第171話 メルキース
ゼイルディク騎士団メルキース支部の1室でバイエンス男爵から昨日の経緯を聞く。彼はAランク魔物17体の討伐者を騎士の証言を元にほぼ確定していたが、うち3体において討伐者が全くの不明であった。しかしそれは俺の戦闘内容を告げることで解決する。ただ表向きは1体目のジルニトラとリンドブルムはミランダ、2体目のジルニトラはエリオットが討伐となった。
「さてリオンがあの場にいた理由だが訓練の視察としてくれ。村の住人や防衛部隊にもそれで伝わっている。特別契約者ほどの腕前だ、視察をしても不思議ではないぞ」
ちょっと苦しい気がする。コーネイン商会の特別契約者なのにロンベルク商会にいるし、家令ディマスと出てきて伯爵命令だもんな。ただどう思われようが視察の一点張りで通すか。
「特別契約者としてあの場にいたならシンクライトは伏せるとしてもトランサイトでの討伐とすればいいのでは」
「すまんがクラウス、これはリオンへの過度な注目を避けるためだ。8歳にして特別契約者はまだ何とか常識の範疇だが、3体もAランクを仕留めたとなれば極めて飛び抜けた成果であり、その戦闘能力の源を多くの貴族が探りに来るだろう」
おー、確かに。
「同じく3体仕留めたユーシスが叙爵対象ではと話していたところだぞ」
「よく考えればその通りです。たまたま視察中に戦闘に巻き込まれて何とか生き残った、それくらいの方が妙な詮索を避けられますね」
「うむ、リオンもすまないな」
「いえいえ、先の影響をも予測した措置、大変感謝します」
「討伐報酬は別名目でクラウスの口座へ入れるから安心しろ」
それはちゃんと貰えるのね。
「男爵、1つお聞きしたいのですが、何故リオンがシンクライトを使っていたと分かったのですか」
「それは握っていた剣を回収したからだ、鑑定不能と出たから直ぐに私の管理下に置いたぞ」
うは、鑑定したのか。つまりは怪しいと思ってたのね。
「騎士の証言を聞く過程でも飛剣を当てはめれば説明のつく場面があったからな。それも先程のリオンの言葉で証明された」
「本当に騎士たちには悟られていないでしょうか」
「……正直言うと分からん、不思議に思っているのは間違いないからな。ただいくら騎士同士で噂をしようが発表内容が全てだ、心配するな」
なるほどこうやって真実は隠されていくのか。きっと歴史上の魔物討伐も誰かに都合の良い記録なんだろうな。
「さてそのシンクライト合金の武器だが、伯爵家の一員として返すことはできん」
「……はい」
「だが町を救った英雄に武器を返すのは当然のことだ」
そう言って男爵はソファの後ろから1本の剣を出す。これは俺が昨日作ったミランデルだ。
「さあ持て、リオン」
「え、でも」
「今回の戦いで騎士たちはトランサイト合金の武器のみを使った。そなた含めてな。何も問題は無いぞ」
「……分かりました」
武器を手に取る。なるほど最初から無かったことにするのか。
「他の者の武器は部屋の前で騎士が管理している。この後、持って行くがいい」
「はい」
「男爵、数々の計らいを大変感謝します」
「はっはっは、気にするなクラウス。まあたまにはバイエンスへ来い、屋敷で食事でもどうだ」
「はい、近くにお伺いします」
「楽しみにしておるぞ」
確か同じ35歳だったな。城で初めて会った時もクラウスと交流を深めたい様子だったし。伯爵第2夫人の長男か、直系ではないため、また違った考え方なのだろう。ただこれまでの流れからは信頼できる人物だと思える、命の恩人だしね。
「さてメルキースの領民もお待ちかねだ、皆、行くとしよう」
そう告げて男爵は立つ。また何か仕込んでいるのか。
部屋を出て各々自分の武器を受け取る。そして男爵について廊下を歩くと開けた空間に出た。そこにはいくつもテーブルと椅子が並んでおり何人かの騎士の姿も見える。軽い談話でもする場所かな。
「部隊長!」
