表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
81/321

第81話 鉱物性能

 鉱物性能一覧表というお宝をゲットしたぜ! 舐め回すように見入る。


 推奨 鉱物名称   共鳴 基本値

 20 カルンウェナン 5 210

 19 クラレント  10 210

 18 クロケアモルス15 215

 17 ベリサルダ  20 220

 16 プレシューズ 15 225

 15 ミュルグレス  5 230

 14 ブルトガンク  5 185

 13 アルケビレス 10 180

 12 クレザルス  15 175

 11 ウィルスンク 20 170

 10 フランベルジュ 5 165

  9 グラディウス 10 160

  8 ファルシオン 15 155


 ベリサルダってアルベルトが使ってる武器、プレシューズはクラウスの代替武器だ。あとは名前を聞いたことあるのが少し、あ、ウィルスンク、これはジェラールがトランサスの次に作った武器だったね。


「失礼するよ」

「あ、先生!」


 フリッツが工房に入って来た。職人はチラッと見ただけで作業を中断しない。連絡役だから知っているんだね。


「調子はどうだ」

「剣を4本終わらせました」

「はは、流石だな」


 フリッツは俺の横に座る。


「様子を見に来た、昼になれば一緒に西区へ帰る。両親にも伝えてあるからな」

「分かりました」

「ほう一覧表か」

「うん貰ったんだ」

「剣技適性の高い鉱物から順に並べてあるようだな」


 それでか、意味不明の項目があるのは剣前提だからなんだね。


「この推奨って何?」

「扱うのに推奨される剣技レベルだ。適性の5分の1と言われる」

「推奨レベルが合っていないとよくないの?」

「例えば剣技15なら推奨はミュルグレスだな。その上のプレシューズも、もちろん武器として使えるが本来の力を発揮できないのだ」


 本来の力? どゆこと。


「例えば剣技による斬撃がミュルグレスが100、プレシューズが110としよう。剣技16の者が使えば前者なら100、後者は110だが、剣技15なら両方とも100となるのだ」

「あー、そういうことか」


 なるほど、武器の立場からしても、自分の力を最大限引き出すのにはそれ相応の能力を求めるワケね。『キサマにオレが扱えるか』的な。


「じゃあこの表で言うと剣技20あれば全種の本来の力を引き出せるんだね」

「その通り」


 んー、それから基本値。確か試験素材を鑑定すると分かるんだよね。でも切断と斬撃があったはず、ここには1種類しかないな。


「基本値は2つあったと思いますが」

「切断と斬撃だな。試験素材の基本値は同じだから省略してるんだよ」

「あー、そうなんですね。じゃあ合金にすると違いが出てくるんだ」

「いかにも」


 確かに、トランサス合金の鑑定結果でも揃ってることは無かった。そんなに大きな差はないみたいだけど。


「あ、お仕事しないと。次は弓をしようかな」

「そうだった、もう休憩はいいのか」

「うん」


 弓を持ち構える。これも早く慣れて共鳴変化の時間短縮や魔力消費の効率化をしないと。


 キイイィィーーン


 よし、できたぞ。


 キュイイイイィィィーーーン


 80%、90%、100%……


 維持して変化共鳴!


 ギュイイイイィィィーーーン


 110%、115%、120%……


 変わった!


 シュウウゥゥーーン


「ふーっ、休憩」


 剣を4本やった後にしてはそこまで疲れてない。共鳴変化自体にも慣れてきたね。


 ソファに座って一覧表を見る。


 しかし切断と斬撃か。切断は切る事なんだろうけど斬撃は具体的にどういうことなんだろう。切ればそれでダメージだと思うが。


「先生、切断と斬撃は魔物に対して、それぞれどういった効果を発揮するんですか」

「いい質問だな、簡単に言うと切断は切る力、斬撃は進む力だ」

「進む力?」

「うむ。どちらかに偏った例を挙げれば想像しやすい。切断100、斬撃50の武器で切りかかった場合、切り口は鋭いが傷口は浅い。逆に切断50、斬撃100の武器なら、切り口は荒いが傷口が深いのだ」

