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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
43/321

第43話 2人の連携

 街道沿いの平原に訓練討伐の2班が集合する。うち大人6人は子供それぞれの同伴だが今日はもう1人行動を共にする、北西部防衛部隊のミランダ・コーネイン副部隊長だ。俺の訓練討伐参加を許可した指揮官である。


 規律の厳しい騎士団を束ねている所以か彼女には威圧的な雰囲気が漂っている。ハッキリ言って怖いだけだ。しかし騎士家系と思われるリュークとサンドラは尊敬と憧れの念を抱いている様子。ジェラールとマルガレータも昨日までとは顔つきが違う。 


「今日の方針を確認するわよ」


 マルガレータの声で作戦会議が始まった。


「知っての通りミランダ副部隊長が同伴されるから無様な戦い方は絶対ダメ、美しく優雅に倒すのよ」

「なにそれマリー、分かんない。いつも通りでいいんじゃない」

「シーラ、評価されれば士官学校に推薦されるわ」

「私はいいよ」

「こんな機会はそうそう無い、しっかり印象付けるの」

「でもサンドラ、私は騎士に興味が無いから」


 ほう士官学校への推薦なんてあるのか。


「リオンだったら直ぐ初等部に編入できるわ」

「うーん、別にいいかな」

「どうして、その実力はあるじゃない」


 マルガレータは俺のためを思って言っているが、こちらとしては変に目立って環境を変えたくない。加えてトランサイト合金を知られたら面倒な展開になりそうなので、不自然な戦い方は避けるべきだ。


 うーん、そうだな。


「ちょっと提案! 今日は連携を重視してはどうかな、それぞれの役割をしっかりこなすんだ。それがマリーの言う美しい戦い方に繋がると思うよ」

「そうね、リオンの提案を採用するわ」

「前衛と後衛がペアってのはどうだい? それなら柔軟に対応できる」

「そうしましょジェリー。じゃあアタシとリオン、リュークとシーラ、ジェリーとサンドラでどうかな」

「いいよ」

「うん、分かった」

「異議無し」

「了解」

「いいね」


 俺はマリーか。


「最初に魔物の注意を惹くのはいつも通り前衛、その後はペアで支援するのよ。じゃあ行くわよ」

「おー!」


 よーし、やるか。


「副部隊長、お待たせしました」

「構わん、戦いは準備で決まる。ついて来い」

「はい!」


 ミランダを先頭に2班の子供たち、少し離れて同伴大人がついて行く。結構前で張り付くのか、益々やり辛い。


「ここは村に最も近い進路だ。Eランク上位との対峙も覚悟をしろ」

「はい!」


 森へ入る。確かに村が魔物の南下を遮っているとは言え、西区の西側の森はこの森と繋がっている。Eランク上位のガルウルフどころか、クラウスたちが申請討伐で倒したレッドベアやサーベルタイガーのDランクが流入している可能性もあるのだ。


 そんな進路へいくら才能があるとは言え子供が入って大丈夫か?


 200mほど進むとリュークが立ち止まる。


「ヘルラビット3体、左2、右1、俺が左手前に行く」

「じゃあ俺は左奥ね、リオンは右のを頼む」

「分かった!」


 2班は身体強化の集中を始める。ミランダは俺を凝視していた。怖い。


 どうしよう、俺もちょっと時間が掛かっている風を装うか。いやいや魔力操作に長けている条件で訓練討伐に参加しているのだ。その分野が他の子より優秀でも何ら問題はない。むしろしっかり見せるべきだ。


 よし、まずは共鳴。5%でいいな。


 キイィィン


 いくぜ!


 魔物の注意を惹いて進路へ引っ張る。あとはマルガレータ目掛けて走り、彼女の射程の前で進路を離脱する。


 タッタッタ


 思惑通り魔物は俺についてくる。もう直ぐ後衛から20mだ。マルガレータに顔を向けると小さく頷いた。俺は減速し進路を外れる。


 ズバッ!


 転回する魔物へ風の斬撃が命中する。俺は一気に間合いを詰めて剣を振り下ろした。


 スパン!


 首を落としたぜ。討伐完了!


