第19話 宇宙の声、再び
「リオン、昼から身体強化をやってみるか」
昼食の途中、クラウスが聞いてきた。そう言えば洗礼が終わったら鍛えるって話だったな。まずは逃げ足か。
「15時からまた先生の家でお話する約束したんだ」
「訓練の時間は知れている、それに最初は辛いから直ぐ終わるぞ」
え、辛いって、やだなぁ。まあ鍛えるんだから当然か。
昼食を終えて家に帰る。
「父さん、スキルレベル低かったのに身体強化ってできるの?」
「魔力を使うからな、魔力量30はあったろ、それで十分だ」
へぇ、スキルとは違うのか。ほっ良かった。
「じゃあ外に行くか」
「うん」
納屋の前に来た。あれ、ソフィーナは?
「母さんは収穫?」
「中央区に用事があってな、行ってる」
「そう」
苗か鉢でも買いに行ったのか。辛い時は趣味に逃げて気を晴らすのが一番だ。ただその原因を作ったのが俺なのが申し訳ない。せめてこれは頑張るか。
「身体強化ってのは、走る速さ、跳ぶ高さ、武器を振るう力、それから高い所から落ちても怪我しない衝撃の制御、そんなのを高める技術なんだ」
「おお!」
凄いな! これだけでも十分魔物と対峙できるじゃないか。
「そのためにはまず魔力操作を覚えないといけない。と言ってももうできてるんだけどな」
「うん、水出せるよ」
そう、もう無意識にできちゃう。コップ1杯だが。
「水を出したり照明を点けたりする時に体の外に魔力をを出すだろ? あれを体の中に出して高める感じだ」
「ええ? そうなんだ」
「試しに今の状態でその場で跳んでみろ。屈んで勢いつけて思いっきりだ」
「うん」
俺は膝を少し曲げて、両手を振り下ろし、上げると同時に力いっぱい跳んだ。
「よし、いいぞ。じゃ今度は魔力を足腰に集中してみろ」
「うん」
……お、なんだか熱くなってきたような。凄い! 活力がみなぎってる感じがするぞ! これか!
「いけそうなら、また跳んでみろ」
ようし、真上に高く飛ぶイメージで、その為に必要な筋肉を最大限使う、行くぞ!
ピョン! ストン!
うお、凄い!
「父さん! できたよ! さっきより高い!」
「あ、ああ、そうだな……」
へー、凄いな身体強化! こんな簡単なことで高く飛べるなんて!
「もう1回いいかな?」
「いいぞ」
よーし、今度は魔力操作の時間を短縮してみよう。
スーーーーッ、今だ!
ピョン! ストン!
「やった! 魔力操作短くしたけどさっきよりちょっと高いよ!」
「そ、そうだな……」
うひょー! チョー楽しい! これは異世界じゃなきゃ体験できないな!
「リオン、実はな、今日は魔力操作だけで終わると思っていた。それがまさかここまで短時間で覚えるとは」
「そうなの?」
「お前は才能がある、これは母さんも喜ぶぞ!」
「そっかー、えへへ」
おー良かったそれは。なんだ、洗礼で悲惨だったけど全く無能じゃなかったのね。そこは神も手を緩めたか、或いは手が及ばなかったか、いや手違いか。
「へへ、じゃあ今日は跳ぶ練習頑張るね」
「まずはそうするか。ただな、リオン」
「うん」
「魔力を使えば魔力が減るだろ? 減った魔力は時間が過ぎれば自然に回復するんだが、あんまり連続で使うと回復が追い付かなくなってしまう」
「あ、そうか」
魔力を使ってやってるもんな。俺の魔力量は30だった、どのくらい持つのだろう。
「リオンくらいの年だと大人の5分の1ほどの魔力量だ。それに使う量にバラつきがあって無駄も多い、つまりはな、すぐにへばってしまうんだ」
「あらー」
「今の跳ぶ動作だったらあと10回くらいが限界だろう。それで魔力が無くなったら気絶するぞ」
「え」
マジか! それは迷惑だな。こんなところで倒れたら何事かと思われちゃう。
「だから魔力を集中できない感覚になったら止めるんだ。それで休め、いいな」
「うん、分かった!」
「俺が見ててやるから続けてみろ」
その場でジャンプを繰り返す。徐々に魔力集中する速度を上げて、大体同じ高さまで跳ぶことを意識してやってみた。
「ハァハァ……もう無理みたい」
「上出来だ! 集中する時間が早い、本当に才能あるぞ」
「へへ……」
「もう休め、2階で横になるといい」
「うん、あ、先生のところに行くんだった」
「15時だったな、その前に起こしてやるから安心しろ」
家に戻り2階のベッドに入る。
疲れたー! 魔力も体力も限界近かったらしく階段も辛かった。でも心地いい疲れ。クラウスが起こしてくれるから休んで回復しよう。
……。
あれ? 目が覚めた? んん? 周りは真っ暗だ! マズい寝過ごしたか! クラウス起こしてくれるって言ってたじゃんかよー!