座っていた1人の騎士が声を上げると他の騎士も立ち上がりこちらへ近づく。ああ、ナタリオじゃないか、それにセドリック、カミラ、ベロニカもいる。
「兄上、よくぞ守られました」
「セディ、お前もよく生き残った」
「姉上、見事な指揮でした」
「カミラもよくやった」
言葉は短いが通じるものがあるのか、お互い満足した表情だ。
「さあ行くぞ!」
男爵の声に隣接するバルコニーへ出る。
「おおおおっ!」
「バイエンス男爵だー!」
「部隊長もいるぞ!」
「ミランダ様ー!」
ここは2階。バルコニーの下には多くの人がひしめき合っていた。
「皆、聞け! ここに並ぶ者は先のベルソワ防衛戦で多大な成果をあげた! 最大9体ものAランク魔物を前に全く怯まず、メルキースの城壁を守り切ったのだ! 町を救った英雄たちを称えよ!」
「うおおおおっ!」
「よくやってくれたー!」
「素晴らしいわ!」
ベルソワ防衛戦か、そんな名前が付いたのね。
「まずはエリオット・コーネイン! 彼はあの強大な魔物ジルニトラの首を落とした!」
「キャー! エリオット様ー!」
「本当に立派な次期男爵だ!」
「メルキースは安泰だぞ!」
「英雄エリオットを称えよ!」
「エリオット!」
「エリオット!」
「エリオット!」
うわ、凄い圧だ。エリオットもそれに応えて両手を振る。
「次にエリオットの妻、ミランダ・コーネイン!」
こうやって順番に紹介していくんだな。はは、ミランダはグリフォンキラーなんて呼ばれてるぞ。セドリックやカミラも凄い人気だな。ナタリオ登場時には女性の歓声が更に高まった。
俺とクラウスとソフィーナはノルデン家でまとめて紹介された。ベロニカも他のトランサイト班と一緒に前に立つ。なるほど討伐者だけ1人ずつなのね。
「ベルソワ防衛戦は魔物討伐の歴史において格別の偉業として刻まれる! 皆はその英雄たちと同じ時代に生きているのだ! そしてこのメルキースは再びどんな魔物が襲って来ようとも必ず勝利する! 何故なら英雄の町、メルキースだからだ!」
「メルキース!」
「メルキース!」
「メルキース!」
なるほど最後は個人ではなく町を持ち上げるのか。いいね、領民は誇らしいだろう。気分よく税金を納めてくれる。ああそうかメルキースの栄誉は領主の栄誉、コーネイン家が大きな成果を残したからね。それを間接的に表現したのかも。
大合唱を背に俺たちはバルコニーから談話スペースへ入る。
「では皆、ここで解散だ。Aランク討伐者にはゼイルディク極偉勲章が与えられる、授賞式の日程は追って伝えるからな。誠に素晴らしい功績であった」
バイエンス男爵は去った。
「私はアーレンツ子爵へ報告に参ります、ガウェインも先に行っておりますので」
ベロニカはそう告げて通路へ消えた。
「部隊長、監視所へ騎士と共に向かいます」
「うむ、私も昼過ぎには行く」
ナタリオはトランサイト班の先頭に立ち談話スペースから引き上げる。ガウェインの槍はベロニカに渡したか。
「さて我々は父上の屋敷へ向かうぞ」
フリッツと合流し1階へ。ロビーには向かわずに建物の奥へ進む。しばらくして突き当りの扉を開くと馬車が並んでいた。ここは馬車乗り場か。振り返って見上げるとさきほど俺たちがいたバルコニーが見える。そうか領民たちが集まっていたのはこの場所だったのね。
男爵家の馬車に乗り込む、俺の他にはクラウス、ソフィーナ、フリッツだ。エリオット、ミランダ、セドリック、カミラはもう1台に向かう。
「屋敷は直ぐそこだ」
「フリッツ、サラマンダーにトランサイトを振るったんだよね」
「……まあな。だが伸剣の長さが足りず掠っただけだ」
「あらら」
「だからワシより他の者がいいと」
「はは、いいじゃないか。みんなフリッツに使ってほしかったんだよ」
そりゃBランク冒険者だからね。ただ魔力共鳴となると年齢による衰えが出てしまったか。
「いい機会だ、ワシは剣を置く。最後にAランクと対峙し生き残れた、悔いなき剣士人生であったぞ」
「そうか、まあ家令でも護身として短剣くらい携行してくれ」
