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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
200/321

第200話 カルニン村(地図画像あり)

 カルニン街道を北へ進む。ミランダの話ではもう直ぐ監視所が視界に入るらしい。


「あれですか」

「うむ、北部防衛部隊レクスビク監視所だ。あそこがカルニン村と森の境界となる」

「この森は確か訓練討伐に利用されてますよね」

「その通り。街道の東側は南北5kmに8本、西側は南北4kmに6本、更に西の森に5本ほどあったか。養成所の訓練生、或いは士官学校生が多く利用している」

「村の子は参加してますか」

「3年前に1人いたと記憶しているが今は知らん」


 ふーん、まあカルニンは冒険者兼業の住人が少ないから才能ある子も滅多に出ないのだろう。


「監視所の奥にも城壁が見えますね、村の居住区ですか」

「あれは防衛部隊駐留所だ。ただカルニン開拓期には中央区があったと聞く、30年も前の話だ」

「では村の発展に合わせて移動したのですね」

「うむ、今では大きく2つの居住区が中央区の機能を果たしているそうだ。他にも食材加工の拠点がいくつかあると聞く」

「へー、加工専用の拠点ですか」

「その辺りも案内させるよう担当に通している。お前なら熱心に聞きそうだな」

「はい、興味あります」


 畜産主体の村とはどんな構成だろう。


「クラウスとソフィも疑問に思えばどんどん聞け。必ずコルホルの参考になる」

「そうだな」

「分かったわ」


 監視所の城壁が近づくと街道両側の森が開けた。


「わー、広いね」

「遠くに動くのもが見えるがあれが牛か」

「うむ、恐らく肉牛だ」


 見た感じ黒毛や茶毛が多いな。


「右手が駐留所だ。同行するトランサイト班は所内で昼食のため別れる。我々は帰りに立ち寄り合流予定だ」

「防衛部隊の施設だよな、部隊長は確かデルクセンの……」

「デルクセン男爵長男ヒルベルト・ユンカースが部隊長、妻のバネッサが副部隊長だ」

「ヒルベルトって確か極偉勲章の対象者よね。クエレブレを倒したはず」

「その通りだソフィ。討伐個所は明らかにアーレンツ子爵領だったがフローテン子爵が難癖をつけて素材を奪われた件だ」

「はは、言ってたな」


 境界付近を理由にベルソワで大量に確保したアーレンツはもういいだろとの主張。


「しかし勲章授与となれば益々カルニンの次期領主を推す声が高まるぞ」

「もはやフローテン子爵次男の話は消えるだろう。あんな能無しが領主になったらカルニンは滅ぶ」

「おいおい随分な言い様だな」

「ルーベンス商会を傾かせたフローテン子爵、その3人の子供は揃って親の言いなりだ。人の上に立って務まるとは思えん」

「まあ家令なり側近が優秀なんだろ、カルニンだってここまで発展したんだ」

「それはデルクセン男爵家の力が大きい、長男夫婦が配属される環境をなるべく良くしようと尽力したのだ」


 コルホルに当てはめるとコーネイン家がその立場か。ただカルニンと比べると村や周辺施設の発展に差がある。


「コルホルの整備にはメルキース男爵があまり関与してないのですか」

「……アーレンツ子爵の意向だ。環境に頼らず人を伸ばせとな。お陰で私やエリオット、そして防衛部隊は鍛えられたぞ」

「なるほど、人が動いて広域を掌握すると」

「意図は分からんでもないが、結局のところ金をケチっただけだ。それでは村も発展しない。クラウスが引き継いだら大いにやれ」

「ああ、そのつもりだ」


 ふーん、アーレンツ子爵のやり方だったのか。思えば村の施設も必要最低限、あの花壇設置くらいでも住人は喜んでいたからね。


「さあ見えてきたぞ、あれが東中央区の城壁だ」

「長いね」

「1kmだったか、奥行きは200mほどだろう」

「コルホル村の中央区が400m×600mだからあっちの方が広いですよ」

