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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
192/321

第192話 北区の進路

 6月9日平日3日目。


 朝の訓練と朝食を済まし自宅の居間に座る。


「8時に搬入口よね、それまで弓の訓練をしましょう」

「うん、母様」


 西区の訓練場で弓を放つ。的までは30m、昨日より精度が上がった気がする。とにかく反復して真っすぐ飛んだ時の感覚を体に染み込ませるんだ。


 隣りでソフィーナはサラマンダーの弓を魔力集束させたりたまに矢を放っていたが、表情には苦戦の様子が伺える。クラウスもサラマンダーの剣に手こずっているところを見ると、やはりAランク素材は一筋縄ではいかないらしい。


「母様、難しい?」

「そうね……リオンも握ってみる?」

「え、いいの」

「実は適切な魔力調節が分からないの。あなたなら本来の力を引き出せるから参考になるかと思って」

「どうかな、やってみないことには」


 ソフィーナからサラマンダーの弓を受け取り構える。


 ……。


 少しだけ魔力を通すと僅かに空気が揺らめいた。再度送ると今度は小さく渦を巻く。はは、なるほど、人間の魔力が魔物素材を通じることにより異質の力となるのね。本来それが鏃に集まるが、今は矢をつがえていないので周りに放出されていると。


 ブオッ


 再度魔力を送ると弓から力が放たれた。ただ先程と同じ魔力量にもかかわらず力は大きく感じる。そう、魔物素材を使いこなすとは、この変換効率を上げることだ。


 ブオオッ


 魔力を増やせば変換された力も上がる。ただ並の魔物素材ならその上限に早く達するだろう。しかしこのサラマンダーの翼爪は変換が早い、つまりまだまだ余裕があるのだ。もっといけるぞ、魔力をくれ、まるでそう言っているかの様に。


 いいだろう。


 ブオオオッ


 ふふ、嬉しいか。


 なるほど、底知れない器、魔力を吸われるよう、Aランク素材を手にした者が一様の感想を述べる理由が分かった。こいつはかつて主だった魔物の力を欲している。あいにく俺はサラマンダーではないが魔力操作なら自信があるぞ。


 ブオオオッ


 む、これは。


 放出する力の属性は間違いなく火だが、そこに火は見えない。ソフィーナは言っていた、火の精霊石から抽出した魔素を鏃に(まと)わせて、魔物に到達した時に初めて火がつく。つまり抽出した段階では火種の様な状態だと。


 この弓を通して出る力はその火種、或いは熱量の源。そう火とは高温を生み出す手段に過ぎない。サラマンダーは火に頼らなくても火傷を負うほどの高温を実現していた。


 試してみるか。


「母様、リーサ、エマ、俺から5m距離を取って」

「わ、分かったわ」

「おやまあ怖いね」


 魔力集束。


 ブウゥン


 放たれる力を抑え一点に集中し高める。


 ブウウゥン


 俺の魔力は弓を通じてサラマンダーの力となる。


 ブウウウゥン


 その高めた力を一気に放出すれば、即ち。


「はあっ!」


 ゴオオオオォォー!


「きゃあ!」

「うはっ!」


 シュウウゥー……


「これは、熱風?」

「あんた何したんだい」

「ハァハァ、ちょっと実験だよ」


 地面に所々生えた草が弓を中心に半径2m付近だけ焦げていた。そう、サラマンダーの熱風を再現したのだ。いやー、凄いなこの武器は、防御にも使えるのか。


「母様、返すよ」

「ええ……ちょっと参考にはならなかったわ」

「うーんと、ただ魔力を送るんじゃなくて弓から力を引き出すんだよ」

「弓から?」

「こっちが主導権を握るんだ」

「そう……」


 ソフィーナはキョトンとしている。うまい伝え方が分からないや。


「とにかく武器に振り回されない様に」

「分かったわ」

「あんた教官みたいだね。しかも初めて握った武器なのに」

「え、あー、はは」


 確かにどうしてここまで言えるのだろう。でも合っている確信はある。これはサラマンダーと対峙した経験が生きているのか。


 しかしさっきの熱風。防御効果はあるが使いどころが難しい。想定としては弓を構えているところへ魔物が接近した時だが、そんなの逃げればいい。では逃げられない状態で危険が迫った場合だが、そんな窮地に弓を構える余裕はあるのか。


