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ミリオンクォータ  作者: 緑ネギ
序章
15/321

第15話 歩く農薬

 今日は隣りのブラード家が見張り当番。朝食後にカスペルが1人で上がっていると聞き話をするため見張り台に上がった。そこから2時間ほどしてランメルトが交代にやってきた、カスペルと城壁を下りる。


「じいちゃん、今日また見張り台に上がる?」

「上がるよ。昼飯後にランメルトと交代だ」

「また行っていい?」

「構わんぞ」


 よし、昼からカスペルとお話だ。家に帰ると納屋の荷車がない、中央区へ出荷しに行ったんだな。さーてどうしよう、家に帰るか。


 居間に座って地図を眺める。


 ゼイルディクの北西と北に3つの村。南にはウィルム、東にはカルカリアがある。カルカリアはゼイルディクと同じくらいの規模らしい。イザベラの出身地でランメルトとはここで知り合ったんだよね。


 カスペルはゼイルディク壊滅時にカルカリア在住で冒険者ギルドに所属していた。出身はウィルムと聞いたが割と居住地を変えてたっぽい。ソフィーナの話だと結婚してからはゼイルディクで農家をしてたみたいだし。


 カルカリアの主産業は畜産、羊皮紙か。それにしても、うーん、俺がこの町を知っているのは何故だろう。コルホル村から出た記憶はないが、それにも残らないほどの幼少期に訪れていたのか。ただ感覚としては、住んでいた、なんだよなぁ。


 前世の記憶があるのは地球でのこと。この世界では、ん、まてよ。


 宇宙の声が言ってた転出枠と転入枠。100万の転出枠に地球の記憶を付与したから俺は前世の記憶を持っている。普通は、えーっと、転出枠の付与は残る確率がとても低く、確か100万分の1。ほとんどの神は記憶を付与することが多いと。


 一方、転入枠は? そちらにも何か付与できるのか。俺がリオンとして生まれる時に異世界転生の魂が宿った。その時この世界に割り当てられた転入枠の1つを消化したんだよな。その転入枠に前世の記憶が付与されていたとしたら?


 今のところ可能性があるのはそんなところか。昔カルカリアで生きてた人が死んで、その魂の転生時に前世の記憶を付与した。……あれ? じゃあ俺の魂はこの世界の人? あれれ、おかしいな。


 むー、分からん。また宇宙の声が聞ければ問うてみるか。


 いやまた聞けるのか? 一度一方的に魂を宇宙空間に連れていかれただけだ。俺の方から接触はどうなんだろう。ただ記憶が戻ったことを把握していたのなら俺の頭の中を覗ける可能性が高い。ならば念じるとこにより届くかもしれない。


 えー、聞こえますか、聞こえますか、俺はリオンです。宇宙の声様、聞きたいことがあるのでお話しできませんか?


 ……。


 うーむ。両手をこう掲げて、手のひらを広げてだな、ちょっとでも高い方がいいか、机に上がろう、それで目を閉じて念じる。


 ……どうだ。


「リオンいるのか」

「あ!」

「何やってんだ、お前」

「いやそのー」


 これはまるっきり危ない人ではないか。


「ええと、地図をね、見てたらね、なんかね、こうしたくなったんだよ」

「……そうか」

「ち、地図、気に入ってくれたみたいね」

「うん!」


 もういい、地図のせいにする。


「まーなんだ、人前でするなよ」

「うん、分かった! あ、そうだ、俺ってカルカリアに行ったことある?」

「いやー行ってない。お前はここで生まれて一度も村から出ていないぞ」

「そっかー」


 では前世か、もしくはそれに相当する何かが起因しているのだろう。


「カルカリアがどうかしたの?」

「ううん、何でもない」

「興味があるんならイザベラおばちゃんに聞いてみたら?」

「そうだな、ランメルトも何年かいたみたいだし」

「うん、聞いてみるよ」


 話しを聞けばまた何か思い出すかもしれない。


 ゴーーーーーン!