あいや、なんか違う。この感じ……。もしかして!
(目覚めたようだな)
うわー! やったー! 宇宙の声だ! 会いたかったー!
(洗礼の儀式を終えて結果に戸惑っているようなので説明をしよう)
あ、はい! そうなんです! もう酷いったりゃありゃしない、両親も落ち込んでどうしようかと。
視界を動かすと……地球だ! あいや、似てるけど違う、俺のいる異世界の惑星だ。はー、またこの景色が見られるとは……!
辛かった。またあなたに会えて嬉しいです。聞きたいこといっぱいあるんです。
(それも説明が終われば理解できる)
あ、そうですか、段取りがあるんですね、お願いします。
(その昔、1人の勇者がいた。卓越した剣の使い手で、魔物の大群に1人立ち向かい国を滅亡の危機から救ったのだ。またある時代には強力な魔法を自在に操る魔導士がいた。国同士の争いに割って入り、両軍を鎮め、国を統一し、新たな王となった)
へー、そういう英雄っていそうですね。でもなんか1人でやってのけるのって、かなり盛った感じがします。
(これはこの世界で実在した人物の話だ。その力は本当に群を抜いていた、大袈裟な話ではない)
あ、そうでしたか、そうですよね、ここで御伽噺って。
(またある時代には発明の天才がいた。次々と便利な道具を作り出し世の中を豊かにした。そしてまたある時代には探索能力に秀でた者がいた。次々と貴重な資源を見つけ出し、国を豊かにし、自身も大きな財産を築いた)
戦うだけではなく、そういうのも英雄と呼べますね。
(この様な特別な力を持った人物は、神が定めた世界の規則を元にして稀に生まれる)
やはり神が関わっているんですね。
(神が定めた規則には様々な要素がある。魔素、魔法、スキル、精霊石、魔物……そして転生枠)
転生枠!
(キミが前世の記憶を持っている理由はその転生枠が関係してると以前伝えた。この世界においても転生枠に神が付与を施すことでスキルなどの力を与えている)
へー。
(例えば剣技スキルのレベルは30前後が上級者の部類に入る。騎士団なら指揮官級、冒険者なら高ランクに当たる)
ちなみにクラウスはいくつですか?
(24だ)
おお、流石、強いなー。
(先の話に出た剣の英雄は53だ)
うわ! 化けモンだ!
(転生には、準備が整った魂、転生枠、魂の宿る新しい命の3つが必要だ。順番としても、魂を枠に入れ命に飛ばす、といった流れだ)
なんか凄い表現ですね。
(その枠を作成時に付与内容が無作為に決定される。剣技がついたならレベルも一緒に決まるのだ)
では洗礼でスキルを授かるのではなく、予め決まった内容が解放されるといった感じですか。
(その通り。またレベルは最大値であり、覚えた時は低い)
あの、遺伝も半分は反映されるそうですが、もしかしてあと半分が転生枠の内容ですか?
(基本的にはそうだ)
じゃあ英雄の子は高い剣技レベルの可能性があるのですね。
(レベルが高いほど遺伝される確率は低くなる、親が53ならせいぜい30だ)
あらら、英雄の子は英雄とはいかないんですね。まあでも十分強いか。
(そうなれば世の中は英雄ばかりだろう)
確かに。
(さて、転生枠を作ったら同時に付与内容が無作為に決まるが、転生枠は作った順番に魂を結び付け、宿る命も生まれる順番に魂を入れていく。しかしそうすると少々問題も発生する)
あらら、問題ですか。
(それを説明すると長くなるためここでは省くが、問題の原因は英雄クラスの転生枠にある。神はそれをコントロールするため付与内容の移動を試みる)
移動? どういうことですか?
