第9話 チームとサイン
「それでは今から2軍紅白戦を行います」
『はい!』
2軍監督がチーム表とスタメンや打順などを展示した。今日は俺たち1年生にとって初めての紅白戦だ。試合は2回行われて、午前午後でわかれるそうだ。ちなみに俺と大輝と凛は午前、卓也は午後に試合がある。
「えーっとー...僕は紅組の2番キャッチャーだ。柳くんは?」
「俺も紅組だったよ。6番ライトだってさ。まさかの外野だよ〜」
「外野!?柳くん出来るの?」
「んま〜出来なくはないよ、監督とコーチからは中継ぎの機会までは外野で使う時があるって言われたから一応、外野本職の山田先輩から色々教えてもらったりはしたけどな」
「そうだったんだ。ってことは今回中継ぎ登板あるってことだよね?」
「恐らくな...ワクワクしてきたぜ!」
「まぁまぁ落ち着いてね先輩もいるんだから」
「分かってるよ。んでうちの先発は?」
「内丘先輩だよ」
「...誰?」
「内丘 和也〜!覚えとけよ同じ軍の先輩くらい。今回は3番だけど去年までは4番だったらしいよ2軍で」
「へー1年生で4番か〜かっこいいな!」
「まぁね。さっ始まるよ」
「おう!」
「整列!!」ダダダダダダ
「これから2軍紅白戦を始める。礼!」
『お願いします!!』
「プレイボール!」
そして俺たちの高校初めての紅白戦が始まった。周りを見ると総監督や烏丸さんなどが観ている、おそらく1軍昇格への鍵となる試合なのだろう。ということは、この試合はすごく大事な試合だということだ。それに気づいた俺はこれを大輝に教えようとは思わなかった。それでもし緊張してしまったらと不安になったからだ。
「よし!集中集中。守備もいいとこ見せねぇとな!」
「っしゃー!しまっていくぞー」
内丘さんの掛け声だった。それに対してバック全員で、
『オー!』
しっかりと返事をした。準備万端だ!
[いざ!プレイボール!]
(よし、まずは内角低めから入ろう)
シュッ!バン!
「ストーライーク!」
「ナイスボール!」
(今日は球がよく走ってるぞ、変化球も試してみるか)
シュッ!ククッ!ズバーン!
「ストライークツー!」
(すげーキレのスライダーだなこりゃー打てねぇよ)
(バッターも頭の中にスライダーが埋め込まれた、なら次は外角高めの...)
シュッ!パン!
「ストライークバッターアウト!」
(なっ、チェ、チェンジアップ!)
「ワンアウト〜!」
(すげーな大輝。先輩を軽くリードしてるよ、俺もしっかり守らねぇとな!)
俺は気を引き締めて体制をとった。
「どうですか?あの投手は?烏丸さん」
「んまー悪くないんですけどね〜右投げ右打ちのMAX150kmで、キレのあるスライダーと緩急のあるチェンジアップを武器に三振をとっていくタイプですね」
「はい、かなり器用でまだ伸び代はあると思うんですけどね?」
「んまーそうだがなーちょっと物足りないんですよねー」
「と言うと?」
「球速もあって立派な変化球もあっていいんですけどもう少し目立つ球種が欲しいですね。まぁ、それを考えて1軍に上げるのもいいですけど精々ベンチ止まりでしょうな」
「なるほど...」
「まっ、2軍なんてこんなもんですよ」
「それはどうでしょうね?」
「ほほぅ誰かいるのかね?」
「まぁ最後まで見てってくださいよ」
(このチャンスを逃すんじゃないぞ!柳!)
「...なんか...総監督がやたらとこちらを見ているような...気のせいか」
「オラ!」
シュッ!ククッ!カキーン!
「レフト!」
「オーライオーライ!」
「アウト!スリーアウトチェンジ!」
「ナイスピッチングです先輩!」
「ありがとな、お前もいいリードだったぞ」
「ありがとうございます!」
「お疲れ大輝!」
「ありがとう柳くん」
「バッティングも頑張れよ2番なんだから回ってくるだろ?」
「うん!わかってるよ」
カキーン!
「お!ランナー出たぞ!行けー大輝!」
「大袈裟だな〜柳くんはバントだと思うのに〜サインは〜...!?」
大輝は驚いた表情だった。
(ヒッティングだと?何を考えてるんだ?この場面の2番の仕事は送りバントだろ)
大輝は悩んだ。そして覚悟を決めた。
(よし!ヒッティングにしよう。ランナーは返せなくても繋ぐんだ)
(この場面はバントだろう、ならフォークでカウントを稼ぐか)
(多分相手はバントだと思ってるはずならミスを誘いに来るはずだ、なら次投げる球種は...)
シュッ!ククッ!
(外角高めのフォーク!)
カキーン!
「何!!」
「レフト〜!」
高く上がった打球はレフト方向へ伸びレフトが追いかける。そして...
コン!
「...ポール直撃」
「先制2ランホームランだ〜!」
「っしゃー!!」
「ナイス大輝!」
「サンキュー柳くん」
パン!
2人はハイタッチをしてベンチに戻っていった。