 昼の鐘だ。


「昼からも見張り台に行っていいかな?」

「ああいいぞ。誰がいるんだ?」

「じいちゃん」

「そうか、お話しするんだな」

「うん」


 そして昼食後に再び城壁に上がった。


「あれ、メルおっちゃんだ」

「お、リオンか」

「じいちゃんと交代するんだよね」

「そうだぞ、もうそろそろ来るんじゃないか、まあ座れや」

「うん」


 ランメルト、よく会うけどちゃんと話したことないな。子供も3人いるし畑仕事もあるから空いた時間が少なそう。人なつっこくて明るいから話しやすいんだよね。


「お待たせメル。おや、リオンはもう来とるのか」

「あ、じいちゃん!」

「じゃ頼んだぜ」


 ランメルトは去った。


「よいしょっと、さー、またお話しするか」

「うん!」


 カスペルは椅子に座り森の方を眺めた。


「朝の続きでいいかの?」

「うん、お願い」

「さーて、どこまで話したかのう。ゼイルディクの話だったか」

「そう、町が魔物にやられちゃったところ」

「ああそうか、それから何日かゼイルディクに留まりできることはやって、カルカリアへ帰ったんだよ。それで冒険者を続けた」


 カルカリア、何か聞けるかな。


「カルカリアってどんな町? じいちゃんどのくらい居たの?」

「ワシが居たのは3年ほどだ。ウィルムで冒険者にはなったが、もっと他の町も見たくてな、2年ほどしてか、カルカリアへ来たんだ、そこで3年ほど過ごした頃、ゼイルディクの襲撃が起きたんだ」

「ふーん」

「ワシがカルカリアではなくゼイルディクへ行ってたなら生きていなかっただろう」

「どうしてカルカリアへ行ったの?」

「ウィルムで一緒に冒険者をしてた者がの、地元へ帰ると言うてきた。それがワシの当時の彼女での、じゃあ一緒に行こうかと」


 土地じゃなく人について行くのか。


「カルカリアではその女性と一緒に冒険者してたんだね」

「いやー、すぐ別れてしまっての、まあまた新しい彼女がすぐできたんだが、冒険者のな」


 おやおや、なかなかのプレイボーイだったようだ。


「じいちゃんモテたんだね」

「まあな(ドヤァ」

「……ねぇ、母さんからゼイルディクで農家してたって聞いたけど、そのままカルカリアでやらなかったの?」

「それもよかったが当時の彼女がな、いやもう嫁か、エミーばあちゃんな、それがゼイルディクがいいと言うんで合わせたんじゃよ」

「あーもう結婚してたんだね。でも冒険者を続けることはしなかったの?」

「エミーがランメルトを身ごもったからのう」


 出た、デキ婚。ついにプレイボーイも覚悟を決めたのか。


「それまでの冒険者としての稼ぎで十分暮らせる蓄えはあったしの、どこで何をしようがエミーにいい環境を作ってやりたかった」

「じいちゃん、ばあちゃん、その時何歳?」

「そうさのう、ワシは30歳くらいか、エミーは18歳だったの」


 随分年の差だったんだ。


「母さんもそのくらいで結婚したって、この世界の女の人は早く結婚するんだね」

「この世界? まるで違う世界があるみたいじゃの」

「え(ギクッ、いやー、地域によって違うのかなって」

「違いは無いぞい、少なくともこのサンデベールではの。まあ20歳までに結婚が半分じゃないか、それも結婚というより出産だな。子供を産むと魔力が上がるんだよ、若くして母親になればそれ以降の冒険者稼業も捗るだろう」

「へー、魔力が」


 母になると強くなるのか。


「じいちゃん、農業は初めてだったの? うまくできた?」

「もちろん初めてだったが何とかなった。周りの人のお陰でな」

「周りの助けはありがたいよね」

「除草士や殺菌士もその地域でいたからの」

「え、何? なんかのお仕事?」

「除草士は草を枯らす、殺菌士は野菜の病気を防ぐ、殺虫士は虫を駆除するんじゃ」

「おおお!」


 すげぇ! 農薬いらずじゃないか!


