第173話 屋敷の午後
メルキース男爵邸宅で昼食をとる。そこにはノルデン家の身内に加えて屋敷使用人の責任者も同席した。大半はクラウスの屋敷が完成するまでここで暮らすため、その間に自らのスキルと経験を活かせる役割を見出すのだ。
「ディックは料理人を目指していると聞いたが、鋭い洞察力も持ち合わせているのだな」
「色々考えるのが好きなだけです」
「編入先はアーレンツの料理人専門学校になるだろう、ここから南東に10kmほどの距離だ。経営はゼイルディク飲食ギルド幹部のアーレンツ男爵、自らも肉料理を中心とした飲食商会を展開している」
「いい環境ですね、とても楽しみです」
そこで良さそうだね。
「ゼイルディクには多くの飲食店がある、うちのテレサとエステルは13歳と9歳だが、幼き頃より一通り回って何でも知っているぞ。休日には共に巡るのも良かろう」
「そ、それは、貴族家ご令嬢とご一緒では緊張します」
「そう気負うな、彼女らは誰とでも分け隔てなく話せる、家族と思って何でも聞くといい」
「はい、分かりました」
これは! なるほど実家もターゲットにしたか。
「カレルは冒険者養成所だな、午後には冒険者ギルドのメルキース支部長とマクレーム養成所の所長が屋敷に来る。共に寮などの視察に向かうだろう」
「おー、そうですか」
「ウチのルアンナは同じ14歳、普段は士官学校だがマクレーム城壁の向こうへ訓練討伐にも行っている。機会があれば同じ班で活動するのもいいだろう」
ぬお、カレルも囲って来た。
「それは楽しみです! けど、魔物が強いのでは」
「Eランク上位~Dランク下位が中心だな」
「ガルウルフやサーベルタイガーですか、何とか剣は通るけどちょっと厳しいかも」
「なら私の娘クラウディア、11歳なのだが訓練討伐にも参加している。その班の進路ならFランク全般~Eランク下位が中心だぞ」
「そっちの方がいいですね」
「分かった、早速班編成に取り掛かる」
おいおい変わり身が早いな。
「そういやリオンは特別契約者、もちろん訓練討伐にも行ってるんだろ?」
「あー、まあそうだね。ところで商会長、俺は昨日の戦いで共鳴率どのくらいまで到達してましたか」
「はあ? それは……ああ確か20%か」
「20%! リオン凄いな!」
「何と! 8歳で信じられない!」
「これは特別契約に相応しい才能ですね!」
どこまで言っていいから分からんから聞いてみた。なるほど身内にはそれでいくのね。
「しかしまだ持続力が足りない、日々の努力を怠るな」
「はい! 頑張ります! それで次の訓練討伐はどの班で、武器は何を持てばいいでしょうか」
「……2班か5班だな、武器はシンクルニウム合金でいいだろう」
「分かりました」
「日程は来週になる、追って連絡するからな」
ミランダは去った。
「シンクルニウムかー、リオンのその共鳴なら十分性能を引き出せるな」
「もうヘルラビットほどなら一撃じゃないですか」
「いやフローレンス、ガルウルフでも十分通用するだろう」
「そうかもしれん、どうなんですかリオン様」
「ええと……ウルフでも何とか戦えるけどパーティメンバーの協力があってだよ」
「おお流石です! もうカレルは超えているんじゃないか」
「え、いやまあ……そうか」
あらら元気が無くなってしまった。
「俺は異常らしいから比べても意味ないよ」
「あはは、ほんと異常だよ……ゴメンいい意味でね」
10歳のカルロスからは全く劣等感を感じなかった。12歳のマルガレータは素性を知るまでは嫉妬心を表に出していたな。カレルは14歳、流石に6つも下の子供に抜かれているのはショックだろう。さて、どうしたものか。
「しかし本当にカレルは羨ましいですねリオン様が従兄弟なのですから」
「うむ、だからきっとカレルも伸びる」
