表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
182/321

第182話 夢の考察

 洗礼の儀の終えて別室で人物鑑定を受ける。


「錬成レベル6、それに鑑定も!」

「流石私たちの子ね!」

「凄いのそれ?」

「ビクトル、将来は明るいぞ」


 ……。


「テルナトスの専門学校を首席で卒業とは、我がノードクイスト家の誇りだよ」

「これで大好きな魔導具を沢山作れるわね」

「はい、父さん、母さん」


 ……。


 ここが城の工房か、素晴らしい設備だ。


「キミは好きにやっていいと伯爵から伺っている」

「はい、工房長」


 魔物素材を一度に多く運搬できればカルカリアはもっと発展する。私はその力になりたい。


 ……。


「よく働いたな、静かに眠るといい」


 そんな、やっと家族への恩返しができたのに。


 悔しい。


 ……。


 ◇  ◇  ◇



 朝だ。隣りのベッドにはクラウスがいない、居間のソファか。


 また夢を見た。いや夢ではない、これは英雄の記憶だ。それに恐らく前回の内容と繋がっている。忘れないうちにメモしなきゃ。


「おはよう、リオン」

「父さん、紙とペンあるかな」

「そこのテーブルの上だ」


 クラウスが指差す窓際の椅子に座り書き留める。


「どうした?」

「夢を見たんだけど、普通の夢じゃないんだ。きっと大事な情報だから残しておこうと思って」

「ほう」


 話してみるか。


「えっとね……」

「ちょっと待て、ミランダや母さんも一緒に聞いてもらった方がいいだろう」

「そうだね」

「ただ2人は朝から庭園に出ている、城へ向かう馬車の中で話してくれるか」

「うん、分かった」


 スキあらば庭園に繰り出す2人。まあ急ぎじゃないし後でいいか。


「ところで連泊になっちゃったね」

「そうだな」


 昨日も今日も午前中に城へ行く用事があるため、村よりも近いメルキース男爵家にそのまま泊った。一昨日は神の魔物と戦った治療のため屋敷に近い治療院で夜を過ごした。つまり3日前のロンベルク商会コルホル支店を急いで出たあの時が村にいた最後となる。


「こんなに村を離れて過ごしたの初めてだよ」

「俺もだ。まあボリスたちもゆっくり休めただろう」


 伯爵より使わされた護衛住人、夜通し交代で警戒してたからね。隣りのブラード家もここにいるから完全に護衛対象が西区にいない。ミーナも要人だけど伯爵は知らないからミランダの手配した夜警騎士たちがしっかり見てくれてるだろう。