 直ぐ進路を見るとジェラールとリュークが1体ずつ引き連れてくる。


 リュークが進路を外れると魔物は止まって向きを変える。そこへ彼は切り込み直ぐに間合いを離した。続けてシーラから放たれた氷の矢が突き刺さる。魔物は完全に沈黙しリュークがダメ押しの一発をお見舞いした。


 ジェラールは長い距離を走ったため進路離脱後に切り込みはしなかった。魔物の頭にはサンドラの矢が突き刺さり、少し燃焼を伴っているため動きの回復が遅い。そこへジェラールの全力の一撃が振り下ろされる。魔物は倒れ血肉が消え始めた。


「休憩、集合!」


 腰を下ろして呼吸を整える。


「ジェリー、今のよかったじゃない」

「ありがとマリー、いいところに入った」

「いつものクセで行きそうになった」

「そうね、流れとしてはリュークが切り込んでも良かったけど、今日はなるべくペアで頑張りましょ!」


 いい感じ。2人で戦う前提ならそれに合わせた流れも自然と構築される。もしジェラールの切り込みで倒せていなくても、サンドラは2発目を撃つ準備が出来ていた。万一それが外れてもジェラールは再び切り込んだだろう。


 ミランダは同伴大人のアードルフと何やら話し込んでいる様子。


「休憩終わりました、行けます!」

「では出発!」


 進路を歩く。


 それにしてもリュークは魔物の発見が早いな。何かコツがあるなら後で聞いてみよう。


 200mほど進むとリュークがまた発見する。


「グリーンラクーン2体、右は俺が行く」

「じゃあ俺は待機。リオン」

「うん、左を任せて」


 強化共鳴5%、いくぜ!


 グリーンラクーンは緑の狸だね。ダークウィーゼルと姿が似ているがヘルラビットより報酬は低い。難なく1人で倒せるはずだが今日は後衛へ引っ張ろう。


 ガオッ!


 俺を標的にして真っすぐ距離を詰めてきた。確かにダークィーゼルに似ているし動きも速いがクセは無さそうだ。このまま後衛まで引っ張ろう。


 タッタッタ


 マルガレータまで20m、彼女を向いて少し頷くと進路を外れる。魔物は減速し体の向きを変えた。


 ズバン!


 風の斬撃で魔物の頭が勢いよく地面に転がる。マルガレータ1人で倒しやがった。それにしても恐ろしい技だぜ。


 もう1体もリュークが進路へ引っ張りだしこちらへ駆けてくる。後衛の射程に入ると減速し進路を外れ、そこへシーラの氷の矢が突き刺さる。頭に入ったな、一気に凍り付き魔物は動きを止めた。リュークは切り込む構えを見せるが中止した模様。


 どうやら倒したらしい。やるじゃないかシーラ。


「休憩、集合!」


 戦いに参加した子供は息を整える。


「シーラ、やったね!」

「ありがとマリー! ラクーンを1撃で倒したの初めて……へへ、嬉しい」


 シーラは涙ぐみ笑顔だ。それにしてもよくあの距離で正確に頭を狙える。


「マリーこそ流石だね!」

「へへん、もっちろん!」


 マルガレータも大したものだ。確実に首を切り離す角度で斬撃を飛ばしているからね。


「リオンの誘導も完璧だったわ、さっきのラビットも含めて」

「20mを意識したよ」

「丁度いい距離で狙い易かったわ」


 ふふ、満足そうでなにより。しかし今日のこの一体感は何だ。ある意味ミランダのお陰か。彼女はフリッツと話し込んでいるが話題が気になる。


「終わりました!」

「よし、出発!」


 森をどんどん進む。この辺りの北側は西区の畑だろう。


 そうだリュークに魔物の見つけ方を聞かないと。今は集中して探してるから邪魔しちゃうか。そんなにキョロキョロしてはいないな。


「ダークウィーゼル……2、いや3体だ、右奥は俺が行く」

「じゃあ俺は左、リオンは右手前な」

「分かった!」


 そう言えばいつも俺に選択肢が無い。まあいいけど。恐らくジェラールやリュークなりに基準があるのだろう。俺よりも実戦経験が豊富だから要らぬ口は挟まない方がいい。


 右手前か。共鳴して距離を詰める。


 そうあいつだ、面倒な魔物ダークィーゼル。今回は全体の戦術もあるしまずは後衛に頼ろう。


 ギャアァ!


