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最弱の魔王が最強の勇者を倒すまで  作者: NEO
誰かに喚ばれて
2/23

事の起こり

コメント宜しくお願いします。つまんなかったらつまんなかったでも欲しいです。

「はあ、つまんねえな。そう思わねえか?」


 成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能――言葉遣いが悪いのはご愛嬌――という三拍子揃った、絵に書いたような優等生である彼は言った。

 身長は高く、まるで少女漫画に出てくる王子様だ。顔は美しい以外の言葉が浮かんで来ないほど整っている、すっとした爽やかなイケメンだ。


 彼は幾つかの机を繋げて(滅茶苦茶質の悪い)ベッドをつくり、その上に寝転がりながらという、実にけしからん態度だ。高校生にもなって、こんなでは先が思いやられる。


「んなこと言われましても、生徒会長さん。とりあえず、暇な時にこの美術室来るのやめてもらっていいすかね」

「えー、なんでよー」

「だって、あんたここ来ては俺に話しかけ、邪魔してばっかりじゃないすか」


 通称、美術室の主と呼ばれている、美術部員の黒岩和樹(くろいわ かずき)は呆れ気味に答える。ちなみに彼はこの物語の主人公だ。


 彼はこれと言って特筆すべき点も見つからぬ、冴えない男子高校生である。敷いて言えば地毛が茶髪ということと、背が平均以上であることくらいか。決して見た目が悪いとは言えないが、いいとも言えないくらいの顔立ちだ。そこに、日陰者というイメージが重なって、彼のクラス内での印象を薄くしている。趣味らしい趣味も絵を描くこと程度だ。


「もう一回いいますよ。ここは、あんたの休憩所じゃあないんですよ!」

「えー」


 低いテンションで机に寝転ぶ生徒会長。それに半ギレの美術部員。

 シュールな画であることは言うまでもない。


「せめて会話しましょう? 俺めっちゃ不憫ですよ。ただただ邪魔されるだけ、文句を言っても議論にならないって」

「別にいいじゃんか。どうせこの教室、お前以外つかってないんだろ」

「ぐはっ」


 そう。美術室を拠点として活動する美術部の部員は、黒岩和樹ただ一人なのである。彼が美術室の主と言われている所以(ゆえん)もそこにある。


 ただし!

 彼は、決して、自分の友達が少ない(かなり甘い表現。正しくは『いない』)ことを美術部員数のせいにしている訳ではないと、ここでフォローしておく。彼はそんな責任転嫁大好き人間ではないのだ。