「しかしこっちは1つではない、正面の城壁を見ろ、あれが南中央区、東と広さは同じ。加えて先にうっすら見える食材加工区、あれもほとんど同じ広さと聞いている」

「うへー」

「更に北側にはまた別の加工区があり、冒険者ギルドも独立して2個所ある」


 へー、ギルドは中央区の外にあるんだ。それも2個所。もうコルホルとは全然作りが違うな。


「おー、ありゃ羊か。他にも乳牛や豚、鶏なんかいるんだろ」

「それらは主に屋内施設で飼育している」

「なるほど、魔獣によって違うのか」


 魔獣。久々に聞いたけどこの世界における動物のことだ。地球のそれと姿形は似ていても馬ならパワーやスタミナが上に思える。恐らく魔力が関係しているが他の牛や豚なんかも特徴があるのだろうか。


「ここから城壁内へ入るぞ」


 馬車は右折して検問を抜ける。おおー、ちゃんと町がある。


「到着だ、降りろ」


 地面に立つと少し背筋を伸ばす。いやー、長かった。


「こちらでは我々が護衛いたします」

「うむ、頼んだ」


 フリッツたちが乗っていた防衛部隊の馬車から騎士が4人降りそう告げる。


「お待ちしておりました。フローテン子爵家令、カルニン担当のジョバンナです」


 50代前半の女性、カルニン担当か。コルホルのナタリアみたいな立場だね。


「私は東中央区長のコンラードと申します、ゼイルディク開拓村事業のうち、将来コルホルを担われるクラウス様へ少しでもこのカルニンがお役に立てれば幸いです。共に最前線の居住区として大きな発展を成し遂げましょう」


 50代前半の男性、よくしゃべるな。それで区長ね。思えばコルホルの区長を一度も見たことが無いぞ。


 続いて俺たちも簡単に挨拶を済ます。


「では中へ参りましょう」


 コンラードについて建物に入る。今気づいたけど高級宿エスメラルダじゃないか。確かに昼食会場とは言っていたな。話もここでするのね。


 20畳ほどの広間に入ると低いテーブルとソファが並んでいた。俺たちは案内された席に腰を下ろす。直ぐに紅茶が出された。


「5分ほど過ぎたら参りますので」


 そう告げてコンラードとジョバンナは退室する。まあ着いたばっかりだからね、ひと息つく時間を設けるのか。


「ミランダ、カルニンにもコーネイン商会はあるのだろ」

「ただ工房は無く、ここではユンカース商会がその役目だ。ウチの他にロンベルク、エールリヒ、ガイスラーが窓口を設けている」

「ゼイルディクの騎士貴族商会全部だな」

「その通り、コルホルにはガイスラーが無く、サガルトにはコーネインが無いからな、ここは唯一全部揃っている村だ。尤もサガルトには近くウチも窓口を置く予定だ」


 ユンカース商会、デルクセン男爵家が経営する武器商会だね。流石に一番繋がりが強いか。


「冒険者向けはルーベンス商会か、何せフローテン子爵領地だからな。他はどこがあるんだ」

「今のところルーベンスだけだ、もちろん工房も担っている」

「コルホルにラウリーンが進出するのにカルニンを飛ばすの?」

「ソフィの言う通りおかしな話だ。恐らくフローテン子爵が許可しないのだろう。そうやって市場を独占するやり方を続けてきたのさ。10年前には規則まで変えて反感を食らったのに」

「ああ、代替わりでやらかした件か」

「一定区域の冒険者数と武器商会店舗数を定めるだの、既にゼイルディク中に店を出しているルーベンスだけが優位となる、そんなもの受け入れられない」


 はは、かつて日本であった酒類販売免許の規制か、販売店同士の距離制限や地域の人口で免許の枠数が決められていたんだよね。規制緩和でコンビニを中心に酒類販売が広がったが個人商店はどんどん潰れた。一方タバコに関しては似たような規制が継続されていたな。


 消費者にとっては販売店が多い方が嬉しいが、年齢制限のある嗜好品は特殊な扱いだ。この世界の武器には何か事情があるのかな。そりゃ武器だし人も殺せる。ただ前世でも国や地域によって銃販売と所持が合法だったもんね。