「そうかな」
「もう洗礼で剣技がある時点で私より運がいいのです」
「その通りだ、信じて訓練すればいいぞ」
「分かった、ありがとう」
お、ちょっと笑顔になった。フローレンスとライアンは気を落とした姿を見て元気づけたんだね。そういう僅かな心の変化に気づくとはやるな、励ましの言葉もうまかったし。もしかして士官学校とはそういう方面も指導しているのか。
ああ、あるかもしれん。指揮官ともなれば部下の状態を正しく把握する必要があるからな。そうエリオットやミランダの様に、場面によっては部隊の士気を上げなくてはならない。どんな言葉で心が動くか、ヤル気になってくれるか。そういった教育もありそうだね。
「おっ、来た来た!」
食事はデザートが配られるところまで進んだ。ディックは目を輝かせている。
「これは……んー、美味しい」
濃厚なバニラアイスを口へ運びとても幸せそうだ。
「さて、皆の者! 別室で懇親会の場を設けておる、話はそちらで思う存分続けるとよい。尤も、現場での視察を希望するならその限りではない。自由にこの屋敷を使ってくれ」
そう告げて男爵は広間から出て行った。
「俺、厨房長ともっと話がしたいな、出来れば屋敷の厨房にも行ってみたい」
「兄ちゃんはそれが良さそうだね、あ、母さん」
「ディック、厨房や食材庫を見て回るんだけど一緒に行く?」
「もちろん!」
「私たちはどうするか」
「セドリック副部隊長と話がしたいな、討伐部隊は普段そう会えないだろう」
「うむ、確かに貴重な機会だ、カレルも来るか」
「おお行くぜ」
みんなどうするか決まったみたいだね。
「リオン様もご一緒しますか」
「……いや、ちょっと用事があるから」
「そうですか、分かりました」
商会のことが気になる。
次々と席を立つ中、俺はミランダのテーブルへ向かう。聞きたいことがあると告げると別室へ向かうよう指示された。そこにはクラウスとソフィーナも同席するとのこと。部屋は8畳ほどで俺たちが入ると使用人が結界を施していった。
「やや体が重いな、まだ定着が終わってないか」
「今日1日はかかるわ、あれだけの傷だもの。リオンはどう?」
「もういつも通りだよ、でも念のため大人しくしておくよ」
「それがいい、今日は仕事も無しだろ」
「でも明日はどっちの商会にいけばいいのかな」
「それを今からミランダが話してくれるそうだ」
進展があったみたいだね。ほどなくミランダがやって来る。
「待たせたな、まずはお前たちも気になっているだろう商会のことだ」
「解散は免れたか」
「うむ、今のところその方向は無い」
ほっ、良かった。
「昨日の夕食後にエナンデル子爵が来訪し父上と話したそうだ。取り急ぎ要点だけと聞いている。それで詳しくは明日、今後の方針なども含めて我々に直接子爵から伝えられる、場所はエーデルブルク城、時刻は10時だ」
「城か」
「この後、村に帰っても朝出れば十分間に合うが、我々は傷の定着を待っている身だ、もし何かあっても戦えないだろう。朝も余裕を持って行動するためにお前たちは今夜ここへ宿泊する」
「そうか、分かった」
ふーん今後の方針か、何だろう。
「俺の仕事はどうなるのですか」
「明日そのまま城で生産する。ロンベルク商会は取り扱いから外れた」
「えっ!」
「商品を無断で魔物討伐に使用したからだ」
「あー」
「でもお陰で村は救われたんだぞ」
「それとこれとは話が別だ」
厳しいね。
「ただ一時的な措置だ、数日で復帰するだろう。ちなみにあの武器は城へ行き予定通り販売商会へ渡っている」
「コーネイン商会は売れるのか」
「それも含めて明日だ、恐らくは数日後に復帰と見る」
「ほう随分と緩いな、ミランダに処罰は無いのか」
「今のところ聞いていない」
へーそうなの、あんなに心配したのに。
