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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
1章
180/321

第180話 隠密スキル

 エーデルブルク城の一室にてトランサイト生産を行う。音漏れ防止結界を施したテーブルにはミランダ、クラウス、ソフィーナがつく。俺は生産の都度テーブルから距離を取り、完成品を職人に渡したらソファで休憩を繰り返す流れだ。


「ふーっ」

「休憩は10分ほど取ればいい」


 午前中は剣を一気に終わらせたけど、この場はゆっくりでいいのね。


「ねぇミリィ、さっきは何の条件もなく伯爵の思惑を聞いたけど私たちが伯爵家の一員になった認識ではないのよね」

「心配するな、向こうが勝手に話しただけ」

「商会長、一員って具体的にどういう状態ですか」

「リオンがレイリア様と婚約する、城に住み城の工房で働く、その収入はほとんど伯爵家へ、異を唱えることは許さん、そんなとこか」

「ええと」

「もちろん想像の域だが、とにかくハーゼンバイン家に生涯尽くすということだ。自由は効かんがある意味安泰だぞ」


 うーむ、ちょっと極端な気がする、まるっきり奴隷じゃないか。ただ俺の能力を最大限享受するなら理想的な環境ではある。


「今のところ一員になる気はありません」

「それがいい、お前は伯爵家程度に食い潰される将来性ではないからな。まあ能力を伸ばす環境構築の約束を取り付けたのだ、その方面でしっかり働いてもらおうではないか」

「おいおい伯爵が身分は上なんだ、あんまり態度に出すなよ」

「だからこそ強気で臨むくらいが丁度いい、呑まれれば向こうの言いなりだ」


 それは一理ある。


「ただシンクライトをウィルム侯爵に報告まで言ったのには驚いたぞ」

「はは、見たかあの慌てよう、思った通りトランサイトの鍬や斧の話題を出してきたぞ」

「バレているのは承知の上か」

「重大な規則違反を理由にもっと追い込むことも出来たが、それでは収拾がつかんし伯爵も立場が無い。敢えて言い返せる材料を提供していたのだ」


 いや絶対違うだろ、こっそり売る気満々だったぞ。まあそれを引き合いに出されるかは別として、伯爵の一番痛いところを正面から突く姿勢は流石だった。


「商会長、実はあのやり取りを見て俺も思ったことを言おうと決断できました」

「伯爵が無条件で構想を明かす気になったのも、お前の毅然たる姿に感化されてだろう」

「どういうことですか?」

「リオンは頭が良く領主としての心構えも備わっている、ならば構想実現による効果を正しく理解し同調するはず。子爵やディマスが態度を変えたのも同じ傾向と見る」


 ふーん、よく分からんが認められたってことか。それは素直に嬉しいが同時に相応しい言動が求められるな。


「会った回数が限られているとは言え気づくのが遅い、私なぞ初対面で見抜いたぞ」

「商会長は怖いだけでした」

「ミリィは予防線を張ってるだけ、偽りの姿なのよ」

「え?」

「ほう」

「そんなことはどうでもいい、リオン仕事をしろ」

「はい!」


 離れて弓を持つ。


 ギュイイイィィィーーーン


 まあ貴族家の一員として舐められない様に高圧的な態度なのだろう。本来は小さい頃から教育されるところを冒険者から入ったからね。分からないなりに導き出した自分を守る手段なのかも。しかしソフィーナは鋭く切り込むね、ミランダも咎めないのか。


