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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
194/321

第194話 ジルベール

 6月10日平日4日目だ。


 朝の訓練を終え休憩していると天候が変化する。


「ありゃ、降って来たな」

「うひー」


 ザアアアァ……


 空が暗いとは思ったが、見ている間に本降りになってしまった。


「少し早いが食堂へ行くか」


 ビュオオォー


 時折り強風の音がする。ただ城壁の中はそれほど影響はない。


「この中でも見張り台に上がってるの?」

「外套を着て縮こまっているだろう」


 あそこは風当たりが強いから大変だね。


 朝食を終えて居間に座る。


「リーサ、見ての通り弓の訓練は無い。中央区へ出る時に声を掛ける」

「あいよ」


 音漏れ防止結界を施しクラリーサは家の前に出た。


「リオン、昨日言いそびれたが、まだゼイルディクへ来ていない身内の日程が決まった。カトウェイク家だ、明日昼過ぎにメルキース男爵邸宅に到着する」

「カトウェイクって……ミリアムばーちゃんの妹が嫁いだ家だっけ」

「そうだ、名はエンドラ、夫のレオンは2年前に死亡しているが、長男夫婦と2人の孫を連れて来る」

「確か8歳の男の子と7歳の女の子」

「そうよ、カーシスもユフィールもアルデンレヒトの初等学校に通ってるわ。夏休みまで待つ話だったけど早めた様ね」

「まあ護衛関連のやり辛さだろう」


 ずっと知らない大人が付いてくるのは調子狂うよね。


「じゃあこっちでは貴族学園?」

「どうかな、その辺は来てからの話し合いだ。それでええと親たちは武器商会だったな」

「エンドラは建設ギルド事務、長男カミロはブラームス武器商会の商会員、妻のロディーヌも接客係よ」

「ふーん、じゃあゼイルディクのブラームス店舗に転勤する可能性もあるね」

「どうだろう、先々を考えたらコーネインがいいと思うが」


 まあ男爵家に世話になる以上、自然な流れか。


「ミランダは近い将来ウィルムのどこかに支店を出すつもりだ。その時に中心となってもらう人材が欲しい。現地に詳しい商会経験者なら申し分ないだろう」

「まだ広げるの」

「今が好機なんだとさ」


 あの人、手を広げすぎじゃないか。


「まあそれも当のカミロやロディーヌ次第、全く違う仕事に就くかもしれん。俺たちの屋敷の使用人も道の1つだ」

「そうだね、何も武器商会だけが仕事じゃない」

「それで顔合わせに屋敷へ行くんだが、明日は11日だろ? 神の魔物が襲来するかもしれん」

「うわ、また丁度いい日に」

「ただリオンが察知してくれれば、直ぐにベルソワまで走って迎え撃てる。なんならミーナも同行可能だが、どうする?」


 確かに戦場を選ぶことはできるな。


「ミーナがまた標的になる可能性もあるね、それに俺の察知が正常に機能しなかった場合に備えて連れて行った方がいいかも」

「うむ、俺もそう思う、じゃあ決まりだな」


 勝手に決めちゃって悪いけどミーナも俺と一緒なら喜んでくれるはず。問題は戦闘時の安全確保だが要塞みたいなベルソワ城壁なら何とかなるか。ただあのクエレブレみたいに突撃されたらマズい、最速で倒すためにはシンクライトも持参しよう。


「ねぇ昨日の話、大丈夫かな」

「神職者が来訪した件か」

「何をしてくるかは分からないけど、それは警備してもらうしかないし、しっかり対応してくれると思う。問題はあの情報を一部の人たちだけで止めるかどうか」

「酷い言い様だったからな、あれを多くの者が信じ込むと厄介ではある」


 リオンを殺せ! とか言って押し寄せて来ないかな。


「だから早く伯爵に報告して制裁してもらうのよ、様子を見ている場合じゃないわ。ミランダがやらないなら私が直接城へ行くから」

「いやソフィが動くことは無い、男爵たちにちゃんと伝えれば大丈夫さ、俺も言うから」


 昨夜の意気込みは変わっていない様子だ。でも確かにソフィーナの言う通り、失態を誘うにしろリスクが大き過ぎる。何せ神が好きな様に吹き込むんだ。それを妄信する奴らは神の意思だのなんだの大義名分にして暴走しかねない。