 まあ10年前のルーベンスの件は自分に有利な規則を押し通しただけに思える。これだけ冒険者が多いゼイルディクで武器を規制する必要は無いからね。8歳の子供だって背負っているんだ。前世の日本でも森に魔物がいれば銃火器所持が認められていたかもしれない。


 でもライフル持って野良仕事とかやだなぁ。トラクターも戦車みたいに武装するのか。


 そんなことを考えていると家令ジョバンナと区長コンラードが戻って来た。


「さて早速ですが、これがカルニン村の広域地図となります。村周辺の赤い印は騎士団拠点を示しています」


挿絵(By みてみん)


 へー、騎士団拠点多いな。なるほどこれがデルクセン男爵の影響力か。きっと伯爵に必要性を訴え続けたのだろう。


「やはり目を惹くのは北西の大きな湖だな」

「はいクラウス様、カルニン湖ですね。村の開拓は東のサンテ川沿いから始まったので、本格的に湖周辺を整備したのは10年ほど前からです。今では釣り施設5個所の他に貴族別荘や大規模な養殖場も備えております」

「ほう、釣り場、そして別荘に養殖場か。ただ湖の東側を除けば森があるだろう、魔物対応はどうなっている」

「優秀な騎士や冒険者が常に入っておりますので被害はほぼありません。湖東側では小島を巡る船遊びも盛んですよ」


 へー、そんなレジャーまであるのか。ちょっとした観光地だね。


「本日の昼食はカルニン湖産の魚料理をご用意いたします。もちろん畜産品も多数お出ししますのでご満足いただけますよ」

「それは楽しみだ」

「ねぇ、コルホルもレナン川があるでしょ、あそこまで開拓すれば魚も特産品にならないかしら」

「おっしゃる通りです、ノルデン夫人。レナン川はゼイルディクでも大きな河川の1つ、加えて東側のアルカン川まで村の管理下におけば、魚の他にも河運拠点として大きな役割を成すでしょう」


 なるほど船で運ぶのか。


「カルニンもサンテ川には港があります。ご存知の通りサンテ川はデルクセン、フローテン、アーレンツ、エナンデル、クラウフェルト、そしてミュルデウスを通りウィルムまで流れております。木材や魔物素材を運搬する際に陸路より遅くなりますが安価で人気ですよ」


 確かに小回りが効かず速度は遅いが安くは済みそうだ。


「サンテ川はウィルム侯爵領において最終的にレナン川へ注ぎ合流しております。その大河レナン川の直ぐ隣りに位置するコルホルは、河運において明るい未来が広がっていますよ」

「確かにウィルムまで資材を安く運べるのは大きいな」

「コルホル東のアルカン川もメルキースを流れてアーレンツでサンテ川と合流します。カルニンとコルホルは河運において将来は深い関係性を築けるでしょう」

「船の運航では世話になるな、その時は頼む」


 このコンラードと言う者、東中央区長だったか。一介の管理職のクセにまるで領主の様な視野の広さだ。その上、コルホルの立地を褒めてクラウスへの印象を良くしている。何が狙いか知らんがちょっと薄気味悪いな。


「さて次は具体的な村内の施設をご案内しましょう」


 コンラードはもう1枚地図を出す。


挿絵(By みてみん)


「地図上にも表示しておりますが、赤が北区、青が東区、緑が南区、黄が西区の管轄です。どこも牧草地帯がほとんどを占めており、特に東区と南区は顕著に見えるでしょう」


 これは分かり易いな。


「区内の数字は居住区か」

「はい。例えば東区の文字の下にある1と2は東1区と東2区を表します。東1区には50人が住み、約300頭の肉牛を世話しております」

「ほう、50人で300頭か。東1区の居住区には風呂と食堂があるんだろ」

「はい。もちろん住居含めて城壁で囲まれております」


 コルホル西区は100人だから半分か。あれが最小単位と思ったがもっと少ない運用もあるのね。しかし周りは広範囲に渡って何もないぞ。かなり孤立した暮らしぶりだろう。


 しかし300頭を放牧とは。見たところ東1区は30ヘクタールほどで1頭当たり10アールとなる。日本の肉牛は1頭40アールの牧草と言われているから随分と少ない割当だ。


