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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
2章
233/321

第231話 人物探知

 6月23日、平日4日目。差し込む日の光を感じてゆっくりとまぶたを開ける。


「おはようございます。リオン様」

「おはよう。フィル」


 1日の始まりが美女の笑顔である。何と幸せなことか。おもむろにフィルの胸をむさぼる。


「ふふ、本当にお好きなんですね」

「1日中愛でていられるよ」

「それではお仕事に差し支えます。さあ朝の準備をしましょう」


 フィルがベッドを下りると何かに気づいてシーツを被せる。


「どうしたの?」

「お気になさらず。どうぞ洗面台へ」

「いや気になる」


 隠したシーツを剥ぎ取ると大きなシミが広がっていた。


「はは、昨夜はあんなに乱れていたからなぁ」

「……直ぐ取り替えます」


 俺は深夜までフィルを攻め続けた。まるで新しい玩具を手にした子供の様に。或いは新たな喜びを知って溺れる少年の様に。いや長年抑えられた欲望が噴き出しただけか。この環境は素晴らしいが危険である。歯止めが効かない。


 朝一の生産を終えるとフィルは退室する。彼女は別室で食事をとるのだ。恐らくメイドら使用人専用の食堂が近くにあるのだろう。


 フィルが戻ると俺は抱きついた。そのままスカートに手を入れて局部をまさぐる。


「リ、リオン様、今は我慢なさって下さい」

「いいじゃないか」

「……夜にたっぷりお願いします」

「……そうだね」


 誰かこのエロガキを止めてくれ。


 朝食時の話し相手はトシュテンだ。


「ねぇ自慰用の魔導具はあるかな。女性向けの」

「はっ!?」

「無いならキュウリやナスでもいいけど」

「……手配します」


 公爵家の総力を挙げて取り組んでくれたまえ。


 朝食後に生産を終えて魔物図鑑を広げる。


「フィル、隣りに座って」

「はい」


 フィルの太ももをさする。あー、落ち着く。


「おはよう、リオン!」


 声の主はセーラだった。


「メイドの脚を触りながら読書なんて変態ですわ」

「うるさい」


 せっかくの楽しい時間が台無しだ。


「何しに来たの?」

「編み物を持って来たわ」


 セーラは机の上に作品を広げる。


「……どう?」

「へー、細かい所まで丁寧に編み込んである。糸もかなり質がいいね。流石公爵家だ」

「ふふーん」


 やるじゃないか、セーラ。


「今はね、この子に舞踏会用のドレスを編んでいるの。ほら、これよ」

「感服しましたセーラ様!」

「あなたフィルといったかしら。後で話があるから来てちょうだい」

「承知しました」

「俺のフィルに何する気だ」

「女同士の話よ」


 フィルに何かしたらキュウリをぶっこんでやる。


 セーラは一通り作品を紹介すると袋に仕舞う。


「用事が終わったら帰ってよ」

「いいえ。ここでいるわ」

「えっ」


 机と椅子を窓際に据えると編み物を始めた。


「セーラがいると気が散る」

「メイドの脚に集中しなさい」


 ぬう。


 セーラは編み物を黙々と続ける。時折りニケを呼びつけて指導を受けているようだ。その純粋なまなざしは公爵家令嬢ではなく10歳の女の子だった。


 昼前に男女20人ほどが部屋に入る。何事だ。


「トシュテン、この人たちは?」

「読書を中断して申し訳ありません。これより魔力波長の記憶作業を行います。フィルは席を外しなさい」

「はい」


 フィルが席を立つと見計らった様にセーラが近づき共に部屋を出る。


「では始めろ」

「リオン様、お手を失礼します」


 向かいに座った男性が俺の両手を握る。10秒ほど経つと席を立ち他の人間と代わる。それを繰り返した。


「以上です。お手数を掛けました」

「目的は何?」

「この者たちは高レベルの人物探知スキルを所有しています。一度記憶した魔力波長の持ち主が遠くに離れていても正確に居場所を突き止めます。これに気配消去は無効です」


 ああー、そういうことか。運良く宮殿内に逃げ込んでも直ぐに見つかってしまうじゃないか。効果範囲は分からないが人数をかければ穴も無い。こりゃまいった。