 うーん、まあいいや。1つの手段として身につけておくのは無駄ではない。ただ俺はサラマンダーの武器は持ってない、ジルニトラの剣でもできるのかな。


 訓練を終えて討伐へ向かう準備をする。


「今日はみんなトランサイトだね」

「俺たちとエリオット、ローザ、ラウニィはそうだが、探知訓練担当の騎士は普通の武器だろう」


 まあトランサイトも6本あれば十分だ。


 搬入口に出るとカスペルたちが花壇近くで談笑している。


「部隊長たちはもう西区の北端で待っとるぞい」

「あ、ほんとだ、荷車も2つ引いてるね」


 遠くに騎士らしき人影が4つ見える。


「気を付けて行っておいで、いや何が出てきても心配ありゃせんか」

「みんな強いからね」


 合流し挨拶を交わすとエリオットが騎士を紹介する。


「彼は防衛部隊のアルビン・ギレスだ、リオンと共に行動する」

「私は主に探知スキルについてお伝えする役割です。リオン様どうぞよろしくお願いします」

「よろしく、アルビンさん」


 40代半ばの男性騎士、武器は杖で水属性の精霊石がはめられている。


「武器は持っていますが戦力としてお役に立てないでしょう」

「彼は普段、拠点付近の魔物探知が任務だ。数年前までは騎士と共に森へ入り正確な探知で補助し、自らも戦った。今でも本気を出せばCランクでも倒せるだろう」

「ご冗談を部隊長、若い者には敵いません」


 世代交代ね。最前線での活動を終えて比較的安全な拠点警備に配属されたと。それを引っ張り出してきて何だか悪いな。


「では出発だ、隊列は道中説明する」

「ラウニィ、しっかり務めを果たすんだよ」

「はい、お母様」

「荷車は1つ任せろ」


 クラウスは荷車を引っ張ると前に出た。


「進路中の最前列は私とクラウスだ、その少し後ろにリオンとアルビン、次にソフィーナ、最後尾はローザとラウニィが荷車を1つ引き続け」

「はっ!」

「分かった」

「アルビンが魔物を探知したら直ぐに対応を指示する」


 ほう、目視ではなく探知がメインなのか。


「ただ距離によっては無視する、その境は進路より概ね50m以上だ」

「ではアルビンさんはそれ以上も分かるのですか」

「うむ、森なら80mほどだったな」

「はい。木の密集度によりますが北区の進路ならその辺りです」


 へー、凄いな。


「それは歩きながらの範囲ですか?」

「その通りです。静止時は100mほどでしょう」

「自分を中心にした半径ですか?」

「はい」

「魔物種も分かりますか?」

「はい。ただし一度探知経験がある魔物に限ります。初探知でも系統と魔物ランクはある程度予測できます」


 へー、有能だ。こりゃ1人いるだけで全然違うな。


「止まって目を閉じたら範囲は増えますか?」

「本来は大きく広がりますが私は120mほどです。あまり変わらないので休憩中も目を開けています」

「いや広がっていないのではない、目を開けている時の範囲が広いのだ」

「どういうことですか、部隊長」

「通常、目を閉じて120mなら目を開ければ60mほど。それが100mあると認識するべき」

「あー、そっか」

「アルビンは優秀なのだ」

「恐縮です」


 なるほどね。


 俺たちは北区の城壁付近へ到達する。


「随分と畑を潰したな」

「来週には本格的な城壁建設に取り掛かり、全て完成するのは8月中と聞いている。同時に下水施設も進めるため、もう少ししたら西区の東側には搬入路を通すぞ」

「花壇の真横辺りか」

「うむ」


 ふーん、じゃあ中央区の世話する畑も幾らか潰すんだね。それでカスペルたちが駄弁ってる前を資材を運ぶ馬車が行き来するようになると。


「ところでエリオット、体調はどうだ。あの戦いでは久々に魔力を出し切っただろう」

「はっは、クラウスよ、見くびってもらっては困る。傷が定着すれば普段と同じだ」

「そうか、要らぬ心配だったな」

「いや気遣い感謝する。私も色々と忙しくてな、顔を出せずにいたのだ」

「それでナタリオだが、評価が上がったのではないか」

「もちろんだ、前にも増して女性騎士に囲まれておる。ただ極偉勲章を授かれば指揮官昇進への声が高まり、騎士としての振る舞いも注目される。身を固める頃合いと思わんか、なあラウニィ」

