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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
最終章

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118/129

第118話 おほぉ!

 










 謁見の場は、とても広かった。

 見栄えを気にするんだろうなあ。


 まあ、そういうのも大事らしいしな。

 ルーナも言っていた。


 しかし、随分とこの場にいる人間の数が多い。

 絢爛な衣装を着て奥の方にいるのは貴族たちだろうか?


 そして、彼らを守るように、貴族よりも数多く控えているのは騎士だ。

 なんでそんなに戦力を集めているんですかね。


 ……ああ、俺のせいか。

 俺だって来たくなかったんだぞ。


 そんな中、フラウが歩き出す。

 長いスカートのドレスだから歩きづらいと思うのだが、慣れたように歩いている。


 さすがは王族。

 ……それでも信じられないのは、俺のせいじゃない。


 ザワザワとざわめくのは、死んだと思われていたフラウが生きていたからか。

 それとも、魔王軍最高戦力の暗黒騎士が現れたからか。


 まあ、どっちでもいいや。

 さっさと終われ。


「父上。フラウ、ご命令に従いただいま戻りました」


 決して自分の意思で戻ったわけではない。

 強い反骨精神を感じる……。


 なんかスカートをつまみながら報告しているが、こいつの内心は怒りで煮えたぎっているだろう。

 面白い。


「おぉ、フラウ……フラウか! よくぞ……よくぞ戻ってきてくれた……!」


 歓喜の笑みを浮かべるのは、玉座に座っていたジジイ。

 こいつがフラウの父親か。


 じゃあ、こいつもクズだろうな。

 子は親に似るって言うし。


 そもそも、このモンスターが生まれたのってこいつの責任か?

 死ねよ、マジで。


「魔王軍に囚われたと聞いた時は、心臓が潰れそうになったぞ。本当に……本当によかった……!」


 うーん、気まずい。

 捕らえた張本人がここにいるの、気まずい。


 そもそも、魔族が一人でいるっていうこと自体アウェーなのだ。

 こりゃ、生半可な護衛だったら、勝手に潰されていたかもしれないな。


 俺の胃も潰れそうだ。


「その元凶がここにいるのが納得できんがな……!」


 ギロリと国王の目が俺を捉える。

 ひぇぇぇ……!


 苛立ちを隠しきれていなかったフラウは、俺を見てニヤニヤと笑っている。

 元はと言えば、テメエの娘がいきなり襲い掛かってきたんだろうが!


 教育がなってねえんだよ、教育が!

 ふざけんなよ!


 逆切れじゃねえか!


【何か文句があるのか?】


 自然と口が動き、とても凛々しいお言葉が飛び出していた。

 おっとー。


 鎧さん、いきなりぶっこんでしまう。

 これはいけない。


 明らかに喧嘩を売っている。


「ぐっ……!?」


 だが、中身の俺が言ったらボコボコにされていたとしても、言ったのはあの暗黒騎士である。

 武人でもない国王は、言い返すこともできないようだった。


 ……国王になんて口の利き方をしているのだろうか。

 まあ、フラウの親だしいいか。


「兄上、ここは余計な刺激はしないように」

「ランバート……」


 俺を見て言葉を詰まらせていた国王を助けたのは、屈強そうな男だった。

 スッと背筋も伸びていて、とても強そうだ。


 なんて幼い感想だろうか。

 その男――――ランバートの俺を見る目は、少しも揺らがない。


 うん、強そうだ。

 絶対に戦いたくないな。


 しかし、国王を兄上ってことは……王弟か。


「暗黒騎士。貴様の悪名は轟いているが、もしも兄上を……王国を害するつもりがあるのであれば、私が相手になろう」


 なんかくぎ刺された……。

 別にそんなつもりないぞ。


 俺の目的は、この鎧を脱いで魔王軍を辞めることだからな。


【くだらん。私は自分に降りかかる火の粉を払うのみ。貴様らがちょっかいをかけてこなければ、ここに死体の山が築かれることはないだろう】

「ひっ!?」


 うーん、この言葉遣い……。

 どうしてこんなに挑発的になるんですかねぇ。


 まあ、いいや。

 舐められるより、ビビられた方がいい。


 そっちの方が、余計なことに巻き込まれない気がする。

 ここに集まっていた貴族たちが悲鳴を上げる。


 別に殺さないって……。


「……それならば、いい。それよりも……」


 ランバートは肝が据わっている。

 何もしないから帰らせて。


 ランバートの視線は、俺ではなくフラウに向けられていた。


「よくぞ戻ってきたな、フラウ」

「おじさま……」

「本当に……死んだと思っていたのだがな」

「おじさま……」


 フラウの目が死ぬ。

 あ、こいつ悟ったな。


 そんでもって、絶望してやがる。

 今の言動を見れば、王位継承権持ちが殺されていく過程に少なからず関与している。


 普通の者なら分からないだろうが、人の顔色を窺うことにたけた俺とフラウは気づいた。

 ……自慢できねえ。


 しかし、王の弟だもんな。

 王の息子娘が死ねば、次の王はあの弟だ。


 動機も十分ですね……。


「フラウ殿下、ご無事で何よりです!」


 満面の笑みを浮かべてフラウに話しかけてきたのは、小太りのおっさん。

 鎧ではなく豪華な衣装を身にまとっているため、貴族なのだろう。


 しかし、殿下って……。

 本当に、この国は大丈夫なのか?


「しかし、これで次期国王も安泰ですな。まさか、第一王子や第二王子までもが続けてご逝去された時はどうすればいいのかと絶望しましたが……フラウ殿下こそが、我らの希望なのです!」

「え、いや……」


 フラウが困っている。

 俺の心はほっこりする。


 もう完全に次期女王ですね。

 おめでとうございます。


「だから、王弟殿には、せっかく準備はしていただきましたが、無駄骨だったということになりますなあ」


 おっとー。

 ここで貴族さん、なぜかランバートにジャブを放つ。


 これはいけない。

 もういろいろと見えてきてしまった。


 フラウの顔が真っ青だ。

 俺はニッコリだ。


「ふんっ、国家のガンめ」

「なっ!? 何という口の利き方! 陛下、いくら御身の弟君とはいえ、この暴言は見逃せませんぞ!」

「ランバート……」


 ランバートも言われっぱなしではない。

 なんでこいつらこんなギスギスしてんの?


 一応、俺部外者だからね?

 部外者の前でそんな弱点みたいなところを見せていいの?


 ダメだろ。

 国王の気づかわし気な目を向けられて、ランバートは貴族から視線を外す。


「無駄骨だったかどうかは……まだ分からんさ」

「ひぇっ」


 ランバートの冷たい目がフラウを捉える。

 ひぇっ……。


 あっ……これはもう……。

 しかし、血がつながっているのによくもまあ……。


 人間は血を大事にすると聞いたが、そんなこともないのか?

 まあ、俺は関係ないからどうでもいいんですけどね。


「今日は久しぶりに娘の顔を見られたのだ。込み入った話は、後々でいいだろう。フラウ、今日は一緒に食事をとろう」

「は、はい、父上」


 苦虫を噛み潰した顔で国王の誘いを受けるフラウ。

 実の父親から食事に誘われた反応じゃねえぞ。


 しかし……。


【(おほぉ!)】


 苦しむフラウの姿は堪らんばい!




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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~


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