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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
第二章 ドラゴンスレイヤー編

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第44話 こいつもバカだったか

 










「…………」

「…………」

【…………】


 なに、この空気……。

 俺はこの張り詰めた沈黙の空間に、我慢ができなくなってくる。


 ルーナの命令とメビウスの要求のせいで、俺たちは帝国軍武断派の独自の行動を監視するため、指定された場所に向かっていた。

 ちなみに、向かっているのは俺たち三人である。


 他の魔族はいない。

 まあ、四天王が二人も向かっていれば、それだけで過剰戦力だし、他の奴らは足手まといにしかならない。


 一人で小国を滅ぼすことができるのが、魔王軍四天王である。

 フラウは違うけどな。


 あいつ、人間だし。女騎士だし。

 ……なんであいつ四天王しているんだ? 怖いわぁ……。


「…………」

「…………」

【…………】


 そして、そんなことを考えている間にも、俺も、メビウスも、フラウも話さない。

 ただ、黙々と目的地に向かって歩いている。


 ……なに、この時間……。拷問かな?


「……おい、暗黒騎士。沈黙が痛いぞ。何とかしろ」


 こっそりと近寄ってきたフラウが、コソコソと話しかけてくる。

 近いぞ、お前。鎧に身体が当たっているだろうが。


 ……何にも感じないんですけどね。鎧ですから。

 しかし、お前にも気まずさを感じる感性はあったんだな。


 そういうの、欠落しているとばかり思っていた。


【ふざけるな。貴様が何とかしろ。大将軍様だぞ】

「あれだけ嫌がっていたくせにここぞとばかりに……!」


 血走った目で睨みつけられる。

 こわ……。


「ふう、仕方ないな……」


 一つ深呼吸をするフラウ。

 お、まさか本当に何かをしてくれるとは思っていなかった。


 まあ、振ったのは俺だ。

 どのような話題であったとしても、多少のっかってやるとしよう。


 フラウは息を吸い込んで……。


「今から! 暗黒騎士が何か面白いことをします!」

【!?】


 無茶ぶりやめろぉ!

 振りが雑だわ! いい加減にしろ!


 なんだ、何か面白いことって。

 クソ……。こうなっては仕方ない。


 散歩かと思っていたら病院に連れて行かれる犬の顔真似をするしか……。


「……会話って、面倒くさいし。やらなくてもいいんじゃない?」


 俺の傑作の物まねを披露する前に、メビウスがそんなことを言う。

 会話も面倒くさいとか……。


 じゃあ、なんで俺を引きずり込んだんですかね……!

 お前とフラウが気まずくなるのは歓迎してやったというのに……。


「私が知りたいのは、暗黒騎士の本当の力。それが、私にとって必要なものなのか、調べさせてほしい」


 じっと俺を見据えるメビウス。

 ……こいつの考えていることが分からねえ。


 だからこそ、怖い。変なことに巻き込まれそうで。

 何を考えているかわかればいいのだ。


 俺にとって都合が悪ければ邪魔したり逃亡したりすればいいだけなのだから。

 しかし、メビウスは何を考えているかさっぱりなのである。


 もっと表情変えろや。ルーナの本性かよ。


「……む? あれじゃないか?」


 危機察知能力がずば抜けているフラウが、口を開く。

 彼女が指さすのは、広がった平原の一角。


 街が近くにないため、本来であればだれもいない場所。

 そこには、数百人の人間が、魔族の領域内で駐屯していた。


 目を凝らして見れば、全員武装して統一された鎧や軍服に身を包んでいる。

 これはいけませんねぇ……。


 本気で魔族領に侵攻するつもりじゃないか。


「どうするんだ? 実際に帝国の軍隊がいたわけだが……」

【無論、処理はする。それが、魔王の命令だからな】


 心底嫌な気持ちになりながらも、俺は答える。

 さすがにこの場から逃げ出すことはできないしなぁ……。


 とはいえ、どうやら高位ランクの冒険者や名の知れた軍人がいる様子はないので、そこは少し安心だ。

 だが、問題はその処理方法である。


 俺たちは三人だ。

 まあ、メビウスとフラウを突撃させて俺は高みの見物を決め込んでもいい。


 メビウスは四天王だし、フラウも……まあ、なんとかするだろ。うん。

 しかし、さすがに二人で数百人を漏れなく対処することはできまい。


 フラウは絶対に俺を巻き込もうとするだろうしな。

 鎧さんがいる限り俺は大丈夫だろうが……。


 ……敗北するという観点から見ると、戦うのもやぶさかではない。

 とはいえ、一つの疑念がある。


 それは、『俺、大将軍とかいう訳の分からない立場になっちゃったけど、負けたら辞めさせてもらえるの?』である。

 四天王が敗北する……というのは、歴史上何度もあったことだ。


 そのたびに、新たな四天王が誕生し、代替わりが行われる。

 一方で、長い魔族の歴史の中でも、大将軍という地位はなかった。


 つまり、大将軍が敗北した後、どうなるのかという前例がないのである。

 ルーナいわく、大将軍は魔王軍を統括する立場……すなわち、魔王軍のトップである。


 そんな俺が敗北したら、普通に辞めさせてもらえるのか?

 魔族全体の顔に泥を塗ったとして、殺されたりはしないだろうか?


 その危惧が、俺を震え上がらせる。


【……作戦は必要だろう】


 そこで、俺は念入りに作戦を考えることにした。

 ちなみに、メビウスとフラウが突撃することは確定事項である。


 この二人を突破してきた帝国軍から、どのように逃げるのか。

 そのことを考える必要があった。


 うーむ……。


「悩む必要なんてないよ。私は暗黒騎士の力が知りたい。あなたは帝国軍を滅ぼしたい。なら、することは一つでしょ」


 悩む俺に、メビウスが語り掛ける。

 ほう、いい作戦があるのか?


 俺は期待しながら彼女を見る。


「正面突破。これ、おすすめ」


 こいつもバカだったか……。




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