第128話 斧と鋸
コーネイン商会の工房にて、トランサイトの斧生産に成功する。ミランダは知り合いの建設商会へ試してもらうべく、別件で村へ来ている担当者へ会いに行った。
「次は鋸だ、回復したら挑戦しておくれ」
「はい、フローラさん」
斧の共鳴変化による疲労度は槍や弓と同じくらい。10分、いや5分休めば出来るか。もうトランサイト生産はかなり慣れたものだ。剣に至っては剣技があるから魔力効率が段違い、多分、短時間で多くの本数を生産できるはず。この後試してみよう。
「……商会長はどうするつもりか」
「斧ですか?」
「それもだけど、ほら、前に作った鍬と短剣。どうも伯爵へ報告していない」
「あらら、そうなんですか」
うわ、いいのかな。隠し事はダメなんじゃないか。トランサイトの件では最短の報告が評価されているのに。
「トランサイトの売り方に不満があるんだよ」
「あー、取り扱い商会が多いんですよね」
「そう、あれがどうしても気に入らないみたいで。まあ、剣、槍、弓、杖は伯爵に従うとして、その他は独自で販路を開拓する気だろうよ」
「え、いいんですか」
「ひとまず今日の男爵院議会でどう決着するかだよ、その内容を見て、報告するかを決める腹じゃないか」
ふーむ。ミランダなりに思いがあるのか。ただ伯爵との信頼関係が崩れるのは心配だな。
「こっそり売る事なんて出来ますか」
「信頼できる仲介人を何重にも通せば可能だろうさ。ただ、そこまでする手間を考えたら、素直に報告して各商会に割り振りでいいと思うけどね」
「……ちょっとした仕返しのつもりでしょうか」
「はは、なるほど、考えられるね。発覚する前提で隠して売る気かい」
「はい。それで商会長はごめんなさい、伯爵はじゃあちょっと考えるか、なんて流れもありかと」
ミランダって態度で返すんだよな。微妙な嫌がらせをしてくる。
「あんた、商会長の人柄をよく分かってるね。なるほど、伯爵に折れてもらうよう促すわけか。ところで休憩はもういいかい? 鋸を頼むよ」
「はい!」
ま、中核の職人が手の中にあるんだ。ミランダに圧倒的なアドバンテージがある。いくら伯爵だからって、言いなりになるつもりはないだろう。怒りを買うラインも分かってるはずだし。
それにしてもフローラは俺にそんなこと言っていいのか。8歳の子供だぞ。何より、かなりの機密事項と思うが。この人、この手の話が好きな様子だけど、他にも話されたら大変だ。
「あの、フローラさん。その、こういう話はあんまりしない方がいいんじゃ」
「おや、不要な心配をかけたね。大丈夫、ここだけの話だよ。それに商会長からも言われてるのさ、リオンとよく相談してくれって。あんたは感性が独特だからね、いい意見が引き出せるかもしれないってさ」
「そうでしたか」
ま、フローラは人生経験豊かなようだし。そのくらいは弁えてるか。
「何よりあんたはトランサイトを生み出す貴重な職人だ。自分の作った品がどうなっているのか知る権利はあると思うよ。いや、むしろ、どれだけの影響力があるか把握するべきさ」
「はい」
「疑問に思うなら聞いて、嫌なら拒否すればいい。周りが何を言おうが作れるのはあんたしかいないんだ。そうしないと利用されるだけだよ」
「……分かりました」
フローラ、過去に何かあったのか。
「さあ、おしゃべりはまた後だ。鋸を頼むよ」
「ああ、すみません」
「嫌ならしなくてもいいが」
「いえ、やります。きっと石切り工程が楽になるんですよね。そのお手伝いができるなら、職人としてやりがいを感じます」
「よく言った。意志を持って向き合うのは大事なことだよ」
元よりトランサイト生産は最前線のためだ。
鋸を持つ。のこ身は片刃で80cm、柄は50cmほどか。刃はギザギザじゃなくて一定間隔で切り込みが入っているだけ。何だか前世のダイヤモンドカッターみたいだな。おや、精霊石を取り付ける個所もあるのか、何の目的だろう。
ひとまず剣みたいに構えてみる。うーん、でも剣じゃないよな。
キイイィィン
出来た! もう鉱物がトランサスなら何とでもなる感じ。
「いけそうだね」
「はい」
よーし、共鳴!
