女に二言はない
「さっ!そろそろお昼休みも終わるし帰ろっか!」
私史上最もハラハラした昼休みの予鈴が鳴り、授業が始まるまで後5分にまで差し掛かっている。
だが、私は重い腰を上げれずにいる。
理由は明白。この女子の考えが読めない。
いったい何考えてるんだ?
私と友達になってなんのメリットがあるのだろうか?私リアルではペッパー君より話さんぞ。
「う、うん。戻ろう」
「硬いな〜もう。リラックスしてよリラックス。さっきの画面みてニヤニヤしてたくらいの緩んだ顔が見たいのに」
「ぐふぅ!そ、そこまで見てたの!?そこまで見てたのに、ニヤニヤしてる私をしばらく眺めてたなんて、悪趣味!変態!陽キャビッチ!」
思わず口から罵詈雑言が溢れでる。
それはもう、不安な気持ちに後押しされたかのように出るわ、出る。
「へ、へぇ〜。みゃーちゃんは私の事陽キャビッチだって思ってたんだァ〜?それはいい事聞いたなぁ」
青筋を浮かべていらっしゃる陽キャビッ、千夜。
あかん、、見たらわかる怒ってる奴や。
「あの〜今のはその言葉の綾というか、、そのごめんなさい」
「別に怒ってないよ〜?ふふふ!でも、みゃーちゃんは〜ずいぶん偏見さんだな〜って思ってね。・・・放課後空いてる?」
「脈絡、、空いてないと言ったら?」
顔はニコニコしてるけど絶対怒ってるやつ。だって目が笑ってないもん。
「ふふ!」
「空いてます!」
「そっか!ならそのまま空けといてね!」
そのまま千夜さんに手を引かれ教室に向かう私。気分はドナドナである。あぁ今日は一段と秒針の進みが早い。
刻一刻とライフリミットが近づく。
そして、無常にも時は過ぎ、放課後になってしまった。
「さっ!帰ろっか!」
「うん」
未だに詳細を知らない私はおっかなびっくり彼女について行く。
「ど、どこいくの?」
「う〜ん、、ナイショ♪」
・・・変な場所じゃないよね?
「さっ!着いたよ〜」
店内から漏れでる爆音と煌びやかな光。
それはーー紛うことなきゲームセンターだった。
「ゲーセン?」
「そっ!ここならみゃーちゃんも楽しめるかと思って!来たことあった?」
「ううん、、ないけど」
興味はあるけど、人は多いし、大きな音で頭がガンガンするから訪れる機会もなかったりする。それなら家で1人ゲームしてた方が建設的だし。
「そっか!ならまずはクレーンゲームしよ!今日は何取っちゃおっかなー!」
「三家さんはよく来るの?」
「千夜!」
「ち、千夜、、うぅ。やっぱりいきなりの呼び捨ては無理だよ!せめてさん付けにして」
「むぅーまぁ今はそれで我慢するよ」
不貞腐れたように頬を膨らませる千夜さん。
いきなり呼び捨てはハードル高いてぇ。
「ほっ」
「ほらほら!みゃーちゃんも1回やってみようよ!」
「う、うん」
千夜さんは近くの機会にお金を入れて「やってみ?」と言わんがばかりに差し出す。何気に100円出してくれてることに優しさを感じる。
「あ、あれ?移動ボタンがない。千夜さんこれどうやって移動するんですか?」
「えぇー本当に未経験なんだね。これはこのレバーで移動するんだよ」
千夜さんがレバーをガチャガチャと動かすと連動したようにアームも動き回った。というか、、
「なんで動かしちゃったの!?もったいない!」
「これ時間制だから何回でも動かせるよ?」
あっそうですか。
なんか1人で焦って恥ずかしい。
その後狙いを定めて見たものの、アームからぬいぐるみは零れ落ち獲得とはならなかった。
てか、アーム弱すぎ。
あれ絶対取らせる気ないだろ。途中でアーム開いた気がするし。
「・・・・・・」
「ま、まぁクレーンゲームはこんなもんだよ」
「不景気って怖い」
「ゲーセンで不景気を感じるとはねー。気を取り直して違うやつで遊ぼ!」