「朝食まで少し訓練するか」

「うん」


 着替えて外に出ると辺りは明るくなっていた。屋敷正面の道を軽く走り込む。何度か往復して休憩しているとお花の馬車に乗ったマリベルが声を掛けてきた。


「朝から頑張るわね」


 同乗者は娘のレナとリーリア、そしてミネルバだ。マリベルはキースの姉だから妻であるミネルバからすると義理の姉か。


「義姉さんはお花詳しいのよー」

「勤めてた服飾商会には小さいけど庭園があってね、商会長がそういうの好きでよく取引先を招いてお茶会をしてたわ。でもここならもっと沢山招待出来るわね」

「勲章授与式とかもここでするんだよ、領民もいっぱい入ってさ」

「あらそうよね、領主ですもの」


 俺が行ったのはアーレンツ勲章授与式だが、ミランダの話ではメルキースでも同じ様に行われていた。だから会場もここだろう。ロンベルクの敷地より広いしね。


「ウチはここの15倍くらいだ」

「え!?」

「まあ!」

「花が好きな身内にそれぞれ区画を割り振ってもいいか」

「そうだね、個性が出て楽しいかも」

「何ですって! 今からマリベルの庭を構想しないと」


 女性陣の目が輝きだした。


「ソフィーナやイザベラが中心となって庭園は管理する、その辺含めて話しておいてくれ」

「分かったわ」

「そうだ父さん、マルスのために敷地内に木工所を作ってもいいかな」

「もちろんいいぞ」

「まあそうなの、ウチの人も使っていいかしら」

「好きにすればいい、キースには朝食の席で話しておこう」

「お願いします!」


 いいね、夢が広がる。


「エシルストゥーナ家が来て家具商会となれば流石に敷地の外だがな。そもそも村では町から遠すぎる」

「そっか、ちゃんと商売するなら町がいいよね」

「ラウリーン検問所の近くに冒険者施設ができるだろ、あの付近がいいとは思うんだがな」

「確かにまとまってお客さんがいるね」

「年内は80人だが、どんどん増やすみたいだぞ。もうメルキースは国中から冒険者が集まる町になる」


 最前線が広がるから稼げるもんね。


「さあメシに行こう」


 屋敷内の朝食会場へ。みんな席に着いたところで男爵が挨拶をする。


「今日はエーデルブルク城でクラウスの極偉勲章授与式だ。皆も身内として伯爵に招待されている。城内では多くの領民がその功績を称え大きな盛り上がりを見せるだろう、是非とも誇らしい当主の姿を記憶に刻んでくれ」


 やっぱり沢山の人が来るのね。男爵の挨拶が終わると朝食が始まる。俺のテーブルは昨日の夕食と同じ面々、ディック、カレル、マルス、ドロシー、カインだ。


「マルス、ウチの屋敷に木工所を作る件は確定したよ」

「そうですか、嬉しい限りです」

「他のみんなも欲しい施設があったら何でも言ってね」

「はい、リオン様」


 金の力に物言わすお坊ちゃまここに誕生。まあ実際あれだけ金も土地もあるのに使わない方が勿体ない。みんな遠いところを直ぐに来てくれた、豊かに過ごせる環境整備は俺たちの仕事だよね。