キュイイイィィィーーーン
80%、90%、100%
感じは剣に近いかも。ならば一気にいけるか。
ギュイイイィィィーーーン
きた!
「やったね、流石だよ」
ふう、ただ魔力消費は剣より多かった。
「疲労はどうだい」
「槍や弓と変わらないくらいです」
「そうかい」
「あの、これも使うためのスキルがあるのですか」
「操具の派生に切削スキルがある。鋸の他にノミやカンナ、ヤスリを使う時に必要だよ」
「へー、切削ですか」
確かに鋸って削ってるもんな。他の道具を聞くと大工に必須のスキルみたいだね。
「鑑定するよ」
お、どんな特殊だろう。
「トランサイト
成分:トランサイト 100%
切削:150
打撃:30
特殊:魔力共鳴(120%)、範囲拡大(共鳴率×10)
定着:29日21時間
製作:コーネイン商会」
「これも鍬や斧と同じ範囲拡大でしたね」
「道具系はそれで統一されている気がするよ」
「これ、打撃なんですか」
「柄があってその先が鉱物なら何かしら4撃性が付くのさ。それで石切り鋸は、剣の様に切ることも、槍の様に突くことも出来ない、もちろん矢も射れない。ただ殴ろうと思えばまあ出来る、だから打撃さ」
「なるほど」
こりゃ武器としての運用は無理だね。そもそも武器じゃない。
「精霊石は何に使うのですか」
「多分、水だろう。ほら削り粉が出るだろ、あれが巻き上がって吸い込んだりしないように、水で流しながら作業するんだよ」
「へー、考えてますね」
「さあ、休んだら武器の生産も頼むよ、あんまり時間が無いけどね」
「はい」
17時前か。夕方の鐘までに剣なら10本くらい出来るかも。ただ机の上にあるのは5本だね。後は弓にでもするか。
「それにしてもコーネイン商会は何でも作れるんですね」
「職人の多くは道具製作の経験もある。私だって最初から武器職人じゃなかったんだよ」
「へー、そうなんですか」
「それで鍬でも鋸でも商品として見通しが立ったら、新たに部門を設けて専任も雇うだろう」
「武器職人が転向しないんですか」
「リオン、武器ってのは道具の中でも人気があるのさ、給金もいい方だ。だから目指す人も多い」
「あ、なるほど、じゃあ武器職人のままですね」
きっと職人の中でも花形なんだろう。魔物をやっつける道具だもんね。
「あ、そろそろいけます。剣をやりますね」
「頼むよ」
剣を構える。そうだ、どのくらい短く出来るか試してみるか。
……集中して一気に変化だ。
ギュイイイィィィーーーン
「ふー」
「おや、何だかこれまでと違うね」
「段階をすっ飛ばしてみました」
「? そ、そうかい」
はは、できた。強化共鳴を使わず変化共鳴のみで。よく考えたら変化共鳴だけでも共鳴率を上げることはできるからね。ただ最初からいきなり変化を使うと魔力効率が悪い。これは100%までの感覚が初めてだからだ。それも数をこなせば慣れるけど。
よし、じゃあ残りも変化だけでやってみるか。
それから続けて4本の剣をトランサイトへ変えた。
「ふひー、疲れた」
「随分早くなったね」
「慣れましたから」
それもあるが、やはり剣技の存在が大きい。いやー、スキルがあると段違いだぜ。これは早く他の武器種も覚えたいところだ。
「おう、やってるな!」
「メルおっちゃん!」
工房にランメルトが入って来た。クラウスとソフィーナも続く。
「これは職人の皆さん! リオンの伯父のランメルトです、いつもお世話になっています」
「おー、いらっしゃい」
職人への名乗りを済ましてソファに座った。
「ありゃ、これは鋸? おー、石切り用か」
「そうだよ、おっちゃん」
「ふーん、武器じゃないのもやるんだな」
「次は弓をやるよ」