 俺を発見し近寄って来るが、少し蛇行して変則的な軌道を描いている。これに惑わされてはいけない。後衛へ連れて行くぞ。


 そうだアレを試すいい機会だ。


 マルガレータまで15m付近といつもより近めで進路を離脱する。すると地面を這っていた魔物は上半身を起こして後ろ脚だけで立ち上がった。森の奥で発見した際のシルエットだ。この体勢で周りを見ているのだな。ただ戦闘中は的でしかない。


 マルガレータと俺へキョロキョロと頭を振る。


 ズバッ!


 魔物の首筋に風の斬撃が飛ぶ。しかし到達直前に頭を動かし首が飛ぶ角度を変えたらしい。やるな。それでも前脚1本が切断され機動力を失った。チョロチョロとうっとおしい動きが出来ないならお前は敵ではない。


 一気に間合いを詰めて剣を振り下ろす。


 スパン!


 首を落とした。


 討伐後の臭いを防ぐため直ぐ距離を取る。進路から少し森に入り太めの木を背にした。


 進路を見るとジェラールが1体を連れてきている。彼は1体目の討伐を確認すると同じ位置へ誘導し進路を離脱。魔物は止まり再びあの体勢を取る。


 ズドン!


 サンドラの矢が頭に命中し火を吹く。


 ズバッ!


 続けてジェラールが切り込み魔物の首が地面に転がる。


 直後にリュークが3体目を同じ場所まで引っ張ると進路を離脱、魔物は後衛に頭を向けて動きを止める。


 ザシュッ!


 氷の矢が胸元に突き刺さると広範囲に凍り付き、両前脚の付け根まで覆われた。あれでは後脚しか動かせない。完全に的になったな。


 ザンッ!


 リュークが切り込み首を落とす。これが最後の個体だ。


「休憩します、集合ー!」


 やはり後衛に頼ることで負担を大幅に縮小できる。そしてダークウィーゼルの習性がカスペルに聞いた通りだった。標的が多いと止まって観察する。敢えて後衛に近めの距離で進路を外れ、その動きを引き出すことに成功した。


「今の流れはかなりよかった」

「美しく優雅だったわ」

「3体とも同じところで倒したよ」


 シーラの言う通り、魔物の亡骸は1個所に集まっていた。まるで最初からそこで倒すと決めていたように。


「サンドラはよく当てたな、ウィーゼルの頭は小さいのに」

「狙える距離だから当然よ」


 サンドラの弓は速い。もしかして。


「その手袋は魔物装備?」

「うん、矢の速度が増すの」


 やっぱり。


「リュークは手袋と腕輪だよね」

「ああ2つで腕力がかなり上がる」

「でも高いんだろ」

「そうだな」


 うわー、金かけてるね。いやむしろ金で済むと考えたら安いものか。それだけ鍛え上げる時間を先取りしたのだから。


 いずれにしろ我が子に持たせるなら少しでもいい装備だ。魔物と対峙するのだからケチって傷を負えば悔やまれる。クラウスが惜しげもなくつぎ込むのも理解できるな。あれで結構親バカなのかも。


 むむ、子供たちの様子が変だ、表情が引き締まってきたぞ、もしや魔物?


「リオン」

「え? うわ、は、はい!」


 振り返るとミランダが見下ろしていた。急に来るから身構えたじゃないか。ある意味、魔物より怖い。


「ああ構わない、お前たちは座っていろ。すまんが武器を見せてくれ」


 彼女は立ち上がろうとした子供たちを制止する。武器を? まずい、何か気づかれたか。でも渡さないと余計に怪しまれる。ここは渡すしかないな。


「……」


 ミランダは剣身をまじまじと見つめ言葉を発した。


「入手先はどこだ」

「ええと、あの、ジェリー」

「副部隊長! それは数日前まで俺の所有です、不要となったためリオンに譲りました。購入先はルーベンス商会、メルキースのマクレーム支店であります! 剣身の素材はトランサス合金でして購入時の定着期間は3年、あと8日でその期間が終わります。購入価格は……」

