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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
序章
3/321

第3話 宇宙の声

 ここは何処だ。


 目が覚めると辺りは真っ暗、その暗闇に小さな光が見える、これは夜空か。いつの間にか寝てしまい日が暮れたようだ。ただ何故外に出ているのか。


(目覚めたか)


 なんだ!? どこからか声が聞こえる。


(前世の記憶が戻ったようだな)


 えっ何故それを! あんたは誰? 姿を見せてくれ!


(名乗るほどの者ではなく姿も無い。キミも今は姿が無く魂のみの状態だ)


 た、魂? おーいおい、また変なことを言う、もう勘弁してくれ。いやこれは夢だ、そうか夢なら平気だ。


(夢ではない現実だ。ここは地上から遥か上空、いわゆる宇宙空間だ、後ろを見るといい)


 後ろ? 振り返る意識をすると視界が動いた。そこに現れたのは……地球だ! テレビで見た宇宙ステーションからの景色が目の前に広がっている。凄い……表現しようのない壮大なスケールに圧倒された。それに何という美しさだ。


(これは地球ではない。キミが前世で過ごした地球と似ているが別の惑星だ)


 地球じゃない? でもどう見たって地球だ。水の惑星、地球。その青い海の上に白い雲、隙間には人類の暮らす地上も見える、ほらあの辺なんかはアフリカ、いや南アメリカ、でもないな、これは南北逆なのか。


 うーむ、世界地図を思い出すが大陸の形が一致しない。


(キミは地球で落雷の直撃を受け即死、享年41歳。死後その魂はこの惑星で新たな命に宿り生まれ育った。もうすぐ8歳となる)


 そうそう、やっぱりか! 8歳、確かにそのくらいの体つきだ。でも何故その事を知っているの?


(キミの魂の転生に関与したからだ。記憶が戻った今伝えることがある)


 転生に関与……伝えること……。


 むう、眼下の惑星の大陸地形はどれも見覚えが無い。どうやら本当に地球ではなさそう。この声の言ってることは合っているな、ひとまず信じてみるか。


(疑いは晴れたか)


 うっ! 頭の中が筒抜けか、意識での会話が成立しているなら今更だが。


(転生過程はキミの認識で概ね合っているが必要なものがある。


 1、転生準備を終えた魂

 2、魂の宿る新しい命

 3、転生枠


 この3つ目の転生枠について説明しよう)


 転生枠か、ほうほう。


(この広大な宇宙には人間が住める惑星が無数にある)


 じゃあ宇宙人はいるの? タコみたいな外見や目の大きい爬虫類っぽいやつとか。


(どの惑星の人間も同じような姿形だ。様々な理由があるが別の惑星からの転生時に違和感を抑えるためでもある)


 何だかガッカリしたような安心したような。


(転生時、魂が宿る新しい命が同じ惑星にある場合を同世界転生、違う惑星にある場合を異世界転生と呼ぶ。ほとんどは同世界転生だ)


 なるほど俺は地球からこの惑星に異世界転生したと。それは割と一般的ではない。


(異世界転生は別の惑星に行くことを転出、別の惑星から来ることを転入という。惑星には必ず神がおり、多くの神は転入を避けたいと考えている。不確定要因を排除したいからだ)


 俺はこの惑星から見ると転入した魂だと。それより神様っているんだ!


(神は存在し、担当する惑星の世界を管理している)


 あっ俺は転入だから不確定要因に該当しますよね、それってここの神様にあまり印象がよくないのでは。


(この世界の神はキミの存在を快くは思っていない)


 ガーン、なんと神様に目をつけられているとは。


(宇宙には様々な決まりがある。転生に関しては一定期間毎に一定数の魂を異世界へ転出し、また異世界から転入を受け入れる。目的は変化をもたらすためだが多くの神は安定を望むため嫌がる)


 変化が嫌か、分かる気がする。


(一定期間毎に一定数の転出入を行う、惑星毎に定められた言わば枠があるのだ。これを転生枠といい、それぞれ転出枠、転入枠という)


 すると俺は地球の転出枠を使用しこの惑星の転入枠で入ってきた。


(その通りだ。転出入枠は基本的に割り当てられた数を消化する。ただ惑星管理に高い評価を得た場合、神には特典として割り当て数をすぐ消化しないでいい選択肢が発生する。地球の神もそうだ)


 えっ地球の!? でもいいんですか? 大きな戦争とか環境破壊とか。


(地球の神は優秀な方だ、酷い惑星は沢山ある。それで地球の神は特典を活用し、このところ転出枠の消化をしていない)


 出ていくのを止めたかったと。何故だろう。確か多くの神様は転入を嫌がったはず。まあ俺みたいな。それは受け入れているのでしょう。


(毎回転入枠の消化はしているが理由は知らない。さて消化しなかった転出枠だが、その枠数は繰り越され蓄積されていく)


 ああ、無かったことにはできないと。


(特典を得てからは転出枠の割り当てが来る度に繰り越していたが遂に蓄積が上限に達する。それでも今回、繰り越したいと申し出てきた)


 よほど何か拘りがあるんですね。でも一杯じゃ仕方がない、ついに消化ですか。それで俺が転生と。


(そこで私は提案した。今回も転出枠を消化しないで済む方法があると。それはガチャだ)


 ガ、ガチャ!? ガチャってあのスマホゲームでよく見掛ける……あんまり印象は良くないけど。


(本来消化するべき枠だ、回避するならリスクも伴って貰う。ガチャの結果内容はこんな感じだ。


 ・転出枠消化の割当発生期間が当面10分の1。

 ・今回の消化数が10倍。

 ・次回の消化数が10倍。


 当然、地球の神にとって避けたい内容の出る確率が高い)


 ひええ、それでどうなったんです?