「あとは防除士もいたの、虫や病気を防ぐ結界を張れる珍しいスキル持ちが」

「防除士!」


 もう農薬そのものじゃないか。すげぇなスキルって。


「あとは、肥料士、散水士、耕起士なんかもいた。そういう専門職に任せればワシのすることは苗を育てて、植えて、収穫して、出荷するだけじゃ。もちろん頼めば金はかかるがの」

「へー色んな農業のお仕事があるんだね」


 肥料士は肥料を散布するのか、散水士は、あれだ、浄水士の違うバージョンみたいな感じだな。耕起士って、トラクターか、どうやるんだろう興味ある。


「耕起士って耕すんだよね、どうやるの?」

「どうって、鍬を使うのさ。メルやクラウスみたいにな」

「そうだっけ」

「おー、あそこに見える住人が正に耕している最中だ」


 カスペルは畑を指差した。


 住人が鍬を持って耕している、ほんとだ。あれ? 耕す範囲がおかしいぞ! 鍬を振り下ろした地点から半径1mくらいある! どういうことだ、あれが耕起士の力なのか。たまに畑で見たことはあったけど足元はそうなってたんだ。上から見るとよく分かる。


「凄いね」

「専門にしとるやつはもっと広範囲を一気にできるぞ」

「はー」

「操具スキルは誰でもあるからの。訓練すればあのくらいまでは出来るようになるぞ」

「あ、スキルなんだ、操具かー」


 操具スキル、フリッツに聞いた基礎スキルだ。と言うことは耕起は派生スキルなのか。除草や殺虫、殺菌はどんな基礎スキルが必要なんだろう。


「除草士はどんなスキル?」

「あれは死滅だ」

「死滅!? え、なんか怖い」

「はっは、何を怖がるか、草を枯らす、即ち植物を殺しているのだぞ」

「まー、そうだね」

「除草士はかなりの訓練が必要と聞く。なにせ野菜を枯らさず草だけ枯らすのじゃぞ」

「あー確かに! どうやってるんだろう」


 同じ植物の野菜と雑草をどう選別してスキルを行使してるのか。間違えて野菜を枯らしてはいけないし、雑草は残してはいけないし。うはー、凄いな、除草士。


「殺菌士も殺虫士も死滅スキルだぞ。菌を殺し、虫を殺すんだからな」

「なるほどねー」


 しかし菌の存在を把握してるとは。ファンタジー世界だからといって病気は悪魔の仕業とか神の怒りとか祟りや呪いじゃないのね。人の菌由来の病気も治せるのかな。


 それにしても死滅スキルは凄いな。基礎が死滅で、派生が除草、殺菌、殺虫か。正に歩く農薬だ。


「この村にも何名か常駐しとるの、たまに畑で見かけない住人がおったらそやつだ」

「でも草抜きはするよ? 除草士に頼まないの?」

「除草士に依頼すると高いんだよ。それに当たり外れがあっての、今いる除草士は草が多く残るらしいの」

「あらら、そうなの」

「前の除草士は完璧だった。根こそぎ草を枯らし野菜は影響なし、おまけに種まで枯らすからしばらく生えてこないんだ」

「おおー優秀だ!」


 すげぇ! かっこいいな除草士! 雑草だって種類あるのに全部ピンポイントか。あ、そうか、今の除草士はそのターゲッティングが甘いんだな。まあ作物枯らすよりはいいが。


「防除士もいるの?」

「いるぞ、ただあれが一番高い、効果はあるがな。今の防除士はそこそこの仕事と聞いとる」

「へー、それは結界スキル?」

「そうだ結界だ」


 おおーそうか、基礎スキルが結界で、派生が防除か。病気も虫も防ぐから依頼料が高いのだろう。


「ワシも結界持ちだ」

「え、じーちゃんが!」

「防除は出来んぞ。だが人に虫よけ程度ならお手の物だ、それから日焼け防止もな」

「へーそうなんだ! 凄い!」


 やるなぁカスペル。


「あ、でも、スキルの話は人にしちゃダメだって聞いたよ」

