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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
221/321

第221話 コーネイン家

 6月18日、休日。ゼイルディク極偉勲章授与式の最終日だ。朝の支度を済まして客室のソファに腰を下ろす。


「父様、ここじゃ朝の訓練は出来ないね」

「まあな。明日はメルキースの屋敷だから朝食前に庭園を使えるだろう」


 そう今晩も外泊だ。


 このところ外出の予定が続いて落ち着かない。カルカリアではメースリック子爵屋敷、次の日はバイエンス男爵屋敷、おとついは村へ帰ったが昨日からはここエナンデルの高級宿。そして今晩はメルキース男爵屋敷へ泊る。


 明日からは村でゆっくり過ごせるかなぁ。


「実は昨日、夕食前にバストイア男爵と会ってな」

「同じ宿なんだね」

「勲章授与式の日程を聞いたぞ。24日だ」

「ちょうど1週間後かー」

「カルカリアへは俺とソフィ、ディアナ、それからレーンデルス家も一緒に行く。メースリックへ立ち寄るためだ」


 そういやフリッツがラシュディと約束してたね。


「授与式は午前中だから前泊となる」

「またメースリック子爵屋敷へ泊るの?」

「いやバストイアから距離があるだろう」


 そっかじゃあ近隣の宿かな。


「あ! 25日ってグラスドラゴンから10日後だよ、またカルカリアで神の魔物と戦うかも」

「分からんが備えはするべきだ」


 次も新種Aランクだろうか。


「まあミランダやGD型騎士も同行する、勲章対象者だからな。それに今度はカルカリア騎士団がより近くに待機するはず」

「流石にこれだけ続いているとね。じゃあシンクライトの使いどころを考えないと」

「初手の1発以外は展開次第だな」


 最も危険な奴に当てれば何とかなるさ。


「バストイアではビクトルの手掛かりを探す時間を多く設けるといい。なんならスコーネ錬成学校へも行くか」

「そうだね……あっでも英雄の記憶についてはちょっと懸念材料が見つかって」

「ほう何だ」

「他の人にも相談したいから一緒に聞いてくれる場がいい」

「なら城への馬車に同乗させよう、誰にする?」

「じゃあ父様と商会長とフリッツ」

「分かった手配しておく」


 メルキース男爵、エリオット、ソフィーナには追々伝えてもらおう。そう例の別人格の件だ。程度によっては何が起きるか予測がつかない。


 朝食を終えて馬車に乗り込む。同乗者はクラウス、ミランダ、フリッツだ。


「城へ到着したらリオンは工房職人へ変化共鳴の指導を頼む。同伴はフリッツと商会護衛だ」

「分かりました。でも変化共鳴がうまく伝わるかどうか」

「覚醒だったか、その表現でいい。後は職人たちが各々考える」

「フリッツも最初の生産現場にいただろ、何か気づいたか」

「いいえクラウス様、ただ息を呑んでいました」


 そのつもりで観察してないもんね。


「指導を終えれば生産だ。王都依頼分と聞いている」

「となるとマルカリュード騎士団ですか」

「うむ、50本ほどだろう。リオンは授与式臨席に遅れてしまうが王都依頼分もこれで一区切りだ。すまんが優先してくれ」

「商会報酬を確定させるためですね」

「それもあるが、伯爵は王都の輸送部隊をあまりゼイルディクに止めたくない。何がきっかけでリオンに結びつくか分からんからな」

「なるほど」


 さっさと帰ってもらうのね。


「さてリオン、英雄の記憶に懸念があるそうだな」

「はい」


 アブソーブ合素をきっかけにした蓄音器開発者の記憶を伝えた。


「……ほう、人格が変わった、もしくは2人同時に存在したとな」

「かなり短い時間だったのであやふやですが」

「ふぅむ」

「これまで俺の言動がおかしくなった時はありますか」

「さあ、思い当たらんが」

「そもそもリオンの大人の記憶がどんな性格の人物か俺たちは全てを知らないだろ」

「あーそっか」


 クラウスの言う通りだ。判断する基準が明確ではない。


「フリッツはリオンと過ごした時間が長い。見張り台やら商会工房やらでよく一緒にいただろ」

「はい。ワシはリオン様の性格を理解しています。その上で違和感のある言動はありません」

