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今年もよろしくお願いします。


ご感想ありがとうございます。

「脇役」とは違う感じにしたくて色々試行錯誤しながら書いています。

今回、ご指摘の点を直してみました。

他にも、誤字脱字のご指摘などありましたら、ご一報ください。

前の話も随時直していきます。

騎士団の訓練場にやって来たミナリアと西凪は、レオナルドに案内されながら、騎士達が訓練しているところを見学していた。

すると、反対側の低い塀の向こう側に、貴族の少女が数人居ることに気づいた。


「レオナルド、あの人達は?見学者?」

「…………ああ。そんなもんだ」


微妙にぞんざいな言い方に、ミナリアと西凪は首を傾げる。


「あの、レオナルド様。騎士団の訓練の見学は、許可が必要ですよね?」

「そうです」

「では、あの方達も許可が下りたという事ですよね?」

「ああ。誰かが、勝手に」

「え?」

「あはは。娘に甘い誰かが権力使って捩じ込んできた、ってところでしょ?」


西凪は、笑っているが、目は少女達を蔑んでいる。


「よくわかったな」

「どこにでもいるのよねぇ、親馬鹿って。そして、それが当然だと思ってる馬鹿な子供が」


ミナリアは溜め息をついて首を振る。


「貴族ではよくある事よ」

「そうかもね。でも、自分の頭で考えたらおかしい事に気づくでしょ?気づかないのは、考えてないか、権力を使って他人に無理をさせるのを当たり前と思ってるか、でしょ。どっちにしても迷惑よ」


少女達は、目当ての騎士がいるのか、どこか一方向を見て頬を染めている。


「あれ、その内親に言って、婚約まで捩じ込むかもしれないわよ?」

「それも、貴族ではよくある事よ」

「そうかもしれないけど、相手の家の方が格上だと断れないよね?」

「………そうね」

「ほら、可哀相じゃない。その女の子が良い人だったらまだマシだけど、我が儘なヒステリック女だったら、悲惨」


西凪は少女達から視線を外す。


「レオナルド、あの人は誰?どういう人?」


西凪が指差した人物は、少女達の中心人物だと思われる少女が見つめている人だ。

赤金色の髪に灰色の瞳の、クールな美形だ。

レオナルドはやや眉を寄せるが、説明した。


「サイラス。確か伯爵家の三男だ。剣の腕はいい」

「へぇ、将来有望ってことね」

「サナ、まさか………」

「あの女の子、あの真ん中の金髪のピンクのドレス着てる子、あの子は誰?」


西凪が少女を指差した。

ミナリアは少女を見てみる。

ミナリアには記憶にない人物だった。


「………覚えがない。ビンティル侯爵の娘にあんな者がいた気がするが」


レオナルドは首を傾げながら言った。

ミナリアは目を丸くする。


「あの、失礼ですけど、レオナルド様のフルネームは?」

「言ってませんでしたか?レオナルド・シュテルスです」


その名前を聞いて、ミナリアは目眩を起こしかけた。


(シュテルス公爵家の人間か!?)


ミナリアは西凪をそっと見て、溜め息をついた。


(ほんとに、なんて人間に執着されちゃったんだろう、西凪ちゃんは)


この国に公爵家は三つしかない。

その内のひとつシュテルス公爵家は、主に武力を司っている。

レオナルドが騎士なのも納得だ。

西凪は知らないからか、ミナリアとレオナルドを見て、首を傾げていた。


「まぁ、さ。あの女の子が無茶しないといいね」


西凪がそう言った時、あちらの少女達もこちらに気づいたようだ。

ミナリアと西凪がレオナルドと一緒にいる事に、顔をしかめている。

ミナリアはふと前世でプレイした乙女ゲームを思い出した。


(なんだか、この状況が乙女ゲームの様なんですけど)