「それにしても伯爵がサンデベールの領主を目指しているとはな」

「貴族なら当然のこと、皆、常に影響力の拡大を狙っている。ましてやリオンという至高の存在が近くいるのだ。手段を間違わなければ確実に達成される」

「では騎士団を買う方法は正解なのか」

「最も平和的でカルカリアにとっても利益しかない」


 毎年巨額の予算が浮くのは大きいね。


「ただカルカリア伯爵もあそこまで領地を発展させた自信と誇りがある。その積み上げてきた歴史を簡単に金で売るつもりはない」

「確かにな」

「まあ結局は好条件を引き出すための口実に過ぎんが」

「なんだそれ」


 お金で買えない価値じゃないのか。


「だったら強気で交渉してきそうだな」

「あまり調子に乗るようなら脅せばいい。シンクライトの弓や杖の性能を伝えれば直ぐに応じるだろう」

「それはつまり命の危険を感じるからか」

「直接は言わずとも勝手に想像する」


 100%命中する飛び道具を交渉相手が持っている。確かにそれだけで脅威だな。


「とは言えシンクライトの存在はなるべく伏せておきたい、カルカリア伯爵が他に漏らす可能性もあるからな。何より先の私の様に取引材料に使われると厄介だ」


 秘密にする理由はそれが大きいね。侯爵に伝えてもいいのか? あん? もっと金を出せ、なんて逆に向こうが優位になるし、この先もずっと強請(ゆす)られるかもしれない。まあ伯爵第1夫人の実家だから変なことはしないと思うけど。


 そうだよ、カルカリア伯爵は夫人の弟だぜ? ゼイルディク伯爵も家族と言っていた。ならば穏便に進めるだろう。


「いずれにしろ我々が前に出て関わることは無い」

「そうだな。ひとまずシンクライトについても北区進路なら訓練しても構わないし、あの口ぶりならリオンの危機に使っても問題なさそうだ」

「やあ生産は順調かね」


 エナンデル子爵とディマスだ。


「弓が5本です」

「そうか、予定外の話で時間を割かれたからな、十分だ」

「子爵、確認なのですが、伯爵は何の条件も付けずシンクライトを隠す理由を明かしましたが、その認識で合っていますか」

「クラウス殿、それで合っている。あれを聞いたからと言って伯爵家に無条件で従う必要はなく、これまで通り爵位に即した関係性を維持する」

「分かりました」

「今後は父上の構想もそうだが、対外的な面倒ごと含めて伯爵家に任せて欲しい。全てはリオンを守るため、それがゼイルディクのためでもある」


 これは頼もしい。


「さて明日の予定だが授与式は午前10時より執り行う。流れの説明などもあるため余裕を持って9時30分には城へ入ってくれ。クラウス殿の身内も含めてだ」

「大人数ですが構いませんか」

「既に名簿は預かっているが全く問題ない。昼食も城で用意するから一族でゆっくりと過ごしてくれ」

「ありがとうございます」


 昼食もか。はは、ディックは大興奮だろうな。


「来賓も多いが中でもレリスタット侯爵とカルカリア伯爵ご本人がお出でになる」

「それは凄いですね」

「授与式後の父上との会談が主な目的だ」


 トランサイトの追加配備を直談判か。


「さあもう行くがよい夕食の時間に遅れるぞ」


 子爵に促されて城の正面へ出る。


「ではまた明日会おう」

「本日は大変お世話になりました、明日もよろしくお願いします」


 クラウスが代表の挨拶をして城を後にする。馬車は大通りをアーレンツ方面へ向かう、この道も随分と見慣れたな。


「ふーっ、妙な展開もあったが概ね俺たちの要望通りか」

「人物鑑定は想定外だったが結果的に有利な交渉となった」

「無断鑑定の埋め合わせ含めてあの条件なのね」

「その通りだ、ソフィ。もっと具体的な所まで詰めても良かったが長引いて気が変わってもいかん、ひとまずあれでいいだろう」

「ところで隠密はいつ覚えたんだ?」


 それだよ、気配消去なんて訓練してないぞ。


「……恐らくはベルソワ検問所の戦いの最中だ。エリオットがリオンと共に私の側に来たのだが、リオンが言葉を発するまでその存在に気づかなかった。あの時点で気配消去を行使していたと見る」

「そう言えばそんなことありましたね、背が低いから視界に入らなかったと思いましたが」

「目の前に立っている子供に気づかないワケないだろう」


 そりゃそうか。


「あ、魔物の殺気! 殺す殺すって頭の中に響いて辛かったんです。それを見て部隊長が崩れた城壁の陰に俺を隠してくれました。結果、殺気は和らいで直ぐ戦闘に復帰できたのです。でもまた強い殺気が来て、早く石に隠れなきゃって思ったら急に楽になりました」