「もちろんだ」
魔物対応としては一区切りかな。フリッツ、お疲れさん。
屋敷の敷地へ入る。ボケーっと庭園を眺めているとお花の馬車が目に止まった。
「あれはベラおばちゃんだね、後は……誰だろう」
「多分1人は俺の母さんだ、他2人は分からん」
「エリサとレナだな」
「おーそうか、フリッツはもう会っていたのか」
「昨日、皆が治療院へ来たぞ。尤もお前たちは寝ていたがな」
寝顔が初対面とは何だかな。
屋敷に到着。客間でひと息つく。
「ふー……」
「はぁー……」
クラウスもソフィーナもソファに身を沈めて動かない。俺も斜め上を眺めたまま固まる。
「何なら客室で横になるか」
「いやエリオット、ここでいい」
「そうか、我々は父上へ報告に行く。クラウスの実家とブラード家には到着したことだけ伝えるぞ、話がしたいなら使用人に所在を聞けばいい。まあひとまずはゆっくりするか」
そう告げてエリオットたちは出て行く。タフだねぇ騎士貴族家の人は。
「死にかけたのに元気だな」
「そうね」
クラウスとソフィーナは紅茶を飲みながら言葉を交わす。ふふ、同じ印象らしい。
「挨拶は庭園の4人が帰って来てからでいいか」
「ええ」
大きな窓の向こうに庭園が見える。そこをゆっくりと進むお花の馬車はこちらへ向かっているようだ。俺たちが来たことに気づいたのね。
「フリッツ、バイエンス男爵をどう思う」
「武人だな、保安部隊長であるため正義感も強い。伯爵からも信頼が厚く今回の魔物対応処理は全て任せているようだ」
「そうか……またバイエンスへ行く時には一緒に来てくれ」
「もちろんだ」
「エリーゼも連れて行ったら?」
「……それは本人次第だ」
実家になるのかな、9歳まで過ごしたのはバイエンスの屋敷かも。いや貴族学園の寮か。まあシャルルロワ学園もバイエンスにあるんだ、きっと懐かしく感じるだろう。
「さあ花の馬車が帰って来たぞ、行くか」
「ええ」
「うん!」
客間を出て玄関に移動。
「ソフィ! あんたたちも大変だったわね!」
「ベラもサラマンダーと戦ったじゃない」
「ええ、脚を切り落としてやったわ!」
イザベラ、やるな。
「クラウス! もう動いていいのかい?」
「問題ないよ母さん、心配かけたね」
「ほんとにあんたって子は、ちっとも顔を出さないと思ったら貴族になるだなんて、それで来いって言うから来たのにベッドで寝てるんだからね。年寄りをあんまり驚かさないでおくれ」
「はは、すまない」
クラウスの母親ミリアムか、よくしゃべる人だな。
「初めまして! マティアスの妻エリサです!」
「俺がクラウス、隣りが妻のソフィーナ、こっちは長男の」
「はいはい、名乗りはみんな揃ってから、二度手間だろ」
ミリアムはパンパンと手を叩いて割って入る。
「そうだな母さん、じゃあみんな中へ行こう」
屋敷へ入って客間へ座る。
「ちょっとあんた、ゴードンたちを呼んできておくれ、ブラード家の方たちもだ、エシルストゥーナ家もだよ」
「畏まりました」
ミリアムは使用人へ告げる。何というか仕切らずにはいられない性格なのか。ふふ、宿屋でもきっとこんな調子だったんだね。しかしエシルストゥーナとは、ウォレンたちも来ているのか。
「クラウス、明日は私の実家連中が来るよ、ええと5人だね。マリベルとリーリアも明日だったね、レナ」
「はい、そうです」
「エリサの実家も日程を調節してるところだよ、そうだろ」
「はい、義母さん」
おお、どんどん来るね。こりゃ賑やかだ。
「しかしそんなにこの屋敷に住めるのか」
「クラウスあんた、使用人の宿舎見てないのかい。まだまだ入れるよ」
「そ、そうか」
「あんたの屋敷にも必要なんだからちゃんと把握しておきな」
クラウス、たじたじだな。
「さー、みんな来たね、ゴードンはそっちに座りな!」
「なんじゃい、ワシは好きなところに座るぞ」
ぞろぞろと客間に入って来る。
「もうクラウスたちと顔は合わせたろ、隅っこに行くんだよ」