「もういい、分かった」

「はい!」


 ほう3年、ジェラールは11歳だから最初に作ったなら8歳か。ああ洗礼を終えて優秀な戦闘スキルが備わった、そして冒険者を目指して武器を調達したと。誕生日は1月~4月の間だろう。


「返す」

「は、はい」


 ミランダは俺に武器を手渡すと大人たちに合流する。その表情は少し笑っていた、何だよもう。


「休憩終わりました、出発します!」


 2班は立ち上がり進む。


 ほどなく森が開けて河原が見える。またここまで出たね。


「出たら上空注意!」

「うん!」

「分かった」


 サンドラの声に応える。昨日はグリーンガビアルに不意を突かれたから川も注視しないと。


 河原に出て空を見上げる。かなり上空にいくつか影が見えるがあの高度は無視でいい。河原にも魔物は見当たらない。


 いや、あれは。


「レッドベア! それからガルウルフ3!」


 シーラが声を上げた。上流の河原から真っすぐこちらへ向かって来る。うは、こんなところに出るのか。あの強敵のガルウルフが3体に加えてDランクのレッドベア、こりゃとても2班では手に負えない。


「2班の子供は動くな、ベルンハルトは一緒にいろ。アベルとエドガールは少し前で待機、レベッカとアードルフは川から回り込め、フリッツは私と来い」

「うむ」

「はっ!」


 ミランダは指示をしながら剣を抜く、判断が早いな。フリッツも剣を抜き、走り出したミランダに続いて魔物へ向かった。アードルフとレベッカは川へ走る。


 河原へ視線を戻すとガルウルフが2体倒れていた。早い! ミランダとフリッツがやったのか。川から回り込んだ2人はもう1体のガルウルフを仕留めていた。


 視線をレッドベアに移すとフリッツが脚に切り込むところだった。そこそこ深く入ったらしく少し前傾姿勢になり動きが鈍る。すると魔物の背中をミランダが駆け上がり首筋に一閃して飛び降りる。


 グガアアァッ!


 怒りに顔を歪めながら魔物はミランダに一歩踏み出す、と同時にフリッツが片腕を切り飛ばした。フリッツに注意が向いた次の瞬間、ミランダが片脚を切り離す。


 ズウウゥン


 魔物は河原に崩れ完全に沈黙した。なんと素早い討伐だ、これが騎士の本気か。


「素材を回収する」


 大人たちが角や爪を剥ぎ取る。ほほう案外簡単に骨から離せるのね。何か刃物を使うワケではなく少し角度をつければ接合部からきれいに取れる。


 それにしてもレッドベアの角は大きい。3本あるが長さ1m50cm~2mほど、直径も太いところで50~60cmはある。


「副部隊長、かっこいい」

「ほんと……美しいわ」


 マルガレータとサンドラは頬を赤らめている。確かに華があるな、無駄のない動きに流れるような剣さばき。これはいいものを見せてもらった。


 ただ村の住人も負けてはいない。先日のクリムゾンベアはレッドベアよりひと回り以上大きいのに先程と討伐時間は変わらなかった。もちろんそれなりの人数をかけているが、その分、成熟した連携が必要だ。


 今回のレッドベアは最初のフリッツの脚への1撃、あれで勝負あったな。そこからは立て続けに攻撃を浴びせて魔物は何もできなかった。年齢を感じさせない動きは流石Bランク冒険者ということか。


 なんだか俺、恥ずかしくなってきた。そりゃ魔力操作は凄いけど他に何もない。きっと本当の強さとは、勇気、判断、集中力、様々な要素が備わって初めて実現する。俺にはまだまだ足りない。


「引き返すぞ」

「はい!」


 素材回収を終えて2班は森へ入る。ベアの角を3本、大人がそれぞれ肩に担ぐ。それなりに重量があるだろう。確か売却金額は1本で3万ディル、じゃあ3本で9万か。討伐報酬は10万だから爪やら含めると20万は確実に超える。レッドベアおいしいなー。