 ぞろぞろと探知班は部屋を出る。顔は晒していたので大体は覚えた。もし殺すなら優先するべき相手か。


「戻りました」

「セーラと何を話してたの?」

「女性の色気についてです」

「へ?」


 セーラは再び窓際で編み物を始める。


 俺はフィルの太ももへ手を置く。


 むっ……何か感じるぞ。何だこれは。俺は顔を近づけて頬ずりをする。


「ふふ、本当にお好きなんですね」

「フィル、両手を出して」

「はい」


 差し出した両手を握って俺は目を閉じる。


 分かった! 魔力波長だ! きっと俺は人物探知を習得した。だから人の波長を感じ取れるようになったのだ。よーし、フィルの魔力波長を記憶するぞ。


「リオン様、昼食を用意するためお側を離れます」

「うん、いいよ」


 フィルは部屋を出た。俺は目を閉じ彼女の魔力を探る。


 あら? 分からない。どうして。


 ……。


 あ! 発見! しかしすぐ消える。しばらくすると少し離れた位置で再び反応が。どうやら対象が動いていると分からないらしい。これはレベルによる制限だな。つまり上げれば済むこと。フィルまでの距離は直線で20m。この範囲もレベル上げで広がるはずだ。


 いやしかし恐ろしいスキルだぞ人物探知は。自分の所在が筒抜けなんて気持ち悪いじゃないか。両手を握られて10秒以上は警戒するべきだな。


 あっ今、記憶される感覚が甦ったぞ。つまり感知スキルに追加されたはず。これで不用意に記憶されることは無いだろう。


 おっそうだ。波長を記憶する人数を増やせば人物探知のレベル上げも早まるはず。


 窓際のセーラに近づく。


「どうしたのリオン」

「両手を出して」

「え?」


 彼女は言われた通り両手を出して俺はそれを握る。


「フィルがいないから寂しいのね。私が隣りに座りましょう」

「いや、えっと」

「特別に脚も触らせてあげる」


 ぬう勘違いされた。でも魔力波長はバッチリ記憶したぞ。


 セーラと共に読書机に戻る。


「ほら、遠慮しないで手を置いて」

「子供の脚に興味はない」

「んまぁ!」


 ほどなく昼食が準備される。


「セーラは自慰行為するの?」

「いきなり下品な話題ね」

「ねぇ、どうなの?」

「し、しないわよ」

「興味ないの?」

「ないわ」


 ふむ。


「俺が開発しようか」

「……」

「きっとクセになるよ」

「……あなたねぇ。一体どういう環境で育ったらこんな変態が出来上がるの。ノルデン家が恐ろしいわ」

「フリッツ・レーンデルスの教えです」

「その教育方針は早急に見直すべき」


 フリッツすまない。ノルデン家の名誉のためだ。


「ところで貴族学園に行かないのか?」

「行かないわ……つまらないし」

「公爵家なんだからちやほやされるだろ」

「あんなの相手にしても疲れるだけ。私は社交に向いてないのよ」

「ふーん」


 家格と性格が不一致か。ひょっとしたら編み物が唯一の逃げ場なのかも。自分の世界に入ることで精神を落ち着かせている。


「兄弟は何人?」

「11人よ」

「うへー、多い!」

「第2、第3夫人や妾の子も含めたら50人くらいかしら」

「流石は公爵家だね。やりまくってる」

「……もっと品のある表現はできないの」

「子作り! 性交! 交尾!」

「魔獣と一緒にしないで!」


 おっ丁度いい。気になっていたことを聞こう。


「避妊具ってあるの?」

「なにそれ」

「妊娠を避ける道具だよ」

「そんなもの必要ないわ。行為の後に魔力を送らなければいいから」

「どういうこと?」

「……せ、精液が注がれた後に女性がお腹に手を当てて魔力を送るの。子供が欲しいって念じながらね。そしたら妊娠するのよ」

「へー」


 こりゃ興味深い。妊娠の決定権は女性側にあるのか。


「あなた変態のくせにそんなことも知らないの」

「知識が偏っているのだ。じゃあ出しただけでは妊娠しないんだね」

「……ええ、そうよ」

「うひょー、やり放題だぜ!」

「……正直あなたの妻になりたくないわ」


 と言うことはソフィーナは結婚前に自ら妊娠の選択をしたのか。


 昼食を終える。


「こんな酷い会話の食事なんて初めて」


 セーラは疲れた表情で窓際に向かった。

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