「だからナイショな」

「うん」

「なぜ秘密にするか分かるか?」

「え、何でだろう」


 所有スキルは個人情報だからか。伝えた覚えのない人が自分のスキルを知っているといい気分はしない。実害は何だろう。


「同じ効果の薬も売っている。虫よけ、日焼け止めな」

「うん」

「西区の住人もその薬を買って使っておる。ではワシに同じ効果のスキルがあると分かったらどうだ」

「あ、そうか、薬を買わずにじいちゃんにお願いしに来る」

「それでどうする? 代金を請求するか? それとも近所だからって無料でするのか? 何人も何回も」

「あーどうしよう」


 確かに困るな。


「結界ならまだしも治癒スキルはどうだ。怪我は礼拝堂でお金を払って治してもらうが、近所に治癒持ちがいたら? 厚意で無料とした場合、治り具合に不満があっても文句が言えるか?」

「んーどうしよう」

「ロクなことにならんのだよ。だから知らない方がいい。知ってても知らない振りをするんだよ」

「なるほどーよく分かったよ」


 スキルの行使は、それ即ちお金、そして責任か。


「端から見て分かる分にはいいんだ。除草士が死滅持ってるのはみんな知ってる。ただどのくらいのレベルか、どんな雑草を枯らすのか、そういうのは知らなくていい。仕事すれば力量は分かる」

「まあそうだね」

「ワシらが求めてるのは結果だ。お金を払うに値するかのな」


 とすると農家が選んで依頼するのではなく、除草士が圃場に合わせた措置をするんだな。前世では農薬を自分で選んだが、除草士はそれも含めて仕事なんだ。


 殺菌士は病気の種類はもちろん、発生しやすい圃場環境や気候条件なんかの知識も必要だろう。殺虫士は虫の種類、生体、被害に遭いやすい野菜なども知るべきだ。卵や地中の(さなぎ)も駆除対象だろうか。そこは個人の力量次第か。


 ふーん、農薬関連は専門職に丸投げなんだね。


 あ、そうだ。カスペルにちょっと断りをしとかなきゃ。


「あの、じいちゃん」

「なんだ?」

「釣りって知ってる?」

「ああ知っとるぞ」

「井戸って知ってる?」

「井戸か、分かるぞ」

「若い冒険者同士の恋愛事情って分かる?」

「はは、よーく分かるぞ!」

「ならいいんだ、ありがと!」


 言い逃れにカスペルを使ったのは記憶の限りこれだけだ。


「リオンは面白い子供だの」

「なんでそんなこと聞くか不思議じゃないの?」

「何をいまさら、お前はここ数日こんな調子だぞ」

「え、そうかな、あれー」

「熱を出して寝込んでからだの、何かあったか」

「え(ギクッ」


 鋭い! フワーっとしているようでちゃんと様子を見てたのか。


「まあいい。お前は変わらず大切な孫のリオンだ。ワシはお前と話するのが楽しいぞ」

「うん! 俺もじいちゃんと話するの好きだよ!」

「はっはっは、そうか」


 流石に8歳にしてはやり過ぎた側面もあったか。それでもなお変わらず接してくれるカスペルはいい男だな。


「それでもな、リオン」

「うん」

「何かあるなら話せばいい。協力するぞ」

「……」

「ワシで力不足ならフリッツに話すといい。彼なら正しい答えをくれるだろう」


 フリッツか。確かにそうだな、経験豊富そうだし。


 カスペルは何か気づいたのだろうか、もしかしてフリッツを紹介したのもそれがあってか。と言うことはフリッツもそれを知っている。俺の様子がおかしいことを。


 まあ言ってもいいけどね、転生者だってこと。やはり41歳が8歳は無理がある。宇宙の声も明かして構わないって言ってたし。んー、どうしようか。信じてくれるかなー。


 カンカン! カンカン! カンカン!