ギュイイイィィィーーーン
ふー、これも変化共鳴だけで出来たけど、辛い。
「ハァハァ……」
「お疲れの様だな」
「そりゃそうだろクラウス、あんな共鳴、俺なら意識を失う」
「あんたたち、視察はどうだったかい」
「まあ、滞りなく。もう明日から測量やらに商会が来るみたいだぜ」
「そうかい、決まったなら早い方がいい」
お、ミランダが入って来た。
「鋸は出来たか」
「はい」
「そうか、流石だな。さて、明日の予定だが、訓練討伐があるため村へ戻ってから夕方の鐘までだ。まあ5本でいい」
「分かりました」
「フローラ、今日の実績は?」
「斧1、鋸1、剣5、弓1です」
「剣5か!」
「ありゃ、この机にある剣、全部トランサイトなのか、凄いなリオンは」
へっへ、どんなもんだい。
「商会長、議会はどうなりました?」
「フローラ、大荒れだ。明日も朝から男爵院の続きとなる。もちろん議題はトランサイト取り扱い商会だ」
「はは、決まるのかね」
「決めねばならん。尤も一部の商会はそれを待たずに販売を開始する、ウチとロンベルク、それからエールリヒ、後はスヴァルツとカロッサだ」
「おや、そうなのかい」
へー、5つか。
「ルーベンスは例の件で外れる可能性が高い。それでガイスラーとユンカースも似たような理由で保留された」
「何したんですか」
「カルカリアとロムステルの騎士団に売買契約を取り付けているのが発覚したからだ。あれは伯爵が領主と直接取引をするため、我々は手を出さぬよう取り決めていたのだが。あの馬鹿共は部隊長やらの騎士貴族と勝手に話をつけたらしい」
「おやまあ、どうせバレるのにね」
「フン、押し通せると思ったのだろう。だがそれを認めればウチや他も動く。そうなれば伯爵の面目が立たん」
あーらら。伯爵も絶好の取引材料として色々考えてたんだろうね。それを崩されたら怒りを買うわ。
「ただガイスラーとユンカースが外れれば、ルーベンス含めて北東部の商会が全滅だ。流石にカルカリアやロムステルへの販路を大きく失ってしまう。まあ、それを見越して外せないだろうと動いたのもある」
「どうなるんですか」
「ラウリーン商会が復帰する可能性が高い」
「あら、カルカリアの商会ですよね」
「はは、向こうからしたら思いがけない吉報だね」
なんだかややこしくなってきたな。
「それでだ、子爵院で最終決定するまで分からんのだが、これがいい機会になるやもしれん」
「おや、もしかしてメルキースの」
「うむ、ラウリーン地区の改名だ」
「ラウリーン、あの40年前のゼイルディク壊滅の時、支援してくれたアレリード子爵か」
「そうだ、クラウス。あの時以来、確かに復興にも尽力し中等学校まで建てた。リオン、お前の姉が通っているラウリーン中等学校がそれだ」
「はい」
当時は助かっただろうな。カルカリアの貴族がそこまでしてくれるのはありがたい。
「だが、それ以来、事あるごとにメルキースで大きな顔をする。それはまあ貴族なら多少はあることだが、あの地名も持ち出して言ってくるのが気にくわんのだ」
「俺も最初はラウリーン商会って聞いた時、メルキースに本店があるのかと思ったぞ」
「うむ、誠に目障りである。メルキース男爵も長きに渡って我慢を強いられているのだ」
うわー、これはかなり溜まってる感じだな。いやしかし、向こうからしたら狙った通りの効果かもしれん。地名に残るって大きいな。
「そこでだ、今回、ラウリーン商会を復帰させるかは子爵院で決まる。8人の子爵のうち、エナンデル、バイエンス、クラウフェルトの3人は伯爵の息子だから賛成、そしてメールディンク、アーレンツ、フローテンの3人は武器商会を持っているからもちろん反対だ、後の2人、ハンメルトは賛成、ミュルデウスは反対の意向を示している」