「そうか。ところでどんな性格だ?」

「真面目で思慮深い。基本的に慎重だが思い切りもいい」


 俺ってそんな性格だったのか。


「私からも印象を言おう。何事にも興味を示すためよく質問をする。答えるとほとんどを理解、或いは独自の解釈に落とし込んでいる。これらは圧倒的な知識量に基づく思考だ」


 むむ、ミランダはよく見ているな。つい地球と比べてしまうからね。


「その知識を教えて欲しい。神や英雄で慣れているから突飛な話でも構わない」


 ミランダは前のめりに問いただす。おいおいどうした。


「急に何を言い出すんだ。リオンの性格とは関係ないだろう」

「ふむ……そうだな」


 あっ分かった! 神託だ。ミランダはあれを信じている。世の中をひっくり返すとんでもない情報を俺が握っていると。ははーん、メルキース男爵だな。チャンスがあれば聞きだせと指示されたか。


「それで今後はどうする?」

「もし別人格に変わっても僅かな時間なら影響は少ない。これまで通り記憶を呼び覚ます方針でいいだろう」

「長い時間戻らなかったら?」

「……それはその時だ。そもそも現在の大人の記憶さえ何の保証もないぞ。ある日突然8歳の子供に戻るやもしれん」

「言われてみれば」


 何だそれ怖すぎる。俺の人格が消えるだと? いやいやそんなことはない、魂は1つだ。きっと大丈夫。


「おい、ちょっと思ったが、魔導具なんかの開発者って変わり者もいるだろ。危ない行動をするかもしれないぞ」

「それを可能性としてあげればキリがない。記憶の呼び覚ましも何がきっかけになるか分からないのだ。制御できん事柄に対策など出来はしない」

「はぁ、そうか」


 ミランダの言う通りだ。


「もし危ない兆候があれば直ぐに伝えます」

「おう頼んだ」

「ひとまず心の準備は出来た。正直に話してくれ感謝する。この情報は父上たちに伝えるぞ」

「はい」


 何だか心配事を増やしてしまっただけかも。


「しかし蓄音器か。アブソーブ合素の他に情報は無いか」

「いいえ。どんな魔導具ですか?」

「音声などを記録するらしい」

「記録だけですか」

「確か発音器だったか、それに接続すれば記録音を聞ける」

「使用用途は?」

「……まあ盗聴だ。例えば円卓裏に仕込み、客人の会話を記録する」

「うわっ!」


 音漏れ防止結界が意味ないじゃん。


「おいおい、城での会話は心配ないのか?」

「蓄音器及び発音器は歴史上の魔導具だ。再現したとの情報はない」

「でも密かに開発していたら」

「気になるなら毎回机の裏を確認すればいい」

「それは……相手に失礼だろ」

「スキル魔石探知があれば魔導具の有無を把握できるがな」

「おー、確かに」


 動力だもんね。


「まあ神が記憶を残すほどの魔導具だ。そう簡単に作れまい」

「言われてみれば。おー、アングレムだったか、蓄音器の開発者が関係しているかもな」

「そうだね父様」


 何となくガーランドの記憶ではない気がするんだよねぇ。


 エーデルブルク城へ到着。出迎えたコルヴィッツについて行くと城内庭園に出た。再び馬車に乗り込む。


「いつもの部屋じゃないんですか」

「今回は書庫で行います。実は王都特使が城内を視察しておりまして、その同行者に高レベル探知持ちがいるのです。トランサイト生産時には高魔力を発するため直ぐ気づかれます。それだけでリオン様に結びつきはしませんが念のための措置です」


 うへー、探知持ちか。


「でも書庫に近づけば分かるのでは?」

「ご心配には及びません。実は書庫内に隠し部屋がありまして、天井や壁面を探知阻害の魔導具で覆っています。我々の存在を外部から悟られることはありません」

「そ、それなら安心です」


 隠し部屋に探知阻害なんて。流石は伯爵の城、凝った設備があるね。


 むっ待てよ、もし拉致監禁されたら外から分からないじゃないか。まさか俺を閉じ込めるつもりじゃ。……いやまあ考え過ぎか。フリッツや護衛もいるし。


「ところで探知持ちをどうやって知ったのですか?」

「特使一行が城内を移動中、城の者が離れた場所で高い共鳴を施しました。すると1人が立ち止まり壁を見つめたのです。もちろんその先には共鳴者がいます。これを複数回確認しました」