 魔物が殺気を止めたんじゃ無かったのね。


「間違いない、その時に隠密を解放したのだ」

「流石ね、リオン」

「大したもんだよ」

「うん、欲しかったスキルだから嬉しい」

「まあ今となっては鑑定感知を習得したため知らずに情報が漏れることは無い。ただ将来は正式に鑑定を受ける場面が必ずある。鑑定偽装は引き続き目指すといい」

「はい」


 解放が面倒そうな隠密をせっかく覚えたんだ、頑張ろう。


「そのためには伯爵の言っていた斥候の訓練も選択肢だな」

「神の刺客から身を守る上でも有用とは思いました」

「極めればあんな刃物を持っただけの素人どころか訓練された刺客でも対応できるぞ。もっと言えば城に単身潜入して要人暗殺が可能なレベルだ」

「え、それは」

「隠密で誰にも気づかれることなく、感知で罠などの危険を回避し、探知で城の間取りも把握できる、加えて武器がシンクライトの遠距離なら完璧に任務を遂行できるぞ」


 ミランダは俺を何だと思っているんだ。


「尚且つお前は8歳の子供、大人では難しい隙間や穴を抜けられる。いや改めて考えると本当に脅威だな」

「俺はそんな仕事をするつもりはありません」

「はは、あくまで実現可能ということだ。ただ暗殺ではなくとも重要な情報を得る手段として使えるぞ。例えばお前に不利益な企みを事前に知ることも出来る」


 代官と商人の悪だくみを屋根裏に潜んで知り得るアレか!


「伯爵は信頼できるのかしら? リオンをそんな人材に育て上げて、もし私たちが人質にでもなったら権力拡大の妨げを消す手段に使われるわ」

「おー、あり得るな」

「その時こそ人質救出に力を発揮すればいい。ついでに伯爵を亡き者にすれば二度と変な気は起こさない」


 うわ、倍返し、いやそれ以上か。


「無論、伯爵家もその展開は想定できる。動きたくても動けないさ」

「なるほどな、リオンの能力そのものが抑止になるか」

「敵にしたら一番怖いものね、ふふっ」


 ソフィーナは謎の微笑み。あなたの方が怖いです。


「あ、鑑定結果と言えば、剣術って何でしょう?」

「剣を扱うスキルだ、より巧妙で予測し辛い剣さばきが可能となり、主に対人戦で効果的だな。剣術に長けていれば曲芸師もできる」

「対魔物なら剣技だけでも十分だぞ、まあ剣士なら無いよりあった方がいい程度だ」

「そうなんだ、分かった」


 じゃあ剣技は力で剣術は柔軟性かな。


「ところで職人たちの反応はリオンから見てどうか」

「変化共鳴には気づいてないでしょう。作業中、特に何も聞かれませんでした」

「そうか、ただ腕輪が2つとも伯爵に渡っている以上、間違いなく110%超えの職人はいるぞ」

「2つで28%の上乗せですからね、自力で82%なら商会長でも到達できますし」

「うむ、しばらく動けんがな」


 恐らくミランダくらいの魔力操作なら国中に沢山いるだろう。


「その共鳴加算の腕輪はジルニトラからしか出ないのか」

「いや、他の魔物でも稀に出る。ジルニトラは確実に出るだけだ」

「確実は大きいな、トランサイトの普及が進めば奥地で遭遇する機会も増えるだろう。こりゃ生産可能な人物が現れるのもそう遠くないぞ」

「ただあんな15%や13%は滅多に出ないぞ。まあ運よく揃ったとしても変化共鳴の難易度が高ければ生産は出来ん。伯爵の職人はその指標を計る上でも参考になるだろう」


 そっか、このまま放置でいつまでも出来ない様ならまず無理ってことだ。


「でも職人が作れたかは外からでは分かりませんね」

「売れば分かる、リオンの生産した数は全て把握しているからな」

「まー、そうですね」


 逆に売らなければ分からないけど。


「そうだ、行き詰ったら聞きに来るでしょうけど、その時は変化共鳴を知らない振りした方がいいですか」

「……そうだな、知っていて教えなかったとすれば伯爵にも印象が悪い」

「確かにそうですね、分かりました徹底して(とぼ)けます」

「教える頃合いは何か重要な取引材料がある時に限る」


 うん、かなりの切り札だから安売りは勿体ない。


「ねぇミリィ、アーレンツ保安部隊の施設を過ぎて思い出したの、確か副部隊長はテレーシア・コーニングス、こないだの戦いで西部で倒されたサラマンダーの討伐者もコーニングスなのよ、何か繋がりはあるの?」