「おおー!」


 よく分かったが、待てよ。それなら斬撃が高い方が強いんじゃ。切り口の綺麗さなんて魔物を倒すのにそんな関係ない気がする。


「先生、斬撃が高い方が魔物にとって痛手なのでは?」

「その通り、しかし合金でも切断と斬撃はほとんど同じだ。今のは違いを説明するための極端な例だからな」

「ああ、そうでした」


 でも進む力か。深く切り込む力? でいいのかな。


「進む力についてもっと詳しく教えてください」

「うむ。斬撃が進む力を生み出すのは魔物体内の魔素に作用しているからだ。魔素と魔素の結合を解除し進行方向と逆側に放出する。それが剣身の進む力となり結果的に血肉の破壊をもたらしているのだ」

「……はい」


 結合を解除。つまり分解? 多分そうだろう。んで放出して進む力、ふむ。


「その結合を解除する効果には範囲があり、広ければより多くの血肉を破壊できる。それからその効果が作用する頻度も違いがある。多ければ硬い組織も破壊しやすいのだ」

「ほほー」

「範囲が広く頻度も多い、それが斬撃の値が高いということだ」


 あー、なるほどね! 鉱物によって違いがあるのってそういうことだったのか。はー、強さが違う謎が解けた。考えてみたら不思議なもんだよ、長さも重さも同じ金属で切ったら同じ様な結果になるはずだもん。


「まあ理屈はいい。切断は刃物としての切る力、斬撃はその他の破壊をもたらす力、そう考えろ」

「分かりました」


 うん、それがシンプルでいいね。


「それに剣技の斬撃が加わって一連の流れが完成する」

「あ、そっか、さっきのは鉱物性能でしたからね。なるほど鉱物の切断と斬撃に剣技の斬撃が足されてひとつの攻撃なんだ」

「うむ、それが基本だ。まあ実際は剣技にも色々あるし魔物素材の特性や精霊石を使った戦い方もあるからな」

「あー、確かに」


 バリエーション多いのね。しかし俺の場合は剣技が無いからトランサイト合金の切断と斬撃だけで戦っているんだよな。もちろん共鳴による底上げと伸剣があるが。それであそこまで戦えるなんて、ほんとにいい性能なんだな、トランサイトという鉱物は。


「あ、そろそろ次をやらないと」


 弓を持って構える。


 キュイイイィィィーーーン


 共鳴変化!


 ギュイイイィィィーーーン


 よし、できた!


「ふーっ、休憩」

「はは、弓も慣れてきたようだな」

「うん、やっぱり数をこなすのが一番だね」


 ただ本数やったから少し回復が追い付いてないな。ちょっと長めに休むか。


 一覧表を眺める。あれ、基本値って切断と斬撃、つまりまあ武器の強さだよね。最初に剣技適性の推奨レベル聞いたけど、あれなら単純に基本値の高いヤツがいいんじゃ。


「先生、推奨レベルが合わなくて本来の力が発揮されないと言うのは剣技での斬撃についてですよね」

「そうだ」

「では基本値が高い武器を使えば問題ないのでは。つまり剣技10の人が推奨のフランベルジュより、例えばミュルグレスを使えば基本値で言うと165が230ですよ。本来の力が発揮されなくても推奨より絶対強い」