「となると4対4だな。来月まで審議継続か」
「うむ、このままだとそうなる可能性が高い」
あー、偶数だから同数になるのか。
「おや、商会長が票を買うのかい」
「まあそれに近いな。アーレンツ子爵に協力してもらい賛成を投じてもらうのだ。もちろん対価としてロンベルクへ多めにトランサイトを回す、ああ、ウチのを回すのだぞ。商会間で割り当てを融通するのは認められているからな」
「それをラウリーン商会に告げるのか、コーネイン商会が動いたからそっちが売れるようになったのだと」
「うむ、そしてその見返りに地名変更の手続きをしてもらうのだ」
ええー、トランサイトの大きな利益を犠牲にしてまでか。
ゴーーーーーン
あ、やべ、夕方の鐘だ。
「最後に1本やります」
弓を持つ。
ギュイイイィィィーーーン
ふー、変化共鳴だけでするのは、慣れるのにまだ時間が掛かるな。でも、共鳴を途中で切り替えるよりは、最終的に魔力効率がよくなるはずだ。
「みんな、お疲れさん、西区へ帰ろうか」
クラリーサが工房へ入って来た。
「では解散する、フローラは残れ」
ミランダの声に俺たちは立ち上がり工房を出た。店内にはエマも待っている。
「珍しくミランダが興奮気味だったな」
「そうね、よっぽど嫌な思いをしてたんでしょう」
多分、チャンスを伺ってたんだ。執念を感じたよ。
「あ、ギルドへ寄るのを忘れた」
「まー、いいんじゃないか、訓練討伐は予定通りあるだろう」
「うん、商会長も言ってたからね」
待っててくれたら悪いけど、もう西区に着いちゃうからね。明日の朝に時間が無かったって伝えよう。
「さて、夕食時に西区のみんなに言うことがある」
「そうなの、父さん。叙爵の挨拶は昼前にしたよね」
「まあそれに関することだがな、リオンは座っていればいい」
「分かった」
何だろう。
食堂へ入る。トレーを持って席に着くと、クラウスが前に行った。世話人のリシャルトも隣りに並ぶ。
「みんな、聞いてくれ! クラウス次期領主から告知がある!」
ザワザワ……。
「食事中すまない! だが大事なことだ、聞いてくれ!」
クラウスの言葉に静まり返る。
「俺は昼に伝えた通り、ここコルホルの領主となる! だが、それは約1年後のことだ! 従って現状に対する要望は、これまで通りアーレンツ子爵へ伝えてくれ! 何が不便だの、ここをこうしてくれだの、確かに俺が男爵となったら実現するように努力する! だが、今言われても対応は出来ないんだ!」
あー、そのことか! そういや子爵は言わなかったな。
「更に言うと、じゃあ1年後はこうしてくれというのも勘弁してくれ! とにかく男爵となるまではみんなと同じ平民だ、何も出来ん! この1年は自分の身の回りの準備で精一杯なんだ!」
「おー、分かってるぜ!」
「心配するなよ、クラウス!」
「俺たちの誇りだ! 困らせるようなことはしないさ!」
「……ありがとう、みんな」
クラウスは少し涙ぐんだ。
「よーし、クラウスからは以上だ! 何かあったら今まで通りワシへ言え! 通るかどうかは知らんがな!」
「そこを何とかするのが世話人だろ!」
「リシャルトなら出来る!」
「ええーい、うるさい! おお、それから、夜警の騎士が今日から増えるぞ! ノルデン家とブラード家専属だからお前たちには関係ないがな! 以上で告知は終わりだ! 食事を再開しろ!」
はは、好きなこと言うなー。それで夜警が増えるのか、まあそうなるよね。
「ふー」
「父さん、お疲れ。さっきのこと子爵が言うって聞いたけどね」
「当初はな、だが、俺が直接言った方が伝わるだろ」
「うん、今ので良かったと思うよ」
