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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
第四章 裏切りの暗黒騎士編

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第112話 ぬっ!?

 










「やあ。先日も助けてもらったよ。ありがとう」


 研究室という名の幽閉場所に行けば、ユリアが話しかけてくる。

 本当だよ。


 お前が俺の鎧を解除してくれる奴じゃなかったら、絶対にここまでしていないからな。


【気にするな。私のためでもある】

「……まさか、あれだけ熱烈なプロポーズを貰うとは思っていなかったよ」


 は? 何言ってんのこいつ。

 うっすらと頬を染めているユリアに、俺は心底理解できないと首を傾げる。


 ぷ、プロポーズ?

 いったいいつ俺がそんなことをしたというのか。


 ないぞ。

 裏切り者に俺が心を許すことはないぞ。


「ついに暗黒騎士にも春が来たか。祝福するぞ」


 ニッコリと笑い、拍手までしているフラウを睨みつける。

 お前、あの男の言葉を忘れていないだろうな。


 俺はこのことを死ぬまで突き続けるつもりだからな。

 絶対に何を隠しているか探し当ててやる。


「しつこい男は嫌われるぞ!」


 お前に嫌われても問題ない。

 焦って怒鳴りつけてくるフラウに、兜の下で満面の笑みを浮かべる。


 おそらく、あの男が知ったようにフラウを言っていたことが、彼女の最大のウィークポイントだ。

 絶対に掘り当ててみせるぜ……!


「随分と仲良しなことだ。あれだけ熱い言葉をかけてくれたのであれば、私も仲間に入れてくれると思ってもいいんだよね?」


 俺とフラウの会話を、どこか羨まし気に見ていたユリアがそう言ってくる。

 いいわけないだろ。


 裏切るわ魔剣騒動起こすわ内通するわルーナに目を付けられるわ……スリーアウトです。

 出直してきて、どうぞ。


 大体、フラウみたいなやつが増えたら困るわ。

 困るどころか、ストレスで死にそう。


【私の役に立て。なら、いくらでも貴様のやりたいことに付き合ってやる】


 この鎧さえ脱げれば、すぐに魔王軍を辞めておさらばするがな。


「そうか。なら、頑張らせてもらおうかな」


 そう言って、ユリアは微笑む。

 少しコリがあったのだろう。


 彼女はグーッと伸びをして……。


「お?」


 バツン! と彼女の胸部を抑え込んでいたボタンがはじける。

 ぬっ!?


 バルンと飛び出してきた胸を見て、俺の目はぎらつく。

 で、でかい。


 ルーナとメビウスも大きいが、ユリアはそれ以上だ。

 テレシアとフラウ?


 戦力外である。


「バカな……! 戦闘能力が、私の倍以上だと……!?」


 フラウがユリアの胸を見て、戦々恐々としている。

 お前、胸の大きさを戦闘能力って言っているの?


「あー、たまにあるんだよね。だから、猫背気味になっていたんだけど。しまったなぁ」


 胸の大きさに耐え切れずにボタンがはじけ飛ぶのって、たまにあるレベルのことなの!?

 嘘だろ、俺全然見られていない……。


 人生の大部分を損してしまった気分だ。

 これからは、もっと巨乳を凝視しよう。


 いつボタンがはじけるか分からないからな。

 そんなことを考えている俺を、ユリアはどこか面白そうに笑って見上げてくる。


「興味あるなら、触ってみるかい?」


 よろしいんでしょうか!?

 俺は嬉々として手を伸ばしそうになるが、その手を見て愕然とする。


 ……俺の手、鎧で包まれとるやん……。

 触っても感触がさぁ! 温かさがさぁ!


 感じられないさぁ!

 だから、一刻も早く俺の鎧を解除しろぉ!


「ぐぬぬぬぬ……!」


 絶望する俺の隣で、顔を真っ赤にしながら背をそらしているフラウ。

 お前はボタンを弾けさせるのは無理だぞ、フラウ。











 ◆



「おや、エドウィンが……。残念ですねぇ。ええ、残念ですとも」


 自身の送り出した使者が倒されたということを知り、スポンサーの男はそう言って笑う。

 言っていることとまったく合っていないが、彼をとがめる者は誰もいない。


 そう、彼の目の前に座っている男もそうだ。

 非常に有用で有能な彼の機嫌を損ねるようなことは、必要でない限りするべきではない。


「よくやってくれているよ、お前は。仮想敵国への潜入に加え、今度は魔族への間接的な攻撃だ。その功績は公に賞賛することはできないが、確実にお前に報いることになるだろう」

「いえ、お気になさらず。私も、私のしたいようにしているだけですから」


 ご機嫌取りという意味もあるが、男は本心から思っている言葉で賞賛する。

 彼の貢献度は、非常に高い。


 高い能力と献身性がなければ務まらない、裏の仕事。

 彼は長年ずっとそれに取り組み、王国に貢献してくれている。


 だが、賞賛された男も、王国への忠誠などで今までしてきたわけではないので、褒められてもとくに表情を変えることはない。


「ああ、そうそう。あちらには、あなたたちの求めるお人もいたようですよ」

「なに!?」


 ギョッと目を見開く。

 それほど、彼から伝えられたことが衝撃的だった。


 自分が……自分たちが求める人物なんて、一人しかいない。

 行方不明になって長かったが、彼女は存命だった。


「そうか、やはり生きておられたか。ならば、ぜひとも我々の役に立ってもらわなければなあ……」

「そうですか。ぜひとも頑張ってください」


 歓喜に打ち震える男をしり目に、まったく動じない。

 そんな彼を見ていれば、ふと気になったことを聞いてしまった。


「お前の望むことはなんだ、アルマンド?」

「そうですねぇ」


 帝国の裏に潜み、王国へと情報を流し続けていたスパイ――――アルマンドは、にやりと笑う。


「楽しくもないこの世界を、とても楽しい楽園に変えること、ですかね」



第4章終わりです。

次回から最終章となります!

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