 いやむしろ全員ミュルグレスでいいことになる。基本値が一番高いから。


「それでは推奨のフランベルジュを使った時より剣技の斬撃は低くなるな、おまけに一太刀で息が上がる」

「え、どうして」

「リオンよ、大人用と子供用で剣身の長さが違う理由が分かるか」

「それは子供の体で剣身80cmは長すぎて振り回されるからです、あ!」

「そういうことだ」


 なるほど! 体に最適なサイズがあるように剣技レベルを武器に合わせないと扱いきれんのか。それで無理に使うとマイナスの影響が出る。


「例えば服や靴で考えて見ろ、大きければいいというものでは無い。つまり身の丈に合った物を使うことが自身の力を最大限発揮することに繋がるのだ」

「一太刀で息切れはどうして?」

「剣技を使おうとした時に、推奨に届かない剣技レベルだと無意識に魔力で補おうとするんだ。結果その差が大きいほど魔力の消費も大きい」


 はー、やはり息切れは魔力に関係してたか。


「じゃあ俺は剣技が無いから平気なの?」

「剣を振るも立派な技だぞ。だから影響はある」

「え、ずるい、スキルじゃないよそんなの」

「切り上げ、切り下ろし、それらは一連の動作だからな。つまり剣技を行使したと同様に魔力を消費している」


 うへー、何だそれ。あれ、でも待てよ。


「先生、俺そんなに魔力を使ってる気がしないんですが」

「それはお前が異常だからだ」

「う」


 ストレートにおかしい人扱いされた。その通りだけど。多分無意識に抑えるなり最適化するなりして影響ないようにしてるんだろうな。英雄の力はほんとすげぇ! 何でもありだぜ。


「そろそろ共鳴しなくちゃ」


 弓を握り構える。


 キイイイィィィーーン


 ギュイイイイィィィーーーン


 ふーっ、はー、やっぱ疲れたな。これで剣4本、弓3本か。


 あ、俺の代替武器を忘れてた、トランサス合金のままだ。まあ、あれはお仕事じゃないし構わないか。もう後20分くらいで昼の鐘が鳴る、この休憩が終わったら次が最後だな。


 一覧表を見る。


 トランサスやシンクルニウムもあるのね。


 推奨 鉱物名称    共鳴 基本値

  8 シンクルニウム100 170

  6 トランサス   80 150


 11 ウィルスンク  20 170

 10 フランベルジュ  0 165

  9 グラディウス  10 160

  8 ファルシオン  15 155


 おー、ジェラールの鉱物選択はそういうことだったのか。


 今、彼は剣技レベル10で、もうすぐ11になるだろうと言っていた。本来推奨はフランベルジュだけど、そう間もない内に11になるならその期間は適性とのミスマッチを頑張る選択をしたんだね。


 最初にトランサスを使ってたのは多分剣技レベルの関係だ。


「先生、訓練討伐に行くような子供は洗礼で剣技が通常より高いんですよね」

「うむその通り。剣士で冒険者を目指すなら洗礼時に剣技レベルは5あればいい。しかし訓練討伐に行く子供なら剣技7は欲しいところだ」

「ふむふむ」


 多分ジェラールは7だったんだ。それでトランサスしか選べなかった。もし8だったならシンクルニウムやファルシオンも選択肢だね。んーでもファルシオンの共鳴効率や基本値から考えるとシンクルニウムになるか。


 ただシンクルニウムは価格が高いから剣技があって共鳴も出来るならトランサスで十分と判断したかもしれない。俺は剣技が無いからシンクルニウムになったけど。多分クラウスの頭では最初からシンクルニウム一択だったんだね。かなり早く決断してたし。


 思い出した、確か北区の風呂を借りていた頃、一緒に入っていた西区の人が言ってたぞ、訓練討伐行くような子供はお金をかけていい装備にするって。でも推奨武器があるからお金かけてもできないじゃん。


「先生、お金を掛ければいい装備に出来るワケではないんですね」

「武器はな。しかし魔物装備は誰でも使えるぞ」

「あ、そっか!」


 なるほど、じゃあそれの高価ないいやつで身を固めるのか。おー、ジェラールもミランダからいいの貰ってたよな。確か剣技威力10%増加の手袋って言ってた。威力って斬撃による破壊する力だよね。あと走力7%増加のブーツも持ってたな。


 おや一覧の下に興味深い計算式が。


 基本値×1.3=合金での基本値

 例:ベリサルダ 基本値220 合金286


 ほー、試験素材の1.3倍が合金の基本値になるのかー。

 これトランサイトだとまず基本値がトランサスの1.5倍だから


 150×1.5=225


 合金で1.3倍


 225×1.3=292.5


 ああよく鑑定結果で聞いた数字だ。小数点以下は四捨五入でいいのかな。ふーんベリサルダと同じくらいなんだ。アルベルトが使ってるくらいだから第一線の武器だよね。他の項目も比べてみよう。