「お城ってどんなところかしら」

「パンプローナ伯爵の城は遠くからだけど見たことあるぞ、凄く大きかった」

「ゼイルディクも立派なお城なんでしょうね」


 伯爵の住まいは城が定番らしい。


 朝食を終えると皆着替えに向かう。俺は庶民のかなりいい服に身を包んだ。


「メル、似合ってるぞ」

「はは、窮屈で仕方ないぜ」

「じーちゃんもカッコいい!」

「こんなことなら腹をもう少し引っ込めておけば良かったわい。ただゴードンよりはマシだの」

「カスペル、どっちもどっちだぞ」

「ほっほ」


 いいね、金持ってそうな経営者に見えるよ。


「父さんは流石の着こなしですね」

「ラウルとミゲルもいい男になった、独身と分かったら城で声を掛けられるな」

「そんなことはありません」


 イザベラの父親クレメンテは老紳士でカッコいいな。農家には全然見えないぞ。


「クラウス、本当に立派だな」

「兄さんこそ、とても似合っているよ」

「はは、こんな服着るのは結婚式以来か。ディックとカレルも改めて大きくなったと実感する」

「知らない間に子供はどんどん成長しているのさ」


 もう体格は大人に近いもんな。正装すればより際立つ。


「皆様の準備が整いました」


 女性陣を待っていた俺たちに使用人が告げる。屋敷玄関で合流となった。


「おい、ミリアムはどこだ」

「アンタわざとやってるのかい、ここだよ」

「何だと、これが我が妻か、そんなはずはない」

「……素直に褒めなよ」

「おー、エリサ! なんと美しい」

「ミネルバ、10歳は若返ったよ」


 皆、ドレスアップした自分の妻を褒める。


「おまえさん、レナか?」

「そうですゴードン父さん」

「これはたまげた! どこかの貴族令嬢かと思ったわい。リーリアも随分と印象が変わったの」

「冒険者やってるとあんまり気にかける余裕ないのよね、どうせ動いて乱れるし」


 確かにそうだね。


「おい、ラウル、ミゲル、向こうの家系は年頃の美しい娘さんが2人もいるぞ」

「父さん、頼むから仲を取り持つなんて止めてくれ」

「兄さんの言う通り、迷惑になるから」


 まあ当人同士のことだからね。


「にーに!」

「リーナ可愛いね」

「うん! ふわふわひらひらだよ!」


 フリルいっぱいのドレスに身を包んだカトリーナ。お人形さんみたいだ。


「では出発する」


 ミランダの声に次々と男爵家の馬車へ乗り込む。全部で8台か、こりゃ大掛かりな移動だね。


「では行ってきます」

「うむ、今日は素晴らしい日になるぞ」


 男爵夫妻の見送りを受けて馬車は走り出す。同乗はクラウス、ソフィーナ、ミランダだ。


「ディアナは寮から直接城へ行く、フリッツと共にな」

「フリッツは昨日は村へ帰ったんですよね」

「そうだが、あれは馬を扱える。村からでも30分で来れるぞ」


 へー、速いね。


「リオン、今朝の話をしてくれるか」

「あ、そうだった」

「何だ、また重要な案件か」

「ええと、少し違います。そもそも何を意味するのか俺では不明なところが多くて。ひとまず聞いてもらって感想をください」

「分かった」


 内ポケットから書き留めたメモを取り出す。


「まず英雄の記憶についてですが以前話した内容を覚えていますか」

「うむ、カルカリアで生まれ育った可能性があるのだな」

「その解放を期待して現地視察を予定していましたが、それを待たずに記憶の断片を見ることができたようです」

「おお、そうか!」

「どうやって?」

「母さん夢だよ、寝て見る夢」


 ただよく考えると夢とは証言としてかなり怪しいな。まあ宇宙の声だって似たようなものだけど。


「それは場面ごとに次々と浮かぶ感じで、時系列もまして同じ人の記憶かさえ定かではありません。見たのは2回、今朝と、確か北区でシンクライトを訓練した朝ですが、この内容は繋がっていると思われるのです」

「ふむ、リオンがそう確信するには根拠があるのだろう」

「夢とは記憶の整理と聞いたことがあります、ならばそれは過去の実体験を元に構成されているでしょう。そう、俺の知らない実際に起きた出来事、つまり英雄の記憶です」


 前世の記憶にも無いからね。


「では断片的ですが覚えている情報をお伝えします。洗礼の儀、錬成レベル6と鑑定、ビクトル、テルナトスの専門学校を首席、ノードクイスト家、カルカリア、城の工房、魔物素材を一度に多く運搬、大きな箱が手に乗るほど小さくなる、高価な鉱物、魔導具」

「……おお」

「……これは」

「そして2回とも最後は次の様なやり取りと感情で終えます。伯爵、約束が違う、黙れ、静かに眠れ、家族への恩返しができず悔しい。場面の切迫性からこの人物は殺された可能性が高いようです」


 3人とも一点を見つめて思考を巡らせているようだ。


「これは魔導具の開発者だな」

「うむ、恐らくは魔物素材を小さくして運搬する技術を確立したのだ。その職人は城の工房で働き、見事、魔導具は完成した、しかし手柄は横取りされ口封じ。まあ昔はよくある話だ」

「酷いわね」

「叙爵させると要らぬ費用もかかる。技術を確保した後に始末すれば領主にとって都合がいいからな」


 怖いなあ。ともすれば俺もその可能性はあったぞ。ただ職人に完全依存する製法だったから助かったのか。


「そう言えば最初に商会の工房で生産を披露した時に多くの関係者がいましたよね。もしかしてそういった懸念を考えてのことですか」

「無論だ」


 へー、流石ミランダ。ん? いや今の表情は違うぞ、結果的にそうなっただけだな。まあ要らぬツッコミは止めておくか。


「リオン、控えを見せてもらえるか」

「はい」

「……ビクトル・ノードクイストか、聞いたことがないな。そしてテルナトスの学校、確かにカルカリア伯爵の城があるのはテルナトス、あそこなら専門学校もあるだろう。この者がバストイア出身ということか」