「あー、試したのですね」

「優秀な者ほど敏感に反応するため分かり易いものです」


 誰が見ているか分からないから怖いね。俺も気をつけよう。


 書庫に到着。2階へ上がる。


「お待ちしておりました、こちらです」


 マレイネンだったか、鉱物大全の写本に携わった司書だ。彼女の案内に書庫の奥へ向かうと何やら本棚の陰でごそごそする。


 ギイィィ……


「うはっ!」

「おおっ!」


 本棚が動いて扉が現れた。からくり屋敷かよ。


「この先です、続いてください」


 コルヴィッツが扉を開けると下り階段が目に入る。先を進むと10畳ほどの部屋に出た。ここが隠し部屋か。書棚や木箱がいくつか見えるな。重要書類でも入っているのか。ああコルホルの開拓記録もきっとここだ。


「今回は3名が指導を賜ります、各自名乗りを」

「リオン様、お初にお目にかかります。カルレオンと申します。工房長より伝わっているトランサイト生産者は私です。どうぞ宜しくお願いします」


 30代半ばの女性。へぇこの人か。両手首には真っ黒で厳つい腕輪が見えるぞ、あれがジルニトラの腕輪だな。他30代後半女性はアルモンテ、30代前半男性はヒメネスと名乗った。彼女らも両手首に腕輪が見える。


 俺とフリッツ、そして護衛のアヴァンとレナーテも名乗った。


「リオン様は指導の後に生産を行っていただきます。ご休憩の際に職人たちの取り組みをご覧いただいて助言などをお願いします」

「分かりました工房長。えーっとじゃあまず、変化共鳴の存在を掴むために武器に魔力を流してください」


 3人は剣を持ち構えた。


「実はリオン様、先日手順をお伝えいただいた後に早速各自取り組みました。しかし誰もその感覚を掴めていません」

「そうですか」


 こればっかりは言葉で伝え辛い。どうしよう。


「ひとまず変化共鳴を見てもらいましょう」

「はい、では卓上の武器をどれでもお持ちください。全て今回の生産予定品です」


 剣を握り構える。


 キュイイイィィィーーーン


「これが変化共鳴です。80%くらいかな。皆さんも共鳴して違いを確認してください」


 3人は頭を振り自分の共鳴と見比べる。武器を置き休憩すると小さく頷いていた。


「共鳴の違いは分かりましたか」

「はい」

「何となく」


 よし次は同時共鳴だ。


「変化共鳴の単独使用条件は分かりませんが辿った経緯をそのまま見せます。これが同時共鳴です」


 強化共鳴を100%で維持し変化共鳴を重ね掛ける。やっぱり同時はちょっと魔力を使うな。単純に2倍だからね。そのまま共鳴率を上げ125%を過ぎるとトランサイトへ変化した。皆もその瞬間が分かったらしい。