その後は、カーレース、ホッケー、シューティングなど様々なゲームで遊んだ。
「いやー遊んだ遊んだ!」
「・・・つかれた」
「にゃはは!ごめんね。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃった」
「いや、、別にいいけど」
今日は本当に色んな事があり過ぎて疲れた。
けど、、まぁ悪くはなかったかも、、とは思う。
UFOキャッチャーは全然取れないし、ホッケーはパーフェクト負けしたし、ゲーセンは相変わらずうるさい。
でも、、こんな風に誰かと放課後にクタクタになるまで遊んだ事がない私にとっては新鮮で、、
「楽しかった?」
「・・・うん」
素直に楽しいと思える物だった。
「そっか!なら連れてきて良かったよ」
「でも、、今日はなんでゲーセンに連れてきてくれたの?」
ここに来るまでの不安な気持ちはもうないけど、それでも気にはなる。
「うーん、、そんな深い理由はないんだけど、みゃーちゃんと仲良くなりたかったから?」
「だから、、その、、理由が知りたい」
関わりなんて隣の席な事くらいしかない。
なのになんでなんだろうって思う。こんな事をいちいち気になるのがコミュ障たる所以なんだろうなぁ。
「初めてみゃーちゃんを見た時、私なんて綺麗な人なんだろうって思ったの。モデルさんかなって思ってたくらいなんだよ?」
「・・・むふ」
自分の容姿を褒められるのは嫌いじゃない。私の唯一にして無二のチャームポイントだからな。
ピロリーン。美夜の好感度が5上がった。
「それから何度か話しかけようとしたんだけど、みゃーちゃん話しかけて欲しくないオーラがすごくて、、」
「うっ、、」
心当たりしかない。
確かに会話デッキが無さすぎて、話しかけて欲しくないなーとかは思ってたけど、それが周りに伝わるほどとは。そりゃボッチになるわけだよ。
「そしたらさ、、今日の朝はそのオーラを感じなかったから勇気だして声掛けちゃった!そしたら、、ふふ!思ってたより可愛いくて、からかいがいのある子でびっくり」
「からかうのはやめて欲しいんだけど、、」
「えぇーみゃーちゃんMっぽいし、口ではそう言っても嫌いじゃないんでしょ?」
千夜さんは身をぐっと寄せて、耳元で甘ったるい声で囁く。
「ひゃぅ!!耳は、耳は弱いから止めてぇ!」
ゾクゾクとした感覚が背筋に走り、体全体から力が抜ける。即堕ち2コマ状態な私。
敏感すぎんよぉこの身体。
体の芯からポーっと熱くなって蕩けさせられている様な感覚に陥る。
「あぁん!可愛い!もっといじめたくなっちゃう!」
「だ、だかりゃ!いじ、めっないで!!」
その後千夜による耳責めは5分ほど続いた。
その頃には私は腰砕けになり、それはそれはもうお見せできない顔になりました。ぐすん。もうお嫁に行けない、、、。
「ごめんって!やり過ぎたよ。だから機嫌直して!ねっ?」
「・・・つーん。千夜さんはいい人かと思ってたけど勘違いだった。ただのいじめっ子。だから、知らない」
あれだけ私を辱めておいて簡単に宥められるとは思わないことだ。私の心は野良猫並に気難しいのだ。
「そんな事言わないでー!今度デザートご馳走様してあげるから!」
「・・・そんな物で釣ろうなんて大間違い」
「パフェ頼んでいいから!」
「・・・」
「ジャンボサイズのやつ!」
「・・・・・・・・・トッピング」
「ん?」
「トッピングはしていいの?」
「もちろん!なんでも付けていいよ!」
「・・・むふふ。なら仕方ないから許してあげる」
そこまで誠意を見せられたら仕方にゃい。じゅるり。
これは決してものに釣られた訳じゃない。あくまで取引だから!勘違いしないように。
「ちょろかわ」
「・・・?」
「なーんでも!さっ!帰ろ!」
「うん」
こうして私の長い一日が終わりを告げた。