(例えば剣技スキルを付与された転生枠が、10、20、50、25、15、と並んでいたとする)
レベルですか、3番目のが英雄クラスですね。
(それを順番に消化すると3番目に宿る命が英雄では都合が悪い場合があった。そこで3番目と4番目の転生枠の付与内容を交換したのだ)
ほほー、なんだろう、都合悪いって。まあ長くなるんですよね。それで付与内容を移動して解決か、そこは順番通りではなくても構わないと。
(その措置で直近の問題は回避できたが、4番目の転生枠で英雄が誕生する、遅らせただけだからな。それでもなお都合が悪かった場合は、今度は5番目の転生枠の付与内容と交換した)
むー、英雄が誕生はいいことに思えるんですが、そうとも限らないんですね。
(力を持つ者は影響力が大きい、良くも悪くもだ。その時々で神は判断をして力のバランスを取っていたのだ)
はー大変だ。でもそんなに気を使うなら最初から英雄を出さないようにすればよかったのに。
(それも理由があるが説明すると長くなる)
はい、構いません。
(付与内容の移動によって神の思惑通りに世界の管理ができていた。転生枠も同時に作れる上限を維持し、強すぎる付与内容はどんどん後回しにした)
へー、あ、分かった! 確か多くの神は変化を嫌う、不特定要因は回避したいんですよね。自ら作ったルールとは言え、強い力が及ぼす影響を少なくしたかったということですか。
(それに近い。神も初めは強い力に頼っていた、短期間で成果が出るからだ。しかしそれも繰り返せば様々な歪みが生まれる)
いわゆるインフレでしょうか。収拾つかなくなったんですね。
(そしてその不特定要因は他にもある、そう転入枠だ。それにおいても危惧する要素ととらえていた。そこへ世界の管理がうまくいっている神への特典、転入枠の消化を繰り越せる権利が与えられた。神は早速割り当てられた転入枠全てを繰り越した)
おおー、いいですね。
しかしそこまで転入を嫌がるのはどうしてでしょう? 確かに他の世界からとは言え、転出枠につけられる付与内容も反映される確率が低いんですよね、確か100万分の1。そんなに影響あるとは思えませんが。
(それでも異世界の記憶が少しでも残っていれば誰も思いつかない大革命を巻き起こす。何せ異世界だ、この宇宙には様々な世界観の惑星があり、少しの知恵でも多大な影響を及ぼしかねない。キミも思い当たるのではないか)
石油はまあ確かに。あの知識1つでかなりの革命ですね。あ! 鉱物由来の油って、あれってやっぱり石油なんですか?
