18話 強気と根気
「プレイボール!」
東峰高校紅白戦第二試合が始まった。俺は9番ピッチャー、大輝は6番キャッチャー、新島は1番センター、控えに白川と大塚先輩がいる。知り合いが多くて少し楽になった気がした。相手には、先発に新井がいて、ほかにもレギュラー陣がたくさんいる。相手には不足はないな。だが、疑問におもうことが一つ...
「なんで麟太郎が...レフトに入ってるんだ?」
そう、ピッチャーのはずの麟太郎が外野に入っているのだ。事実、新井より麟太郎のほうが強い、球速も変化球もキレもコントロールもあいつのほうが上、先発にするなら間違いなく麟太郎のほうだ。なのに新井が先発になっている。
「なめられているのか...?」
「麟太郎は多分十分に実力が認められてるんだよ。だから、控えでもいいんじゃないかな?」
新島がそういった。確かに一理ある...が、4番なのには、なんともなー
俺らは後攻、とにかく先制点をあげておきたいな。新島は問題ないとは思うんだが...
「...。...。」
(大輝、なんだか、暗いな...なんかあったのか?)
『よーし!とりあえず塁に出ろ!新島ー!』『いけよー!』
(1番としてまず塁に出ないとな)
「早速だな!新井VS新島の1年対決!」
新井はコントロールがよく変化球の切れが良い。対して新島はパワーヒッターではなく、個人での得点力こそはないが、バッティング技術はピカイチだ。左打ちながら右にも左にも打ち分けられる、そして足も速いから1番バッターに最適な打者だ。この二人が直接戦えばどうなるかはわからないが...
「どちらかといえば...新井のほうに分があるよな」
初対決なら、もちろんピッチャーのほうが有利だろう。自分の得意な方法で勝負できるからだ。自分の得意なとこに投げれるし、逆に相手の苦手なところにも投げられる。
「ただ...それが『普通の選手なら』だがな」
「白川...」
「俺だってそれを経験してるからよくわかるんだ。どんなに得意なところに投げても打たれる、かといって苦手なところに投げてもうまく打ち返される...」
「なら...五分五分ってところか...?」
そんなことを言っている間に第一球が投げられていた。新井が選んだ球種は外角高めのストレートだった。
「凛が...にげた?」
「珍しいな...やっぱ警戒してるんだな...」
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(油断はできない...でも!逃げてなんかいられない)
僕は内心そう思っていた。難しい、ただその一心でいま、マウンドに立っている。こんなに緊張しているのは久しぶりだ。前は中学の全国大会の時、一打で同点のピンチだった。あの時は、変化球オンリーで攻めたが、それは相手の打者が変化球が苦手だったからだ。だが今回は違う。
(何もわからない、苦手も知らない、こんな緊張も初めてだ。そんな窮地に立っても、しっかりと立ち向かっていく精神が俺にあれば、もっと強くなっていたかもしれない。だったら...)
「今!ここで強くなる‼」
シュッ!ククッ!
『!?』
僕が投げたボールは、
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「な、内角に食い込むツーシーム!」
「勝負しに行ったぞ!」
俺も白川も驚いていた。一球目と違って明らかに気のこもった球だった。
「これは、新島も驚いたんじゃ...」
と思ったのだが、
「...ふーん」
「驚いてる、というよりも、冷静じゃねぇか?」
カウントは 1ボール1ストライク
流れは凜にある...と思われる。このまま根気強く投げていれば抑えられる。
と、思っていたのだが...
シュッ!ククッ!
(あの回転は!ナックル!これはカウントとった!)
「‼」
カキーン!
ストライクを取ったと思われたナックルは
うまくミートされ軽々とレフトの頭を超えた