23話 真実とまさかの判断
前から思っていたんだ。みんなにこのことを教えといたほうがいいんじゃないのかと。
だってそうじゃないか。プロに行けば「故障者リスト」っていうのもあるし、第一、故障者が負ければ終わりの試合にださせてもらえるかっていう話だ。
~学校にて~
「...そういうことでして...」
「「「...」」」
なんて言われるだろうか、「なんてことだ!」とか「お前はもう試合に出さん!」とかか?
ま、なんにせよ、怒られるだろうな。...覚悟はしておくか。
「なんで今まで言わなかったんだ?」
「もう、試合に出れなくなるかもしれないと思ったから...」
「...そうか」
険しい顔。そして、みんなの不安な顔。
ほんとに申し訳ないことをした。
「あの、俺はどうすればいいんでしょうか?」
素朴な疑問かもしれない。けど将来が決まる大事なことだ。答えによっては、退部ということもあるかもしれない。それぐらい大事なことなのだ。
(なのにもかかわらず、誰にも報告してなかった俺が言うことでもないけどなw)
「いいか?柳。けがをすることは、何も犯罪なわけじゃじゃない。スポーツをしていれば怪我なんてもんは付きもんだ」
「...はい」
そして監督は続けて言ってきた。
「でもな、だからといって嘘をついていい理由にはならないだろ?そのせいで、チームメンバーにも迷惑がかかるかもしれない」
もっともだ。今監督が言っていることはすべて正しい。
「怪我したら、早期に治そうとしたほうが早く戻ってこれるだろう?それなのに嘘をついたら悪化する可能性だって十分にある。そうなってからじゃ遅いんだよ」
「...」
俺は今まで、怪我がばれたらしばらく野球が出来なくなってしまうかもしれない、と思っていた。
それがどうだ。このまま悪化してしまったら、もう二度と野球が出来なくなってしまう可能性だってあったのに。
冷静な判断が、俺にはできていなかった。
~病院~
(とりあえず、病院に行って来い。それから後日結果を報告してくれ)
そう監督に言われて、俺は最寄りの病院に行った。
「先生。どうなんでしょうか」
「...」
先生の表情はどこか重そうに見えた。
それほど深刻な状況なのだろうか。もう野球は...
「んまー。肩を負傷しているね。まだ軽いほうではあるから、安静にしていれば大丈夫じゃないかな」
「そうですか...」
俺は心底ほっとしていた。
そして俺は家に帰って親に報告し電話で監督に報告した。
「...軽いほうではある...多少軽くは...とりあえず安静にしといてくれよ柳君」
~学校グラウンド~
「ということで、柳は今日から別メニューになる。ほかの選手はいつも通り練習を始めてくれ」
「「「はい!」」」
練習はいつも通りはじまった。
監督の言っていた通り、俺は別メニューとして主に下半身を鍛えることになった。
「投手にはスタミナとコントロールのほかにもメンタルや体感も必要になってくる。だから今の練習も怠るなよ」
「はい!」
コーチに言われたことも一理あると思い俺は、ひたすら下半身を鍛えた。
「源、ちょっと来てくれ」
「わかりました監督」
練習中、僕はなぜか監督に呼ばれた。
練習内容が悪かったのか、それとも何かしらのアドバイスだろうか。
「柳の件で少し話がある」
「!」
そうか。そのことかと納得した。
確かに思えば、僕は純也君とバッテリーを組んでいるんだから、現状ぐらいは教えてくれるのかもしれない。
「どうしましたか?」
「...落ち着いて聞いてくれ」
「?」
監督は暗い表情で僕に話しかけてきた。
「実は、柳の状態はあまりよくないらしい」
「え?」
あまりにも驚いたので、僕は絶句した。
「そんなにわるいんですか?」
「やつ自身が言っていたわけではないが、担当した先生がかなり危ない状態だということを伝えに来てくれたんだ」
その内容を信じることは容易ではなかった。
ただ、先生本人が自ら学校に来てくれるということは、それほど危険なことを示しているということはわかったため、信じることができた。
(かなり危険ってどの程度?もう投げられないくらい?そしたら僕はどうなる?用無し?2軍?...僕は純也君が居なきゃなんもできないのか?)
「...と。み...と。源!」
「!はい」
「大丈夫か?」
「えぇ、少し考え事してました」
柳あるところに源あり。そういうことなのかもしれない。
「でも、安静にしとけば半年くらいで治るらしい」
「!半年って、もう大会始まるじゃないですか!」
高校球児が目指す場所、甲子園。そこに向けて皆、一生懸命練習する。もちろん、純也君も。
「あぁ。だから、今年の夏は柳は大会メンバー選考に入れないことにする」
「え?それって」
「あぁ。柳を2軍に落とす」




