第八話 【オークの群れに転がされた記憶は遠くに仕舞っておいて次】
高台から眼下を覗く、俺の感知能力に引っかかった集団に機体のカメラを向け・・・どこに目があるんだこれ。とにかく見えてはいるから後回し、考察は【研究者】さんにお任せするの。俺の全部見てください、なんちゃってなんちゃってー。
気を取り直して観察、木々の隙間若干開けた場所を見る。
きゅっとズームがかかる。・・・3m級3体、武器あり防具無し。
ポチっとなでマーキング、マップにマーカーが付く便利機能万歳。
脅威度判定は雑魚、ただし8m級機甲士基準。普通の戦闘職だと上級職パーティーじゃないと全滅コースだ。
「こちら魔ッ機ー1、2000m先にオーガ3体確認、これより移動、近接戦闘に移る。」
何が起こるかわからないのがダンジョンだ。その為の報告、戦闘前の儀式だ。
精神が戦闘態勢に入り、血が、魂動が脈打つのが感じられる。
「機甲士戦闘観測隊、第19072班了解、魔ッ機ー1 グッドラーァック」
急速に戦意が萎える。何だよッ19072とか!ふざけるにも程がある。
「魔ッ機ー1」とか名前つけるからなー合わせたんだよと通信・・・何処をどう合わせたらそうなる。精神が病んでるとしか思えない。お互い通信でぐちぐち口撃死合いながらも移動は続けている。
高台からの斜面を下り、地上じゃありえないような200m級の巨木が生い茂る森を駆け抜ける。
魔導機甲士の6脚は、その巨大な木の根を、馬鹿げた大きさの葉で出来た腐葉土を、機体の重みを感じさせないかのように駆け抜ける。
形状はともかく性能はやっぱり仮にも機甲士と名称に入るだけはある。段違いすぎる・・・移動力は。
「あと10秒、通信OFF」「了解」
この階層に来るまでにも何十回と交わされた会話、おふざけの時間が終わりお仕事の時間になる。
再度戦意高揚、オーガを再び視界に納める。
音でこっちの接近を察知してたのか、戦闘態勢に入っている。
まあ、そうじゃなければこの森では生きていけない、だが判断ミスだ散開が正解。
俺に会ったら死ぬぜええ。
エンゲージ、紳士はまず挨拶から。
「ヘロー」の外部音声をカットして、砲撃
砲声が巨大な森に響き渡った。・・・避けるなよ。
「ふっ又勝ってしまった、敗北は知りたくない。」ダンジョンでの敗北=死だから切実。
「HP半減とかテラワロス」
ダマラッシャイ勝てば良いなのだ。オーガ3体との死闘を終えた後のこの仕打ちである。
「手が欲しい、近接武器が欲しい」切実なこの思い、伝わってインテリジェントデザイン様!
「あるじゃんUのやつ」
ええいダマレ、殴れもしない届かないものなんて手じゃない!短すぎるんじゃあ!
脚の方がはるか遠くに届く、現時点のメインウェポンやし。
360度ぐるぐる動くしな。
ちなセカンドウェポンは頭の角、今回のMVP。
はぁ、ため息を一つ、ドロップした素材を機体内の不思議空間に回収し真面目に報告する。
「戻ったら憶えとけやぁ」
「返り討ちー」
ゲラゲラと【空響の旋律】の下品な笑い声が聞こえる。
【研究者】さんみたいな知性と気品を身に着けて欲しい。
あぁ、今日もレベルは上がらない。
【魔導機甲士】
【レベル】 ・・・1
【筋力】 ・・・E(4m級平均)
【体力】 ・・・E(4m級平均)
【敏捷力】・・・E(4m級平均)
【器用】 ・・・G(4m級平均)
【知力】 ・・・E(魔法上級職並み)
【精神力】・・・文字化け中
【スキル】
【魔導砲】・・・機体下部の砲塔から射出される砲弾、砲塔の口径より砲弾のほうがはるかに大きい。着弾地点に向けてどんどん大きくなる謎仕様。弾速は遅い。当たればワンチャン、個人戦で当たった例なし。
【アビリティ】
【機体修復】・・・通常の機甲士は、機体の損傷から自動回復まで1月ほどかかる。この能力持ちの機甲士は数日、この子は数時間で回復。
ちょっとずつ、気ままに投稿