「1頭当たりの牧草が少ないように感じます」

「リオン様はその様な所へ関心があるのですね。確かに1頭10アールほどですから野菜畑で言えば小規模な1面に過ぎません。ただそこへ植えられた牧草は品種改良を重ねた非常に優秀な餌です。栽培肥料にも魔物素材を多く含み、牛に必要な高い栄養価を実現しております」

「へー、面積効率がいいのですね」

「加えて成長速度が異常でして、牛が食べなければ数日で背の高い牧草で覆われますよ」


 なるほど餌に特化した牧草か。にしても品種改良とは恐れ入った。


「他にも魔物素材をふんだんに混ぜたトウモロコシなどを与えていますから、カルニンの肉牛は高い水準と評価をいただいております」

「やはり魔物素材が絡めば牛の育ちも違うのか」

「ええ、それはもう、一般的な出荷基準に育つまで15カ月で済みます。魔物素材が少なければ20カ月は掛かるでしょう」

「それは大きな差だな」


 魔物素材抜きでも早いな。ああ、人間でも成長が早い気がする。どうもこの世界の生物は植物含めて早熟な傾向のようだ。となると寿命が短い可能性もある。確かに人間の60代はよく見るが70代以上を全く見掛けない。回転サイクルが早いということか。


「カルニンは放牧が中心の様だが北区や西区は地図で見る限り居住区が大きいな」

「北区は牛舎もあります、乳牛もいますから搾乳を行う施設ですね。西区は豚舎と羊の毛を刈る施設もあります」

「なるほど乳牛、そして豚や羊か。ところで冒険者兼業の住人はどの辺りに配置されているんだ」

「現在は東5区と北6区のみに80人ずつで計160人ほどです。そこは牛や豚はおらず大規模な鶏舎が居住区内に設けられております」

「鶏なら卵か」

「卵も少し出荷しますが主に食肉用です。卵用の雌鶏は南中央区、西加工区、またギルド北支所で飼育しております」


 ギルド支所って職員が世話するのか。


「冒険者兼業住人はどのくらいの頻度で討伐へ行くのだ」

「申請討伐は月最大10回、北区の森を中心に活動しています」

「ほう、多いな」

「雛から約1カ月で出荷となり、全て出荷すると鶏舎は空になります。鶏舎の掃除などを終えて次の雛を入れるまで期間がありますので、月によっては時間が多く空くのです。逆を言うと繁忙期は全く討伐に出られません」

「なるほど、毎月ではないのか」


 へー、鶏は早く成長するから独特の周期があるんだね。


「確かハウトスミット男爵の甥が住人と聞いたが」

「コーネイン夫人その通りです。リヒトル様は北6区に在住しており、これは周知の事実なのでお伝えしますが、トランサイト武器をお持ちです」

「やはりそうか」

「ほう、貴族の身内が住人、しかも冒険者兼務とは珍しいな」

「いわゆる変わり者だ。年は20歳頃だったか、親の言うことを聞かず好き勝手に生きているらしいが、叔父に高給武器を買ってもらうあたり自立とはほど遠いな」

「夫人は手厳しいですな」

「湖の別荘も近い、どうせそこに男爵の物件があるのだろう」

「お察しの通りです」


 別荘に遊びに来てここを気に入ったのだろうか。ただ住人なら鶏舎の世話をしてるはず。ちゃんと務めを果たしているなら問題ないと思うが。まあトランサイトを自分の稼ぎで買ったとは思えんけど。