 いやー、本当に面倒だ。今回の件が事無く片付いたとしても世界中に信者はいる。いつまた不穏な動きがあってもおかしくはない。これを防ぐにはクレア教の規模縮小しかないな。


「アルメールの神殿には本当に寄付をするの?」

「もちろんだ。メルキースに大型拠点を作る流れも実現させる。昨日、男爵が特使を派遣したから、数日中には向こうの要職がこの村に訪れるだろう。ただ施設が出来たからと言って直ぐに勢力に影響は出ない。宗教は時間かかるんだと」

「まあそうだね」


 うーむ、そこはアルメールに頑張ってもらって拠点を国中に広げてもらうしかない。ただ闇雲に増やすより同時に相手勢力を削いだ方が効率がいいな。つまり熱心な信者の多いところへ敢えてピンポイントで攻めるんだ。


「クレア教の盛んな地域ってあるの?」

「この辺の中心地はクレスリン、あそこには大神殿がある。そもそも他国より入った異教だ、まずは国境の町に足がかりを築くもんだろ。それがそのまま巨大化したんだとさ」

「反国王派でクレア教の拠点、クレスリン厄介だね」

「……神託が向こうまで及ばなければいいが」


 むむむ、確かに大勢力が動くと何が起きるか分からない。しかし領主が領主だけに国王崇拝を布教するには難しい環境だ。


「アルメールは隣りだから何とか入り込んで欲しいんだけど」

「それは厳しい、クレスリンとアルメールはずっと仲が悪いから」

「ありゃ……でも凄いね、クレスリンは1850万、アルメールは350万、そんな人口差でも屈しないんだ」

「クレスリンにとっちゃ内陸へ通じる唯一の道だからな、貿易品が滞りなく流通しないと困るだろ。こっちには2億の市場があるんだ」

「あー、確かに」

「ただアルメールも通行料を取って潤っているから変に嫌がらせも出来ない。良く思っていないながらもお互いの利益のためにうまくやっているんだよ」


 何とも複雑な事情の地域だね。


「貿易品って何があるの?」

「他国文化を強調した衣料や調度品が人気だが、一番は食品だな、やはり海産物は魅力的だと聞く。その中でも塩の供給がいつの時代も圧倒的比率を占めるそうだ」

「あー、塩か!」


 確かに海の無いカイゼル王国では死活問題だ。


「まあ岩塩も国内に産地がいくつかあるが、やはり海塩の方が調味料として使い勝手がいいんだと。それから砂糖、コーヒー、チョコレートなんかの原料も暖かい地方で栽培されてるから、国内に流通しているほとんどがクレスリン経由だ」

