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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
最終章

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117/129

第117話 逃げるとしても俺だけだ

 










【いきなり王城か……】


 呼び出されたのは、王城だった。

 国王との謁見があるらしい。


 普通、そういうのって準備とかがあるから少し時間を空けるものだがなあ……。

 実際、ルーナとかも準備で時間を空けるし。


 それだけ、フラウのことを心待ちにしていたということだろうか?

 ……本当に、あいつ逃げられないぞ。


 しかし、魔王軍の大将軍(笑)である俺が、国王と謁見してもいいのだろうか?

 その気になったら殺されるとか考えないものか。


 俺だったら絶対に会いたくないな。

 敵対している組織の幹部となんて。


 そんな判断がつかないほど、慌てているのだろうか?

 うーん、逃げたい!


【っていうか、あいつ遅いわ】


 俺は王城の一室で待たされていた。

 というのも、フラウがジークリットによってどこかに連れて行かれたからである。


 暗殺かな?

 じゃあ、俺がここにいる理由もなくなるし、それはそれでいいんだけど……。


 しかし、他人の家に一人取り残された感じがして非常にいづらい。

 しかも、長年敵対し、殺し合ってきた人間と魔族である。


 ほら、部屋の端っこで控えている使用人なんて、半泣きだ。

 俺、何もしていないのに……。


 別に殺さないよ。

 俺の手が汚れるのは嫌だし。


 そんなことを考えながら待っていると……。


「ぐぉぉ……お腹がキツイ……!」


 そんな悲鳴を上げながら、フラウが部屋に入ってきた。

 こいつめ、この俺を待たせているというのに、謝罪の一言もなしか。


 許せん。


【遅えよ。なにして……】


 文句を10個くらい言ってやろうと振り返り……俺はのどを詰まらせる。

 それは、フラウの変貌があったからだ。


 彼女はいつも軽装の鎧を身に着けている。

 女騎士としての当たり前の装備だろう。


 中身はまったく女騎士ではなかったが。

 しかし、今のフラウが身にまとっているのは、ドレス。


 上流階級の人間がパーティーでもするときのような絢爛なドレスだ。

 金色の髪も、普段と違ってまとめられている。


 金銀のオッドアイが見やすくなっている。

 化粧もしているのか、唇には紅いものが薄く塗られていた。


 胸元が大きく開いたドレスはそこだけをさらし、後は完全に足先まで隠してしまっている。

 ……暑そう。


「な、なんだ。ジロジロ視線で私を嬲るな、変態め」


 いや、そういう目で見ていない。

 しかし、フラウのことをガン見していたのも事実。


 普段とはまったく異なる、王女フラウとしての姿を見て、俺は……。


【ぶっ、ぶふっ! なんだってこっちのセリフだわ! なんだその恰好……!】

「知るか! 勝手に着せられたんだ! 私の趣味じゃない! いや、衣装で高貴さをアピールし、いざというときはその高貴な存在がへりくだっているということで気に入ってもらい、命を見逃してもらえる可能性もあるか……」


 顔を真っ赤にして怒鳴っていたと思えば、一瞬で変な考えに至るフラウ。

 なにその思考回路。


 怖い……。

 お前、もうどっかに王国が攻め滅ぼされる時のことを考えているのかよ。


 しかも、自分だけは助けてもらおうとしやがって……。

 えげつない。


「というか、本当にお腹がしんどい。締め付けすぎだろ……」


 フラウはおぼつかない足取りで近寄ってくると、へばりついてくる。

 コルセットというのだろうか?


 かなりお腹を強く締め付けているのだろう。

 ……お前が普段、暴飲暴食してすぐに寝転がる生活を続けていたからじゃないか?


 太ったんだろ。


【スタイルを良く見せるためだっけか? 偉いさんは大変だな】

「ふっふっふっ。しかし、こうすると少しは胸が大きく見えて……」


 ご満悦の様子で、自分の胸元を覗き見るフラウ。

 確かに、胸の谷間は深くなっている気がしないでもないが……。


 俺は彼女の胸を覗き見て、一言。


【かりそめの巨乳は巨乳にあらず】

「名言みたいに言うな!」


 元気ですね。

 コルセットで締め付けようが、まったく問題ないらしい。


 そんな時、コンコンと扉をノックされる。


「フラウ殿下、暗黒騎士様。準備が整いましたので、ご案内します」


 入ってきたのは、ジークリットだった。

 その瞬間、フラウは俺にへばりつく。


 お前、最近そういうの多いな!


「暗黒騎士! 今からでも遅くはない、逃げよう!」

【逃げるとしても俺だけだ】

「人でなし!」


 魔族です。

 ギャアギャアと騒いでいるフラウ。


 せっかく小奇麗に整えてもらっていたのに、台無しである。

 自分だけでは逃げ切れないことを悟り、不倶戴天の敵であるはずの俺に助力を求める判断力はさすがだが。


 しかし……。


【お前が心底嫌がっている顔を見るのは、嫌いじゃないんだ】

「この悪魔め!!」


 必死に逃げようとするフラウを抑え込み、ジークリットの後を追う。

 ふっ、任せろジークリット。


 こいつは逃がさねえぜ。

 無理やりフラウを引きずっていき、巨大な扉の前でジークリットが立ちどまる。


 ……絶対にこんな大きい扉いらなかったよね?

 人間だよね? 巨人族じゃないよね?


 じゃあ、絶対無駄だわ、このアホみたいに高い扉。

 そんなことを考えていると、ゆっくりと門が開き……王国の主要人物とのご対面である。




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