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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
195/321

第195話 マルカリュード

 エスメラルダでの昼食を終えてコーネイン商会の工房へ向かう。雨はまだ降っていた。そう言えば雨の日は畑に住人が出ないため魔物も来ないが、神の魔物はどうだろう。足元悪い中で対峙したくないから来るんだったら晴れの日にしてくれ。


「やあ来たね。仕事は13時からでいいよ」

「どうせ座っているだけなんでやります、フローラさん」


 おや、ジルベールが居ない。まだ食事か。


「ジルは私の知り合いのところだよ、今日はもう来ない」

「あら、そうなんですか」

「あんたの講師で来たはずが一緒に勉強する気でいたからね。いくら男爵配下で特別な計らいだからって程度ってモンがある。技術面は直ぐにどうこうできないが最低限の知識は身につけさせるよ」

「分かりました」


 あらら。まあでも仕方ないね。


「ところでフローラさんの知り合いは優秀なんですね」

「元魔導具職人だよ。ブレンドレル商会の工房でずっと働いていたが、農業に興味があって夫婦でここへ来たのさ。まあ私と同じ様なもんだね」

「その人に講師を頼めばいいのでは」

「……変人だから難しいだろう」


 うへ、性格に問題ありか。


「恐らく商会で孤立して居場所が無くなったのさ、だからこんな辺境に来た。ああいや、人のことは言えないね」

「フローラさんは常識人ですよ」

「……どうだか」


 たまに怪しい笑いを見せるが。


「さあそろそろ13時だ、まずはこっちから頼む」

「はい」


 おや、これはシンクルニウム。


「……ゼイルディク騎士団と刻まれていますね」

「そうだね、どうやら前線で使う気だよ」


 おー、そうか、北東部討伐部隊だな。カルカリア奥地を先回りで開拓する気だ。


「何か納得のいく理由を知っているのかい」

「あー、いえいえ、騎士に配備されれば頼もしいですね」


 剣を握る。


 ギュイイイィィィーーーン


「ふー」

「流石にトランサイトほど連続とはいかないか」

「そうですね……ハァハァ、10分休憩します」


 剣技があってこれだもんな。他の武器種なら20分は休まないと。


「後は剣1本、槍1本、弓2本、杖1本だよ」

「……多いですね、全部で1時間半ってところでしょうか」

「その後はまたトランサイトを頼むよ、50本くらいだから夕方の鐘までには終えるだろ」

「そうですね」

「ただ凄いところから回って来た武器だよ」

「え、どこですか」

「カイゼル武器工房さ、つまり国王お抱えの職人が作ったトランサス合金」

「ええ!?」


 なんと、王都から来たのか。


「直属の輸送部隊どころか武器を持参とはね」

「これってどういう扱いになるんですか? 商会を通してませんよね、加工費だけとか」

「どうだろうね、まあ伯爵が決めるさ」


 献上品すらマトモに届かないから痺れを切らしたんだね。


「面白いのは配備される騎士団だ、全部マルカリュードだよ」

「確か王都の南側ですよね」

「城壁はさあ250kmくらいか、確かに高い山脈が近くて森も広くて魔物も多い。でも王都の周りの城壁のある領地なら似たようなもんだろ」

「そうですね、まんべんなく配備しても良さそうです、扱いに慣れる上でも。あ、オービドス公爵領なんかは優先されてもいい気が」

「ほう、それはどうして」

「あー、いや、何となく」


 マズい。要らんこと言ったな。


「あの、強力な魔物種が偏って湧くこともあるそうです。マルカリュードはそういう傾向なんでしょう、今一番危ない地域だと」

「それにしたって50本全部は不自然だ。何か争いの兆候でもあるのかね」

「争いって、南側は高い山脈ですよね。他国があるにしても交戦する様な位置関係じゃないですよ」

「あんたは地形含めた地図を見たことがあるんだね」

「ええ、まあ」

「いいかい、地図ってモンは作り手の都合のいいように手が加わっている場合もある。本当にそこに山があるのかなんて私らに分かりゃしないんだ」

「あ……」


 なるほど、敢えて偽りの情報を広めるか。


「ではそこに山脈は無く他国と睨みあっていると」