        共鳴 適性 基本値 合金 

 トランサイト120 45 225 292

 ベリサルダ  20 85 220 286


 共鳴効率の差がやはり大きいね。剣技適性40の差はどのくらいの斬撃になるんだろう。あ! も、もしかして、剣技適性が低いって逆に凄い事なのでは。


「先生、トランサイトって子供にとって大革命では」

「その通りだリオン、推奨剣技レベルが9だからな。養成所の冒険者なら10を超えている者がほとんどだ、共鳴も皆10%以上、4人に1人は30%くらいまで出来る」


 合金基本値を共鳴率で比べてみると……。


        10% 30% 50%

 トランサイト 252 306 360

 ベリサルダ  224 233 242


 うは! これはヤバい! ロンベルク商会のビュルシンク支店長と店員のアーレンバリが興奮気味に議論してた理由が分かったぞ。確かに剣技適性の差を補って余るほどの数値だ。この上、トランサイトは共鳴11%以上で魔素伸剣が発動するんだよな。


 ああ、とんでもない武器だった。


「先生、トランサイトってかなりのモノだったんですね」

「何を今更、歴史上にしか存在しないと言っただろう、まあそこに何本かあるが」


 こんなの量産しちまって大丈夫なのか。


「そろそろ鐘がなる、最後に1本できるか」

「あ、うん、やる!」


 弓を持つ。


 ギュイイイイィィィーーーン


 ふー。2時間ちょっとで8本か。まあ上出来だ。


 ゴーーーーーン


 昼の鐘だ。


「さあ帰るとするか」

「工房の皆さん、お先に失礼します!」

「おお、お疲れさん」

「お疲れ様ー!」

「お疲れさまでした」

「何本できたかい?」

「剣4本、弓4本です、工房長」

「そ、そうかい、大したもんだよ。そうだ昼過ぎにリオンのミランデルが仕上がるからね、取りに来るのはいつでもいいいよ」

「はい」


 そういや昼から俺の仕事はどうなるんだろう。


「午後も共鳴作業をするんですか」

「私は聞いてないね」

「分かりました」


 まあ武器を取りに商会へ来るからその時ミランダに聞こう。昼過ぎに村へ戻ると言っていたからね。明日訓練討伐なら1日居ないし今日は出来るだけ仕事したいところ。


 工房を出て商会店内へ。


「リオン様、お疲れさまでした」

「うんララさん、また来るね」


 メシュヴィッツに挨拶をして中通りへ出る。雨は上がって晴れ間が出ていた。


 ふーっ、働いた! のかな。かなり凄い事をやっているはずだけど実感が薄い。それで大きく稼げるんだから贅沢言っちゃいけないね。


 それにしても共鳴と共鳴の間の過ごし方を考えないとな。この一覧、剣向けの鉱物だったから、ひとまず他の武器種を貰おう。隣りに誰かいてくれると聞きたいことがある時に助かるんだけどな。職人の手を止めて来てもらうのも悪いし。


 商会の行き帰りに同伴してもらう人が必要だからその人を工房に連れて行けばいいか。もちろんトランサイトのことを知っている人に限られるけど。候補はフリッツ、クラウス、ソフィーナ、カスペル、ランドルフ、フローラだな。


 ランドルフとフローラは身内でもないし流石に頼めないな。クラウスとソフィーナは商会来訪に備えて西区から出られないだろう。となるとフリッツかカスペルだな。でもよく考えるとカスペルが工房に入っていいものか分からんな。結局フリッツか。


「先生、昼から仕事があったら工房で一緒にいてくれますか」

「ああ構わんぞ」


 そうは言ってくれるけど結構長い時間拘束しちゃう。この辺のこともミランダに相談しよう、商会絡みで誰かあてがってくれるかもしれないし。あ、鑑定の講師はまだなのかな、ぴったりなんだけど。でも鑑定も魔力使うよね、一応休憩だからなー。


 働き出したからか急に効率を求める思考になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