 彼の友達がいないのは、あくまで自身のコミュニケーション不足にあると、気づいているからだ。


 おいおい、生徒会長とは普通に話せてるんじゃねえか、と言いたい気持ちはわかる。

 しかし、こんな体験をしたことはないだろうか。

 友達になりたい人と話すと緊張するが、そうでもなければそんなことはない。


 彼は、まさにそれだ。


 む、話しすぎた。本編に戻ろう。

 和樹のセリフから。


「あんた、よくそんなこと言えるな。もうちょいオブラートに包むとかできんのかと」

「事実だろ。美術部が人気(にんき)ないのは」


「待てッ。さっきより酷くなってる」


「そんな酷いか。……へ〜。まあいいや」

「ひでえ」

「とにかくだな。オレは疲れてるんだ。たまには静かなところでゆっくりしたい」


 ふむう。どうやら生徒会長の彼は『たまには』の使い方を間違えているようだ。おい、和樹、教えてやれ。一日も欠かさず来ることは、『毎日』って言うんだぞ、と。


 和樹は我々の期待を裏切らずにツッコミを入れるだろう。


「ちょ、たまにはってなんだよ。一日も欠かさず来ることは、『毎日』って言うんだぞ。辞書見直してこい。

 それにな、静かな場所なら図書館があるだろ、図書館が。あんたが女だったら俺に惚れてるのかと勘違いするところだ」


 おお! 和樹は期待を裏切らなかった。まさに一言一句違わず復唱して見せた。さすがだ。


「だってさ、図書委員長いるじゃん。あの可愛い子」

「まあ、知ってるけど。それが?」


 知ってるも何も、和樹の好きな人である。彼には残酷な現実が突きつけられることになる。


「あの子、隠してるけど実はオレの彼女なんよ」

「なっ……カ、カノ、カノジョ!?」


 ああ、可哀想な和樹。好きな子は彼氏持ちだと聞かされるのだ。なんと切ない。頑張れ、負けるな。


「ん? なんだよ、その反応。……あ! もーしーかーしーてー……好きだった? くははは、残念ながらオレという完璧超人がいるからなー、万が一はないんだよなー」


「て、てめえ、死人を踏みつけるように追い打ちかけやがって。くそう!」

「はははは。面白いなあ、お前」

「俺は面白くねえ」


「まあオレの彼女が図書館にいるからさ」

「続けんのかよ……」


 誠にひどいやつだ。仕方ないことだ。これが現実なのだ。


「いちゃいちゃするのはいいんだけどよー、そうすると疲れを癒せないんだよなー。だからここにいるってわけ」

「はいはい、そうですかーっと」


そう流して和樹は筆で彩色していく。さっきまでは鉛筆でスケッチをしていたのだ。


「そういえばお前さっきから何描いてんだよ。被写体ないよな」


 彼はそう言って、和樹の絵を覗き込む。

 そこには美女、もとい美少女が描かれていた。


「おお、上手いな。これ誰だ?」

「あんた、デリカシーないって言われることないか? いままでの会話でだいたいわかるだろうが」

「デリカシー? 言われたことねえな」


「そりゃ幸せなことで」

「で、誰なんだよ」

「あんたの彼女だよ! 言わせんな」

「あ、すまん」


 彼は頭を掻き、気まずそうにした。

 基本人を気にしない生徒会長が察して謝るとは珍しいことだ。


「まあいいけどよ。悲しいぜ」


 和樹の表情がかげり、ため息をついた。


 こんこん。音が鳴り、美術室の戸が開けられた。

 和樹がそちらを見遣(みや)ると、噂の張本人である、図書委員長がいた。

 こちらを見る彼女は、戸惑っている風だった。

 

 人気者の生徒会長が、見知らぬ日陰者っぽいやつといたんだから当然か。……和樹からしてみれば、好きな子に全く認識されていないというのは悲しいものがあるだろう。


「おう、どうした。海里(みさと)


「え、と。一緒に帰ろうと思って。雄太たちと、恵也と私で一緒に。雄太たちは外で待ってる」

「わかった。オレも一緒に帰るぜ」


 海里は生徒会長の彼女で、図書委員長をしている。また、雄太たちとは生徒会役員を含めた仲良しグループを指す。そして恵也とは生徒会長のことだ。


 和樹は生徒会長の苗字は知っていても、名前までは記憶していないので(こういう所だ。彼に友達ができないのはこの辺に原因がある)、へえ、そんな名前なんだ、と思わないでもなかったが。

 しかしその直後、このカップルは名前呼びあっているのかと気づいて、一層虚しさを加速させた。

 

 彼が、ああ無情と呟きかけたとき、海里が口を開く。


「恵也、その人は……?」

「あ、あの、黒岩和樹といいます。ゆっ、唯一の美術部員です」

「はぁ、うちの恵也がお世話になってます。図書委員長で恵也の彼女です」


 初対面の相手だからか、気だるげだ。


「は、はいっ、お世話してます! いつも、ここ来てますんで、生徒会長さん」


 和樹は己のあがり症を呪った。あがり症の中でもこれは軽度なものだけれども、本人からすればどもってしまうだけで恥ずかしい。

 更に、彼は己のセリフも呪った。セリフを恨み始めるとは、まさに末期のように思われる。だが仕様がないのだ、お世話しています、だなんて珍妙なセリフを口走ってしまったのだから。


