открытый 発覚
うん、どうやら僕は異世界に転生したのだろう。
時が過ぎるのは早いもので夢が覚めないまま七年の月日が流れた。
未だに漫画やアニメの世界のような魔法や剣術は見たことがないが、それだけの時間が経過していれば流石に言語は理解できたわけで。
『アリフィーユシュカ、ちょっと手伝ってくれる?』
『はーい』
お母さんに呼ばれ、家を飛び出す。
我が家はクルクルと回る風車小屋以外何にも立っていない草原の上にポツリとあるため、ご近所さんはいない。なので野菜を栽培したり家畜を飼ったりして自給自足とも言える生活を送っている。
そのため、こうして僕が手伝いに出されることが多々あった。
外に出ると、家の近くにある畑でお母さんがかご一杯に野菜を詰め込んでいた。
去年までは一日に食べれる分しか採っていなかったのに……何か心境の変化でもあったのだろうか?
『わぁ、沢山とったね』
近寄ると、お母さんは苦笑を浮かべた。
『…うーん、そうね。そろそろ言っておかなきゃね、後で教えるわ』
『何のこと?』
『それよりも、コレだけ野菜があればアリフィーユシュカも料理の練習できるわね』
『えぇー……めんどくさい』
『駄目よ、料理くらいできないと……』
お母さんは僕の頭を撫で、僕が今最も認めたくないことをハッキリと告げた。
『アリフィーユシュカは女の子なんだから』
……そう、どうやら僕は今世では女の子になっていた。
アリフィーユシュカは僕の愛称で本名はアリフィヤ。お母さん譲りの銀髪がトレードマークな七歳児です!
……自分で言ってて何か悲しくなってきた。
『……大丈夫よ! 今は下手でもいつか料理が上手くなるから! それにアリフィーユシュカは可愛いから立派な男性と結婚できるわ!』
落ち込んでいる僕を見て、何を誤解したのかお母さんがそんなことを言ってくる。しかし、それは僕にとっては慰めではない。追撃です。即死攻撃だ……
男となんて結婚したくない……死んでも嫌だ……
お母さんは僕を産んで早々に離婚したらしく、結婚の話をよく話題に出す。その度に僕は少なからず心にダメージを負っている。
……正直止めてもらいたいが、お母さんの気持ちも分からないでもないので止められないのが本心だ。だからお茶を濁すことしか出来ない。
『そうだね……。けどまだ今は考えられないかな』
今日も今日とて曖昧に返すと、僕はそのまま台所へと向かった。
お母さんが何か言いかけた気がしたが、何にせよ僕には断言することが出来ないので聞こえてないフリをする。
本当に僕が娘になって悪いと思ってる……ごめんなさいお母さん。
『……アリフィーユシュカ、大切なお話があるの』
お母さんが話を切り出したのは夕食を食べた後すぐのことだった。
いつもに増して真剣な顔つきなお母さんに、自然と背筋が真っ直ぐになる。
『なにかな……ママ?』
『実はね……』
おそらく野菜を運んだときに言いかけてたことなんだろうけど、よほど言いにくいことなのか、お母さんの口が何度も開いては言葉にならない音を発している。
『……ママ? 大丈夫? 話しにくいことなら別に言わなくてもいいよ?』
『…ごめんなさい、けどもう大丈夫よ』
お母さんはスッと息を吸い込んで、ゆっくりと言った。
『アリフィーユシュカ、よく聞いて。実は新しいパパができるの』
『ほへ?』
思いがけない言葉に、間抜けな声が口から漏れてしまった。
え、再婚……ですか? え、……ええ!?
『……ぼ、僕に、パパができるの?』
固まっている僕にお母さんは更に言葉を重ねる。
『うん。だからね、今月限りでお引っ越しすることになったの。Японияへ』
え、なんて? ……今知らない単語出てきたんだけど、どこそれ?
『うん、不安な気持ちも分かるけど大丈夫よ。新しいパパが言葉もマナーもしっかり教えてくれるそうだから。それに、お母さんも少しは言葉を覚えてるしね。確かにРоссияから離れることは寂しいかもしれないけど……Японияもいいところよ?』
そう言ってお母さんは一枚の地図を取り出した。この世界の地図だろうか。気のせいだろうか、地球とよく似ている。いやーホントによく似てるな。見れば見るほどそっくり……似すぎじゃね? え、コレ地球じゃん。
『いい、ここが私たちの住んでるРоссияよ』
お母さんが地図を指差す。
え、ロシアじゃん。
『で、ここが向かうЯпония。小さいけど沢山の人達が住んでいるのよ』
え、日本じゃん。
ちょっと待って、衝撃的すぎて頭が追い付かない。
つまりここは異世界じゃなくてロシアで、異世界の言語だと思ってた言葉はロシア語で……僕はロシア人ってことですか……!?
……分かるかそんなもん!! 知らない言語に違う色の毛髪、井戸、自給自足と続いたら誰もが異世界だって思うでしょ普通!!!
とにかくここは異世界ではないらしい。
どうやら僕はロシア人に転生したみたいだ。