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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
最終章

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第114話 ……ん?

 










「ルーナに呼ばれるとか、ろくでもないことだろ。何をしたんだ、暗黒騎士。一緒に謝ってやるから、ちゃんと言ってみろ」

【何もしていない】


 ルーナに呼び出され玉座の間に向かっている俺とフラウは、そんな会話をしていた。

 どうして俺がやらかしてしまったこと前提なんだよ。


 やらねえよ。

 ルーナ怖いし。


「ルーナは何か言っていなかったか?」

「……お客さんが来たとかどうとか。あんまりちゃんと聞いていなかったから、分からないかも」


 メビウスに問いかければ、眠たそうな目でそんなことを言う。

 なんだこいつ……。


 メッセンジャーとして間違っているだろ、人選。

 しかし、込み入った話をするときなどは、いつもルーナの私室に呼び出される。


 プライベートの色が強くなる時は、いつも私室だ。

 今回は玉座の間ということもあって、完全にお仕事モード。


 その客とやらが、よっぽどの人物なのだろう。

 うーん、帰りたい。


 もちろん帰るわけにはいかないので、嫌々ながら玉座の間にたどり着く。


「お待ちしていましたわ、暗黒騎士様」


 ニッコリとも笑わずに、相変わらずの無表情で冷徹な魔王が俺たちを迎え入れた。

 白髪ツインテールに、褐色の肌が多く見える露出度の高い衣装。


 薄いこともあり、豊満な身体の線がはっきりと出ている。

 大きく膨らんだ胸や臀部は、彼女が軽く身じろぎをするだけでも揺れる。


 眼福です。

 ツンととがった耳は長命種であることをうかがわせる。


 彼女こそ、魔王ルーナ。

 魔族の繁栄にすべてをかける、恐ろしい存在だ。


【私は何もしていないぞ】


 とりあえず、否定からしておく。

 保身のためである。


「いえ、そうではなく。わたくしが用があるというわけではありませんし、今回は暗黒騎士様ではありませんの」

「ぬ?」


 俺ではなく、フラウ?

 ルーナがいつも呼び出すのは、俺である。


 フラウは放っておいたら何をしでかすか分からないので、無理やり引っ立てているのだが……。

 フラウも初めてのことだから、少し首を傾げる。


 その表情が凍り付いたのは、すぐ後のことだった。


「おぉ、フラウ様! 本当に……本当に生きておられたんですね……! あぁ……これほどの幸せがあるでしょうか……!」


 玉座の間にいたのは、ルーナだけではない。

 もちろん、護衛が何人かいるのだが、魔族の総本山であるこの場所にフラウ以外存在するはずのない種族がいた。


 そう、人間である。

 メイド服を着た人間が、感極まるようにフラウを見つめているのである。


 ……フラウ『様』?


「げっ! ジークリット……」


 フラウが思わずといった様子で名前を呼ぶ。

 ハッと口を押えて俺の顔を窺うが、バッチリ聞いている。


 フラウを敬称をつけて呼ぶ女。

 そして、その女のことを知っている様子のフラウ。


 ……ほほーん?

 なんだかおもしろそうな空気がするやん?


【…………】

「や、止めろ! 私を厭らしい目で見るな!」


 そんな目は向けていない。

 お前に向けたことは、今まで一度もない。


 話をそらすために演技をしたのだろうが、俺には通用しない。

 ぜひとも追及させてもらおう。


「今のフラウは、魔王軍四天王。おいそれとお返しするわけにはいきませんわ」

「フラウ様を殺さないでくださったことは感謝いたしますが、そちらに囚われたのは明らかな不法行為です」


 ルーナとメイド――――ジークリットが言い合いをする。

 魔王軍の最高幹部が四天王だ。


 その一角にいるフラウを、求められたからと言ってすぐさま差し出すことなんてできるはずもない。

 しかし、人間なのに魔王軍四天王って。


 自分で持ち上げたくせに、改めて見るとひどいな。

 しかし、捕らえたというのは少し語弊がある。


【先に仕掛けてきたのはこいつだ。それに、勝者が敗者を自由にするのは、当然のことだろう】


 俺とフラウが初めて会った時、先制攻撃を仕掛けてきたのはフラウだった。

 いわく、『明らかにやばそうな奴が来たから、やられる前にやろうと思った』とのこと。


 即決即断で命を狙いに来るこの女の恐ろしさよ。

 王国の女騎士って、皆こうなの?


「あ、暗黒騎士……。で、ですが、フラウ様はお返しいただけなければ困ります」


 俺を見て怯えるようなしぐさを見せるメイド。

 俺は怖くないよー。


 鎧さんがやばいだけで。


「先ほどから随分とフラウにご執心ですわね。一人の人間を救い出そうとするには、あまりにも力を入れすぎていますわ」

「当然です! なにせ、フラウ様は……」


 怪訝そうにルーナが尋ねる。

 確かに、一女騎士に懸ける労力ではないだろう。


 わざわざ魔王城まで来て、問答無用で殺されることだってあり得るのに。

 すると、ジークリットが何かを言おうと口を開く。


「あ、ちょっと待ったぁ! ジークリッ――――――!」


 慌てたのはフラウである。

 大声を上げて妨害しようと試みるが、その前に俺の腕が彼女を捕まえる。


【そこまでだ】

「んぶぅっ!?」


 ガッチリと捕まえ、口元も押さえつけて言葉を発せなくさせる。

 完璧だ。


 このまま首筋にナイフを当てて引き抜けば、見事な暗殺の完成である。


【大人しくしろ。死にたくなかったらな】


 きゅっと柔らかな首を少し圧迫する。

 それだけでも苦しく、大人しくなるものだが……。


「んぶばうbどえけぇいえhなlだ!!」


 フラウは今までにないほど激しく暴れ始めた。

 大人しくしろって言ってんだろ!!


 これ以上ないくらいに暴れてどうするんだこいつぅ!

 俺ならばともかく、鎧さんの拘束から逃れられるはずがないだろうが!


 ギャアギャアと激しく争う俺とフラウ。

 さあ、メイドくん!


 早く重要そうなことを言うんだ!

 人間の力とは思えないほど激しく暴れるフラウを押さえつけ、こいつを陥れることのできる情報を得られるのを待つ。


 そして、ジークリットはフラウの様子に気づくことなく、その言葉を発した。


「フラウ様は、王国の王位継承権をお持ちの、王女殿下なのですから!!」

【――――――】


 …………ん?




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