「或いは他国へ通じる道を切り開くため強力な武器が必要と」

「そっちの線もありますね」

「国王はクレスリン頼みの貿易をどうにかしたいと常日頃から思っているはず。もしマルカリュードが新たな国境になれば、クレスリンはこれまで通り大きな顔はできないさ」

「海塩が手に入るかも」

「カカオやコーヒーもね」


 うはー、そうなればクレスリンの優位性は崩れるな。


「ところでトランサス合金持参で生産したことが漏れると他の領主も同じ様なことをしませんか」

「だからこれは最高機密だ。ジルを工房に入れなかったのもそれがあるからさ」

「なるほど」


 合金持参に偏った配備。国王は伯爵の城で生産していると思っているから情報管理も安心しているけど実際は違う。この工房はシンクライト含めて重要機密ばっかりだぜ。


「あれ、シンクライトって報酬はどうなっているんですか」

「さーねぇ、商会長から聞いてないかい」

「いいえ」

「まあトランサイトとは同じじゃないさ」


 よく考えたらこれまで生産した分もどうなっているのだろう。存在しない鉱物だから報酬も存在しないのか。えー、それは困る。今回は6本も作るしちゃんと騎士団に配備されるんだぞ。あ、そうか、一般販売が無いから価格が決められないのか。でも一般なんて絶対無理だろ。


 まあ流石にこれだけの鉱物をタダ働きはない。ちゃんと考えてくれてるか。


 それにしても6本とは多いな。一気に奥地まで開拓を進めるつもりだろうが流石に過剰火力だぞ。俺みたいに100%で飛剣連発ではないにしてもだ。もしかして北東部の他にも配備するのか。ミランダはその辺知っているのかな、聞いてみよう。


「ところで今日、住人管理所に10月侯爵院の追加議題が貼り出されていた」

「へー、そんな事柄まで周知しているんですか」

「もちろんさ、伯爵院や公爵院も同じ様にね。それで議会でどうなったかも貼り出される。中には私らに大きく関わることもあるからしっかり確認しておかないと」


 フローラのいう通りだ。税金とか直結する。


「今回の内容は中々に興味深かったね。ウィルム侯爵が発議なんだけど、爵位による婚姻制限の撤廃だとさ」

「それって……あ!」

「もし通ったらあんたに縁談が沢山来るよ」


 ぬお、規則を変える作戦か!


「あれを嫌がっている上位貴族は多い。だからこそ効果があると国王は見ているけど、侯爵の案が多くの支持を得たら考えないといけないね」

「国王に権限があるのですね」

「侯爵院を通ったら次は公爵院、それも通たら最後は国王が裁決を下す。でもいいとこ2つ下までに変更じゃないか」

「と言うことは侯爵家第1夫人直系なら子爵家までですね」

「それでも大きな変化だよ」


 確かにこれまで伯爵家までだったのが子爵家となると一気に増える。


「それで数年運用して次に3つ下まで。まあ実質撤廃だね」

「あれ? 公・侯・伯・子・男ですよね、公爵は子爵までしかいけませんよ」

「公爵は現状でも侯爵と同じ範囲内さ、つまり伯爵家まで」

「あー、そうなんですか」

「じゃないと公爵家の婚姻対象があまりに狭すぎる。濃い血統を避けるためにある程度世代を空けないといけないし」


 ほほう、この世界でも血が濃過ぎると問題ありとの認識なのか。


「ちなみに王族、ええと国王直系はどこまでなんですか?」

「制限はないよ」

「え!?」

「規則上は平民でも第1王子の妻になれる。つまり将来の王妃だね。ほら、ベアトリスって言う大魔導士がいただろ、あの人は平民から一気に女王にまでなった」

「確かに!」

「スキルなんかが極めて秀でていれば積極的に王家に加える。そうやってどんどん血筋を強くしているんだ。もちろんあんたは十分条件を満たしていると思うよ」

「それは……ええと」

「第1王女の夫になり将来は国王さ。あんたからまた新たなカイゼル王家の血筋が生まれるんだよ」


 何を言っているんだフローラは。


「強い血を取り込むためなら王は何でもする。あんたの異常な魔力操作や専門スキルの習得が王家に知れたら伯爵では抑えきれないね」

「はは……あ、そうか、爵位による婚姻制限ってそういう面でも意味があったのですね」

「上位貴族に手を出させないで最後は王家が取り込むのさ。でもそれを防ぐために上位貴族は有力者の存在を隠蔽する風潮でね、それを国王は危惧もしている。だから婚姻制限の撤廃は案外通るかもしれないよ」


