第11話 怒りと戦い方
東峰高校2軍紅白戦が始まり6回までが終了して2対0で紅組がリードしている。その点数も大輝の先制2ランホームランで入れたものでしっかりと役目を果たしていた。そして俺はというと、今のところ2打数1安打でぼちぼち...でも先発の内丘さんの後を継ぎ、6回はしっかりと3人で抑えた。
「おっしゃー!7回もしっかりと抑えていくぞ!」
(柳くん気合が空回りしないといいけど...次は1番の大塚さんか)
「大塚 源太、中学時代すべての打席でヒットを打っている打率10割だった男です」
「ほほぅそれは是非とも1軍にあげたいね伸びしろがあると思うよ」
そう言い烏丸さんは持っている書類に大塚の名前を書き込んだ。
(今回上げるのは5人か...まぁいつも通り少ないな)
「どうしました?総監督」
「いえ何でも」
シュッ!バン!
「ストライーク!」
「ナイスボール!」
(まずは外角低めで見たか...なら次は高めに落とすかな)
(よし!大塚さんはこれで内角に来てもおかしくないと思うはず...ならここは)
シュッ!ククッ!
『外角高めのフォーク!』
カキーン!
「!!」
「ライト!」
(この弾道とあの金属音...そしてこの方向なら...)
パシ!
(飛べば捕れる!)
「アウト!」
『あぁー惜しい!』
「ちっ!ちょいと振り遅れたか...球速が変わらねぇとこうなるのも自然なのかな」
(読まれていたのか?)
「なんだ源太、読み間違えたか?」
「別に、間違えたわけじゃない...タイミングが違かった」
「まっ、勝負は負けだな」
「まだだ、誰かひとり出れば俺に回ってくる...それを願うしかない」
(あっぶねぇもう少しで入るとこだった〜)
「ナイスライト〜!」
俺の声に手を振り返して答えてくれた。
(次は絶対に抑えるぞ!)
「プレイ!」
(次は慎重に攻めていこう...まずは内角高めに外して)
シュッ!バン!
「ストライーク!」
(入っちゃったか...なら次は内角低めの釣り球でいこう)
「あいつ(ボソッ」
シュッ!
(ど真ん中!?)
ズバーン!
「ストライークツー!」
「...140km」
大輝がびっくりした顔で見ていた。
「あっ、た、タイムお願いします」
「どうしたの柳くん、サイン見てなかった?」
「あん?お前が逃げのへなちょこリードしてるから俺はそれに従わなかっただけだよ!」
「へ、へなちょこだとー?」
「そうだろ!前の回はあんなに攻めてたのに、一回撃たれたからって逃げのリードにしやがって!俺を信用してないのか?」
「そういうわけじゃないよ...」
「...んまーいい。お前が俺の投球を信用するまで俺はど真ん中に投げる」
「...」
そう言うと、無言で大輝は戻って行った。
「プレイ!」
(なんだよそれ...もう何が何だかわかんねぇよ...とにかく追い込んでしまったらもう落とすしかない!)
(低めのフォーク...)
シュッ!ククッ!
(なっ!スライダー?!)
ドフッ!
「ストライークバッターアウト!」
「見事な三振だ。柳もそろそろ1軍ですかね?」
「...」
「烏丸さん?」
「今、キャッチャーが体で受け止めた時、グラブが全く動かなかった。サインミスか?」
「確かに...なんかあったんですかね?」
(フォークじゃなくてスライダーを投げた?何故?でも結果は三振...まさか、試してみる価値はある!)
(フッ、あいつ俺の考えてたところに要求してるぜ。そろそろ気づいたかもな)
シュッ!バン!
「ストライーク!」
(外角低めのストレートの次は...)
シュッ!
(内角高めのスライダーで体を)
ククッ!
(起こす!)
バン!
「ボール」
(よし!次は外角にストレートをいっぱいに)
シュッ!バン!
「ストライークツー!」
(最後は伝家の宝刀...)
シュッ!ククッ!
(カーブ!)
バン!
「ストライークバッターアウト!」
「っしゃー空振り!」
(俺の言いたいことが分かったようだな大輝)
(ただ普通にリードしても意味が無い、普通ならみんな知っているから。だからあえて外していくそれが柳くんの言いたかったことだったんだ!)
「ナイスボール!」
「ナイスリード!」
2人は笑顔で言いあった。
シュッ!バン!
シュッ!ククッ!バン!
シュッ!バン!
「ストライークバッターアウトチェンジ!」
「ナイスピッチング!柳」
「あ、ありがとうございます」
「柳くんお疲れ」
「大輝サンキューな俺のわがままに付き合ってくれて」
「大丈夫だよ、それもひとつの戦い方だよ!」
「お前ってやつは変わってんな!」
「お前だって!」
パン!
2人はハイタッチをして話していた。
「なるほど、総監督のしたかったことは特定バッテリーだったんですね?」
「ご名答。あの二人ならきっと甲子園をわかせるスターになれる、普通だからこそ伸びしろがあると思っている!」
「...なるほど、まっ内容も悪くありませんし2人を上げることにします」
そう言い烏丸さんは書類に二人の名前を書き込んだ。
(良かったな...柳...念願の一軍だ。辛いこともあるだろうが頑張れ!そして甲子園で暴れて来い!)
その後も紅白戦は続き8回も俺が抑え9回は凛がパーフェクトに抑えて試合終了。結局大輝の2ランが決勝点で紅組が勝利した。
「全員集合!」
ダダダダダ...
「全員今日はお疲れ様。途中で気づいてる人もいたかもしれないが今日は総監督と1軍コーチの烏丸さんが来ていた」
全員がざわめきだした。
「ごほん!えー今日の試合すべて見せてもらった、改めて紅組のみんなおめでとう。今日ここにいる理由は他でもない...今から一軍昇格者を発表する!」
『まじ?!』
場の全員が息を呑んだ。憧れの一軍...誰もが行きたいとその場で思った。
「今回の枠は5名だ!」
「5名...柳くん選ばれるかな僕達...」
「こればっかしは祈るしかねぇだろ」
「では発表する!」
「...ごくん!」
「2年大塚 源太!」
「はい!」
「大塚さんか〜やっぱしレベル高いな〜」
「1年柳 純也!同じく1年源 大輝!」
『はい!』
「やったね柳くん!」
「おう...これでひと安心だな。でも...」
(あと2枠...だれが選ばれるんだ...)