第十一話 【見せてやろう、魔導機甲士の戦い方というものをなあ】
森を駆け抜け飛び出す。機体が空を舞う。
敵の位置は把握済み、タイミングは合っているはず。
駄目なら途中で修正だ、どうやって?根性だよ!・・・子供の時以来使ってないけどな。
「間に合ったみたいで何よりだ。」
通信を一方的に飛ばしながら、SOS発信者に攻撃を加えようとしている奴に、ドンピシャなタイミングで突っ込む。
ふはは残念だったな、俺が来たからには殺らせはせん、殺らせんはせんぞー。
突っ込もうとしている相手は20m級コブラマンか。
数は3体。大きさと数は知っていたが種族確認はNOW。
おかしい、いかに通常個体より大きいとはいえ、コブラマンはそこまで強力な種族じゃない。
毒が効かない機甲士なら、パーティーメンバーを抱えながらとはいえ何とか凌げる筈。
8m級に成りたてか?いやそんな動きじゃなかった、歴戦だろうあの動きは。
3体相手に絶妙な間合いを取っていた、俺にはまだ出来ない。
おまけにパーティーメンバーがほとんど使い物にならないとか、散布毒か?それにしちゃ動いてる。
疑念が芽生えるがポイ捨て。後で問い詰める。今は目の前の敵に集中。この間僅か1秒の滞空時間。
食らいやがれ俺のサブウェポン、頭の角アタック。
突っ込んだ速度か、俺の機体の硬さが原因か、いとも容易く一体のコブラマンの頭を粉砕する。
とはいえ20m級に当たったことで突進の勢いが無くなった。・・・いつか貫通してみてえなあ、アニメみたいに。
このままだと倒れる敵に巻き込まれてつぶれそうなので、相手の肩を蹴りつけ反動で地面に着地、ヒーローの到着なんだからかっこよくないとな。
無駄にいきっているポーズ、シャキーン。
ふーようやく一息付けたぜ。
ジェットコースターより危険な乗り物って乗ったことなかったしな。
今の機動が適正か保証内かどうかはわからないが、しばらく勘弁だ、負担が大きすぎる。
「よう、御呼ばれしたんだけど、状況を教えてくんないかい。」SOS発信者にむけて通信。
敵はいきなりの出来事で固まっている?おいおいそんなんこの森じゃ生きてけないだろう。
とはいえ好都合なので今回は許してやる。
砲撃したいのを我慢しじりじり後退・・・だってかわされるし。
くそカッコいい機体と合流、俺も2脚騎士タイプが良かったよ。右腕がないのが残念であるが。
「特殊個体の能力か、群体としての能力かわからないが、奴らは復活する。」油断するなと返信がくる。
「はっ?」思わず素で返してしまう。
律儀に説明がくる。最初は30m級3体だったらしい、倒して倒して25m、さらに倒して20m←今ここ。
ある程度倒すと全個体が縮むらしい。
また同時に3匹殺しても、燃やしても復活したと。
何という不思議生物。
そりゃ機甲士以外のパーティーメンバーは力尽きるわ。っていうか3匹同時に殺しきるとか、普通にやばいメンバーじゃん。この敵とは相性が悪かっただけだな。
「クッソめんどくさそう」復活系とか機甲士でも苦戦するわー、納得ー。
「噂の魔導機甲士だろ、4m級とみるが機体性能は?」戦力換算できるのか尋ねられる。
「おいおい見てたろ?前は任せて後方支援頼む」、そのバックウェポンは飾りじゃないんだろう?
俺の答えに、騎士型機甲士が「頼む、支援は任せろ。」短い返信。
出来る男は違うな、言葉一つに安心感が伴う。
うちのリーダーもそうなんだけどなー。クラスさんの見た目の無慈悲さよ。
会話が終わるのを見計らっていたわけではないだろうが、頭をつぶした奴が起き上がる。
まじで治ってるし、ここから本番かね。
だが知っているかお前ら、俺の機体も結構しぶといんだぜ。オークに嬲られた俺が教えてやるよ。
・・・
・・
・
「だりゃああああああああ」、何か知らないけど現在ハイテンション。無駄に声が出ちゃうの。
コブラマンに砲弾が炸裂する。普通に撃つとかわされるから、密着ショット。上半身と下半身がお別れする。お別れ会の最中あいつらの動きはなぜか止まる。謎仕様だが一息付ける貴重な時間だ。
あー密着ショットとか字面だとドキドキなのに、ああ【研究者】さんとの密着ショットなら大歓迎なのに。
いかん集中力がだいぶ落ちている、戦闘以外の事も考えるようになってきた。危険信号だ。
「魔導機甲士一旦代われ、2時間前線だぞ」騎士型機甲士さんのお言葉。
「ノーセンキュー」弾無し、片腕無しでどう前線維持するっての。バックウェポンの弾切れが痛いね。
俺の機体はMP回復力もすごいのか、弾切れが一切ないのが強みだ、すげえよ【魔導機甲士】
機体的にはまだまだ最前線で戦える。
牽制と時たまの補助戦闘でいいよと伝えて再度突入。
相手は既に10mだ。15mから12M挟むとかサギ野郎に慈悲をくれてやるわけいかねー。
こっちは残りの脚はまだ5本ある・・・さっき復活の妨げになるかと体に埋め込んだ、無駄だったが。
HPも【機体修復】で回復が上回ってる、「負ける要素はない」
あと少しだろ、そうであってくれと自分に言い聞かせる。