 なるほど、表に存在を出さないまま配下に置いて利益をむさぼる。史実に残っていない英雄も多くいたかもしれないね。あー、ビクトル・ノードクイストもその1人だったのか、スキル構成が分からないけど。


「ただ飛び抜けたスキルだからって王家に加えるのは浅慮じゃないでしょうか。必ずしも人の上に立つ人格とは限りませんし、内政外交面での経験が豊富とは思えません」

「ただの象徴だよ、実務は宰相なり文官なり優秀な人材はいくらでもいる。とにかく国民の圧倒的な支持さえあれば王家は安泰なのさ。多少変わり者でもね」


 ふーん、能力が第一で中身は二の次と。それでここまで国が発展しているなら正しい方法なんだろうね。


 しかし俺が王家、それも将来は国王ってちょっと想像できないぞ。ただ実際その流れになったら拒否は難しそうだな。まあよく考えたら警備は最上級だし、最高権力で神でも魔物でも対応できるじゃないか。条件次第では選択肢としてありかもしれない。色々と面倒ごとが増えそうだけど。


「あんたが王なら側近に頼らなくても的確な指示ができるだろ」

「いやいや、無理ですよ」

「ただ実のところ王家に入る話になったら第1王子とその取り巻きに命を狙われるだろうね」

「え、あそうか」

「歴史上でもいっぱいある。王家に入った英雄が行方不明になったり変死したり」

「うわわわ」


 王子の立場からしたら快く思わないのは当然だ、突然現れた平民に国王の座を奪われるんだから。うーむ、国王ちょっといいかもと思ったが、身の危険が増す可能性もあるじゃん。それに神の魔物だってベルソワみたいな勢力が王都に来たら大惨事だ。


 やっぱり今の生活がいいか。伯爵は何としても隠し通してくれ。


「それにしてもフローラさんは詳しいですね。毎回こういう話になると驚かされます」

「貼り出しを確認に行くと熱心に見ている人がいるんだよ。何回か見掛けると向こうも私を覚えてくれてね、気づいたらそういう話で盛り上がるのさ。何人かはいるよそういう友達。いやー、あの人らと話していると本当に楽しいね、ひひひ」


 そういうことか。


「もちろんここで知り得た情報は話してないから安心しな。ただ近い考察をする人もいるから中々に面白いね」

「え、例えばどんな」

「トランサイトは本当に伯爵の城で作っているのか、クラウスは本当に製法を発見したのか、後はこのところのAランク魔物の動きが不自然で妙な規則性があるとも」


 ギクッ! いやでもちょっと考えれば誰でも気づくよな。


「Aランク魔物と言えば討伐現場にあんたが必ずいるんだけど何か関係あるのかい」

「たまたまです」

「そうかい……次は明日が危ないとも言っていた、気をつけなよ」

「は、はい」


 もう俺を狙っている前提じゃないか。でも偶然を通すしかないな。


 さー、シンクライトはこれで最後だ。


 ギュイイイィィィーーーン


「ふー、ひー」

「お疲れさん、先にシンクライトだけ城に運ぶよ」


 フローラはそう告げてエリカと共に鑑定収納して台車に載せる。


「じゃあ頼むよ」

「あいよ」


 エリカは台車を押して工房を出た。


「さー、休憩が終わったら次はトランサイトだ」

「はい」

「ほらごらんよ、ここに刻んでいるだろ」

「……ほんとだ」


 確かに剣身の付け根にマルカリュード騎士団とある。


『トランサス合金

 定着:3年2日9時間23分

 製作:カイゼル武器工房 剣部門』


 うわ、本当にカイゼル工房だ。きっと国中から集まった優秀な職人ばかりなんだろう。これでも表向きは伯爵の工房で生産しているから、王の工房より伯爵の工房が優れているのはマズいんじゃないか。


「王都の輸送部隊には特使もいますよね」

「当然さ」

「伯爵の工房へ立ち入りますよね」

「だろうね」

「どう説明するんでしょう」

「それは伯爵が何とかするだろ」


 何とかなるのだろうか。


「さっきの理由であんたには繋げないよ、安心しな」

「はい」


 こりゃ知られたら間違いなく連れていかれるな。でも伯爵は国王派じゃないのか。いいのか、隠し事をしても。そもそも隠し通せるのか。


「あれだ、職人の疲労が回復していないから生産を見せられない。特使が就寝中に回復したから生産を終えた、どうだい」

「めちゃくちゃ怪しいですね」

「職人が連れていかれるよ、ひひひ」

「うわー、どうするんですかそれ。王都に到着してもまだ回復しないなんて通用しませんよ」

「何故か出来なくなったとでもするかい」

「……それしかないですね」


 これはいつまでもごまかしきれないな。いっそのこと生産可能な職人が出てきてくれた方が助かるじゃないか。んー、伯爵がどう対応したかによっては変化共鳴を伝える展開も考えないといけないな。