「夢には出てきませんでしたが恐らくそうでしょう」


 或いは在住した期間が長かったか。


「なるほどな。お前が初めて北区に入った、そう探知スキルを覚えた日だ。あの時、魔物素材を運搬する魔導具があったと伝えただろう。恐らくそこで頭に記憶として残った。続いてラウルが屋敷へ来てバストイアの地名を聞く。それらが作用して解放に至ったのではないか」

「そうだと思います」

「……実はな、バストイアを中心に調査させた最初の報告が入ったのだが、現地で聞き取りをした時、保安部隊に妙に絡まれたそうだ。もちろんゼイルディクの貴族が何の用事と警戒もあるだろうが、それとは違った言い知れぬ違和感を抱いたとも」


 ほう、違和感とな。


「まるで何かを隠しているみたいね」

「もし考察の通りなら職人だけ始末はしないぞ、一族含めてだ。そして出身地にも固く口止めをする」

「おい、今日カルカリア伯爵が来るんだろ、直接聞いてみたらどうだ」

「それも手だな……よし、この件は私に預けてくれ」

「分かりました」

「お願いね」


 また何か企んでいる。


「リオン、年代までは分からんか」

「はい」

「そうか、まあ専門学校の卒業者名簿を見れば分かる、消されていなければな」


 いや待てよ、そんな浅い年代に残っているか? 封じられし英雄の力は数万年前のものだろ。そんな時代はカルカリアどころかカイゼル王国すら始まっていない、数百年でも最近過ぎるぞ。


 んー、スキルと記憶は別扱いなのか。或いは……そうか、時代が進むにつれてより良い発想や研究も出来るはず、そうだよ過去の文献と言う積み重ねが時代が進むたびに蓄積される。つまり新しい時代の方が残すべき記憶としては効率がいいんだ。


 きっとそのビクトル・ノードクイストという職人はあらゆる文献を調べ尽くして解読しその時代に技術を甦らせた。あ、そうか、よく考えたらレベル40以下で実現できなきゃ意味がない。41以上のスキルを世に出さないで技術発展だけしてほしい時のために記憶を確保したんだから。


 なら浅い年代も納得できるな。


「いやーしかし、もしリオンがそれを作ったら大変なことになるぞ」

「確かに文献にはあるそうだが、私はそんな魔導具の存在を信じていなかった。あまりに革新的だからな、どうせ願望を創作しただけかと」

「ミリィ、リオンは歴史に残る記録なら再現できるのよ」

「そうだな、はは、多くの魔物素材を手に乗るほどにか、全くとんでもない」


 ちゃんと手順を踏んで確実に進めれば辿り着くはずだ。


「引き続きバストイア近辺は調査する、工房馬車が完成したら予定通り現地にも行こうではないか」

「楽しみにしてます」


 違う町は単純に興味あるから行ってみたいね。


「さて話は変わるが、今日の授与式にて領地の歌が演奏される」

「歌ですか?」

「おー、あったな」

「学校で歌ってたから私は覚えてるわ」

「これが歌詞だ」


 広がる森林は

 偉大な騎士が支配し

 襲い来る魔物は

 その武勇にひれ伏す


 多大なる恵は

 この地を潤し

 輝かしい未来に

 人々は集まる


 おお ゼイルディク

 おお ゼイルディク

 我が主ハーゼンバイン


「3番まであるが式典で歌うのは1番だけだ、リオンは知らないだろうから練習の必要がある、ソフィ歌ってみろ」

「ミリィも歌えるなら一緒に歌って」

「……分かった」


 2人はリズムよく歌い出す。


「思い出したぞ」

「ではクラウスも一緒に歌え、リオンも好きなところから入るんだ」

「は、はい」


 俺も加わって4人で大合唱。まさか馬車の中でこの展開は予想してなかった。しかし領地の歌か。北区の魔物討伐合図はトランペットのファンファーレだった。この世界には楽器があり音楽がある。ならこういう文化も納得だね。


