第6話 エースと監督
俺はちゃんと16:00に進路指導室に向かった。
「失礼しま〜す。」
そこには、総監督ともう1人座っていた。
「来たな柳、そこに座れ。」
俺は返事をして指定されたところに触った。
「凛から麟太郎の話は聞いたかな?」
「はい聞きました。」
「それなら話は早い。君らは2軍からのスタートになる。麟太郎は1軍からだ。その麟太郎についての話で来てもらった。」
「はぁ〜」
俺は意味がわからなかった。俺と泉の関係は無いに等しい、その上俺があいつに勝てるはずもない。なんなのかわからないまま話を聞き続けた。
「麟太郎はスタミナも安定性も抜群だ。高校生としてはこれまでない才能だと思う。しかし、あいつにはいずれか壁が立ちはだかる。実力が初めから大きければ大きいほど、早いタイミングで壁が立ちはだかる。そこでだ、そうすれば1軍も起用を変えてくるだろう。おそらく始めは完投ペースで起用するだろうが、壁にぶち当たった時6回7回降板にすると思っている。その時にだ。その後をつなぐ中継ぎ投手が必要になる。1軍にも優秀な奴は山ほどいるが、麟太郎の次に任せられる選手はそこまでいない。キャッチャーの問題だ。麟太郎は今日は151kmしか出てなかったが本来はMAX160kmでるんだ。その球を取れるのはうちには1人しかいないんだ。だからそのような貴重なキャッチャーをずっと出し続けているわけにはいかないんだ。」
「ひゃ、160km...そんな球を投げれたのか」
「そこでだ、ぜひ君にはその後を託す中継ぎ投手になってほしい。もちろん今すぐにとは言わない、色々あるだろうし。でも、もしやってくれるというのなら、ぜひお願いしたい!君なら伸び代がある。きっといい選手になる。」
「中継ぎ...ですか...」
俺は素直に受け止められなかった。俺はエースを目指していたからだ。父さんみたいな頼れるエースになりたかった。
「すいません、ちょっと考えさせてください。」
「まぁ、そりゃ難しいよな。いきなり中継ぎ専門なんてな。まぁゆっくり決めなさい。それでもし、中継ぎを請け負ってくれるなら俺に報告する前にまず源に相談してから言ってくれ。」
「源?」
聞き覚えのある名前だった。総監督の隣にいるのがどうやら源っていう人らしい。俺はそいつの顔を見てすぐに思い出した。
「昨日の話し合いの時の...俺の前だった...」
「そうだよ。俺は源 大輝ポジションはキャッチャーで右投げ・左打ち肩に自信があるよ。」
「源は今年の1年生の中で最有力候補だ。肩は素晴らしく、リードも悪くない。良きパートナーになると思うよ。」
「はぁ〜わかりました。それでは失礼します。」
俺は、進路指導室を出て考え事をしながら家に帰った。
まさか源が俺の今後の相棒になることはこの時誰も考えもしなかった...