「は、はい……あ、いえ、私などに意見は出来ません」


 む、この絡みは。エリオットもナタリオとラウニィをくっつけようと画策しているのか。その方面に上官の圧力とはラウニィも苦労するね。


「ナタリオさんはいくつでしたか」

「27歳だ。あと10年は最前線で通用する上、まだまだ伸びる」


 18歳のラウニィとはまあまあ離れているね。


「リオン、あの男に興味があるなら次回は同行させよう」

「ええと、お任せします」

「まあ将来の指揮官ならリオンの能力は把握しておくべきだ。言葉で伝えるより早いだろう」

「そうですね」


 じゃあ防衛副部隊長かな。となるとミランダとメリオダス含めて副が3人になるぞ。


「指揮官を任命するのは伯爵ですか?」

「その通りだ。ナタリオなら十分資格がある」


 ただ伯爵としては手当を出している以上、いたずらに指揮官を増やしたくないかも。


「コルホル開拓計画を見ただろう、レナン川対岸へ新たに作られる騎士団施設は防衛部隊のものだ。規模もブレイエムの監視所級となるため指揮官の常駐が必須となる」

「あー、だから副部隊長を増やすのですね」

「そういうことだ」

「あれは大型の施設なんだな」

「建設費用の大半はノルデン家が負担する、その気になれば城でも何でも作れるぞ、はっはっは」


 そう言えばそうだった。


「大体いくらだ」

「まあ500億程だろう」

「ほーん、そんなもんか」

「金を積めば立派になるが完成も遅れる。ひとまずその程度で必要に応じて増築すればいい」

「そうするよ」


 またこの金銭感覚だよ。アルビンたちが一瞬目を見開いたぞ。


「さあ、おしゃべりはここまでだ。クラウスの荷車はここへ置いておけ」

「部隊長、我が班は特別編成1班ですか」

「うむ。では1班、出発だ!」

「おう!」

「お、おーっ!」


 なんとエリオット自らこのノリを買って出るのか。ローザやラウニィも迷わず掛け声を発したところを見ると申し合わせていたな。


「リオン、私が班長だ、従ってこの役目も担う」

「あ、はい!」


 なるほど、じゃあ奪ったらいけないね。


「武器を抜いてやる」

「うん、父様」


 クラウスが背中の鞘からトランサイトの剣を抜き手渡してくれる。


「そう言えば父様と母様の武器には名前が入っているんだよね」

「ほらこれだ、ちょっと読みづらいがな」


 確かに剣身の付け根付近にクラウス・ノルデンとかっこよく崩した文字が刻まれている。ソフィーナの弓も内側に同じ様な書体で刻まれていた。


「俺は前でいるから魔物が来たらエリオットの指示に従え」

「うん」


 さあ久々の森だ。前回はシンクライトの運用訓練、8日前だったかな。その2日前にもここへ入っているから今回で3回目だ。出現する魔物種も大体把握できている。


 そう言えばまたあの池で引き返すのかな、確かボーデン池。入り口から2kmの地点だ。


「魔物! 10時40mエビルアント2体、1時50mサーベルタイガー1体、以上」

「アント2体を私とクラウス、タイガーはリオンが行け」

「分かった!」

「リオン、1時とは前方よりやや右だ」

「はい、時計ですよね」

「なんだ知っているのか、では頼む」


 アナログ時計の文字盤を方向に使うのは誰でも思いつくさ。


 さーて、魔物感知だが、まだ何も感じないのは向こうが俺を発見していないからだな。


 距離30m、そろそろ姿が見えるはず。


 む! 今感じたぞ、これか!