「これは父上の印象からだが、エナンデル子爵は伯爵にかなり意見をしたらしい」
「そういやバイエンス男爵もそれらしい事を今朝言っていたな」
「うむ、子爵も色々と思うところがあるようだ」
シンクライトの使用を独断で許可したんだからな。
「ひとまず以上だ、午後はゆっくり屋敷で過ごすといい」
「エリオットは監視所へ行ったか」
「うむ、あれも仕事があるからな、とは言え部隊の被害確認や遺族への対応など事務関係だ、剣は握らない。セドリックとカミラは今日夕方に部隊へ戻る予定だ」
「ミリィは?」
「私はずっと屋敷でいる、無論明日も同行するぞ。それとソフィ、その呼び方は2人だけの時にしてくれ」
「いいじゃない、2人だけの時はそう無いんだし」
「……まあ好きにしろ」
あらま、押し切ったよ。意外とソフィーナって折れないのね。ふふ、実はミリィと呼ばれるたびにミランダが少し戸惑っているのを知っていた。本当は嬉しいけど表には出さない様にね。そういう友達みたいなやり取りは貴族家に入ってから離れていたのだろう。
きっとソフィーナはそれを見抜いて敢えて呼んでいるんだ。ミランダはソフィーナと話すときは表情が和らぐもんね。何でも話せる友達も必要だよ。
何でも話せる友達か。
「あの商会長、さっきカレルたちに聞かれたんですが」
「うむ、あの内容なら知れ渡っても問題ない」
「分かりました、では誰かに聞かれた時は共鳴20%、武器はシンクルニウムとしますね。剣技はどうしましょう」
「そうだな……レベル8にするか」
「シンクルニウムの適性レベルですね」
「うむ、無論実際はレベル11だが洗礼1カ月でそれは流石に高過ぎるからな。不要に目立つ事柄は伏せるべきだ」
そう、マースカントに鑑定されて判明したんだ。そしてそれも異常なんだな。
「後は倒せる魔物なんですが、ヘルラビットは1撃、ガルウルフはパーティで協力すれば何とか、辺りでいいですか」
「そうだな、目安は2班のメンバーと同程度でいい」
「分かりました」
「随分と細かいな」
「うん、じゃないとハッキリ返答できないから」
実はさっきの3人のやりとり、ちょっと羨ましかった。同年代で共通の話題で盛り上がれるのは楽しいよね。何だか俺だけのけ者な感じで。人並みに少しずつ強くなっていく過程を友人と一緒に歩む、そんな人生も良かった、なんて贅沢かな。
「さて、俺はオズワルドともう少し話をするかな」
「父さん誰?」
「執事だよ、色々と詳しいから勉強になる」
「へー、あの人が執事なんだ。あ、母さんのテーブルの人は厨房長?」
「そうよ、隣りに座ったエリサがかなり質問してたわね、午後からは施設を一緒に見て回るんだって」
「他にもレナは水管長と、ラウルは厩舎長について色々見るそうだ」
「みんなヤル気だね」
俺はどうしようかな、あ、そうだ。
「商会長、リーサたち西区保安部隊について聞きたいんですが」
「何だ」
「コルホル村ってアーレンツ子爵の領地ですよね、だからアーレンツ保安部隊からも騎士が来ている、西区ではなく北区と東区みたいですけど」
「うむ」
「それで護衛住人のボリスからシンクライト生産が知られた可能性があるじゃないですか、それは伯爵から使わされたので分かるんですが、その、結局はアーレンツ子爵が村の領主である以上、そこで働く保安部隊は伯爵に通じているんじゃないかって、例えメルキースから来た騎士でも」
子爵が伯爵の手足ならそうなるよね。
「あの、リーサたちはとても頼りになるし信用してます。でも本当のところ誰に近い騎士なのか知りたくて、その」
「質問の意図は大体分かった。心配するな、西区保安部隊、及び西区夜警騎士はリオンのそしてノルデン家の味方だ。お前に不利な報告は伯爵や子爵に伝えることは無い」