 彼の顔は燃え上がる寸前だった。頬から顔全体に紅い火照りが広がってゆこうとしていた。

 しかし、ここで救いの手が差し伸べられる。


「ふふっ。面白いのね、黒岩さんって」

「だろ? オレも暇なとき話に来て聞いてる感じからそう言うんだけどな、どうもこいつ、自分に自信が持てないみたいで、おどおどしてるんだわ」


 海里のファインプレー! いやまあ、わざとではないけれど、和樹の言い間違いを、ウケ狙いの一言と思ったようで、しかもそれに笑ったのである。


 これだけではなく、彼女の笑顔の矛先になるということの重要性もある。


 こう言ってしまっては身も蓋もないが、あえて言おう。

 図書委員長、(ひいらぎ)海里(みさと)はアイドル級の美少女だ。それこそ、漫画にしか出てこないだろうほどの。


 可愛らしい少女で、透き通るようなきれいな肌をしている。

 日本にフィンランドの血が交わったクォーターである彼女は、美しく輝く銀髪の持ち主だ。北欧の美人の美貌に、日本人の柔らかみのある遺伝子がうまいこと合わさり、北欧美人の良い意味でも悪い意味でもはっきりしている顔立ちが中和され、奇跡のような可愛さを生み出している。


 例えば朝日照らす時は、彼女はまるで神話の女神のようであり、神聖さすら感じさせる。そのうえ日常では細かいところに気が利くことで人気を集めている。


 そんな彼女の笑顔だ。それは百万ドルの価値を思わせる、女神の微笑みである。

 ましてや、その対象は、彼女のことが好きな男子高校生。彼は、彼氏持ちだと知ったのになお、好きになってしまったのだった。


 和樹城、陥落。それは春のことだったかもしれない。


「んじゃ、帰るか。じゃあな、美術部員の和樹くん、と」


 彼は立ち上がり、扉のもとへ。


「あ、えーと生徒会長さん」

 と和樹が勇気を振り絞る。


「ん? なに?」


 だが和樹のなけなしの勇気はあっという間にしぼんでゆき、

「んーー……いや、やっぱりいいや。ごめん、またね」

 と言ってしまった。


 恵也がはたと和樹の言いたかったことを察する。それで一言。


「あ、そうだ。お前も一緒に帰らねえか?」

「えっ、いいのか!? ……じゃなくて、ああ、一緒に帰らせてもらおう」


 自分の彼女と、その子を好きなやつと一緒に帰らせることは、彼なりの申し訳ない気持ちが働いた結果だろう。彼にも人並み以上の優しさはある。


「おお、行こうぜ」

「あ、黒岩くんも一緒に帰るんだ。よろしくね。海里、でいいよ」


「はっ、はい。こちらこそよろしくです、み、海里さん。ぼ、僕は和樹って呼んで下さい!」

「あっはは。海里でいいって言ってるのに。かーずーきーくんっ」


 からかうような口調の海里。赤面する和樹。好きな子からのからかいは嬉しいものだ。


「ははぁ、でもまだ緊張しますし」

「もうっ、真面目だなあ」


 楽しそうな二人だ。その脇で様子を見守っていた恵也は、この、ベタなラブコメの一シーンのような光景に、やれやれ仕方ねえやつだな、なんて笑っている。



 美術室の外に出ると、和樹からするとかなりスクールカーストの上位に位置する、古臭い言い方をすれば『イケてる』グループがいた。


 男子二人女子一人。仲良さそうに談笑している。


「お、恵也のお出ましだ」

 と言ったのは星ヶ丘清治(ほしがおか せいじ)

 チャラっとしたキラキラしているイケメンで、合コンなんかだと、盛り上げ役として(本人もモテるが)、また女の子達のテンションが上がるためという理由で引っ張りだこだ。

 生徒会で会計をしていて恵也と同じ、サッカー部の部員でもある。


「じゃ帰ろか」と、恵也が清治と肩を組み言った。


 そこで無口ながらもサッカー部のキャプテンを務める日比谷雄太(ひびや ゆうた)