(結果は「蓄積されている転出枠数を全て1つの枠に圧縮する、今回消化する枠はその1枠のみ」だ)


 おっこれは当たりじゃないですか! うん大当たりだ! 地球の神様さすが!


(長い期間溜め込んだ蓄積が空になる上、再び同じだけ溜め込める。その上限は100万だ)


 100万!


(その100万の転出枠を圧縮した1枠を使い転生したのがキミだ)


 え!? ええー何か怖いんですけど。


(心配はない、転生は正しく行えた。ただ……)


 やっぱり何か……。


(転生枠には神が任意に何かを付与できる。転出枠には記憶を付与する神が多いが異世界で反映される確率は極めて低い。運良く残っても断片的でぼやけており、前世の記憶だと気づくことは少ない。記憶が残る確率は100万分の1ほどだ)


 へぇ記憶を……あ!


(地球の神は圧縮前の転出枠100万全てに地球の記憶を付与した。その結果100万分の1の確率で残る記憶が100%残った)


 おおう、そういうことですか、納得しました。


 いや? 思い出せないことあります、俺の名前や顔、妻、母親、子供たちも、みんなの顔や名前が思い出せません。絶対に知ってるのに。これは何故ですか。


(私が消した)


 えっ、そ、それは。


(いつまでも前世の記憶に(すが)って思いを巡らせないためだ)


 うっそんな、俺にとってはとても大事な記憶なのに、そんな言い方……。


(地球の神から伝言を預かっている)


 地球の!


(落雷による死亡は加入の生命保険の対象でした。医師の死亡診断書で死因として証明され目撃者の証言もあったためです。あなたの作った地元の人脈で残された家族への協力者は多くいます。あなたとあなたの父親の残した財産もあります)


 ああ、あああ……。


(記憶が残った転生では気にかかるでしょう、私も見ているので心配はありません)


 うう、よかった、よかった……。


(神の後ろ盾があれば地球上で最も安全だ。これで未練はないだろう)


 はい! もちろんです! 地球の神様にお礼を伝えてください。


(地球の神は甘いな。それで本来残るべき記憶を消したのだ。その埋め合わせもしてある)


 なんでしょうか。


(地球での知識の追加だ。消した分に見合うだけのな。今は分からないが必要に応じて思い出す)


 分かりました、ありがとうございます。


(さて時間もそろそろだ、これより魂を体へ戻す。その前に聞きたいことはあるか)


 ええと……あっそうだ、今聞いた内容は誰かに話したらやっぱりマズいですよね。


(構わん好きにしろ。ただ誰も信じはしない。もし都合が悪ければキミの記憶も含めていつでも消せる)


 あ、ああ、はは……。


 えっとあと、地球の知識を使ってこの世界に無いことをやったらダメですよね、俺はここの神様に目をつけられているので。


(構わん好きにしろ。そもそも転入は変化をもたらすためだ)


 あっいいんだ、分かりました。


 それとリオンという男児、俺自身ですが、昨日までのことを覚えていません。両親がとても心配していました。これは戻りますか。


(キミの魂が体に戻ればリオンの記憶も戻る)


 ああよかった。えっでも人格と言いますか俺の意識はどうなりますか?


(元々この世界で生まれてから今日まで、そして地球の記憶が戻った現在も変わらずリオンのままだ。もちろんこの後もリオンのまま。41歳の大人の経験が一気に流れ込んできたためでその人になった気でいるだけ)


 どういうことですか?


(キミが8歳の時に前世の記憶が甦ったらその人になりきった錯覚を起こす)


 ほう……では今この俺はリオンですか?


(だからそうだと言っている。つまり元の魂はひとつ、何も変わっていない)


 は、はい、それでいいです。


(リオンの記憶が戻れば理解する。聞きたいことは終わりか?)


 最後にあなたは誰ですか? 神様よりも高い地位に感じられましたが。


(最初に告げた通り名乗るほどの者ではない、勝手に想像すればいい)


 分かりました。


(では戻す)


 ギュウゥォォォーーーーッ


 地面が迫ってくるぅーひいいいいっ!


 落ちるうううぅぅーーーっ!


 ……。


「ハァハァ、もっと戻し方があるだろう」


 俺は大量の汗をかいていた。


(視界を切り忘れたな、まあ目覚めがハッキリする)

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