「夫に向かってその扱いはなんだ」
「まあまあ父さん、一緒に行こう」
ゴードンとマティアスは客間の端へ向かう。その間もミリアムが他のみんなの座る場所を指定していた。はは、これは普段からもやり合っている感じだな。ただこういう時に譲り合っていつまでも座らないより、ちゃっちゃと仕切ってくれた方がありがたい。内心みんなどう思ってるか知らんが。
(うっとおしいのが来たの)
(ダメだよ、そんな事言っちゃ)
「ほっほ」
カスペルは耳元で囁いて遠くへ座る。
「さあ、みんな座ったね。本当はディンケラ家が来てから名乗った方が一度で済むけど、昼前って聞いてるからまだ時間がある、ひとまずクラウスたちに初対面の者は先に挨拶をするよ、いいね」
「それで構わないよ」
「うん、分かった」
「ならワシはいなくても構わんだろ、もうここの者は皆知っとるぞ」
「うるさいね、だったらどこへでも行きな」
ゴードンは皆の注目を浴びて戸惑いの表情。
「暇ならワシが話し相手になってやる」
「そうか、カスペル」
「ワシもだ」
フリッツも加わった年寄り3人は輪になった。あー、多分、ディンケラ家が来た時にまた集めな直すのが面倒だから集合させたのね。
「まずは私から。ミリアム・ノルデン、60歳、クラウスとマティアスの母親だよ。ウィルム侯爵領サンデベール、パンプローナ伯爵領パンプローナ、ヴァステロース子爵領ヴァステロースのクノックから来たよ。まずはクラウス、貴族になるなんて夢みたいなこと今でも信じられないよ。でもこんな立派なお屋敷に住まわせてくれるんだから間違いないね。私はこんな性格で何でも言うけど間違ってたら何でも言い返してくれていい、じゃあ今後ともよろしく頼むよ」
自覚あったんだ。
「貴族の母親になるんだ、もっと礼儀を身につけろ」
「あんたに言われたくないね」
ゴードンとのやり取りに皆クスッと笑う。
「次はエリサだよ」
「えーっと、私はエリサ・ノルデン、35歳、マティアスの妻です。正直言うと今の状況はかなり戸惑ってます。急に知らない土地に来てどうしていいか。でも家族のみんながいるし何とかなるでしょう。そうそう庭園は素晴らしかったわ」
楽観的になるのかな。ちょっとフワーッとしてる雰囲気だ。
「次はディック」
「はーい! 俺はディック・ノルデン、15歳、ヴァステロースでは料理の専門学校へ通ってました。こっちでも専門学校はあるみたいなので早く通ってみたいかな。貴族とかはよく分からないんで今から勉強しまーす」
ゆるい感じだな。それで料理か、なるほど宿屋で腕を振るうつもりだったんだ。
「次は」
「俺だ! カレル・ノルデン、14歳! ディックの弟だ! 父さんはマティアス、母さんはエリサ、これ兄ちゃんが言うところだぞ」
「あ、そっか」
「ヴァステロースでは冒険者養成所に入っててEランク冒険者になったばかりだ! ゼイルディクは冒険者が多い町だから色んな人に会えるのが楽しみ! あっちには無かった城壁があるし、早くその向こうの森へ討伐に行きたい! リオンは強いみたいだから教えてくれよな!」
ほー、Eランクか。じゃあ何かの戦闘スキルが11以上なんだね。ハキハキして元気な印象だ、それに兄の言い忘れたことをフォローする辺りしっかりしてるんだな。
「最後にレナよ」
「はい! レナ・イーデンスタム、20歳、浄水士です。えーっと、私の母がミリアム母さんの兄の長女です。私は精霊石から水やお湯を出すことしか出来ないけどそれなりに自信があるのでお屋敷でもきっとお役に立てます。みんな、よろしく!」
ノルデン宿で働いてた子だね。何というか凄く可愛い顔してる。これはきっと彼女目当てで宿に来た客もいただろう。向こうで交際していた相手はこっちへ来るのだろうか。
「よーし、じゃあこっちの番だな」
「まだだよ、クラウス!」
「え、でも最後って」
「ノルデン宿屋絡みが最後ってことだよ」