「よし、もういいぞ」

「みんなで歌うと気持ちいいな」

「城では多くの領民が大合唱する」

「この歌は誰が作ったんですか」

「さあな、ハーゼンバイン家が伯爵になった時に作られたと聞いている。100年以上前のことだ」

「へー、古いんですね」


 伯爵になった記念かな。


「当時はメルキースもまだ森だった。この地の開拓を任された伯爵の決意が伺われるだろう。ちなみに2番は冒険者を、3番は武器職人を称える歌詞だ」

「ゼイルディクらしいですね」

「パンプローナも歌があるが、あっちは冒険者中心の歌詞だな、それに山や湖がどうとか」

「あの辺りの開拓時期はゼイルディクよりも古い。当時の騎士団は治安維持が主な任務で魔物対応は冒険者に任せていたのだろう」


 ふーん、時代によって違うんだね。


「さて、そろそろ城だな。レリスタット侯爵がお出でになるためハンメルトに交通規制と聞いていたが、あまりこちら側に影響は無かったようだ」

「まあ多少混んでいるが道は広いからな。それに男爵家の馬車だからか優先して道を譲ってくれている」

「万一、事故を起こすと多額の請求が来るからな、皆おのずと距離を取る」


 なるほどね。加えて今回は8台も連なっているから目立つし。


「そういや身内は入城時に鑑定をするのか」

「いやしない。こちらへ来ると決まった時にウィルムやカルカリアで済ましている。伯爵もその情報は把握済みだ」

「なるほどな」

「城内に入る領民たちは朝から列をなして鑑定しただろう」

「何人くらい入ったんだ」

「あの広場なら1万ほどか」

「じゃあ鑑定士も大忙しだったな」


 うひー、嫌になるね。


 そんなことを話していると城の正面に馬車列は止まる。


「おはよう、皆さん、お待ちしてました」

「おはようございます、エナンデル子爵」


 次々と馬車を降りるノルデン一族。


「……はあー、これはまた立派な建物だ」

「……すごーい」

「お城―!」


 それぞれエーデルブルク城を見上げて感想を述べる。


「あ、ねーちゃん、フリッツ」

「もう城内広場は人でいっぱいよ」

「行こう、皆待ちかねているぞ」


 子爵を先頭に城内へ進む。長い階段を上がって通路を進み客間へ入った。皆がソファに腰を下ろすと紅茶が配られる。大きな窓の向こうには城内広場が望めた。


「うわー、ほんとだ人がいっぱい!」

「すげぇな、びっしりだぞ」

「こんな多くの人に注目されるなんて」


 カレルたちが珍しそうに窓に張り付いていた。


「では式典の流れを簡単に説明するぞ。時間になればこの客間からバルコニーへ出て観衆に顔を見せる。クラウスを中心にして身内は少し後ろへ好きな様に並ぶといい。最初に伯爵から挨拶、次にゼイルディクの歌斉唱、そしてまずラウニィが授与され言葉を述べる、次にクラウス殿だ。最後に来賓が挨拶をして私が締める」


 ふむふむ、ラウニィが先なのね。


「魔導具の拡声器があるからそこまで声を張り上げることは無いぞ」

「使い方を教えてください」

「バルコニーには棒が1本立っている、その先端に向かって声を出せば広場中に十分聞こえるぞ。近くに操作する者がいるから指示に従うといい」

「分かりました」


 これはマイクか、そしてスピーカーもあると。それが成り立つなら電話も実現できるな。ただ音声を電気信号に変えていないなら根本の仕組みが違ってくる。


「何だか緊張してきた」

「叙爵時は屋根のない馬車に乗って観衆に埋め尽くされた大通りを進む、今から慣れておくのだ」

「は、はい」


 パレードか、派手だねぇ。


「おや、隣りのラウニィ一族はもうバルコニーへ出るようだ、そなたらも出られるか」

「いつでもいけます」

「準備出来ています」

「よしではゼイルディク極偉勲章授与式だ、その大きな栄誉を受け取ってこい!」

「はい!」


 いよいよ始まるぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