 ただそうなった場合、何か大きな引き換えを用意してもらわなければ。例の神託情報を絡めてクラウフェルト子爵やクレア教の動きを制限してもらう条件もいいな。これはメルキース男爵たちとしっかり相談しないと。


 しかし結局は最大権力に振り回される展開になりそう。ハァ、国王かぁ。まあクレア教に対抗するにも王家崇拝を広める方策が今のところ有効っぽいし。いずれは何かしら協力を仰ぐことにはなるだろうな。


「失礼します」


 ララが工房へ入って来た。


「リオン様、エーデルブルク城より依頼していた本が届きました。代金について話がしたいと司書のマレイネンと言う方が応接室でお待ちです」

「はい、行きます!」


 うひょ、本が来た!


 俺は一旦店内に出て護衛と共に応接室へ入る。


「リオン様、ご依頼の写本が完了しました。お待たせして申し訳ありません」

「いえいえ、急な申し出をご対応いただき感謝します」

「仕上がりをご確認下さい。ご依頼の通り装飾などを省き改行なども再現しておりません」


 マレイネンから本を受け取りテーブルに置いてパラパラとめくる。数ページ毎に書体が変わっているのは違う写本士が担ったんだね。うんうん、きれいな文字でちゃんと読める。


「いいですね、何も問題ありません」

「それで代金ですが、通常この程度の写本なら300万ほどが相場です。ただ今回は城の写本士が総出で取り組みましたので手当などを含めて900万でお願いしたいのです」

「もちろん構いませんよ、無理を言ったのはこちらですから。ただ先程確認したら思ったより丁寧な仕事でしたので上乗せしましょう、1200万支払います」

「それは……ありがとうございます。ではこちらに金額と受け取りのサインをお願いします」

「……はい書きました。ララさん、キューネル支店長は店にいますか?」

「はい、おります」

「ではマレイネンさん、請求は支店長へお願いします。ノルデン家の一部口座を管理していますので」

「承知しました」


 フリッツがいいけど、どこにいるのか分からんからね。


「再び城へお出での際にお気に召した本がありましたら遠慮なくお申し付けください」

「はい、その時はお願いします」


 これは社交辞令で言っているだけだな。


「マレイネンさんはどの辺りを書きましたか?」

「私は1~22ページです」

「体調は崩していませんか?」

「いいえ、他の写本士も睡眠や休憩時間などいつもと変わりません。お気遣いありがとうございます」

「それなら良かった。大事に読みますね」


 でも本当は無理してるだろう。城の写本士としての優秀さを誇示するために平静を装っていると見た。いくらなんでも3カ月が3日なんて早すぎるもんな。もし直ぐに頼んでも涼しい顔で受けるだろうが内心はいい加減にしてくれと思ってそう。頼むとしても期間を空けるか。