領主となるんだ。そういうことにも慣れておかないとね。そんで7年後は俺か。
食事を終えて席を立つ。
家へ帰る途中、ミーナが声を掛けてきた。
「リオン、あの、凄いね、貴族になるって」
「うん」
「私なんかじゃ釣り合わないよね、えっと、今まで仲良くしてくれてありがと」
「あ……いや」
ど、どうしよう。
「ミーナ、これまで通り、リオンを宜しくな」
「えっ」
「そうよ、大事なお友達に変わりはないわ、ね、リオン」
「あー、うん、そうだよ、ミーナ」
「……う、うん、グスッ、ま、またお人形、見せてあげるね」
「服を編んでたよね、楽しみにしておくよ」
「うん!」
ミーナは嬉しそうに駆けていった。
まだ俺たちは平民だ。仲良くしたって何も問題ない。でも仲良くなればなるほど、ミーナの思いが募るほど、将来の身分の差が辛くなるのではないだろうか。だからってもう遊ばないのは変だよね。うん、これまで通りでいい。
風呂を済まして居間に座る。
「ところでもう何件か貴族やその関係者が俺を訪ねて村に来たらしい」
「あ、そっか、議会で告知されたからね」
そりゃトランサイト男爵だもんな、早くから関係を持とうと誰しも考えるだろう。確かこの件はメルキース男爵やアーレンツ子爵が対応するとミランダが言っていたな。
「まとめてエスメラルダへ来させて、全て子爵が相手をしてくれたらしいぞ。はるばるやってきた有力者を無下には出来ないからな」
「それは手間をかけちゃったね」
「まあミランダの話では、そういうことに慣れているから気にするなってさ、明日はメルキース男爵が来てくれる予定ではあるが、工房で聞いた通り議会の動向もある、その場合はミランダが対応するだろう」
「うーん、色々と騒がしくなるね」
「はは、仕方ないさ」
にしても子爵には頼ってばかりで申し訳ないな。それで子爵院か。ゼイルディクには8人だけの重要な議会、その1人がアーレンツ子爵なんだ。やっぱりあの人、権力も大きいんだな。伯爵が後ろ盾とは言え、身近に協力してくれる子爵がいるのはありがたいね。
あの日、サラマンダーを倒してよかった。アーレンツに大きな被害が出なくてホント良かったよ。
「リオン、明日だけど、朝、弓の練習してみない?」
「あ、えーと、出来るかな」
「シンクルニウムの弓はミランダから預かったわ、訓練用の矢もあるわよ。流石に訓練討伐で直ぐには使えないでしょうけど」
「そうだね、明日だもんね。うん、分かった、母さんお願い」
「場所は西区の南よ」
「あー、そうだったね」
そう、そんな訓練場があるの知らなかったや。ちょっと楽しみだな。
「おお、忘れないうちに言っておくが、ウチとブラード家、それからレーンデルス家は見張り当番から除外となった。その日は代わりに騎士が上がってくれるぞ」
「へー、先生もなんだ」
「後は料理の日が撤廃される。その分、料理人を増員して、交代で休みをとるようにするってさ」
「あら、無くなっちゃうの。厨房入るのちょっと楽しかったんだけどね」
「まあ仕方ない。俺たちも食べる料理だ、色々と事情があるのさ」
そっか、毒を盛る、なんて無いとは思うけど、可能性はゼロではないしね。
「よーし、寝るか! 今日はかなり気疲れしたぞ!」
「ふふ、大役だったわね」
いやクラウス頑張った。ゆっくり休むといいよ。
ベッドに入って照明を消す。
明日以降、会う人会う人から叙爵の話題が出るだろう。だからって接し方を変えられてもやりにくい。5班ではカルロスとパメラか。ただでさえクラウディアが男爵家令嬢で気を使っているのに、俺が加わって申し訳ないな。
ま、これまで通りをお願いしよう。そう、同じパーティで仲間なんだ。