 それにしてもシーラは遠目でもレッドベアと直ぐ認識していた。城壁の避難部屋で日頃から見慣れているのだろう。ただ訓練討伐の進路にこんなのが出たら危ないぞ。


 それでミランダも同伴したのか。なーんだ俺を観察じゃないと、これは自意識過剰でした。でも武器を見たのは何のつもりか。


「フォレストタートル3体、右前のを俺が行くよ」

「俺は左前、リオンは左奥のを」

「分かった!」


 亀の魔物か。固い甲羅があるなら今までと同じ戦い方は通用しないだろう。ひとまず近づいて様子を見るか。


 ほほう頭から1本、両肩と両後脚の付け根から1本ずつで計5本の長い角が生えてる。甲羅は直径1mか、流石に硬そうだ。ならば狙いは頭や脚の付け根だな。


 ギャオッ!


 ひい! 突進して来た。そして亀のクセに意外と速い。ただとても跳び掛かる体型ではないな。次に突進したら首筋を狙ってみるか。いや進路まで出そう、今日はペアで連携だからね。


 マルガレータまで15mほど近づき離脱、頼んだぞ。


 ガガガッ!


 なぬ!? 風の斬撃が直撃したのにケロッとしてやがる。流石に固いな。


 魔物は俺に標的を置いたまま突進してくる。よし、これを避けて首筋に共鳴の一撃だ。


 キイィィン


 おりゃ!


 ガインッ!


 ぐぬ! 一瞬で頭を甲羅に収納しやがった。そのまま振り下ろした剣が甲羅に命中したがあっけなく弾かれる。強化共鳴したトランサイト合金が通じないなんて何という固さだ。収納部の見えているところも甲羅と同じ硬度に見えるから突いてもダメか。


 魔物は頭と脚を出し突進を繰り出す。それを避けて切り込もうとするが再び甲羅の中へ引っ込める。ぐぬぬ、どうしたらいいんだ。


 共鳴率を上げるか。80%なら恐らく甲羅ごと切り裂ける。いやいや、そんなことしたら目立つ、ひとまず進路へ引っ張りだそう。


 え!? 後の2体は倒されている。どうやったのだ。


「リオンこっち!」


 ジェラールが呼ぶ方へ魔物を連れて行くと、手振りで森へ離脱するよう指示が出された。俺はそれに従い進路を外れる。


 ザシュッ!


 サンドラの矢が首に突き刺さり頭が燃え上がった。魔物は動きを止める。えっもう倒したの?


「休憩!」


 面倒な相手だったが耐久力は極めて低いらしい。


「今のは仕方ないよ、前衛では難しい」

「うんジェリー、硬いね」

「槍なら何とかなるけどね」


 そうか槍か、確かにリーチがあるもんね。それに刺す力が強いから1個所通ればそれで倒せる。剣も刺せるけど接近時に収納される可能性が高い。


「終わり! しゅっぱーつ!」


 ズルズル……。


 あはは、亀の甲羅に紐を巻いて引きずっている。加えて角や爪があるから荷物は多い。ただミランダは手ぶらだな。まあまた強敵が現れたらすぐ動ける大人は必要だ。


 道中のダークウィーグルとグリーンラクーンの素材を回収する。最初に討伐したヘルラビット地点を過ぎると流石にミランダも荷物持ちになった。副部隊長に持たせていいのか知らないけど。


 街道沿いの草原が見えてきた。もう直ぐ森を抜ける。


「ふー、お疲れ様ー」

「終わったね」

「お腹すいたよー」


 2班の戦闘は4回だが河原での大人の戦闘を含めると丁度いい時間になったか。


 あれ? 素材を運搬する荷車が無いぞ、誰かにパクられたのか! この辺りは治安がいいと思ったがセコい窃盗犯もいるのね。これは迷惑だ。


「子供たちは前の馬車に乗れ」

「え、はい!」


 あの2台の馬車は俺たちのために待機してたのか。大人たちは後ろの馬車に素材を積み込んでいる。なるほど最初からその予定だったか。思い返せば集合時に荷車を見掛けなかった。素材は荷車で運ぶと勝手に思い込んでいたや。


 馬車の内装は村まで向かう型と同じだ。長椅子に子供6人と大人4人が座る。フリッツとアードルフはミランダと共にもう1台の素材運搬に乗ったらしい。


 監視所へ向けて出発。

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