(石油は土の精霊石から抽出可能だ)
うはー! ど、どうしよう、いいのかな、いやマズいだろうなー。
(知ってて手を付けないのか? 生活が豊かになるのに。その上この世界では自然環境に影響はない。不便なまま世界が続くのをただ見ているだけなのか)
え、そ、そう言われると、利用しないのが悪いみたいじゃないですか。
(その話はここで結論は出ない。キミに伝えることを進める)
はい、すみません。
(英雄クラスの転生枠問題も付与内容を移動で解決し、それによって得た安定で、更に転入枠を繰り越す権利も手に入った。そして長期間、この世界の安定は続いていた)
やりましたね。ただ、転生枠の作成って相当上限高いんですね。英雄クラスもまあ、そう頻繁には出てこないでしょうし。
(そして長い年月が経ち付与内容の移動に限界が訪れた。英雄は溜まる一方だから当然のこと。いよいよ避けてきた英雄を誕生させる時が来てしまった)
ああー、やっぱり。仕方ないですね。まあ最初の状態に戻ったようなもんだし、生まれる場所とかの調整でまたやっていくしかないですね。
(そこで神は考えた、繰り越した転入枠が使えないかと。転入枠を消化するのは異世界からの魂を受け付ける時だ。枠自体の付与内容は枠を作った時に無作為に生成される。ならば大量に繰り越した転入枠の、英雄ではない付与内容と交換できるのではないか)
あーそうか! 転生枠という役割は同じなんですね! 異世界か、同世界かが違うだけで。
(それは成功した。抱え込んだ転生枠の英雄を繰り越した転入枠の付与内容と全て交換したのだ)
おお、一気に楽になりましたね。
(そして転入枠の割り当てが来る度に繰り越し、転生枠に英雄が出たら転入枠の付与内容と交換する、そうやって長い安定を築き上げた。ところが)
一杯になったんですね。
(まず転入枠を繰り越せる上限に到達、それでまた転入枠の割り当てが来たら、英雄枠だけ繰り越しに移し、転入枠自体は消化するようにしていた。それを続けた結果)
ああー転入枠の繰り越し分全てが英雄になったんですね。
(もう繰り越しに英雄は移動できない。そして同世界転生枠も英雄でいっぱいになる)
これは万事休す。覚悟を決めるしかないですね。
(そこで、困ってるようなので、ある提案をした)
え! も、もしや……。
(ガチャだ)
やっぱり。
(結果は「蓄積されている転入枠数を全て1つの枠に圧縮する、今回消化する枠はその1枠のみ」だ)
どこかで聞いたフレーズですね。
(そしてその圧縮した転入枠を使った魂が新たな生命に宿ったのが8年半前)
8年半? え、もしかして……。
(生まれた子はリオンと名付けられた。そう、キミだ)
ええええぇーーっ! こ、怖いんですけどーっ!
(その圧縮した英雄クラスの付与内容がついた転入枠の数だが、100万だ)
あ、ああ……。そんな気がしました。
あの、俺、どうなっちゃうんですか?
(英雄にでもなるか?)
いや、あの、そんな……あ! いやいやいや、英雄どころじゃないですよ! 俺、洗礼でレベル最低だったんですから!
(もちろん神は何もしなかったワケではない。あれほど苦労して回避してきた英雄たちが、全て1つにまとまりこの世界に降り立つのだ。おまけにその魂は前世の記憶をほとんど持っている。避けたい要素が全てつまった忌むべき存在なのだ)
うわあ……。こ、怖いです。スキルレベル最低で済んだのがマシなくらい。
(魂が転生枠と結びつき新しい命に宿る、つまり神の世界から地上に降り立つそのわずかな瞬間に、神は強力な封印をキミの魂に施した。その結果が現在のスキルレベルだ)
うーわ、強力な封印って、……その時の神の執念が容易に想像できます。ええ、そして見事に封印されました。
あ、そうか、俺が生まれた頃、西区が危なかったって、そういうことか。
(仕留め損ねたがな)
うへー……、お、俺のせいだったのか。ワイバーンで4人死んだのも。
(元々危険な村だった、故にそこへ生まれさせた。そして封印で大きな力を使った神は、地上への影響力を著しく落とした。結果あの程度で済んだ。現に今はもう神の意志で魔物のコントロールは出来ていない)
封印をしなかったら、神が全力で魔物を仕向けたら、どんなことになってたか怖ろしいです。
(恐らく後のことも考えて封印を優先した。生み出した強力な魔物たちはキミを抹殺後も広範囲に暴れまわってしまうからだ。それで封印だが、完璧ではない)
え、だって、全部最低ですよ?
(前世の記憶が戻っただろう)
そうか!
(そして洗礼を経て少し力が解放された。魔力操作と身体強化だ)
確かにクラウスも驚いてた、才能あるって。
(今後も何らかの影響で封印が解け、スキルが備わる可能性がある)
そうなんですか! よかった、これで両親も安心する。
(あくまで可能性があるだけだ。生涯封印されたままかもしれん)
それで何らかの影響って具体的に何でしょう?