 応接室を出て工房へ戻る。


「仕事を再開します」


 ギュイイイィィィーーーン


 ふー。


「鉱物大全かい、ほう2296改訂版じゃないか」

「フローラさんも興味があれば見ていいですよ」

「そうさせてもらうね。私が見た大全は2240改訂版だったから何が追加されているか楽しみだよ」

「うわ、56年前って、もしかして学生時代ですか」

「まあね」


 フローラは60代前半っぽいから当時としては最新だ。


「ただ2298改訂版を直ぐ出さないといけないね、トランサイトがあるから」

「そっか!」

「……ほら、載ってはいるけど幻の鉱物だよ」

「ほんとだ」


 これでも改訂版作った直後にシンクライトが世に出たらまた改訂版じゃないか。


「ただまあ鉱物1種類なら追加ページを挟んでおくだけで十分か」

「確かにそうですね」

「本は持って帰るのかい」

「あー、どうしよう。ここで仕事の合間に読むつもりでしたから工房へ置いておくのもいいですね」

「いちいち持ってくるのも面倒だろ、ここなら防犯面も問題ない」

「そうですね、じゃあ置かせてもらいます」


 明日、男爵邸宅へ向かう時は持って行こう。いやいや、道中神の魔物が現れて馬車が燃やされたら大変だ。んー、流石に考え過ぎだな。燃やされる前に倒せばいい、全力で。


「しかしいい仕事だね。本なんてこのくらいで十分だよ、欲しいのは情報だけなんだから」


 フローラは見た目とかどうでもいいらしい。


「次で最後だね」

「はい」


 ギュイイイィィィーーーン


 ふー。


 ゴーーーーーン


 夕方の鐘だ。


 写本の対応で中断したけど何とか予定数を終えたね。


「剣17本、槍4本、弓22本、杖10本で合計53本だね、お疲れさん」

「これ全部マルカリュード騎士団なんですね」

「無事に持ち帰られるか」

「えー、また行方不明ですか、今回は王都の輸送部隊ですよ」

「はは、そうだね」


 まるでフローラはトラブル発生を期待しているかのよう。やれやれ、ほんとそう言うの好きだねぇ。


「すまん、少し遅くなった」


 そう言いながらクラウスが工房へ入る。ソフィーナも一緒だ。


 西区へ戻り夕食を済まして家に帰る。


「あ! ソファが変わってる!」


 うひょー、ふかふかだぜ。


「気に入ったみたいだな」

「朝起きてここに座ったらまた眠くなっちゃう」

「はは、そうかもしれん」

「ベッドも見てくる」


 奥の部屋に行くとベッド2つがエスメラルダ仕様に。はは、家の作りが簡素なだけに家具が浮いているな。


「リオン、ベラの両親だが、クレメンテとマルセラ。明日屋敷から戻る時に同行させる。住むかは分からないがひとまず環境を見てもらうよ」

「そうだね、一度見て見ないと」

「カトウェイク家は昼過ぎに到着予定だから俺たちは村を10時に出発する。昼食は男爵屋敷で食べるからな」

「分かった」


 お、神の魔物に備えないと。


「シンクライトも持って行くね」

「それがいい」

「私とクラウス、それからリオンとミリィがノルデン家の馬車に乗るわよ」

「おー、遂にウチの馬車に乗れるんだ」

「フリッツとミーナは護衛が同乗した男爵家の馬車でついて来る。もちろん前後も騎士団の馬車が付く、トランサイト班が乗ってな」

「頼もしいね」

「それで規模について不思議な声の情報は無いか」

「無いよ」


 まあ前回あれだったから続けて同規模とは考えにくいけど。


「クレア教神殿の儀式情報は?」

「ミランダの話ではあれから把握していない」

「そっか、じゃあAランク2体くらいかもね」

「だといいんだが」


 その儀式も遠方で行われていたら分からないしな。効率よく情報を集めるためにいい方法は無いものか。


「そうだわ、GD型の騎士も一緒に来るのよね」

「あ、防衛部隊にいたんだ」

「GD型はゼイルディクで1%でしょ、北西部防衛部隊の騎士は約800人だから1%なら8人はいそうよね」

「へー、防衛部隊って800人なんだ、多いね!」

「メルキースの城壁や森の各拠点にもいるからな。それでGD型は7人いたそうだが、明日同行するのはうち4人だ。皆、20代~30代で冒険者ならCランクの腕前だぞ」

「それは頼もしい」


 うまく神の魔物への優位性が検証できればいいけど。


「そろそろ寝るか」


 ベッドに入って照明を消す。


「わーい、ふかふかだ」

「毎日これで眠れるぞ」


 マットレスの構造は不明だが体重が分散されているのを感じる。子供の俺でそうなんだから大人はより違いを認識しているはず。じゃあもう少し反発がある方が良かったかも。


「父様、母様、沈み込み過ぎてない?」

「いや俺はこれで丁度いいぞ」

「私も気持ちよく眠れそう」


 ふーん、本人たちが納得しているならいいか。高級品が必ずしも体に合うとは限らないからね。


「もし寝心地に不満があったら取り替えてくれるから大丈夫さ」

「へー、そんな対応があるなんて流石高級家具の商会だね」

「売った後こそしっかり世話をする、それがいい評判になってお客が増えるんだと。それにほら、生の声を聞けば次の商品開発にも繋がるだろ。お前も気づいたことがあったら何でも言えよ」


 フレンツェル家具商会だっけ、アーレンツ子爵の姉が商会長なんだよね。しかしよく考えると貴族屋敷や高級宿は求める品質も高くて大変だな。


 俺もモノ作りの一端を担っているが何も考えてないな。ただ共鳴するだけ。

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