ちょっとクラウスが納得いかない表情。うん、気持ちわかるよ、最後って言ったもん。ただミリアムは自分は間違ってないという面持ち。まあこの手のことは引っ張らない方がいい。
「次はフローレンス」
「はっ! 私はフローレンス・シベリウス、15歳、メルキース士官学校高等部3年です。父はアグロヴァル、母はウェンデル、その両親は姉シャロンと共に北西部防衛部隊で任務についています。昨日はクラウス様とソフィーナ様と共に北区の進路にてパーティを組ませてもらいました。トランサイトの見事な運用、また直後にサラマンダー討伐に参加された様子も聞いています」
おー、シャロンの弟ね。
「そしてベルソワ防衛戦、リオン様も参加されたと聞いて大変驚きましたが、特別契約者ならAランクをも恐れないのですね。それも8歳という若さで、私が8歳の頃はもう」
「おい、長いぞ!」
「これは失礼しました! 以上です!」
ゴードンの突っ込みが入って終了した。フローレンスか、真面目そうだけどちょっと話に夢中になったみたいだね。
「次はライアン!」
「はっ! ライアン・エシルストゥーナ、14歳、メルキース士官学校高等部2年です。父はウォレン、母はカチュア、両親ともメルキース保安部隊に所属しております。私はアルデンレヒトでは保安部隊を目指しておりましたが、ここメルキースでは魔物対応の方が重要と聞き、日々そのご指導を賜っております。特にルアンナ・コーネイン様には良くしていただき、大変ありがたく思います。将来はノルデン家のお屋敷をお守りする任務を目指します、以上です!」
ウォレンの長男か。まあこっちに来たからには魔物対応も出来ないとね。ルアンナと年が同じか、貴族家令嬢が気にかけてくれるのは嬉しい限りだろう。
「次はアストリア!」
「はっ! アストリア・エシルストゥーナ、13歳、ライアンの妹です。メルキース士官学校高等部1年であり、兄と同じく魔物対応について日々取り組んでいます。昨日はAランク魔物が多数近くまで襲来と聞き大変驚きましたが、全て討伐し町に一切の被害がない事実もまた驚いています。私も将来、その最前線に立てる騎士を目指します。以上です!」
この子もライアンの様に保安部隊を目指してたのかな。でも魔物対応にかなりヤル気になってるみたい。ただ最前線に行くと危険も伴うんだよな。まあ死なない様に強くなるしかないけど。
「さあお待たせ、クラウスだよ」
「よーし、えー、俺はクラウス・ノルデン、35歳、ここから北西に20kmのコルホル村に住んでいる。周りは森に囲まれて毎日魔物が襲ってくる危険な環境だが、色々あって俺はそこの領主となる。約1年後までには屋敷を近くに建築し、いずれ皆もそこで働いてもらう。ただあくまでこっちが決めた予定だ、思うことがあれば何でも言ってくれ」
改めて聞くとふざけた環境だな、絶対危ないじゃないか。まあでも事実だし、それを承知で村まで来てもらわないと。
「次は私ね、ソフィーナ・ノルデン、30歳、クラウスの妻よ。その隅っこで話しているカスペルが私の父、あっちのエミーが母よ、それとそこのランメルトが兄です。えーっと、皆さん、急な移住で本当にご迷惑をお掛けしました。ただ夫は貴族となる覚悟をして日々努力していますし、私も貴族夫人として支える準備をしています。もう後戻りは出来ません、来るべく将来への備えを皆さんお願いします」
うん、そうだね。決まったことに向かって進むしかない。
よし、俺だ!
「リオン・ノルデン、8歳! クラウスとソフィーナの長男です! 父さんが作り方を見つけたトランサイトはとても凄い鉱物です! 昨日来た強い魔物も騎士の人たちがそのトランサイトで次々と倒していくのを俺は見ました。えっと、全然違います、これまでの武器とは戦い方の元から変わっています。そんな強い武器を持った騎士がゼイルディクには沢山います。魔物が来て危ないけど安全な町です」
どうかな、年相応の感じで言ってみたが、危険で安全とか意味不明になってしまった。まあいいや。