 ガオオオッ


 勢いよくサーベルタイガーは進路へ飛び出し、そのまま真っすぐ距離を詰めてくる。


 目に入る情報だけに頼るな。空気中の魔素を通じて魔物の次の行動を感じるんだ。


 お、跳ぶぞ。


 ガオッ


 次は右前足で引っ掻き。


 ガアアッ


 そして噛みつき。


 ガルル


 少し間合いを取って様子を見る。


 そして、跳び掛かりだ!


 スパアアァァン


 魔物が地面を離れると同時に共鳴させたトランサイトを斜めに振り下ろす。サーベルタイガーは空中で真っ二つになった。


「ふー」

「こっちも終わった、休憩する」


 進路に腰を下ろす。


「リオン様、聞いてはおりましたが目の前で拝見し言葉になりません」

「まあ8歳だからね」

「もちろん他言はいたしませんので」


 アルビンはやや興奮気味に感想を漏らす。


 それにしても魔物感知は凄いな、次の行動が手に取るように分かる。そう、動きで判断するのではなく、魔物の意識を読み取る感じ。現に最後の跳び掛かりの前には少しイラついた雰囲気が伝わって来た。


 魔物に感情があるのだろうか。あー、そう言えば、ベルソワで対峙したジルニトラ、少し笑っている印象を受けた。あれは俺を仕留める喜びの感情に違いない。でも直後の熱風は分からなかったぞ。もしや熱風を放つ前は笑うのか。


 そんなことはない。恐らくは一度見ないと分からないのだろう。この進路で初遭遇の魔物がいれば試す価値はありそうだ。


「部隊長」

「なんだ」

「最初の指示はお任せしますが、場合によっては俺が行く魔物種を指定させてください」

「構わんぞ、なんならお前が指揮を執るか」

「ああいえ、初対峙で試したいことがあるだけです」

「そうか、分かった」


 近くのアルビンは目を見開き驚きの表情。え、何だろう。


「リオン様は部隊長へも臆せず意見を伝えるのですね」

「あー、まあね」

「アルビンも思ったことは遠慮なく言え」

「いーえいえ、私は探知するだけですから」


 そっか、防衛部隊長だもんね。慣れてしまったけど本来はこの人、身分も役職も高いんだ。


「では行くぞ、皆立て」


 進路を進む。魔物素材は復路で回収だ。


 おや?


「部隊長、これは指輪ですか」

「そうだな、よく気づいた。ローザ、魔石と共に回収しろ」

「はっ」


 あ、ちょっと鑑定。


『サーベルタイガーの指輪

 定着:29日23時間55分』


 間違いない、魔物装備だ。


「指輪は小さいので見落とすこともある、この様な整備された進路ならまだしも草むらで倒せばほぼ見つからない」

「確かに。でも小さいと言えば魔石もですよね」

「うむ。ただ必ず落ちているから探しはするし、体の中心にある事が多いため落下場所の推定は出来る。一方魔物装備はその限りではない」


 そっか、魔石と素材を回収して見える範囲に何も無かったら引き上げるわな。もしかして指輪は多く見逃している魔物装備かも。


「魔装探知があれば確実に見つかります」

「そんなスキルもあるんですね」

「はい」


 探知の派生か。


「その辺に回収忘れがあるかもな、はっはっは」


 おー、そりゃ毎日誰かが進路に入っているんだもんな。魔装探知持ちの冒険者はきっと美味しい思いが出来ているはず。そうだよ、雨でも降って流れたり土で覆われたらもう分からん。あーでも地表限定のスキルかもしれない。


「魔装探知は一部が空気中に出ていないと分からないのですか」

「スキルレベルによります、高ければ埋まってても水の中でも、はたまた箱の中に隠されていても見つけられます」

「おー、凄い」


 場合によっては盗難や紛失の捜索にも使えるな。


「魔物! 2時50m、種類不明……Cランク、トカゲ系1体」

「む、新種の大型か、私とクラウスがまず交戦する、以下待機だ」

「おし、行くぜ」


 エリオットとクラウスは進路を走る。新種それも大型。ちょっと怖いな。


 ほどなく2人は進路から森に入り発見を告げる声を上げた。


 グワアアァオ!