「ほっ、そうですか、良かった」
夜警騎士もそうなんだね。確か監視所から来たみたいだけど。
「その根拠はな、まあ単純な話だ、あの者たちの給金はメルキース男爵家が全額出しているからだ」
「ほー、そうなのか」
「まあ子爵じゃないのね」
「うむ、ゼイルディク騎士団はな基本的に配属された地域の領主が給金を出す。つまりメルキース保安部隊は全てメルキース男爵だ。ただ北西部防衛部隊は場所によって分かれている。メルキースの城壁勤務とコルホル村を男爵、その他を子爵が出している、ブレイエム監視所の騎士たちがそうだ」
へー、そうなっているのか。
「では監視所から来た夜警騎士は」
「村に来たからウチ持ちだ」
「じゃあ北区と東区の保安部隊も」
「あれはアーレンツから来たので子爵持ち」
「はあ?」
「子爵が出すと言ったのだよ。ちなみに護衛住人の給金はもちろん伯爵だ」
「何だかややこしいことになってるな」
つまりは影響力を持ちたい者がお金を出すってことね。
「繰り返すが西区保安部隊と西区夜警騎士はメルキース男爵家が出している。お金をくれる人に従うのは当然のこと、だから心配するな」
「うむ、よく分かった。あれ、じゃあミランダたちの給金はどうなってるんだ」
「指揮官手当を伯爵から貰っている、それだけだ」
「え、少ないだろ」
「構わん、私は商会長だぞ」
「ああそうだった」
「元より貴族家なぞ給金が無くても全く問題ない、領民や領地商会からの税収があるからな」
まあそうだよね、収入の仕組みが全然違うんだ。
「クラウス、お前に至っては税収すら必要ないな、はっはっは」
「今のところはな」
「まあ支出も事業によっては伯爵から大規模な補助がある、例えば城壁更新だ、あれはゼイルディク全体に関係する施設だからな」
「確かに」
「監視所とかの施設建築は騎士団の予算から出すのよね」
「うむ、魔物に破壊された補修費もな、おおあのクエレブレが突っ込んだメルキースの城壁補修も騎士団持ちだ。まあそれも元をたどれば領民の税金だがな、伯爵が集めて騎士団に配分しているだけだ」
つまり伯爵は予算額決定権があるのね。
「ところで北西部討伐部隊の給金は子爵か」
「うむ」
「へー、子爵は大変だな、アーレンツ保安部隊も全部だろ」
「子爵は伯爵から自由に使える金を貰っている、それを回しているのさ」
「何だ、そうなのか」
「かなりの額だぞ、だから子爵は伯爵の言いなりなんだ」
「結局は金か」
分かり易い主従関係だな。
「元々子爵と言うのは伯爵家の身内に限っていたのだ、息子には小遣いをやるものだろ」
「はは、恐ろしい金額の小遣いだな」
「ただ金の流れは面倒ごとに発展しやすい、給金含めて他には漏らすなよ」
「分かった」
「黙っておくわ」
「はい」
お金の動きは生々しいからね。
「ちなみにケチな領主の元に配属されると不満が出る」
「はは、やっぱり差があるのか」
「士気の低い騎士が多い地域はそういうことだ」
あーらら。なるほどブラガスがそうだったよね。
「お、じゃあ功績が評価されて叙爵する騎士は最初が大変だな」
「ある程度経済力が備わった領地なら何とかなるが、開拓村ではとてもやっていけない。その場合は安定するまで伯爵や子爵が面倒を見るだろう。クラウスの叙爵決定が早かったワケもそこにあるぞ、財政面で世話することは無いからな」
「確かに」
「経済基盤の無い貴族は何かしら商会を立ち上げて軌道に乗るまでが勝負だ」
はー、貴族になってからが大変なんだね。
「さて、そろそろ客間に行くか。私は屋敷内にいる、何かあったら使用人に呼ぶように伝えろ」
「分かった」
客間へ向かう。いやー、中々に興味深い話だった。騎士の給金とは一番大事なところだよね。そこを握っている限り大丈夫だ。
おや、客間にそんなに人がいないな。