「うはー、クレスリン凄かったんだ」


 言われてみればそうだよな。案外国産の食材って種類で言うとそんなに多くないのかも。


「それにしても父様はよく知ってるね」

「貴族たるもの教養が無ければな」

「ふふ、この人、やり始めたら意外と勉強熱心なのよ」

「おいおい意外は余計だ。まあ単純に知らない知識を得るのは楽しい、リオンが本を欲する理由がよく分かったよ」


 クラウスは真面目だからね。環境さえ整えば取り組む姿勢はあるんだ。


「おっと、あんまり話し込んでは8時に遅れる、そろそろ行こうか」

「そうね」


 雨用の外套を被って中央区へ向かう。コーネイン商会に到着するとクラウスとソフィーナは2階へ上がった。工房に入ると作業場に初めて見る男性がフローラと一緒にいる。


「おはようございます、リオン様。本日より魔導具について共に勉強させていただくジルベール・グラスと申します。ジルとお呼びください」

「はい、ジルさん。どうぞよろしく」

「この子には敬称も丁寧な言葉遣いも不要だよ。あんたもそろそろ身分を自覚しなさいな」

「えと、分かりましたフローラさん。じゃあ改めてよろしく、ジル。俺の魔導具研究の手助けをしてくれ」

「精一杯尽力します」


 ジルベール、真面目そうな少年だね。それにしても身分の話ならフローラも同じ気がするが、まあいいか。


「まずは剣だけど今日は多いよ、30本ある」

「それは一気に無理ですね、半分終えたら休憩します」


 テーブルには20本ほど並んでいた。


「では行きます」


 ギュイイイィィィーーーン


 ……。


「ふー、休憩します」

「ジル、教えた通り鑑定確認したら箱に納めるんだよ」

「はい!」


 ジルベールとフローラは手際よく作業を進める。彼も鑑定ができるのね。


「終わったら残りの剣を並べるんだよ」

「はい、フローラ主査」


 おや、フローラって役職についてたのか。主査って係長か課長補佐あたりかな。きっとトランサイト生産の管理と運搬を任されているんだろう。でも鉱物士の仕事もやってるよね、兼務とは稼ぐじゃないか。


「あの、リオン様」

「何だいジル」

「話には聞いておりましたが、そのお力……何と表現していいか言葉になりません」

「ビックリしたね、でも最初だけだから」

「はは、私もあんだけ感動したのに全然何とも思わなくなっちまったよ。ただジル、よそには話しちゃいけないよ、絶対だ」

「はい! それはもう固く固く口を閉ざします! 守秘義務は職人の基本ですから!」


 おお、分かっているじゃないか。まあ両親が男爵家に世話になっている以上、そこへ不利益となる言動は慎むか。運命共同体だもんね。やはり秘密を共有するなら身内の方がいい。


「じゃあ剣の残り半分を取り掛かります」


 15本を連続で終わらせる。それをまたフローラとジルは手際よく箱に納めた。


「後は槍12本、弓32本、杖18本だ。62本を2時間50分は少し厳しいかい」

「残り10本くらいは間隔を詰めますので昼の鐘までに終えるでしょう」

「じゃあ頼んだよ」

「……トランサイトが幻と言われた先月までが嘘の様ですね」

「この子がいなけりゃ元通りさ」


 今のところ俺しか作れないからね。


 生産を再開する。


「さてジル、あんたは魔導具商会で働くことが決まっている。何が出来るんだい?」

「はい、鉱物の定着が出来ます」

「得意な鉱物は?」

「鉄と銅です」

「いやそれは誰でも出来る。他には?」

「……特には」

「ありゃ、そうかい」

「何か生産に必要な鉱物が決まれば、それを重点して取り組み効率の向上を目指します」

「まあ、そうなるね」


 でもそんな直ぐに伸びるもんかね、鉱物との相性もあるみたいだし。


「実習で何か作ったかい?」

「いえ、まだ何も」

「魔導具全てを完成じゃなくて一部でもどうだい」

「そうですね、外装なら何度か」

「外装か……それでは魔導具とは呼べないよ」


 んー、中身は難しいか。


「あんた学校で何してるのさ」

「僕は魔導具の仕組みや歴史に時間を多く取っています」

「じゃあ魔力波長測定器の仕組みは分かるかい?」

「大体は」

「それじゃ学んだことにはならないよ」

「申し訳ありません、今日の昼食時に調べます」

「いや食事はすればいい」


 おやー、何だか怪しいな。


 それからも俺は生産しながらフローラとジルベールのやり取りを聞いていたが、どうも優秀とは言い難い人材のようだ。いやまあ15歳だし、そんなもんか。フローラ基準では求める能力が高過ぎるのだろう。


「フローラさん、彼はまだこれからですよ」

「甘いね、それじゃ工房で職人なんて出来やしない。見てごらん向こうの職人たちを。毎日毎日同じことを繰り返して練度を高めているんだ。もっと貪欲に取り組まないと何も身につかないよ」

「……はい、頑張ります」


 ありゃりゃ、元気がなくなった。


「このリオンだって初めからこんな早く生産出来なかった。色々と工夫して今に至る、そうだろ」

「ええ、まあ」


 俺は英雄の力でズルしてるだけさ。


 それからフローラはテーブルにある魔導具をジルベールへ説明していた。まあ彼女も魔導具なんて縁が無かったのに俺が希望するから勉強してくれたんだ。そんなにわか仕込みの知識より現役の学生が劣っているなんてショックだったのだろう。


