第四話 【始まりは終わりとともに・・・(無職は次の【クラス】までのつなぎ)】
やっと導入終わり。
会社のそばにダンジョンゲートが現れ6年たった。その門を見ていた、ほぼ毎日見ていた。つまらない人生のつまらない会社通いの中で見ていたんだ。見ていただけった。そんな会社も先月店仕舞いとなった。愛着もなかった、惰性で生きてきた中ただそこに居たというだけだ。次の会社の面接を受ける?こんな中途半端な年齢で?誰がいる、こんな草臥れた中年。俺が面接官なら書類選考で真っ先に落とす、そんな年齢だ。年齢不問なんて間口を広げてより多く検索させるだけの手段だ。元々妻子も居ない柵となる会社も無くなった。万が一別の会社に入れても、また、ただ生きる為の生活になる。
なら、人生最初で最後の冒険をしようじゃないかと思ってしまった。それを選んだ事に後悔はしないんだと。その先が崖だったとしても・・・おいおい何十年ぶりの中二病だ、自分で自分を嗤ってしまう、救いがない。
つい朝9時に到着するように家を出てしまった、習慣とは恐ろしい。目的地はダンジョンゲート近くにある「ダンジョンへ行こう出張所」だ。
この「ダンジョンへ行こう出張所」はネットサイトの「ダンジョンへ行こう」が収益多角化の為に作った実店舗となる。
ここでは10階層にある職業斡旋所の石板へのツアーもしている。6年経ってある程度落ち着いた今、金曜日の予約でも次の週のツアーに参加できるのはありがたい。10時からの2時間講習、昼食休憩をはさんで13時からダンジョンに入る。10階層まで片道約2時間、石板に触って戻って18時着が目標。途中ガイドとはぐれたらガチで死ぬ弾丸ツアーとなっている。
そして【クラス】の習得、検査は3日後、別の大ダンジョンとなる。ここまでがツアー料金に含まれる。
受付を行い講習部屋に入る・・・誰もいない、踊ろうか、やっぱ視線もあるしやめとこう。
貰ったテキストを眺める、ネットとの齟齬は無し、ネットサイトを熟読したから読む必要はないだろうが、何とはなしに見てしまうがすぐ飽きた、ネットニュースでも見るか。
・・・また裸戦士捕まったのか。人生に疲れ切った俺だがこの【クラス】だけは遠慮したい。見なくていい世界もあるはずだ。
ちみっこい講師が入ってきて受講が始った、受講者俺だけかよ。おい保険記入と[何があっても自己責任]の記入だけでテキスト講習終わったぞ。貸出防具を付け武器を渡される・・・刃はつぶしてる安全だな・・・なわけあるか!普通に当たったら死ぬわ。講師に対して打ち掛かるとか頭大丈夫か?
「頭大丈夫とか酷いですね~」こう見えてもベテランの探索者なのです。とどや顔をするちみっこ講師。こんな中年に対してもあざと可愛いをしてくるとは、遠慮はいらねえな。
結構本気で剣を振る、筋トレ趣味を舐めるなよ、居ない、振った瞬間目の前から居なくなっていた。マジかよと思って今いる場所・・・後ろに剣を薙ぐ。
昔から漫然と相手がどこにいるかは分かる方だった。FPSは得意だし〇ン勝だって出来る、B〇1942は戦車に飛行機にと結構やんちゃしてた、あれ、ゲームの中だとこの力関係ないよね?、実生活だと小学校のドッチボールの時が人生最高峰とか泣けるけど。・・・いつも最後まで残ってたぜ。
衝撃が手に伝わる、なれない痛みに思わず剣を落としてしまう。俺の剣を受け止めびっくりした顔をしたちみっこ講師を見てちょっと笑みがこぼれるしまう。ちみっこ講師が失礼な事を言ったのですぐ不機嫌な顔になったが。
「【無職】ですよね?」
「そうだよ!」
ここから始まる物語