第10話 初ヒットと初のマウンド
俺たちの初めての2軍での紅白戦。俺ら紅組は1回に大輝の先制の2ランホームランで得点を入れた。そして2回の俺の打席はあえなく三振で終わった...その後も紅組の内丘さんの好投によって5回をパーフェクトに抑えて裏の攻撃になった。あのホームランの後、白組先発の3年塩田さんはヒットを許さず全て三振で抑えていた。そして5回裏先頭バッターは、
「俺からだー!」
「頑張って!柳くん」
「おう!」
「ふん!この回もしっかり三振で抑えてやるぜ」
(塩田さんは球速146km前後、球種もそこまで多い訳では無いから狙い撃ちはしやすい。でも持ち球がストレートとフォークとシンカーだから、意表を突かれれば軽く振らされる。だから慎重に行かないといけないな)
塩田さんは振りかぶって初球を投げた。
シュッ!ククッ!バン!
「ボール」
(危ねー、ボールになるフォークか...1球目からすごいことするな)
″追い込まれれば後は振って三振″どこかでそう聞いたことがある。そう思った俺は、追い込まれる前に決めると決意した。
シュッ!カキーン!
「ファール」
(くそ!当たり底ないか、これでストライクカウントがひとつか)
シュッ!ククッ!バン!
「ボール」
(またフォークか)
シュッ!ククッ!バン!
「ボール」
(またか?なぜだ?カウントを悪くしてるだけじゃないか)
(ふふっ)
塩田さんは妙な感じで軽く笑った。
(見せてやるよここで投げられるシンカーの恐ろしさをな!)
(ここは当てていかないと!)
シュッ!ククッ!
(!?シンカーか!)
カキーン!
「フェア!」
「何!」
「よっしゃ!」
「ナイスバッティング!柳く〜ん!」
(よくあそこでタイミングを合わせられたな...しかも食い込んでくる球を引っ張って)
その後俺は3塁まで進んだものの残塁でこの回は無得点で終わった。
「紅組ピッチャー交代!」
『おっ!誰だ誰だ?』
「ピッチャー内丘に変わって柳!」
「っしゃー!行くぞー!」
「柳に変わってライト新島!」
「はい!」
(ん?新島?1年生か?)
大輝は疑問に思った。今回スタメンだった1年生は柳と大輝の2人だけ。それほど上手くないと出させてもらえないのだ。そこで出てきた1年生だから割と出来るのではと思っていたのだ。
「っしゃー締まっていきましょー!」
「柳くん、ついにこの時が来たね初バッテリー!」
「あぁやっとだな!先輩達を驚かせてやろうぜ!」
「うん!」
「プレイボール!」
(この回は下位打線からだ。柳くんなら焦らなければ余裕で抑えられる!落ち着いて攻めていこう)
シュッ!バン!
「ストライーク!」
「ナイスボール」
(やっぱし126kmかー何がいけねぇんだろうな)
(落ち着け柳くん、球速は気にしなくていい。今は目の前のバッターに集中しよう)
(次は低めにフォークか...よし!)
シュッ!ククッ!バン!
「ストライークツー!」
(よしよしいい感じだ球も走ってる)
「おい!あの1年の球速見たか?」
「あぁ、ストレートは126kmなのにフォークは124km...」
「ありゃー相当厄介なピッチャーだな」
シュッ!ククッ!バン!
「ストライークバッターアウト!」
「よしゃー!」
「ナイスボール!」
「どうです?あのピッチャーは?」
「柳はなんか変わったな。入部の時とは全然違う雰囲気になった。...1軍に来るのもそう遠くないんじゃないかな」
シュッ!バン!
シュッ!ククッ!バン!
シュッ!バン!
「ストライークバッターアウト!」
シュッ!ククッ!バン!
シュッ!ククッ!バン!
シュッ!バン!
「ストライークバッターアウトチェンジ!」
「よっしゃー三者連続三振!」
「ナイス柳くん!調子いいね!」
「当たりめぇよ!」
こうして俺の初めての高校のマウンドはパーフェクトで終わった。
「あれは結構厄介だな、どうだ?打てそうか?」
「なぁに心配いらねぇよ塩田。あんなの余裕だ」
「まっ、言うだけタダだからな。調子乗るなよ?源太」
「わーってるよ」