「おおー、クラウス来たか、こっちだ」
「兄さんすまない遅くなった」
マティアスと話しているのはランメルトとミゲル、そして執事だな。
「どうする? 母さんと屋敷を見て回る?」
「え、うん」
「メル兄さん! リオンと、そうね使用人宿舎に行ってるから!」
「分かった!」
そこ行くのか、ちょっと興味あったんだよね。
「行きましょ」
「うん」
身内が寝泊まりする建物だしね。どんなところなんだろう。
屋敷の玄関で行き先を告げると護衛が2人ついてきた。まあ敷地内とは言え外に出るからね、それに今は何かあっても身体強化すら出来ない。
馬車で行っても良かったが、ゆっくりと周りを見ながら歩くのもまたいい。思えばこんなのんびりした時間の過ごし方は久しぶりかも。何かしら毎日用事があったからね。たまには目的もなくブラブラする日があってもいい。
100mほど歩いたか、目の前には2階建ての奥行きのある建物が2棟見えてきた。
「手前の建物が料理人、水管係、洗濯係、衣装係、家具係など、奥が客室係や広間の準備、片付け、清掃、運搬なんかの多くの雑用を担当する人たちね」
「へー」
「建物1階中心の出入り口から南北20部屋ずつで40人、2階も含めると80人ね。隣りと合わせれば160人がここで寝泊まりできるのよ。2棟とも1階には1人部屋だけ、2階は2人部屋もあるわ」
集合住宅かー。
「宿舎の隣りには共同浴場と食堂があるの。トイレは各部屋に1つね」
「ほんとだ、西区みたいだね」
「ちょっと入ってみましょう」
正面入り口前で管理人らしき人に声を掛けられる。護衛が対応して中に入った。
「階段の横にテーブルとソファが沢山あるね」
「ちょっと座ってお話しする場所よ、2階にも行ってみましょう」
階段を上がる。
「うわー、こっちの休憩場所は窓が大きくて明るいね」
「そこから食堂に行けるわよ」
「え、ほんとだ、続いてる」
なるほど宿舎の2階から直接繋がっているんだね。
「食堂は2階にあるの、この下が洗濯乾燥施設でその隣りが共同浴場よ、下りてみましょう」
「うん」
階段を下りると宿舎の1階出入り口が左右に見えた。なるほど2棟の間にこの施設があって2階からそれぞれ直接食堂へ繋がっているんだ。中々機能的に作られた居住区域だね。
「母さんよく知ってるね」
「冒険者の宿舎も同じ様な作りなのよ」
「へー、そうなんだ」
「この2棟で20人くらい空きがあるから身内の人たちも十分入れるでしょ」
「うん」
「それで屋敷の向こうもに同じ様な宿舎が1棟あるのよ、馬車係、御者、庭師、屋敷警備なんかのお仕事の人ね、あなたたち2人もそうよね」
「はっ! その通りです」
護衛2人が応える。ふーん、職種で分けているのか。
「じゃあラウルおじさんはそっちに入るんだね」
「ええそうよ」
ほほう、では80人の宿舎が3棟で最大240人くらいの使用人か。まあ多いよね、流石人口4万人のメルキースの領主だ。
「でも家令や執事、家政婦長とかの責任者はお屋敷に部屋があるのよ」
「こっちじゃないんだね」
「マティアスとエリサは要人だから屋敷に部屋を構えるそうよ」
「へー」
マティアスはクラウスに何かあった時に爵位を預かる人物だからね、その妻含めて扱いが他の人とは違うのか。
「よく分かったよ、ここなら快適に暮らせそうだね」
「じゃあ戻りましょう」
屋敷へ向かって歩く。なるほどこれは参考になった。クラウスの屋敷は敷地がここの6倍だから庭師や警備が多く必要だね。ひとまず80人宿舎が4棟で320人くらいかな。もし不足ならいくらでも建てられるし。
ただ住むところが出来ても働く人がいないと。これは今からでも少しずつ人選しないと間に合わないかも。どこでどうやって集めたのか男爵やミランダに聞いてみよう。