 ジルベールは真面目そうだけど覚えが悪いのかな。魔導具が好きなら熱心に勉強してそうなもんだけど。或いは好きな分野が偏っているかもね。


 さて、あと杖10本か。何とか鐘までには終われそうだ。


 ゴーーーーーン


「ふー、丁度終わりました」

「お疲れさん、午後は昼前に来た便を頼むよ」


 護衛と合流し店を出る。雨は小降りになっていた。エスメラルダの昼食会場へ到着。テーブルにはメルキース男爵とミランダ、クラウスとソフィーナだ。


「リオン、ジルベールはどうだ」

「とても誠実な印象です」

「そうか……実のところ学校での成績は良いとは言えず内面を評価しての採用だ。従って魔導具開発の手助けとなるかは未知数。その面で不十分なら代わりを探すぞ」

「覚えておきます」


 やはりそうか。まあ俺の近くに付けるなら人柄を優先するべきではある。ただ彼も専門学校へ遊びに行ってたワケではない。基本的な知識だけでも十分参考になるよ。


「仕事の方はやや多かったはずだが、どうか」

「昨日到着していた92本、全て終わりました」

「3時間半でその実績とは、相変わらず脅威的だな」

「慣れましたから」


 本当に安定してきた。


「しかしそれほど生産してよく売る相手に困らないな、いやトランサイトの価値は分かるが、決して安くはないし」

「クラウスよ、心配には及ばん、これからは騎士団向けの割合を増やすからな」

「では一般向けを担っている商会への配分を減らすのですか」

「いや配分は変わらんだろう、その内訳を変更するのだ」


 ほう、コーネインと城の工房の他にも騎士団向けを作らせるのか。


「伯爵の話ではゼイルディクの商会が広域に世話をする限界が見えてきたと。やはり現地に近い商会が円滑に事を運べるとの判断だ。先日加わったレリスタットのロワール商会へ一気に配分を増やしたのもその現れである」

「カルカリアのアベニウスも加わりましたね」

「うむ。来週の極偉勲章授与式では各領地から有力な商会が交渉へ来ると見ているが、それを待たずにいくつかの商会が更に加わるだろう」

「プルメルエント、ロムステル、ブレクスタと言ってましたね」

「その通り。他にも遠方の領主と話をしているらしい」


 ほほう、割と大きな方針変更だ。


「当初はこの展開を半年後と見ていた。しかし脅威的な生産速度がそれを早めたのだ。このまま行けば月末を待たずに1000本を超える」

「では俺の偉勲褒賞も見直されますね」

「それを見越してプルメルエント騎士団へ多く配備したのだ。更にプルメルエントの商会を複数加わえれば公爵への印象は格段に良くなる。10%の維持は確実だぞ」

「ありがたいことです」


 そういやそんな規定があったね。そこへ届く前にゴマすり作戦か。


「遠方の商会を加える他の理由としてはトランサス精霊石の枯渇だ。そろそろゼイルディクの商会は在庫が厳しくなるだろう。確かに以前より森の奥地へ入れるが、現状を維持するほどの供給は難しい」

「ああ、それが無くては作れませんね」

「我が商会はまだまだ作れるぞ、なあミランダ」

「はい。あと300本分は保持しています」


 おお、溜め込んでいるね。


「無論、広域への買い付けも継続しろ。このまま行けば来月には無くなるぞ」

「優先確保するため多くの鑑定士ギルドと交渉中です」

「他の商会も考えることは同じだ、何としても押さえろ」

「最善を尽くします」


 こりゃとんでもなく高騰してそう。となると精霊石を拾う冒険者たちの稼ぎも増えるよな。トランサイトの恩恵が広まるのは嬉しいことだ。


「さてリオン、昨日の神職者の件だが」

「はい」

「そなたの両親の意見も聞いた。言い分は尤もだと思う。しかし伯爵へ報告するからにはあの内容も告げねばならん。それが我々へどう作用するかが読めんのだ」

「では現状、伯爵家で共有されていないと」

「伯爵が把握しているなら直ぐにでもリオンを城へと呼び立て、昨日のワシの様に1つ1つ問うてくるだろう、特に破壊兵器や価値観の話だ。それが来ないところを見ると伝わってないと見ていい」


