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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
第四章 裏切りの暗黒騎士編

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第106話 変わり身はやっ!

 










「ここまで、圧倒的でしたか……?」

『やっぱり、ご主人って凄い』

「そんなことを言っている場合か!?」


 呆然とするテレシアと、なぜかご満悦のメビウスに怒鳴るフラウ。

 まったく戦わずに安全圏に避難していた彼女が言うべきことではないだろうが、それほど切羽詰まっていた。


 なにせ、暗黒騎士だ。

 ダメージが入っていないということはないだろう。


 しかし、彼はしっかりと自分の足で立ち、剣も力強く握っている。

 まだまだ戦えることは、目に見えて明らかだ。


 一方で、テレシアとメビウスもまだ戦えるだろう。

 二人とも、継戦能力は高く、最後まで食らいつくことができる。


 だが、どちらが優位に立っているかと言えば、間違いなく暗黒騎士だろう。


【いいものをもらった。お返しをしよう】


 格好よく言っているが、一方的にブレスと斬撃でボコボコにされたことに、ブチ切れしているだけである。

 剣を振り上げ、そこに黒い魔力を吹き荒れさせ……。


「きゃあっ!?」

『……ッ!』


 大地に叩きつけると、割れ目からマグマが吹き荒れるように黒い瘴気が溢れ出した。

 その一撃で、軽いテレシアはともかく、巨大なメビウスでさえも空に打ち上げられる。


 そして……。


「あっ……」


 二人とも地面に倒れると、まともに動けなくなる。

 非常に高い場所から受け身も取れず、まともに身体全体で叩きつけられたのである。


 生きているだけで、彼女たちの能力が高いと賞賛されるべきだろう。

 一方で、絶望するのはフラウである。


「私以外、全滅……だと……?」


 倒れるのは、四天王二人に魔勇者。

 残されたのは、自分だけ。


 ……戦わなければならないのは、フラウ本人である。


【次は、貴様の番だ】

「へへっ。私はあなたが勝つと信じていましたよ、暗黒騎士様。あ、つま先舐めましょうか?」


 暗黒騎士の目を向けられた瞬間、フラウは媚び媚びの笑顔を披露する。

 驚くほどに腰が低い。


 こんな言動を繰り返している彼女だが、幸か不幸か見た目はとても整っている。

 それこそ、黙っていれば女騎士や深窓の令嬢にも見える。


 そんな彼女が、ここまで腰を低くして媚びてくるのは、男として悪い気にならないはずだが……。


【お前を……殺す……!】

「私に対してだけ殺意高くないか!?」


 本性を知っている暗黒騎士は、微塵も揺るがない。

 放っておいたら、自分に都合の悪い方向に誘導しようとしてくるのがフラウだ。


 危険人物である。

 ルーナと同じくらい危険である。


 ゆえに、ここで確実に処分するつもりだった。

 とはいえ、一応はともに行動したこともあるようなないような気がしないでもない間柄。


 彼女を殺す理由付けは必要だ。


【ユリアに操られて……!】

「おのれ!」

「いや、私はそんな洗脳をかけていないぞ」


 フラウの睨みを受けて、ユリアが冷静に言う。

 魔族に復讐はしたいが、だからこそ人間であるフラウにはそれほど興味はない。


 もちろん、洗脳をかけている暗黒騎士にも、彼女を殺すように指示はしていない。

 純粋に暗黒騎士の願望である。


【洗脳だからね。殺されても仕方ないね。積年の恨み、今ここで晴らしてくれる……!】

「洗脳にしては私怨が強くないか?」


 冷静に言うフラウに、暗黒騎士はもはや問答無用とにじり寄る。

 兜の目元を赤く光らせ、四天王クラスを三人も圧倒した化物が近づいてくる。


 フラウは失禁寸前である。


「待て待て待て! 本気で私を殺すつもりか!?」

【うん】

「素直……」


 あまりにも気持ちのいい返事が返ってきたため、殺されてもいいかなと思った。

 嘘である。思っていない。


 何があっても死にたくない。


「待て、待てぇい!」

【聞く耳持たん。言いたいことは、あの世で言うんだな】

「お前本気でラスボスになっているぞ!」


 ひいいいっと悲鳴を上げながら後ずさりするフラウ。

 女騎士としての凛々しさがかけらも見られないのだが、彼女からすればそんなのはクソである。


 凛々しさよりも命。


「バカ野郎! 私はお前のためを思って言っているんだぞ!」

【女騎士がバカ野郎って言うな】


 いまだに女騎士への幻想を捨て去れない暗黒騎士が苦言を呈してくるが、動きが止まる。

 これが、フラウ自身のためだと言われたら、まったく止まることはなかっただろう。


 しかし、自分のためと言われれば話は変わる。

 自分大好き大切な暗黒騎士は、一応聞く姿勢になる。


「どうしてここに私たちだけで、ルーナがいないと思っている?」

【重要人物だからだろ。万が一にも魔王が殺されたら、またあの魔王継承争いだぞ? お腹いっぱいだわ】

「ふっ、違うんだなぁ、それが。暗黒騎士くんには分からないかぁ」


 やれやれと首を横に振り、頬を膨らませてぷっと噴き出す。

 暗黒騎士は剣を構える。


 是非もなし。


【言い残すことはそれだけか】

「い、いつもの癖で煽ってしまっただけだ! 許せ!」


 こんな状況でうっかり出てしまうような癖に、煽り癖を持っているのはどうかと思う。


【だいたい、どれほどの理由があろうと、もう後戻りはしないしできないぞ。このまま突き進み、俺はすべてから逃げ出す】


 キリッとした雰囲気を醸し出しながら、暗黒騎士は憚ることなく言ってのける。

 言っていることはとてつもなく情けないが、周りにいるのはフラウだけである。


 メビウスやテレシア、トニオは倒れ伏しているし、ユリアは安全圏に避難中だ。


「ルーナが暗黒騎士対策でとんでもないことをしようとしているから、多分無理だと思うぞ」

【…………とんでもないこと?】


 これが、フラウが対策をしている、という言葉だったら、暗黒騎士は鼻で笑っていただろう。

 だが、それがルーナとなれば話は別だ。


 魔族絶対繁栄させるウーマン。

 そのためならば、自分すらも切り捨てることができる、鉄の魔王。


 まさしく、魔族のために生まれてきたような、そんな女。

 彼女がとんでもないことをしようとしているとなれば、警戒しないはずがなかった。


「お前とまともにぶつかって勝てると思っていないだろうしな。私もそうだし。だから、今みたいにテレシアとメビウスがやられた時点で、最悪の状況を回避するために、ルーナは大魔法を使うことを決めた。私たちも巻き込むほどのな」


 ゾクリと背筋が冷える。

 ……やりかねない。


 ルーナならば、その程度のことはやりかねない。

 フラと同じくらい警戒している女のことなので、暗黒騎士は言葉を詰まらせる。


 だが、それでも!

 今回のことは、決してあきらめることはできない。


 なにせ、ようやく振ってきた魔王軍を辞める大チャンスなのである。

 辞めるつもりが、いつの間にか四天王から大将軍に昇格しているし、このままではいつまでたっても辞められない。


 だから、ここは多少の危険をはらんでいたとしても、突き進み……。


【……た、たとえ、どのようなことがあろうとも、俺はもう引き下がら――――――】

「封印魔法。周囲にいる連中を巻き込んで、洗脳された暗黒騎士を封印してしまおうとしている。ちなみに、期間は1000年」

【ユリア、もういいんじゃないか?】

「変わり身はやっ!」


 暗黒騎士はユリアの方を向き、説得を開始するのであった。




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