(そのスキルに関わること。例えば剣技なら剣の訓練か)
分かりました、頑張ってみます。
それでもし解放されたとして、スキルってどうなるんですか? その、レベルとか。
(英雄クラスかもしれんな)
うっわ! ま、まあ、でも、そうだよな。英雄が集まったんだし……。
(どうした喜ばないのか、英雄だぞ)
いやまあ、そうなんですけど、いざじゃあその力があって何ができるか、俺にはまだ分かりません。前世の記憶が戻ってから、この世界では数日しか過ごしてないんですから。
(そろそろ時間だ。聞きたいことはあるか)
えーっと、そうですね。
カルカリア!
俺、行ったこともないのに知ってるんですよ、前世の記憶にしては魂が地球から来たのにおかしいなって。
(英雄クラスの付与内容とは何も戦闘能力だけではない。発明をする技術、探索に秀でた力、高い治癒能力、そのようなスキルも多く含まれる)
最初に話してくれましたね、それも英雄だって。
(そういった類はスキルだけあっても知識や経験が伴わないとうまく機能しないものもある。そこで研究者などが死んで魂となった時に、前世の記憶という付与がついた転生枠と結びつけ、その付与内容を別の転生枠に移動し英雄クラスとして管理した)
なんか力技ですね、ルール大丈夫なんですか。
(問題ない。それで恐らくカルカリアにいた研究者か何かの記憶をキミが受け継いだ)
あれでも、そういう発明家が生まれるとマズイからわざわざ避けているのに、それを助ける前世の記憶を手間かけて保管するのは何故でしょう。
(将来、文明発展が欲しい時代に、大昔の発明家の記録が残ってる保証はない。恐らくそういった目的で保管した)
なるほど。でも納得しました、文字が読めたりした理由を。あ、そういうこの世界の前世の記憶って他にあるんですか。
(この国では少なくとも3個所ある、他は不明だ。その記憶も曖昧だったり薄かったりで何を意味するか分からないだろう。その時は関係する研究に触れたり、或いは所縁の土地に行けば、幾らか思い出すはずだ)
それだけ分かっていれば混乱しなさそうです、ありがとうございます。
あとはこの世界の神なんですが、確か創造神クレアシオン。俺は忌み嫌われてるんですよね、前に聞いた理由よりも更にぶっ飛んだ理由が分かったし、俺が神なら全力で排除しに行くところなんですが、この先、不安で仕方がないです。
(だから何だ、神に抗うのではなかったのか。キミは地球の知識に加えて100万の英雄の力を秘めているんだぞ、鍛錬によって全て解放された暁には、神をも凌ぐ存在となる。来るべき神との決戦に備えてあらゆる準備をするがいい)
……。それは、その、何というか。
ちょっと怒ってたのは間違いないです。洗礼があんなことになってしまって。でもそんな、神と表立って対立しようとは考えていません。穏便にお互い過ごすことが出来れば、その方がいいのではないかと。
(心配するな、神は何もできん。封印で使った力はかなりものもだ。今や魔物もコントロールできてないと言っただろう。回復にはまだ時間を要する。また近いうちに向こうから接触してくる。その時に英雄の話でも聞けばいい)
英雄の話ですか。どうして自ら作った要素を回避しなければならなかったか。
そうですね、怯えて暮らすより、直接話して解決した方がよさそうです。ちょっと話すの怖いけど。その時を待ちます。
それから、あなたとは、どうやったら話せるのですか? また会えますか?
(それは分からない。前回も今回もキミの転生に関わったから、そしてそれに関する事象が発生したから、その部分を中心に伝えようと魂を呼んだだけ)
いやちょっと、あまりに特異な存在となってしまった以上、俺1人の考えで動いていいのか、正直、分からないんですよ。助言が欲しいんです。
(自分がしたいことをすればいいだろう。特異な存在は状況に過ぎん、ただ選択肢が増えただけだ。誰に言われるでもなく自分が行きたい道を進むといい)
ああ、はい、分かりました。そうですよね、そうします!
(敢えて助言を言うなら、財産を築け! それは金でも力でも人脈でもいい。それを築く過程で見えてくるものもある。そして何かしたいことが見つかった時、築いた財産は頼もしい味方になる。前へ進みなさい)
はい、助言、ありがとうございます! 頑張ります!
(よしでは戻すぞ)
地面が迫ってくる! またこれかあああぁっ!
ひいいいいいいっ!
落ちるうううぅぅーーーーっ




