表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

ヒーロー、相棒を取り戻しに行く!

とりあえずここまで連続投稿です

「まいったな……はぁ」


俺は青空を見上げながら、そう呟く。

本当に、まいった。


確かに、あの禿げた中年の盗賊は時折俺が聞き覚えのない単語を話していた。“魔力” “魔具” といった言葉。

そして現代人とは思えない格好。


それにさっき村長に聞かされたこの国の名前。


マギーズ帝国? 何処だそれ。三大国家? 聞いたことがない。そして極め付けには……。


「魔法、か」


魔法という不可思議でありえない現象。……田舎の人間は手から火出せるのか?と疑ったが、そんなわけがない。ただの現実逃避だ。……あの後メイリも手から水を出していたので、俺は動揺してこうして外にいる。


そう、認めるしかない。

此処が、今いるこの世界が――別の世界であるという事を。


「はぁ……」


この日だけで俺のため息は過去最多になるだろう。

そう確信を持って言えるだろう。





「えっ!? ツルギさんの相棒さんが森の中にまだいるんですか?」


現在俺はメイリの家の前にいる。村長に教えてもらっていたので迷わず来れた、というのは嘘だ。結構間違えて訪ねてしまい、その間違えて訪ねた家のおばさんに結局案内してもらった。とても親切な人だったな。


「ああ。だから村を離れる、とメイリに伝えにきた」


メイリは驚いているが、相棒と言っても人ではない。もっとも、俺は人と同等に扱っている。


「あ、危ないです! 森の中は“魔物”もでるし、盗賊もまた……あっ、私の魔物避けで……って効力切れてる……」


腰袋から何か不思議な色をした石を取り出し、そして落胆するメイリ。見ていて可愛く、面白いな。

それにしても、魔物か。


その手の知識は少しぐらいはある。要はモンスター的なやつだろう。俺が知っているのはスライムや……スライムぐらいだった。


「安心してくれ。俺は強い。そこらの魔物? や盗賊 くらいなら一捻りだ。メイリも見ていただろ?」


いまいち魔物の危険度は分かっていないが、なんとかなるだろう。そう適当に判断する。


……尤も、あの禿げた盗賊レベルの敵対者が現れたら注意しないといけないだろう。


「確かにツルギさんなら……でも。――いえ、気をつけて帰ってきてくださいね? 私、心配だけど待ってます」


「……ああ。行ってくる」


上目遣いでこちらを見てくるメイリの頭をくしゃりと撫で、俺は村の外に向かった。目指すは、この赤い光点がある地点だ。


待たせた相棒。今迎えに行くぞ……!

そう意気込んで俺は森の中は再度足を踏み入れた。




「ふむ……いまだに僅かだが、移動しているな。だが、この程度の速度なら余裕で追いつける」


俺の相棒が何処のどいつに持っていかれているのか。どういう理由で運ばれているのかは不明だが、この世界は別世界だ。未知の利用法があるのかもしれない。 急ぐに越したことはない。


「よし、真っ直ぐだな」


俺はデバイスから目を離し、走る速度を一気にトップギアまで持っていく。“部分瞬着”で脚に[ペルソナスーツ]の一部を装着するとさらに速く走れるが、その分負担も大きく、エネルギーの消耗も激しい。かといって『変身』してもエネルギー消耗はさらに激しい。


そう。俺の切り札である[ペルソナスーツ]のエネルギー残量という問題が浮上しているのだ。これは死活問題と言っても過言じゃない。


だが、俺はあることを思い出して足を止める。


「……っと。そういえばあの3人の盗賊を木に縛り付けたままだったな。様子を見てから相棒を迎えにいくか」


正直に言うと、存在を忘れていた。しょうがないだろう。此処が別世界だとわかってショックだったしな。


そうなると、この世界は警察のような機関が存在していないのだろうか。……まぁ流石にそれらしき組織があると願いたいものだ。 盗賊なんてゴロツキがいるから期待はできないが。


「この赤い光点が相棒で……この小さな光点がハンカチ、だよな?」


このイマイチわかりずらいのが、この機能の使いづらいところだ。 俺の持ち物は全て赤い光点で示され、個々の判別は光点の大きさで確かめるしかない。


つまり、不親切な設計なのだ。博士……。

元の世界に戻れたら改良してもらおう。


そうして数分後。俺はハンカチを置いた木のそばまで来た。来たのはいいが……


「盗賊がいなくなってるな、逃げたか?……いや、血の跡があるな」


衣服のロープは解かれており、木に縛り付けていた3人はいなかったが、僅かな血痕を地面から見つけた。


「まだ新しい、か」


血痕の跡を辿ると、重いものを引きずった跡もあり、明らかに盗賊たちは連れていかれたのだろう。そして、生死は不明だ。


「嫌な予感がするな。……確かめるか」


俺のヒーローとしての勘が、不穏な気配を感じた。


ハンカチを回収し、俺は盗賊を引きずったであろう謎の生物の追跡を開始した。



よければブックマークしてね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