「デカいぞ!」


 クラウスが進路へ引っ張り出したその魔物は全長10mはあろうかという大型のトカゲ。いや恐竜か、前世で大昔に存在したとされる鎧竜、正にそんな風貌であった。


 ブンッ


 全長の半分はあろう尻尾をブン回す。先端は大きく膨らんでおり棘が沢山生えている。まるで武器のモーニングスターだ。


 ブンッ パキパキ ドォン!


 振り回した尻尾の先端が木に当たりガサガサと枝が揺れる。


「まず私が伸剣でいずれかの脚を落とす! 動きが止まったらもう1本どこかを頼む!」

「分かった!」


 機動力を奪うのね。


 クラウスが正面に張り付き注意を惹く。そのスキに左後ろ脚をエリオットは切り落とした。


 グアアアァッ!


 魔物の殺気が増す。


 む!


「みんな警戒して!」


 シュバッ!


「うおっ!?」

「父様!」

「クラウス!」

「大丈夫だ当たってない」


 何か細い針が飛んだように見えた。


「部隊長! 父様! 恐らく鎧の隙間から針を飛ばします! 気を付けて!」

「なんだと!」

「おう!」


 体を覆う鎧が僅かに浮き上がってそこから飛んだ、間違いない。


 ザシュッ


 グオオオッ


 頭に矢が刺さった。ソフィーナだな。


 魔物の意識が一瞬途絶える。


「今だ!」


 スパアァン!


 クラウスの伸剣が首を落とした。


「ふー、あぶねぇヤツだ」

「魔物! 9時30mレッドベア1体、10時20mガルウルフ3体、以上」

「私がレッドベア、ローザとリオンはガルウルフだ!」

「はっ!」

「分かった!」


 俺はローザと共に進路から森に入る。


「いました、右の2体を引き受けます」

「では奥の1体を」


 ガオオッ


 ガルルッ


 2体が俺をターゲットにする。足元はやや高い草が多いが地形探知で地表の様子は手に取るように分かる。このまま距離を詰めて一気に終わらせるぞ。


 む、1体が跳び掛かり、もう1体は回り込んで噛みついて来る。


 ならば!


 キイイイィィーーン


 スパアアァァン!


 んで、もう1体!


 スパアァァン!


 よーし。


「リオン様、こちらも終わりました」


 ローザの声を聞いて進路に目をやると、エリオットがレッドベアを引っ張り出し交戦していた。そこへクラウスが加わり仕留める。


「半径100m、魔物反応無し!」

「よし、休憩だ」


 進路へ集まり座り込むとラウニィとソフィーナは魔石を回収に向かった。


「あの新種の魔石はどれか」

「こちらです」

「リオン、鑑定を頼む。騎士たちはここで見たことを全て忘れるから心配は無い」

「分かりました」


『アーマーリザード

 定着:29日23時間48分』


「アーマーリザードです、部隊長」

「聞いたことがない、新種で間違いないな」

「背中の甲殻の内側に多数の棘が格納されてたわ、多くは昇華しないで残りそうね」

「そうか、ソフィーナ。これは荷車が一杯になるな」


 いやレッドベアも合わせれば全部は無理だ。


「ある程度載せたら一度引き返す」


 仕方ないね。


 さて魔物感知だが新種だったため、あの針飛ばしまでは分からなかったけど、何かしてくる感じは掴めた。エリオットに脚を切り離されて『動かず攻撃する』という意識くらいは分かったぞ。


「リオンが警戒を呼びかけたから当たらなかったよ、ありがとう」

「そうなの?」

「一瞬でも身構えることが出来た」


 まあ少しでも役に立ったなら良かった。


 後のガルウルフ2体は完璧だったな。何度も対峙した魔物だから手に取るように動きが分かる。こうやって経験を重ねることが魔物感知スキルの練度にも繋がるのだろう。剣技も含めて、やっぱり実戦が大事だな。

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