 ああ、確かに。


「……権力者と言うのはな、その僅かな可能性でも徹底的に調査し我が物にしようとする。いいか、あの内容が真実とするなら、神をも恐れる兵器や思想なのだぞ。あの文面からは英雄の力100万と同等と見た。そんなものが誰かの手に渡ったら世界の支配者となるやもしれん」


 まあこの世界にないものだからね。


「それがトランサイト生産の様にそなたに依存しないものならどうなる? 兵器の技術、混乱を招く思想、それを手にした後、そなたを生かしておくか? もし他の権力者に漏れたら優位性を失う、情報源は少ない方がいいな」

「うわ、そ、それは」

「かなり極端な例だが可能性が無いとは言えまい。もちろん神託なぞ、人によっては虚言に過ぎん、しかし、その様な世迷い言にこそ、他を圧倒する力の根源が隠されている、誰も信じない事こそ世界をひっくり返す、上位貴族はそう考えているぞ」


 なるほど、先入観にとらわれない柔軟な理解力か。


「あの内容は極めて危険だ。人によって受け取り方が分からん。従って伯爵へ積極的に知らせる必要はないのだ」

「分かりました。様子見がいいのですね」

「リオン、俺もそれがいいと思うぞ」

「私も考え方を改めたわ。その代わりしっかり守ってもらうの」

「ソフィ、心配には及ばん。近く村へ常駐する保安部隊も増員する」

「お願いね、ミリィ」


 頼んだぜ。


「ただ様子見と言っても何もしないワケではない。神職者の動きは引き続き注視する。そもそもあの情報がどこまで伝わっているのか把握するべきだ」

「そうです、流石にクレア教が一度に大勢行動に出るといくら警備していても対応できるか不安になります」

「いやまだ一般信者には伝わってないのではないか。恐らくは一部の幹部のみだろう。クラウフェルト子爵がその辺りを統制していると見るがな」

「そっか、貴族ならあの情報の重要度をよく分かっている」

「うむ」


 俺を引き渡せと言ってきたのは殺害が目的ではなく男爵と同じように情報を確認するためかも。そうだよ、殺すだけならあんな根拠を示さず一方的にやりゃあいい。


「それでリオンよ、そなたは覚えがないと申すが、ワシは英雄の力と同様にその身へ封ぜられていると考える。つまり解放されるのだ。その兆候を僅かでも掴んだなら直ぐに申せ、最優先で対応する」

「分かりました。ただ、その……男爵はその情報が欲しいのですか」

「ワシも貴族だ、要らんと言ったら嘘になる。ただ情報を得たとしても、そなたやノルデン家への姿勢は変わらん」


 んー、むむむ、男爵の目がギラついている。これは俺に何かあると確信しているな。


「さあ、あまり考え込むと昼食の味が分からん。ひとまずこの話題は終えよう。おお、そうだ、城からの使いで報告を受けたが、先日依頼してあった写本、鉱物一覧だったな。今日の夕方には仕上げて村へ届けるそうだ」

「それは楽しみです!」

「男爵、いくらが妥当でしょうか」

「そうだな……1000万、いや1200万とするか。無論、ノルデン家ならもっと支払えるが、あまり高額にすると次回の依頼に影響する」

「分かりました。リオン、支払いはフリッツかキューネル、もしくはリカルドへ回せ」

「はい、父様」


 その金額ならノルデン家の本口座じゃなくても対応可能だね。

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― 新着の感想 ―
[一言] あけましておめでとうございます。 神側の動きが活発化してきて、国を二分する流れが急速に生まれそうでなんだかキナ臭いですね。 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵たちのそれぞれの段階の野心・野望が焚…
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