「変化共鳴とは覚醒です! トランサスの秘めたる力を引き出すのです!」

「……は、はい」

「……なるほど」


 3人は無感情な反応だ。まあ分からんよね。


 以降、生産を続ける傍ら職人たちは共鳴訓練に勤しんだ。


「助言があればお願いします」


 コルヴィッツが求めてくる。うーむ、助言ねぇ。見たところジルニトラの腕輪を装備したカルレオンが一番魔力効率がいいな。


「アルモンテさんとヒメネスさんはもう少し効率をあげられます。高い共鳴率まで一気にあげて維持する訓練を試してください」

「はっ!」

「ありがとうございます!」


 そのくらいしか言えないや。しかしカルレオンは魔力操作に長けているな。


「カルレオンさんは職人の前に何をしてましたか」

「騎士です」

「へー、主な武器は?」

「剣です」

「実はリオン様、彼女はバイエンス男爵と共にメルキースでガルーダ討伐を成し遂げた者です」

「あー、それでか。剣技はいくつですか?」

「28です」

「ふむふむ、お強いのですね」

「恐縮です」


 なるほど剣技が高いから魔力効率もいいのか。


 ところでさっきからコルヴィッツはスーツケースほどの大きさの装置とにらめっこしている。


「工房長、それは何ですか」

「ハイマ値計測器です、お伝えが遅れて申し訳ありません」

「いえいえ。へー、けっこう大きいですね」

「これでも小型化を突き詰めた特別仕様です」

「数値に変化は見られましたか」

「……いいえ」


 うーむ。俺の変化共鳴はハイマ関係ないのかな。


 以降、仕事を淡々とこなして予定数を終えた。


「ご指導、ありがとうございました」

「とにかく反復して何かを掴んでください」

「はっ!」


 まあこんなもんだろう。人に教えるって難しい。


 書庫を出て馬車に乗り庭園を走る。授与者の控室に到着すると窓際のソファからクラウスが手招きをする。ソフィーナとディアナ、そしてマティアスとエリサの姿も見えた。


「今エリオットが終わった、次のミランダで最後だ」


 拍手に包まれた会場にエナンデル子爵の声が響く。紹介されたミランダが勲章を受け取った。おやエリオットに渡しているぞ。ああ4つ全部を一度に持てないか。


 ミランダは観衆へ言葉を届けた。


「しかし大したものだなミランダ様は」

「ええ、あの方が近くにいれば心強いわ」

「兄さん、エリサ、北西部防衛部隊が守るコルホル村はどんな魔物でも壊せはしない。近くに騎士団の大型拠点も予定しているし、俺の屋敷は安全だ」

「ああそう思うよ」


 強い騎士たちは開拓村に住む安心材料になるね。


 ミランダが挨拶を終えると大歓声に包まれる。それが落ち着くと司会から伯爵の言葉があると告げられた。これは陞爵(しょうしゃく)の話か。


「皆に今一度確認しよう! 魔物討伐における叙爵条件はAランク3体が基準である! しかしながらこのミランダ・コーネインは4体ものAランクを討伐した! 加えて先日はカルカリアにてリンドブルムの首も落としている! 合わせて5体だ! その様な使い手はゼイルディク、いやカイゼル王国の歴史にも存在しない!」


 確かに歴代の英雄は1体討伐っぽい。それでも名を残したのは単独討伐であること、そして戦闘スキルの高さからだろう。


「彼女はAランクであろうとも怯まず距離を詰め一撃のもとに戦況を覆す! その勇猛果敢な姿は正に勇者だ! 剣勇ミランダである!」

「剣勇ミランダ!」

「剣勇ミランダ!」

「剣勇ミランダ!」


 観衆が湧き上がる。ほう剣勇ねぇ。ミランダの性格なら似合っているかも。


 伯爵が片手をあげると観衆は静まる。


「本来なら叙爵対象だが皆知っての通り貴族の条件は男性だ! 既婚なら夫が預かるがエリオットは男爵家長男である! 既に騎士貴族家として申し分ない務めを果たしているのだ!」


 じゃあ未婚なら誰が貴族になるんだ? あー、俺の事案みたいに父親かな。


「そのエリオット自身もAランクを討伐! 弟のセドリック、その妻カミラもAランクを打ち倒している! これほどの成果をあげた兄弟夫妻をワシは聞いたことが無い! この偉大なコーネイン家当主たるメルキース男爵! 彼の爵位は子爵が相応しい! 今この場にて陞爵を推挙する!」


 観衆が湧く。


「コーネイン!」

「コーネイン!」

「コーネイン!」


 そして家名の大合唱。また推挙ということは議会で最終決定なのね。まあドナート家が叙爵してメルキース内に領地を置くからこの流れは皆知ってたこと。


「来賓のお言葉を賜る!」


 司会が声をあげると観衆は静まり注目する。まずはバストイア男爵、続いてカルカリア伯爵、ロムステル伯爵、ブレクスタ伯爵と祝いの言葉を贈った。皆コーネイン家の武勇を称え、自領とゼイルディクとの深い繋がりを希望した。