「ハウトスミットと言えばゼイルディクの南西部、随分と遠いな」

「男爵は畜産ギルド長だ。カルニンにも幾らか関与しているはず、そうだろうジョバンナ」

「はい、牛の交配などお世話になっています。メルキースのメイルバルからも種牛をご提供いただき大変助かっております」

「フン、買い叩かれたと聞いているぞ」

「いえいえ適性な価格ですよ」


 おや、畜産地域としてメイルバルも取引があるのか。


「区長、少し聞きたい」

「はい、フリッツ殿」

「この北区と西区から加工区まで伸びている線は何か」

「家畜が出荷時期になると加工区まで自走させます。それ専用の通路ですね」

「なるほど」

「また通路の両側は飼料などを運ぶ馬車の通り道です。接する城壁は馬車が転回しやすい形状となっています」

「窪んで見えるのはそのためか」


 きっと専用の搬入口があるんだね。


「この初等学校はまだ開校していないそうだが」

「はい、来年より運用予定です。既に村に在住する7~9歳の児童、全員の入学が決まりました。1学年50~60人で約160人が通います」

「通うとは、中央区や加工区はまだしも居住区は距離があるだろう」

「専用の馬車を走らせますので最も遠い東3区でも十分通えます」


 3kmくらいありそうだからね。


「クラウス様、コルホル初等学校の場所も再考の余地がありそうですね」

「確かに、西区拡張の規模によってはもう少し西にするべきか。或いはカルニンに習って馬車を走らせるかだな」

「西区だけではなく、その先の計画も考慮せねばなるまい」

「ミランダの言う通りだ。どちらかと言えば村の東側に開拓の余地が多いからな」


 そうか、将来の展望に合わせた最適な場所を考えないとね。


「ある程度村が発展するまで建築を控えるのも手です。現にカルニンは2年前に建築が決まったのですから」

「おお、そうだな」

「小規模なら移転も容易でしょう。ひとまず建ててみるのもいいんじゃないかしら」

「そうか小さければ取り壊しも手間がかからん。或いは移転せず複数個所作るのもいいだろう」


 案とは言えいっぱい出てくるね。


「ところで冒険者ギルドは南北の2個所だけか」

「はい。元々は中央区内にありましたが、素材運搬の手間を考えると主要道路に面した方が効率がいいため移転しました。主に北支所は村内の冒険者、南支所は町から来る冒険者や訓練生の対応となります」

「確かに南支所は目の前が広い森だな。支所なら口座管理所もあるのか」

「はい。職員も支所のある城壁内に住居を構えております」


 へー、完全に独立した運用なのね。


「それで村の人口など居住区ごとに教えてくれるか、大体でいい」

「はい。東中央区700人、南中央区700人、北加工区2個所で150人、西加工区500人、東区280人、北区730人、南区210人、西区350人、ギルド南北支所140人、船着場50人、別荘100人、養殖場100人、合わせて約4000人です」

「多いな。3500人と聞いていたが」

「船着場、別荘、養殖場を村の施設に含まない統計もありますので。ギルド支所も騎士団施設と数える場合もあります。それらを除けば3600人ほどとなりますね」

「なるほど数え方の違いか」


 ゴーーーーーン


 昼の鐘だ。


「午後からはどうされますか? 現地を視察される様でしたらご案内いたします」

「おー、そうだな」

「昼食時に決めても間に合うか」

「はい、コーネイン夫人」

「では12時30分にこの部屋へ来てくれ」

「承知しました。昼食会場へは宿の者が案内しますのでこちらでお待ちください。それでは失礼します」


 ジョバンナとコンラードは去った。


「ふー、思ったより規模が大きいなカルニン村は」

「そうね、立派な町だわ」

「これで専任の領主がいないのだからな」

「確かに男爵くらい配置して治めるのが相応しい」

「まあそれもクラウスの叙爵で否応なしだ」

「はは、1500人のコルホルに先を越されるぞ」


 男爵の領地は人口1000人以上と決められている。カルニンの規模で今までいなかったのは不思議なくらいだ。


「失礼します」


 宿の従業員が入室し昼食会場へ案内される。円卓の1つは俺とクラウス、ソフィーナ、ミランダ。もう1つにフリッツとコルホルから同行した世話人2人が座る。


「では私が挨拶をしよう、皆、飲み物を持て」


 ミランダの声にグラスを持つ。


「コルホルが開拓村の中で最も発展する、その第一歩を記して」


 はは、クラウスはカルニンの充実ぶりをちょっと引け目に感じたかもね。でも仕方ないよ、アーレンツ子爵の方針もあったみたいだし。まあノルデン家が本気を出せば数年で逆転さ。

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