地獄見せてやんよー。
・・・
・・
・
「まじかー」あっけにとられる俺の声が森に響く。誰だよ負ける要素はないとか言っちゃった奴。
8m、6m級と成り下がった敵を蹂躙し、暴力とは何かを教えてやったら逆切れしやがった。
「合体して数は減ったが30m級と」なんなんこいつ。
「こちらが巻き込んだ、俺が囮になる」とか言っちゃうイケメン騎士型機甲士。
もうすでに盾で殴るしかできない機甲士が何言ってやがる。
あのサイズになられると殴ってもほとんど効かない。
おまけに俺だけ逃げるとか、先に逃がしたパーティメンバーらに、後から何言われるか怖いんですが。
だもんで却下だな。
こっちは砲撃当たれば殺せるし、近接砲撃が有効なのは何回も試してる。うむ俺しかねえな。
「引っ込んでろ、見てろよジャイアントキリングのお手本」俺よりはるかなベテランに向かって、ルーキーたる俺の言葉である。いきりすぎい。長時間戦闘で頭が沸騰しちゃってるのー。
幸い相手のヘイトは俺固定だ。そりゃ小さくなってからやらかしたからな、お前ボールなって。HAHAHA。
コブラマン(巨大)の蛇体がとぐろを巻くように縮められる、そのモーションは何度も見た、飛び掛かる前兆だ。ここから抱き着きと、噛みつきの2択。
サイズが大きくなってもやる事変わんねえのな、俺ならそのサイズだと手を振るだけで十分と判断するけど。
まあ、パターンが一緒だからこそ嵌めれる。飛び掛かりからそのモーションは噛みつきだろ。
何十回と見た、体験した、もう覚えた、それはもう既知だ。
対処方は構築してある。あとは攻略。
攻略方法、手段の構築は俺自身の事。何十回と撃って外して気づいた。なんで弾がでかくなるのか、弾速が遅いのか。・・・なんで弾がちょっと曲がったのか。
弾速が遅いのは縛りだ、制約だ、これはほぼ確定だろう。
裸系統が防具を装備できない代わりに、素で装備品以上の防御力を持つ力が与えられるように。
何らのステータスをマイナスにし、別のステータスにそれ以上のプラス効果を発揮させる。
まるで、ゲームのパラメーターのような、けどゲームと違って自分たちで選べない【クラス】【スキル】の縛り、制約。
厄介なもの、向き合わなくてはいけないもの。
俺の【魔導砲】の縛りは弾速、これは遠・中距離戦において致命的縛りだろう。
距離が開くとまずかわされる。砲撃が近接でしか発揮しないとか意味が分からない。
この極めて大きなデメリットを打ち消す効果は何がある、ちょっと曲がるだけ?
弱い、弾速の犠牲の対価としてあまりに弱い。
弾がでかい、威力がある?、弾速が速ければ威力は普通に上がるし、弾が大きくなろうがそもそも当たらない、これも釣り合わない。
俺は【魔導機甲士】だ。何を冠するクラスだ。「魔導」だ。
スキルはなんだ、【魔導砲】、こちらも「魔導」を含んでいる。
「魔導」士のクラスはすでに居る、真っ先に調べた。魔法使いとはシステムが違うらしい。
魔法使いは魔法スキルにMPを注ぎ込み投射し発現する。よくわからん。ぶっ放すって感覚派魔法使いが言っていた。
魔導士はどう言ってた?MPを用いて異界を導きスキルで顕現させる。こっちもわからん。呼び寄せる感じとか感覚派エセインテリ魔導士が言っていた。
俺の弾は物理的なものか?違うよな。対価はすでにMPで支払っている。デメリットに見合わない。
撃った後ただでかくなるとか、対価が合わない、これも違う。感覚的にはこれは魔法だ。
曲がったのはなんだ、俺の意思が干渉したよな、ここが鍵だ。
俺のスキルは【魔導砲】だ、砲弾形成は機甲士にも備わっている機能だから、弾自体あまり関係ない筈。
人間サイズの魔導士が通常弾として、俺のは砲撃だ、名前からして威力的には上位互換だ。
普通に撃って機甲士みたいに弾が出たから、ずっとそう認識してただけだ。
魔導士として考えるなら・・・
あとは認識を組み替えろ、意識しろ、自分のスキルだろ、理解しろ。
勝ち筋が未来えた。ああ、もうこいつは要らない。
飛び掛かり噛みつかんとするコブラマンの口目がけて砲撃。・・・弾が遅い
コブラマンが飛び掛かりを辞めて回避動作、射線から逃れる。
弾がでかくなる、そうじゃない、当たりに行け、当たるように形を、容を。
弾が変形する。俺が望むように、意思が乗るように、殺意が形となるように。
弾がコブラマンに向かう、もう球の形状じゃない。
水平翼が、垂直翼が付いている。敵に突き刺さる形に変わっている。殺す形になっている。
翼の向きが、大きさがさらに変化、変わる弾道、直撃コース。
とっさに両手をかざすコブラマン、手が腕ごとはじけ飛ぶ。
殺意が乗った、お前を殺すぞと意思を乗せ、明らかに威力が上がった【魔導砲】、それを防いだな。
それも観た。
爆発の衝撃を突っ切る、掴まれる恐れはなくなった。俺を阻むものはない。
森の中で行った機動を再現、蛇身に脚を突き刺し回転、頭目がけて飛び上がる。
お前らの形状じゃ、あごの下は見えないだろ、でかすぎて見えないだろ!