西凪は少女達を気にせずに、騎士達を見ている。


「お姉ちゃん、どう?いいネタ見つかった?」


西凪に訊かれて、そういえばそれが目的だったと、ミナリアは騎士達を見る。


「そうねぇ。………あの体つきのがっしりした人と、それの相手をしている少年。いいわぁ」

「ああ、あれね。でも、あの人じゃインテリにはならないわね。あっちの細目の人と元気系な感じのあの二人は?」

「うん、いい!あれ、超好み!」


二人できゃわきゃわ喋っていると、レオナルドがさっと体の位置を変えた。

それに気づき、振り向くと、近くまであの少女達がやって来ていた。

よく見ると、少女達はミナリアと年齢が近そうだ。

レオナルドはミナリアと西凪を庇う様な位置に立っている。

金髪の少女が口を開いた。


「失礼。貴女達、訓練場に降りるのは違反ですわよ」

「……………」


ミナリアは困惑して、西凪は笑いを堪えて、黙った。

それを反論できないからと受け取ったらしい金髪少女が、更に言い募る。


「レオナルド様につきまとっているようですけど、レオナルド様に迷惑を掛けていると、気づきませんの?」


金髪少女の勝ち誇った表情に、ついに西凪が吹き出した。


「ぶはっ!もうダメ、笑える、可笑しい!」

「なっ、何が可笑しいんですか?!」

「西凪ちゃん、笑ったら失礼よ」


ミナリアが注意すると、西凪は笑いながらミナリアの肩を叩く。


「いやいや、注意するのはあっちでしょ」


金髪少女は顔を真っ赤にして怒っているし、周りの少女達は困惑していた。


「貴女の方が失礼なのだが」


レオナルドが低く言うと、少女達は目を丸くする。


「貴女達は、礼儀作法をちゃんと習ったのか?下位の者が上位の者に声を掛けてはいけない、と」


レオナルドの言葉に、少女達ははじめてミナリアと西凪の身分を知らない事に気づいた。


「あの、私はミナリア・ザウアーラントと申します。今日は、レオナルド様に案内して頂いて騎士団の見学をさせて頂いてます」


ミナリアの自己紹介に、少女達は更に目を見開いた。


「ザウアーラント侯爵家の………!?」

「レオナルド様が案内?!」


(ん?今、違うところに驚いた人がいたよ?)


レオナルドがさりげなく西凪の腰を抱き寄せた。


「まだ公表していないが、このサナは俺の婚約者だ」

「「「えっ?!」」」

「どこ触ってんだ、セクハラで訴えるぞ」


西凪はレオナルドの手を叩き落とす。


「西凪ちゃん、残念ながらこの世界はセクハラで訴える事が出来ないのよ」

「ちっ!じゃあパワハラもモラハラもないの?!」

「ない、わねぇ」

「使えねぇな!異世界!」

「いや、使えるとか使えないとかとは次元が違う気がするけど」


ミナリアは西凪を嗜めるのに意識を向けていたので、少女達の一人が変な動きをしたことに気づかなかった。


「レオナルド様は、私と結婚するのよっ!!」

「「?!」」


茶髪の少女が、手にナイフを持って、西凪に向けて走って来た。


「西凪ちゃん!?」

「サナ!!」


ミナリアは西凪を庇うように抱きしめた。

レオナルドが二人の前に出る。

しかし、少女は三人の手前で壁にぶつかった様にビタンと音を立てて倒れた。


「………え?」


すかさずレオナルドが少女の手からナイフを取り上げ、腕を背中に捻って拘束する。

すぐに騒ぎに気づいて騎士達が走って来る。


「レオナルド隊長!?」

「この者を拘束、監視の上、団長と宰相に通達。連れて行け」

「は!」


素早く少女を連れて、騎士達が去って行く。

残った少女達は、身を寄せ合って震えていた。

レオナルドは冷たく少女達を見る。


「貴女達も、事情をお聞きしますので」


レオナルドが目配せすると、騎士達が少女達を連れて行った。


「…………はぁ。びっくりした」

「大丈夫?お姉ちゃん」

「わたしより、西凪ちゃんは?!怪我してないわよね?!」


ミナリアは西凪の体を見て確かめる。

西凪は苦笑して首を振る。


「あたしは大丈夫。それより、お姉ちゃんが刺されなくて良かった。もし刺されてたら、あたし、あの女を殺すわ」


ミナリアは青ざめて西凪を見つめる。


「西凪ちゃん、殺人は駄目よ」

「うん」

「それより、さっきのは、魔法?」

「そう。空気の壁を作ったの。燃やすか氷らすか迷ったけど」


レオナルドが西凪を抱きしめた。


「サナ、無茶しないでくれ」

「キシャー!!抱き付くな!」


西凪はレオナルドを蹴り飛ばした。

ミナリアは地面に転がったレオナルドを見て、さすがに心配した。


「西凪ちゃん、やりすぎじゃない?」

「あたし、男にベタベタされるの嫌いなの」


(………レオナルド、憐れ。でも、応援はしない)


ミナリアは心の中でレオナルドに向けて合掌した。


読んで頂き、ありがとうございました。


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