 ゴーーーーーン


 昼の鐘だ。


「以上で第127回ゼイルディク極偉勲章授与式の全日程を終える! 改めて勲章を授かった英雄たちに拍手を!」


 この3日間で一番の拍手を背にコーネイン家の面々はバルコニーから引き上げる。控室の関係者は立ち上がり拍手で出迎えた。


「誠に素晴らしい式典であった、アルフレッド」

「うむ、ランスロット、遂にここまで来た」

「子爵としての務めはワシに何でも聞けばいい」

「そのつもりだ、頼りにしている」


 そう告げてアーレンツ子爵とメルキース男爵は硬く握手を交わした。子爵として先輩だからね。


「剣勇ミランダ、いい二つ名だな」

「そうか」


 クラウスの声掛けに本人は浮かない表情だ。どうやら気に入らない様子。


「ちょっと男性っぽい印象を抱くわ」

「私もそう思うぞソフィ。まあトランサイト絡みで伯爵ともやり合ったからな、ちょっとした仕返しだろう。定着しないことを祈る」


 故意に嫌がる二つ名を付けたか。褒めると同時に小賢しい反撃を繰り出す。流石は上位貴族だ。


「商会長、二つ名は規則ですか」

「いや、伯爵の一方的な提案だ。無視しても構わんが領民が呼ぶことを制限はできない」

「じゃあ別の名を広めたらいいでしょう」

「ならばリオンが代わりを提案しろ」

「えっ」


 代案か……うーん、そうだなぁ。


「商会長の動きは美しく優雅で正に戦場の華です。つまり剣の華。剣華ミランダはどうでしょう。ミランデルの意匠は薔薇を象っていますし」

「ほう剣華か。気にったぞ」

「ミリィにぴったりね!」


 おっ満足そうな表情に変わった。せっかくの授与式だからね。


「メルキースを中心に広めれば直に定着するだろう。剣勇はエリオットにくれてやる」

「うむ、引き受けた」


 せっかく伯爵が考えた二つ名だ、無下には出来ないか。


「昼食会場へご案内します」


 使用人に続いてぞろぞろと控室を出る。ともあれ授与式は終わった。こう連日式典ばかりだとやっぱりちょっと疲れる。また来週はバストイア勲章授与式があるけどね。


 あれ、そう言えば。


「商会長、アーレンツ勲章はどうなるのですか」

「無論、領内での戦闘参加者は全て対象となる。ただあまりにも多いため勲章の準備に時間が掛かるのだ」

「あー、確かに」

「ただメルキース勲章はバイエンス男爵と他騎士1名だ。明後日に催すと父上から聞いている」


 そっか2つだけなら直ぐ準備できるね。さっき変化共鳴を教えた職人カルレオンが対象者か。


 昼食会場へ到着。円卓の数が多いな、20以上はある。これだけ大規模な宴席でも難なく対応する伯爵家は流石だ。今ゼイルディクは国中から注目されている。今後も多くの有力貴族が訪れるだろう。本当に社交って大変だ。


 使用人に案内されテーブルへつく。俺の他にはレイリア、ロディオス、オルヴァー、そしてディアナだ。ゼイルディク伯爵が短めの挨拶を終え昼食が始まった。


「またレイリアたちと食事だね」

「嫌なら代わりましょうか」

「とんでもない光栄です」


 見たところ来賓の貴族家からも同世代が来ている。


「他の伯爵家の子供たちを相手しなくていいの?」

「ウチは夕食と懇親会で長時間一緒に過ごすのよ。この席はコーネイン家の子供たちに任せているわ」

「あー、そうか」


 見回すとクラウディアのテーブルに4人の男子、アデルベルトとライニールもそれぞれ女子4人が同席だ。いやライニールの相手はよく見ると7歳辺りの女児ばかりだぞ。どんな会話内容か気になる。


 セドリックの子供たちルアンナ、テレサ、ランヴァル、エステルも同じ様な状況だ。テレサとエステルは余裕気な表情に見える。流石はシャルルロワで培われた社交性か。


「昨日も言ったでしょう、コーネイン家が子爵家になれば多くの伯爵家が縁談を持ち込むわ。ただ家に入るなら直系より第2夫人家系が現実的なところかしら」

「それはどうして」

「優秀な騎士家系を築くためよ。多くの伯爵家は身内に保安部隊を任せているわ、ウチもバイエンス男爵家でしょう」


 なるほどね。


「でも全然知らない土地に1人行くなんて大変ね」

「ディアナは心配すること無いよ、俺の側ならずっとゼイルディクで暮らせる」

「何言ってるのロディ」

「選択肢の1つだよ、俺は待っているからね」

「……はぁ」


 食事の席でも堂々と口説くロディオス。8歳だろお前は。


 しかし士官学生であるルアンナやクラウディアは特に注目されているだろう。むっ待てよ、もし遠方の伯爵家に嫁いだらコーネイン家と深い繋がりができる。それはつまり該当伯爵領内で融通が利くのでは。


 俺の旅に使えるぞ。


 うわっ、今、かなり酷いことを考えてしまった。これが政略結婚か。でもクラウディアはミランダの意向なら喜んで婚約に応じるだろう。それが彼女の幸せなら口を挟むことはできないか。えー、どうなんだろう。あの子の本音が分からない。

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