前脚2脚を胸に突き刺し固定、何十回と差し上げたつまらないものですがお好きでしょう?もう一回どうぞ。
再度【魔導砲】
胸から上が消し飛ぶ。反動で俺も飛ぶが華麗に着地、シュタッ、スパ〇ダーマ
再生が始まる前に再度砲撃を加える、今まで死体撃ちは無駄弾だったがこれは違う。
殺しつくす殺意満々の弾だ、受け取れや【魔導機甲士】たる真の【スキル】
【魔導砲】渦球嵐針
発射された弾の前方に魔法陣が展開。魔方陣に突き刺さる先端から弾が消失する。と同時に魔法陣が巨大化、その魔方陣から針が数えきれないほど射出され突き刺さる。
魔方陣が揺らめいて消える。だがの程度では俺の殺意は収まらない。
針が蠢きコブラマンを中心に渦巻く球を形成する。
あの中は針地獄、込めた魔力は顕現延長ましまし、復活モンスターなんぞ死に続けろ。
どうだ地獄を用意してやったぞ。
お前が死に尽くすまで、滅ぶ瞬間までちゃんと観といてやる。
・・・
・・
・
コブラマンのドロップアイテムが、機体の謎空間に収納された。
「倒せましたなー」騎士型機甲士さんに連絡
「いまだ持って信じられん」
「あれ、ドロップ入りませんでした?」ダメージ稼ぎすぎたか?ドロップは貢献度によって変わるからなー、ほんとゲームっぽい。
「いや、魔導機甲士の戦い方の事だ」ドロップは手に入ったと。
なぜだらけだと。後ろからの攻撃をかわし続けたり、3体に囲まれながらもよけ続けたり。間合いの取り方は素人っぽいのに、回避能力が異常だとか。砲撃の威力がおかしいとか。最後のは一体なんだとか。
いや、そういう事は今言うべきではないな、「とにかく助かった。改めて礼を言わせてくれ」と。
やだ何この騎士イケメン、ここ最近言い合い多かったからうるっときちゃうの。でも駄目俺には【研究者】さんがすでにいるのー。
・・・
・・
・
「魔ッ機ー1、合流せよ」とのリーダーからの通信、オッケーと返信
んじゃ、みんなと合流しますか。
「周辺の敵排除ありがとうございます。」うむ、元社会人としてちゃんとお礼の言葉位差し上げねば。
かなり奮闘していたのは感知していた。邪魔が入らないようしてくれるとかほんとアリガてえ。
「問題ない、仕事の内だ。だが、他のメンバーにも後で言ってやってくれ」と、さすがリーダー、さすリー。どうして水着引いちゃったかなあ、世の中無情である。
みんなと合流を果たす。お礼を言ったり、よくやったな、とかちょっとしたお祭り状態、こういうのも良いな。
ゴブリンの殲滅やオーク蹂躙の時はなかった・・・なんで?
【空響の旋律】ちゃんによく撮れた?かっこ良かった?と聞くと異常者と言って蹴られた。解せぬ。
帰りは騎士型機甲士さん一行と一緒に帰ることに決まった。
互いの負担も減って、Win-Winだな。互いに疲労困憊だし、手札は早々ないし、さすリーの判断である。
そんな中さすリーから聞かれた。「レベルは上がったかね?」と
そういや機甲士のレベルアップってどうやるん?と騎士型機甲士さんに聞く。フムフム一旦機体を解除して再度呼ぶと。ああ先にステータスは確認しておけ?。そんで上がっていれば機体に変化がある。武装とかの選択肢は無しと。
おk。「ステータスオープン」やりい上がってる。周りからおめのお言葉。よしっ、この日を休日とする。
んじゃ一旦解除
お出でませー、召喚いあいあ
それは圧倒的な・・・略
「砲塔の両脇に〇がついてる、〇に銃身ありと・・・補助兵装、同軸機銃か?・・・」
ぷっ、とか、クスクス笑い、ひーとか激しく転げまわっている【空響の旋律】がいる。
誰も俺とは視線を合わせない。
「なんぞこれーーー」
ダンジョンに俺の声が響き渡った。
お約束