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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
第二章 ドラゴンスレイヤー編

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第51話 聞かないといけない感じ?

 










 ドラゴンが救ってくれと懇願してきた……?

 最強の魔物がこれだけ集まって、どうにもできない事態ということかな?


 うんうん、なるほどなるほど……。


【断る】


 俺は冷たくそう告げた。

 当たり前だよなあ?


 ドラゴンがどうにもできないことを、俺がどうにかできるわけないだろ。いい加減にしろ。

 だが、ここで最大の敵の邪魔が入る。


「まあまあ、そういきなり断らず。ちゃんと話は聞いてやれ、大将軍様」


 ニマニマとこらえきれない笑みをこぼしている悪魔。

 貴様ぁ! フラウ!


 どこまで俺を陥れたら気が済むんだ……!

 俺が窮地にあると悟った瞬間にこれである。


 なんて奴だ。親の顔が見てみたい……。


『都合がいいのは分かっている。ワシらはもともと魔王軍には属さない身。魔王軍に助けを求めるのは、筋違いじゃろう』

『しかし、助けを求めざるを得んのだ。我々ドラゴンでは、決して乗り越えることのできない苦難なのだから』

「どういうことか、詳しく聞かせてくれ」


 ドラゴンの言葉に、フラウが答える。

 聞かせなくていい聞かせなくていい。


 なんで他人の苦難を俺が乗り越えさせてあげないといけないんだ。

 そんな俺の内心と裏腹に、フラウに促されてドラゴンが話し始める。


『予言があったのじゃ』


 ドラゴンの説明によると、予言とは、ドラゴンの中で最も重要な方針を決めるもの。

 巫女と呼ばれる古い竜が、ごくまれに何かが乗り移ったように予言を発する。


 そして、それはドラゴンたちにとって、一族の存亡がかかった非常に重要な選択を強いられるときにのみ発生する。

 つまり、予言の内容にかかわらず、予言があったということだけで動く必要があるのだ。


『たとえば、数千年前は巨大火山の大噴火が予言され、別の大陸にいた多くのドラゴンたちが避難した。そのおかげで、大陸と共に沈んだほかの種族と違い、ドラゴンはいまだに種を存続させることができておる』

『そして、今回の予言が、ドラゴンスレイヤーじゃ』


 何それ。めっちゃかっこいいじゃん。

 ドラゴンはとてつもなく深刻そうだが、俺は名前の格好よさにしびれていた。


「確か、竜殺しに特化した力を持つ者のことだったか。もちろん、ドラゴンなんて強大な魔物を殺せる奴はほとんどいない。だからこそ、とてつもなく重宝されるはずだが」

『人間がドラゴンを殺すことは、ままあることじゃ。油断しておったか、数で押されたか……。どちらにせよ、それだけなら慌てることはない』


 フラウの説明に、ドラゴンが付け足す。

 確かに、おとぎ話では、ドラゴンが悪役でそれを討伐する人間の姿が描かれていることも多い。


 誰も竜殺しができないのであれば、今頃世界はドラゴンのものになっているだろうしな。


『しかし、今回のドラゴンスレイヤーは予言に出てくるほどの者。実際、竜の巣から離れていた同胞たちが、数多く惨殺されておる』

『我らの力も、ドラゴンスレイヤーとは相性が悪い。それゆえに、頼みたい。我らのことを、助けてほしい』


 もう何か始まっている感じじゃないですか!

 すでに、予言の内容が実現してきているということか。


 ……じゃあ、ここにいたらなおさら危ないじゃん!

 ドラゴンとドラゴンスレイヤーの戦いに巻き込まれたら、タダでは済まないだろう。


【ただで助けると思っているのか?】


 高速で回転する思考の中、俺はそのような言葉を選んだ。

 ドラゴンが怯えるような相手を俺がどうにかしろと?


 ふざけんな、嫌に決まってるだろ。

 それゆえに、見返りを求める。


 金銀財宝なんてのが一番可能性があるだろう。

 しかし、俺はそれに難癖をつけるのだ。


 そして、『見返りが足らないから助けない』と言う。

 完璧だ……。俺、完璧だわ……。


 さあ、言ってみるがいい!

 全部何かと理由をつけて断ってやるから!


『我らを助けてくれた暁には、我らドラゴン。魔王軍の傘下に加わろう』


 …………え?

 俺は頭が真っ白になる。


 そ、そこまでするの?

 今まで、魔王軍の下にはつかず、敵とも味方ともいえないような関係にあったのに?


 俺は、ある考えに行き着き、震える。


「これは大変なことだな。魔王軍の戦力は爆発的に膨れ上がるぞ。魔族のことを考えるならば、受けないはずはないなあ」


 な、なんて邪悪な笑顔を浮かべやがる、フラウ!

 き、貴様……!


 あれか、ルーナに言いつけるつもりか!?

 あの魔族絶対繁栄させるウーマンならば、この申し出を受けないはずがないだろう。


 今回のことがなければ、ドラゴンが傘下に入ることは二度とないだろうし。

 嫌だぁ! 絶対に嫌だぁ!


 そんな俺の願いを聞き届けてくれたのは、彼だった。


『ふざけるな、老害ども!!』


 竜議会に乱入してきたのは、あの時フラウに迫っていたイキリドラゴンだった。

 き、来てくれたんですね!


『貴様! ここは神聖な竜議会だぞ! 資格のない若造が入っていい場所ではないわ!』

『ドラゴンの誇りを貶めようとする老害が入れる場所が、神聖なわけがないだろう!』


 まーた内輪もめですか……。

 しかし、それぞれの怒声が雷みたいで怖い。


 もう帰っていい?

 俺、関係ないし……。


『メビウス、貴様もだ! それだけの力がありながら、なぜこのような奴らに従っている!?』


 イキリドラゴンの矛先は、俺たちを連れてきたメビウスにも向けられる。

 それに対して、メビウスは冷めた目を彼に向ける。


「……どうでもいい。うるさい」

『なっ……!?』

「どうせ、私は殺される。それが早いか遅いかだけの違い。言われたから連れてきたけど、期待もしていないし。だから、こんな喧嘩もどうでもいい」

『待て、メビウス!』


 すべてを達観したような態度で、メビウスは竜議会を後にする。

 ちょっ……!


 お前が出て行ったら、俺がぽつんと残されることになるだろ!

 友達がどこかに行って、友達の友達に囲まれてしまった感じになるだろ!


 やめろぉ!


『気を悪くせんでくれよ、お客人。メビウスは、ちょっと私たちとは違うドラゴンなんだ』


 居心地の悪さに戦々恐々としていると、竜議会を構成するドラゴンの一体が、そう声をかけてくる。

 イキリドラゴンと喧嘩しているほかよりも、どうやら冷静なようだ。


 メビウスのことを話そうとしているらしいが、まったく興味ないので結構です。


『あの子は、ドラゴンスレイヤーと遭遇し、生き残った数少ないドラゴンなんだよ』


 ……え?

 これ、聞かないといけない感じ?


 しかも、めっちゃ重たそうだし……。

 俺は、激しく気分が滅入るのであった。




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