「よく気づいたな、西部防衛部隊のカザック・コーニングスはテレーシアの夫だ。彼は今回のAランク討伐者の中で唯一トランサイトを使っていない」

「ほう、ではかなりの使い手だな」


 へー、普通の武器でサラマンダーを倒したのか、凄いな。


「テレーシアは元々西部防衛部隊だったが子供が生まれてから保安部隊に移った。確か3人いたな、8歳、7歳、6歳か。一番下の子が来年リエージュ士官学校初等部に入れば再び防衛部隊に戻るそうだ」

「よく知っているな」

「……やたらと私に絡んでくるからな、話す機会が多いのだ」


 テレーシアはミランダ大好きだからね。へー、3人子供いるのか。


「一番上が俺と同じですね」

「ロンベルク家のパーシヴァルとオルカも同じだ、士官学校では仲がいいと聞くぞ。また次回のゼイルディク極偉勲章授与式には同席するだろう、リオンも興味があるなら話をすればいい」

「はい」


 親が勲章授与は誇らしいね。


「さて、もうそろそろ屋敷だ、ミリアムの実家イーデンスタム家も到着しているため夕食前に名乗りの場を設けてやる」

「おお、そうだった、母さんの実家か、小さい頃たまに行ってたから僅かにだが記憶にあるぞ」

「宿から近かったのよね」

「俺より3つ上のキースが確か木工職人の学校に行きたいって言ってたな」

「そのキースの姉マリベルとその娘リーリアも来ているぞ、もう1人の娘レナは宿で勤めていたから先に来ていたな」


 レナは浄水士の子だね。じゃあ姉妹と母親が揃ったんだ。あー、確か父親は借金奴隷になって離婚したんだっけ。まあその辺は触れないでおくのがいいな。


 ほどなく屋敷の敷地へ入る。玄関ではマティアスたちが出迎えてくれた。


「城はどうだったかい?」

「母さんたちも明日行くんだ」

「そうだけど、伯爵と何を話してきたのさ」

「まあ色々とな」

「母さんクラウスも立場がある、身内でも言えないことが多いよ」

「確かにマティアスの言う通りだね、これは失礼」


 ほとんど言えないね。


「初めまして、ミリアムの兄、ユリウス」

「名乗りは後だって言っただろ! さあ中に入るよ!」


 はは、また仕切ってる。


 ぞろぞろと客間に入りミリアムの指示の元に座る場所が振り分けられた。


「ワシはまたこーんな端っこか!」

「うるさいね、アンタはもういなくていいから食事の席へ行きな」

「まあまあゴードン、ワシと話をしよう」

「カスペルよ、もう1日話したじゃろ、それにワシよりお前ばかりしゃべっとる」

「そうかの、ほっほ」


 ブラード家もそのままいるのね、じゃあまた屋敷に泊って朝から一緒に城か。いやしかし客間を見渡すとかなりの人数だな。これでもまだ全員来てない。


「はい! じゃあ名乗りを始めるよ! 最初はユリウス!」

「おーし、俺はそこのうるさいミリアムの兄、ユリウスだ。まあこんな妹だが気遣いは人一倍できる。是非とも仲良くしてやってくれ」

「私じゃなくてあんたの名乗りだよ!」

「えーい、うるさい、段取りがあるんだよ。俺はクノックの冒険者ギルドで魔物素材の鑑定士をやってた。今日は特別にアーレンツ騎士団支部に連れて行ってもらい、見たことないAランク素材を鑑定できて大変満足した。このメルキースの冒険者ギルドにも日々多くの素材が運ばれていると聞く。そこで働ける日を楽しみにしておる、以上だ」


 60歳くらいか、ただ体は引き締まってシャキッとしているな。それで鑑定士か、これは色々と教えてもらえそうな気がする。


「次はバルバラ」

「あいよ、私はバルバラ・イーデンスタム、ユリウスの妻さ。パンプローナ伯爵領、ヴァステロース子爵領のクノックから来た。夫ユリウスと同じ冒険者ギルドの口座管理所で働いてたよ。まあだから会計は出来る、クラウスの屋敷でもそんな仕事を任せてくれたらいいよ」