 おや、魔物の鐘、遠いな。


「北区だな」

「みたいだね」

「北区の西側の見張り台だろう」

「え、分かるの?」

「じゃないと聞こえないぞ」


 確かに東側の見張り台は中央区よりも遠い。


「東区は以前の応援要請ぐらいの魔物でも自分たちで片付けとるぞ」

「え、凄いね、あそうか」

「20軒が60軒になったからな。それこそ人の数なら拡張前の村全体とほぼ変わらん」

「確かに!」

「北区は拡張で80軒になると聞いている」

「東区より多いんだ」


 へー、凄い、北区だけでもう1つの村みたいなもんだ。


「この開拓村計画は成功と考えられてるらしいな。移住希望者もどんどん増えてるそうだ」

「それは村のみんなの働きの成果だよ!」

「ああそうだ。20年前、各区域10軒ずつから始まった。あの頃の住人が頑張ったから今があるんだ。ワシ含めてな、はっはっは!」

「じいちゃん凄い!」


 ほんとだよ、よく守った。


「ここをワシの人生の終わりに選んでよかったぞ」

「じいちゃん……」


 どういう思いだろう。ここまで村を守って、そしてどんどん人が増えて、その過程を見てきての達成感かな。そして孫子に囲まれて賑やか、食べていけるくらいの稼ぎや蓄えもあるだろうし。死ぬ時も見送る人は多くいる。


 死ぬ時も……俺は前世で1人死んだな。野菜のそばで死ねたなら農家として本望とでも言うのか。ふふっ、俺は自分の力でどこまでできたのだろう。農家の環境は父が用意してくれたもの。俺が一から取り組んだものって何があったか。


「どうしたリオン。表情が優れないな」

「え、ううん、何でもない」

「そうか」

「じいちゃん、ここって森だったんでしょ。魔物もいっぱいいたんでしょ。それを倒したんだよね」

「ああ、そうだ。でもここはちょっとだけな。サガルト村やカルニン村は、ほんとに最初の森に切り込むところから、中央区予定地に騎士団の砦ができるまで見てきた」


 ああ、すごいな。開拓の最前線を走ってきたんだ。


「俺に何が残せるかな」

「……リオンよ。お前は若い。残すことなどワシくらいになって振り返ればいい」

「そうだね、じいちゃん何歳?」

「60だ!」

「思ったより若いね」

「それは老けて見えるってことか?」

「いやーはは」


 カスペル60歳だったのか、70歳中ごろに見える。クラウスやソフィーナも若く見えたから、この世界の人間はそういう傾向と思ったが。ある程度の年齢になると老化が早いのかも。


「魔力が落ちると老け込むのも早くなるんだよ。ワシもここ2~3年魔力の低下が大きくての」

「あーそうだったの。魔力は回復しないの?」

「それは無理だ。そして魔力が無くなったら命も尽きる」

「……そうなんだ」


 なんと、魔力で生命維持をしてるのか。魔法のある世界ならそういうもんなのか。便利だけど失ったら生きていることさえできない。なんとも厳しいなあ。


「さあ、しみったれた話はここまでだ。リオンよ、カトリーナと仲がいいな」

「え、もう、みんなそういう話好きだね」

「はは、フリッツの孫とも仲がいいのだろう?」

「ミーナだね、うん、あれはきっと俺に惚れてる」

「ほう、やるじゃないかリオン! ワシも8歳でそこまでではなかったぞ」

「8歳でどうこうできないよ。それにそんな頃の好きだの何だのちょっと大きくなったらすぐ忘れる」


 あ、マズイな、つい。8歳なのに大きくなってからが分かるはずもない。もういいや。


「まるで8歳じゃない物言いだな」

「……8歳じゃないとしたら?」

「そんなことあるワケない、お前は8歳のお子様だ」

「そうだよ、まだまだものを知らないお子様。だから色々教えてね」

「ああ、もちろんだ」


 話せば話すほどボロが出る。いいんだもう。


 フリッツか、そうだな、彼なら信用できる。カスペルも追々話すか。

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