやばい。


「うひょー、修羅場だぞ、暗黒騎士。自分に降りかかりそうにない喧嘩って、見ていて楽しいよな」


 何だこの下種……。

 ワクワクした様子で耳打ちしてくるフラウに、俺はドン引きする。


 こいつ、マジでなんで女騎士なんてしていたの?

 誰よりも魔王軍四天王らしいんだけど。


「それは困りますわね。もう一度死んでみますか? あなたをアンデッドにしたのはわたくし。なら、それを解除して再び殺すこともできるのですけど?」

「その陳腐な脅しは、魔王らしいですね。結構ですよ、殺していただいて。すでに、私は一度死んだ身。意地汚く生き残ろうとは思いません」


 なんかお前に執着していそうだったあの男は発狂するんじゃないか?

 見当違いな怒りを俺に向けてこなければ、別に死んでもらって構わないけど。


 そうそう。

 あの俺に強い敵意を向けていた男は、勇者の幼なじみらしい。


 あいつは殺されていなかったな。

 なんかこっちに引っ付いてきた。


 というか、勇者に引っ付いてきた感じかな、あれは。

 やっぱ好きなんすねぇ……。


「残念ですわね。もし、従ってもらえるのであれば……」


 何か勇者に対価を支払って従ってもらおうとしているようだが、無理だろ。

 こいつ、めちゃくちゃ堅物っぽいし。


 まあ、勇者が俺から離れてくれるのであれば、わざわざ引き留めることはない。

 怖いしな。


 ルーナは無表情で、しかしどこかで勝利を確信した雰囲気を醸し出していた。


「暗黒騎士様直属の部下として、動いてもらおうと思っていましたのに」

「!?」

「!?」

【!?】


 ルーナの言葉に戦慄が走る。

 勇者も、フラウも、そして俺も。


 その戦慄の理由は、勇者は分からないが、俺は驚愕。

 そして、フラウは面白そうなことになったという歓喜である。


 このクソ女!


【……かつて殺しあった私の下につくのは、勇者にとって屈辱以外のなにものでもないだろう。フラウの下につけるのが得策だ】

「待て、暗黒騎士。私に不発弾を懐に入れろと言うのか?」


 うん。

 突っかかってくるフラウをいなす。


 お前、そんな風に思っている奴を俺に押し付けて笑っていたのか。

 ふっ、勇者カウンターだ。


「それは、ご本人の意見を聞くべきでしょう。どうですか?」


 断れ断れ断れ断れ断れ!!


「……べ、別に暗黒騎士と一緒にいたいというわけではありませんが、許容しましょう。暗黒騎士の近くにいることで、彼の暴挙を止めることができますしね。はい、構いません」


 構うのだが?

 そっぽを向きつつ、しかしちらちらとこちらを見てくる勇者に憎悪を向ける。


 そんな目に気づかず、彼女はじっと俺を見据える。


「私が、暗黒騎士をまともな道に歩ませてみせます」


 最初からずっとまともな道を歩いているんだが?











 ◆



 未来の話。

 歴史書では、勇者が魔王軍の手に堕ちたことは、人類最大の失態にして大事件として記されている。


 今日まで語られる最強にして最悪の魔族、暗黒騎士に殺された勇者テレシアは、アンデッドとしてよみがえり、魔王軍の支配下に入った。

 これは、魔族の恐ろしさとおぞましさを伝え、また勇者という特記戦力でも一人では魔族に抗えないことを示していた。


 このことを教訓に、勇者は多くの仲間と共に行動するようになる。

 その人類にとって大きな教訓を、衝撃と損害を持って教えた勇者テレシアのことを、人々は魔族に堕ちた勇者として、【魔勇者】と畏怖を込めて呼ぶようになった。




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