「ところで……彼は誰だい」

と言った。

彼は寡黙なスポーツマンだ。


 一斉に皆から注目された和樹が、緊張のあまりもごもご言ってると、海里が助け舟を出した。


「こちらは美術部員の黒岩和樹くん。恵也が暇なときの話し相手みたい」


「え? 恵也が暇なとき、ってどんなときかにゃー?」


 こう疑問を口にしたのは生徒会副会長の猫山歌那(ねこやま かな)だ。猫のように可愛らしいルックスと喋り方、それとちっちゃな体躯により、友人から可愛がられている。

 その口調は学年でも有名であり、きっといつか黒歴史になるだろう。しかしだれも指摘しない。いつ彼女は気づくのだろうか、己の恥に。


 これには恵也が答える。

「あー。オレが生徒会室に居なかったり、部活にいないことあるじゃん? その時」


「そういうことかにゃー。にゃるほど」


「じゃあ行きましょうか」

 と矢島裕香(やしまゆうか)が言う。彼女は美少女と言うよりは美人で、解語の花と言った感じか。上品で高潔、でも高尚ぶるのではなく、気軽に接してくれると男女問わず人気がある。

 生徒会庶務として活動している。


「そうだな、行こうぜ」と恵也。




 そんなこんなで帰りの道中、学校から少し行ったところくらいで和樹は思い知った。

 自分という部外者のせいで、仲間内での親密な話ができず、気まずい雰囲気になっていることを!


 彼は勢いに任せて一同に質問した。

「あ、の! 皆さんはいつからの付き合いなんですか?」


 皆が何事かと彼の方を見ると、この停滞した空気をどうにかし得る問が飛んできたので、安心できた。


「難しい質問だね、雄太」とチャラ男の清治。

「そうだな、うん。僕と恵也、それと裕香が同じ小学校だ。それで清治と歌那が幼稚園からの付き合い、だったか?」


 聞かれた二人は、肯定の意を頷くことで示す。


「で、海里と恵也は幼稚園は同じで小学校が違う。この中の四人、海里以外が全員集まったのが中学校だった」


 そこから恵也が引き継ぐ。当時を思い出しているのか楽しそうだ。


「そうそう。それでさあ、高校で海里が合流したんだけど、始め誰かわかんなくてさ。すげえ変わってたからなぁ」

「そうなんだけどさ、ある時そんな感じの話を耳にして気づいたみたいで、そっからずっとどうしよどうしよ言ってたの覚えてるわ」と清治が暴露する。


「へぇ〜〜」

 女性陣がニヤつきながら、恵也の真っ赤な顔を覗き込む。明らかに面白がっている。


「べっ、別に良いだろ! ホントに可愛くなってたんだから、動揺して当然だろ!」


「その後、二ヶ月くらいかな、明らかに両思いなのに何も進展しなかったのよね。私達の助けがなければ今もまだ付き合ってなかったかも」

 と裕香が口に手を遣り、上品に微笑みながらからかう。


 今頃になると、恵也だけでなく海里も赤面している。ホントに可愛くなってたんだから、が効いているみたいだ。そこで赤面した表情もかわいいな、と和樹は思う。しかし叶わぬ恋。その想いを表には出さない。葛藤だ。



 そんな青春の(いち)ページ。

 その瞬間――――まあいつの瞬間かは分からぬがとりあえず便宜上、この瞬間――――彼らの足下に魔法陣、みたいなものが出現した。

 

 それは、正三角形、正方形の二つの図形を多様に変化させ配置した、幾何学模様だった。


 模様をふちどり、そして構成する線は、黄金色に輝いていた。輝く線から幾重にも連なる光が彼らを包む。光はむくむくと膨れ上がり、直径五メートル程度の球形になると、みるみる収束していった。


 光に包まれている間、彼らは神秘的な感動と同時に、警戒心を働かせていた。ただなすすべがなかっただけだ。


 






 光が収束し、あとには何も残っていない。魔法陣があった形跡すら消え失せ、空気も淀んだりはせずに、そこは日常の延長でしかなくなっていた。



 その日、七名の生徒が行方不明になった。

 その内五名が生徒会役員、一名が図書委員長だった。

 最後の一人は、友人のいない美術部員だった。

どうか、評価・感想、その他諸々(?)お願いします。

初心者ながらも書き続ける所存です。ですが、誰かの評価が実感できればモチベが上がりますので、よろしくお願いします。

一人書いてくれただけでも、踊り狂うくらいです。


文体がコロコロ変わります。ご注意ください。

逆に言えば、この文体あんま好きじゃねえなあ、となっても、より良いものに変わるかもです。

もう二話ほど読んでいただければわかるかと思います。

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