Само введение 自己紹介
簡単な説明が終わると次は校舎案内。
入学したら実際に使うことになる特殊教室の場所を見て回るらしい。
音楽室や美術室などの場所を案内され、校舎を大方一回りしたところで、再度教室に戻った。
先程と同じ座席に座り、待っていると担任の先生が教壇に立った。
先生はチラッと時計を見てから口を開く。
「えー……今日やることは大体終わったんですが、まだ時間が残っているので、自己紹介でもしてもらいましょうか」
そう言った瞬間、ザワッと僅かに騒がしくなり視線が僕の方にギラリと向けられた。ほぼ皆ガン見。座る体勢を変えてまで僕を見てくる人もいる。
うーん、ちょっと露骨すぎない? せめてチラ見とかにしとこうよ……。
クラスメイトに外国人がいたら、そりゃ気になるだろうけどさ。
あと、一部男子。どさくさに紛れて情熱的な瞳をぶつけてくるのはやめろ。
って、違っ、勘違いするな! ウィンクしてくれってことじゃないから!
引いてますよアピールに半眼を向けると、何故かウィンクが返ってきたので慌てて視線を逸らしていると、先生がパンパンと大きく手を鳴らした。
「はいはい、皆さん。気になるのは分かりますが、後で存分に質問する時間を上げますので、まずは自己紹介に移りましょう」
一瞬助け船を出してくれたかと思ったが違った。後回しにしただけだ。
……ま、まぁいい。楽しみにしてるところ悪いが、僕はまだ日本語は話せないんだ。
僕の解読困難なロシア語の自己紹介を聞いた後で、質問をしようなんて考える猛者は流石にいないだろう。
「では一番の人、お願いします」
「はい。――小学校から来ました、浅野隆太です。よろしくお願いします」
なんてことを考えていると、自己紹介が始まった。
「浅野くんに質問したい人はいるか?」
「はい。えーと、じゃあ。浅野くんの好きな食べ物はなんですか?」
「カレーですね」
「他には? ……OK、じゃあ浅野くんは着席してくれ。では次の人」
「はいっ!」
呼ばれた生徒がその場で起立し、簡単に自己紹介してから質問タイム。その後質問がなくなったら着席する、という流れのようだ。
多くても三つくらいしか質問をされないので、一人当たり長くて数十秒とスピーディーに順は巡り、次はいよいよ僕の番となった。
「OK。着席してください。――じゃあ次お願いします」
言われるが知らないフリ。日本語が分からないスタンスは崩さない。
沈黙が流れること十数秒、反応を示さない僕に周りがざわめき出した頃、ようやく響が翻訳を挟んできた。
『アリフィヤ、次は君の自己紹介だぞ』
『え? 自己紹介?』
『あぁ、名前と一言でいいから何か言葉を添えてくれ』
『分かった』
僕はゆっくり立ち上がると、周りを見て軽く一礼。
一文字一文字ゆっくりと紡いた。
『僕は神崎アリフィーユシュカです。よろしくお願いします』
再び一礼、呆気をとられているクラスメイト達の顔を内心嘲笑いながら着席しようと席を引いて――
『……あっ、待ってくれアリフィヤ。質問タイムがまだだぞ』
『え?』
「皆、アリフィヤに質問したいことはないか? あるなら俺から翻訳して聞かせるが」
途端に手が一斉に上がった。
いや、響。お前、僕と距離を取りたいんじゃなかったのか? 翻訳なんかしたら小学校時代のようにセットとして扱われることになるだろうに、なに考えてるんだ……?
響の考えがちょっとよく分からない。
「好きな食べ物はなんですか?」
『好きな食べ物はなに?』
『和食』
「和食だそうだ」
「趣味はなんですか?」
『趣味はなに?』
『音楽鑑賞』
「音楽鑑賞だそうだ」
「好きな人はいますか?」
『す、好きな人はいる?』
『いない』
「…いない……だそうだ」
いやね、仮にいたとしてもこんなところで打ち明ける馬鹿はいないでしょ。
呆れながらに質問に答えていくこと数分。クラスメイト一巡の質問が終わったところで、先生が区切りを付けて、ようやく席に着くことができた。
なんで僕だけ他の人の十倍近く質問受けてるんだよ……
腑に落ちないでいると、ガタリと響が自己紹介のため立ち上がった。
……響の所為でこうなったのだから、せめて響も同じくらい質問責めにあえばいいのに……
願いが通じたのか、響は僕の倍、二巡目まで質問を受ける羽目になっていた。主に僕関連の内容の。
……ちょっとスカッとした。
全員の自己紹介が終了すると、そのままお開きとなり僕たちは帰路へついた
響)
質問を通して今更聞けないアリフィヤのことを知りたい>距離を取りたい