Смелое признание 大胆な告白
その日の午後からは普通の授業が始まった。
初っ端から迎えるは数学でも理科でもなく、僕にとって最も難関な授業とも言える国語だった。
流石に今日の今日、日本語を覚えたことを明言している僕には小学校の国語よりも多少難しくなった授業に付いていくわけにもいかず。
首を傾げたり、喉を唸らせたりと全力で分からないアピールをしながら一時間過ごすことになった。
うん、正直かなり疲れた。本当、慣れないことはするものじゃないと心の底から思った。
でもまぁ、そのおかげで皆に成長していると捉えられたんじゃないかな。
今までの僕は何の反応すらしていなかったからね。
すごーく今更の話だけども、これまでの僕の授業態度は本当最悪だったと思う。
響の注意を引くためとは言え、一生懸命マンツーマンで僕の面倒を見てくれた当時の先生方には申し訳ないことをした。ごめんなさい。
当時のことを振り返ると少し罪悪感が湧く。
後悔はしていないんだけども。
と、そんなことを考えながら休み時間を過ごしていると、不意に後ろからトントンと肩を何かで叩かれた。
今日はもう日本語で話さないと公言している為、話しかけてくる人は必然的に絞られる。
僕は確信を持って名前を呼んだ。
『なに、響?』
『授業分かんなかっただろ? 後で内容を教えるよ』
ゆっくり振り返って見ればシャーペンを片手に持った響が、優しさが滲んだ表情で微笑んでいた。
『…何で気づいたの?』
『授業中ずっと仕草に出てたぞ。知らなかっただろ?』
『うそ…本当に出てた?』
『ああ、出てた出てた』
ニヤリと笑う響。
うん、勿論知っている。
むしろ、響にそう言われるのが目的だったまであるからね。
僕は大袈裟に驚いたフリをして、笑みを浮かべる響にグイッと顔を近寄らせた。
『…帰ったら教えてね。絶対だからね』
『ーーッ。ああ、了解』
帰ってきた了承の言葉に内心「やった!」と安堵する。なんとか自然な流れで約束を取り付けることができた。
『ありがとう、響』
堪らず嬉しさで頬が緩む。
きっと響の目には満面な笑顔を浮かべている僕が映っているのだろう。
響はそんな僕に、瞬き一つせず見惚れていた。心なしか少し顔が赤いように見える。
見てるか! 見ているんだろ、顔も知らぬライバルよ。
お前には響は渡さないからな……って、厨二病に患ってるみたいで何か恥ずかしいな。やめやめ。
兎に角、今日は久々に響の時間を独占できる。
僕の魅力を存分にアピールするチャンスだ。
ーー今は響の心が他の人に向いていたって構わない。最終的に僕の方に向いてくれればそれでいい。
先程の様子から見るに、まだ響を取り返せる可能性は十分にある。
だから僕は少し大胆に攻めてみることにした。
どうせ響以外には伝わらないのだから、と比較的大きな声を張り上げる。
『いつもありがとう。愛してるよ響』
バッと視線が僕に集まる。
…そりゃ何を言ったか分からなくても、教室の真ん中で声を張り上げてたら注目を集めるよね。
やばい。本当にやばい。尋常じゃないくらいに恥ずかしい。
即座に視線から逃げるように机にうつ伏せた僕は、暫くの間湧き上がる羞恥心と格闘することとなった。
「響くん、アリフィヤちゃんなんて言ってたの?」
「おーい響……ダメだ完全に固まってる」
「あーもう気になるじゃん。絶対ロシア語覚えよ」
「………何て言ったんだろうね、椿ちゃん…椿ちゃん?」
「…て、てぇてぇ……」
「そ、そんなにその小説面白いんだ」