 50代後半か、何だかひょうひょうとしているな。それで口座管理所ね、計算が得意なのかな。


「次はキース」

「はい、僕はキース・イーデンスタム、38歳、ユリウスとバルバラの長男です。クノックでは木工職人として働いていました。クラウス殿のお屋敷では家具などの保守管理を担わせていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします」

「自分で作ってみろ!」

「え、父さん、貴族家が使う家具だよ、僕に作れる力量はないって。だから破損を修理したり磨いたりする役目で考えてください、以上です」


 真面目そうだけど少しオドオドしてる。それで木工職人か、エリサの実家が家具商会だからこっちに来たらきっと話が合うよね。


「次はミネルバ」

「はーい、ミネルバ・イーデンスタム、36歳、キースの妻ですー。雑貨商会で在庫管理とか雑用をやってましたー。ここのお庭は感動したわー、終わりー」


 ゆるいな。絡み辛そう。ただキースの雰囲気には合ってるかも。


「次はマルス」

「えーっと、マルス、15歳で父さんがキース、母さんがミネルバだ、向こうでは木工職人の専門学校に行ってた。将来はお屋敷の家具が作れるくらいの腕前を目指したい、よろしく!」


 ほほう、父親と同じ仕事に就きたかったのね。ゼイルディクにも専門学校はあるのだろうか。


「次はドロシー」

「はい! ドロシー・イーデンスタム、13歳、マルスの妹です! えっとヴァステロースでは登録士の専門学校に通ってました。ゼイルディクでも引き続き登録士を目指して勉強しようと思います。よろしく!」


 へー、登録士。ちょっと珍しいかも。スキルは契約かな。それで多分、読み書き出来て色々と規則の知識も必要だから頭も良くないとできないよな。頑張っているんだね。


「次はカイン」

「俺はカイン、10歳だ。マルスが兄ちゃん、ドロシーが姉ちゃんになる。中等学校に入ったばかりで将来何をしたいかはまだ決めてない。冒険者には興味があるからゼイルディクに来れたのはちょっと楽しみだ。みんな、よろしく」


 ふーん、冒険者か。まあここなら環境が整っているからね。


「次はマリベル」

「マリベル・イーデンスタム40歳、キースの姉です。服飾商会で働いてました。貴族家にお仕えするならノルデン夫人の衣装選びに携われるようドレスなどの知識を増やしたいと思います。また皆様方のお召しになる服も場に相応しい選択が出来るよう努めます。どうぞよろしく」


 服飾商会ね、彼女のおしゃれな雰囲気はそういった仕事の影響か。


「最後はリーリア」

「はーい! 私はリーリア、18歳、マリベルの娘で、レナの妹です。クノックでは冒険者をやってました。Dランクになったばかりの弓士です。ゼイルディクは城壁の外に広く森が広がっているので色々な討伐拠点を回れることを楽しみにしています。皆さん、よろしく」


 Dランク冒険者か、じゃあ弓技スキルがレベル16以上なんだね。討伐拠点巡りか、北西部だけでも100個所あるらしいから希望通り沢山選べるね。


 しかし冒険者って身内では養成所のカレルとリーリアだけになるのか。村が冒険者ばかりだったから麻痺してたけど全体ではそこまで多くない職業なんだね。まあ危険だし、他に食べていける能力があればそっちを選ぶわな。


「次はクラウス、頼むよ」


 そしてノルデン家3人とミランダも名乗りを終える。


 ゴーーーーーン


 丁度いい時間だね。


「夕食の会場へご案内します」


 使用人に続いてぞろぞろと客間を出る。お、そういやフローレンスたち士官学校の3人は寮に戻ったのか。シャロンも防衛部隊、ウォレンとカチュアも保安部隊に行った模様。カレルは姿があったな、まだ養成所の寮には入らないのか。


 いやしかしノルデン実家6人、イーデンスタム家10人、ディンケラ家4人か。計20人も屋敷でお世話になっていいのかね。まあ子供らは学校が決まれば寮に入るとして大人だけなら13人か。


 この他にも案内を出しているのはミリアムの妹が嫁いだ先、カトウェイク家の5人、それからエリサの実家で家具商会のエシルストゥーナ家7人だな。こっちも全員来たら流石に屋敷で住み続けるのは悪い。村への移住も何人か進めないとね。

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